マリベル完全復活

 風の塔にむかう行路の途中で、ガボは早くもへばり、弱音を吐いた。
「オイラ、もうMPが尽きちまった。宿に帰ってメシ食おうぜ」
「何言ってんのよ! さっき出発したばかりでしょ。早く精霊を復活させないと、手遅れになるのよ!」マリベルは叱咤激励した。
「んだども、MPが……」
「あんたみたいにグランドクロスばっか連発してりゃ、そりゃMPも尽きるでしょうよ! まったく、馬鹿なんだから」
「だって……」
「だってもへったくれもないわ。 グランドクロスを覚えたとたん、馬鹿のひとつ覚えでそれしか使わないんだもの。TPOってのを知らないの?! まるでせんずり猿ね。死ぬまでこいてなさいよ、この山猿が!」
「オイラ、猿じゃないぞ。狼だ」
「どっちだって同じよ! 脳味噌ないんだから。 さっきも何よ! みんなしびれてるのに、ひとり残ったあんたがメガザルで勝手に死んじゃって、あとどうするつもりよ! まったく、馬鹿なんだから!」
「……」
 アイラはこっそりとアルスに耳打ちする。
「私、マリベルと一緒に旅をしてみたい、と思ってたんだけど……」
「思うだけの方がよかったんですよ」アルスは頷く。
 リファ族の族長、セファーナは、うろたえるばかりだ。
「あの……みなさん、そろそろ進んで……」
「うるさいわね!」優しき族長にまで、マリベルの剣突は飛ぶ。
「あんた、翼があるならそれで飛びなさいよ! なんであんたと一緒に、とぼとぼ歩かなきゃなんないわけ? ほら、神の石あげるから、飛んでみせてよ、ほらほら!」
「……」
 見かねたアイラが助け船を出す。
「さあ、そのくらいにして、先を急ぎましょう」
「あら!」マリベルは素っ頓狂な声を出した。
「ちょっと待って。あたしのMPも残り少ないわ。ひとまず宿に戻って出直しよ」
「でも、先を……」
「なに言ってんのよ。このマリベル様の魔法なしで、あんたらが闘えると思ってんの? ほらほら、さっさと村に戻るのよ、さあ!」


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