不在の日

 一行は、墓石の前でふかく頭をたれた。
「彼もまた、立派な勇者じゃった……」
 メルビンは呟いた。
「たとえ滑稽に見えようが、彼は確かに、私たちの先駆者だった」
 アイラはこういって、墓前に花を供えた。
 山の奥にあるレブレサックの村。歪曲された神父の伝説のある村。
 世界を踏破した男が、ひっそりとこの村に眠っていた。
 いくつかの古代文書にその名を残した男。遙か古代より残された奇妙な物体の探求に生涯をささげた男。
「きみのことは忘れないよ。冒険者ヌルスケ……」
 アルスは墓碑に言葉を贈り、ガボは死者をとむらう歌をうたう。
 それだけのことをされるだけのことはあった。墓場より掘り出したメダル五枚で、勇者一行は、賢者の石を手に入れることができたのだから。
 そして一行は、マリベルがこの場にいないことを、神に謝した。
 きっとマリベルがいたら、メダル五枚では何も交換してもらえないことを、残酷なまでに容赦なく、死者の魂に宣告していたろうから。


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