大願成就

「なんか……意外とあっけなかったね」
 崩れ落ちたオルゴ・デ・ミーラの死骸の断片を見下ろしながら、マリベルは呟いた。
「まあ、それだけ身共が成長していたんでござろうな」
「いちおう全員、どとうの羊か剣の舞が使えたしね」
 他のメンバーも、納得しようとしながらも腑に落ちない表情であった。
 炎の洞窟で経験値&戦闘回数稼ぎの途中、誤ってワープポイントにはまってしまい、やむなく闘いを挑みに行った経緯からして、どうも勝って不満だったらしい。アルス賢者、メルビン踊り子、マリベル武闘家、アイラ盗賊という、実に中途半端なパーティ構成でもあったし。

「ともあれ、あたしがオルゴ・デ・ミーラを倒したのよ。これで世界中から称賛の雨あられ、あたしたち、スーパースターよ! あたしはウルトラスターよ!」
 新庄もかくやというほど浮かれるマリベルを含む、一行が最初に導かれたのは、天空の神殿であった。
 神殿の兵士が一行を迎える。
「アルス殿! メルビン様! そしてお仲間のみなさん」
「マリベル様とその下僕ども、とおっしゃい!」
 マリベルはいきなり不機嫌になってしまった。
 さらに巫女が迎える。
「……ああ、この胸をしめつける喜びを……どうしたらあなた方に伝えられるでしょう」
「それ、あたしへのあてつけ?」
 マリベルは薄い胸を隠すようにしながら怒鳴りつけた。

「天空暮らしが長すぎてボケちゃった連中なんか、どうでもいいわ。地上に降りたら、今度こそは、あたしはグレート・スーパースターよ!」
 しかしマリベルの野望は、あっけなく崩れた。
 メザレでは、なぜかラグレイとかいう戦士が世界を救ったことになってしまっていた。
 砂漠の村では、三バカ兄弟が、世界を救ったのは俺だと喧嘩していた。
 そしてマーディラスの王女、グレーテ姫との謁見で。
「わらわの友達が世界を救ってくれたことで、わらわも鼻が高いぞ。しかしそちも、わらわのように賢くけだかく美しい姫と知り合いになれて嬉しかろう?」
「あんたこそ、あたしのようなグレート・メガトン・スーパースターと知り合えて光栄に思いなさいよ!!」


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