作戦会議

 連戦連敗。
 それも、なまじの連敗ではない。
 魔王の顔を見たことがない。ありていにいえば、ダンジョンの途中でザコ敵に殺されているのである。
 なにが足りないのか。一行はダーマ神殿の二階で、作戦会議を開いた。
「やっぱりアレね。戦法が悪いのよ」
 とマリベルは決めつけた。
「仲間が死ぬと、みんなザオラルや天使の歌で蘇らせようとするじゃない。あれ、よくないわよ。同胞愛は結構だけど、屍を乗り越えても闘う、という精神が大事よね」
「しからば一言云わせて頂くが」とメルビンが反論した。「マリベル殿、無意味にやすらぎの歌やメダパニダンスを駆使されるのもいかがなものか。敵が瀕死になっても踊るのは無意味でござるよ」
「うっさいわね! あたし、僧侶なんだから仕方ないでしょ。非力なんだから」
「確かに、いまのパーティは、マリベルが僧侶、アルスが魔法使いと、ちょっと非力だわ」
 アイラが指摘した。「どうなのアルス、職業選択を誤ったんじゃないの?」
「いまはしょうがないよ」アルスは答えた。「魔法使いを極めたら、賢者になる。フバーハが必要だからね」
「確かにフバーハは必要でござる」メルビンも同意した。「どうでござるかアルス殿、ガボ殿を呼び戻しては? ガボ殿は賢者も経験されているゆえ、フバーハは使え申す」
「駄目よ! あんな猿!」マリベルは言下に否定した。「あいつ、どうせグランドクロスで、アッという間にMP使い果たすに決まってるわ! 役立たずよ!」
 ガボを呼び戻すとなれば、パーティのひとりを置いていかなければならぬ。置いていかれる可能性のもっとも高いのは、自分だとすばやく推察しているマリベルだった。
「とりあえず地上で経験値を貯めるしかないか」アイラは溜息をついた。「そのうちアルスも賢者に転職できるでしょうし、金を貯めて海賊船で最強の装備も整うでしょうし」
「それしかないようでござるな」メルビンも同意した。
「装備くらい最強にしときたいわよね」マリベルはソファにひっくり返って両足をばたばたさせた。
「あーもう、世界を救う闘いをしてるっていうのに、グランエスタードからは援助もなし? 大富豪のプルジオも、一文の援助もなし? いっそ、世界を恐喝して廻りましょうか。金をよこさなかったら、魔王に勝ってやらないぞ、って」
 まずはてめえの親父のアミットが金をくれたっていいだろう、と思いながらも、沈黙を守る残り三人なのであった。


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