マリベルの時は止まっている。
世界を滅ぼす大魔王。その魔王の巣窟に、最後の対決を挑む。その直前で。
装備をととのえ、宿屋で回復し、いつでも出陣できる、その態勢のまま。
マリベルの時は動かない。
その喜びも悲しみも、夢も希望も、あえかな初恋も、とほうもない憎しみも。
プラスチックに包まれた、ちっぽけな金属片のなかに封じられて。
マリベルの時は流れない。
将来を奪われたマリベルは、閉じこめられたまま、にくしみだけを育てている。
無能にして飽きっぽく、投げやりな造物主に対するにくしみをふくらませながら。