RPG浄化キャンペーン第三弾・汚れた英雄の作られた名勝負

 魔王の手から世界を救う英雄たちの輝かしい戦績が、すべて八百長による作られたものだった――これが本当であれば、RPG業界全体を揺るがす由々しい事態という他はない。しかし、この事実を裏付ける、新たな証人が現れたのだ。

「魔物との勝負の六割から七割は八百長。間違いない。現に私がカネの受け渡しをしていたんだから」
 と、こともなげに語るのは、元モンスターパーク管理人のPさん(53)。
 本誌前号(9月12日号)で、ドラクエの世界にはびこる八百長勝負の実体を告発したが、これに対し勇者側は猛反発。「わしの偉大なる伝説の勇者の称号にかけて、八百長など見たこともない!」(メルビン)、「うさんくさーい。それって、妄想じゃない?」(マリベル)など、八百長の事実を否定する発言が相次いだが、「それなら、反論できないよう、きっちりとお話ししましょう」と、怒りの表情も露わに、Pさんは反論。”こうなればとことんまでやる”というPさんの手記は、さらに核心に入る。

 私の話が妄想だというのなら、九十時間余の限られたプレイ時間の中で、十八回もモンスターパークを訪れていた、勇者たちの行動は、いったいどう説明するつもりなのでしょう。その間には、魔物がまったく増えていないと、はっきりわかっていて訪れたことも数回あるのですよ。
 モンスターパークってとこは、魔物と人間の仲介にはうってつけの場所なのです。魔物も人間も出入りできるから。だから、昔から八百長のカネの受け渡しに使われてきました。
 私が四代目の所長に雇われてパークの管理をするようになったのは、今から七時間ほど前。解雇されたのは二時間ほど前。この五時間の間にも、勇者一行は四回訪れています。そのうち、私が直接カネの受け渡しにタッチしたのは二回。
 最初はたしか、ゼッペル王でした。魔物と化した王はひどく強く、はっきり言ってガチンコでは勇者に勝ち目はありませんでした。連敗してたんじゃないかな。そこで「何とかしてくれ」と私に泣きついてきたのです。結局、「眠らせない」「二回攻撃しない」という条件で、一万ゴールド払ったと覚えています。
 二回目はレブレサック北の燈台の魔物。こいつらがなかなか強いので、どうしても勇者は頂上まで行けなかったんですね。こちらの方は、凍てつく吹雪と激しい炎を吐かない、という条件で、六千ゴールドで話がついたと記憶しています。

 勇者たちが八百長していた、という話は、前任者からも聞いています。なんでも、山賊に二千ゴールド払って手加減してもらったのが最初だと聞いています。あのときは連敗したあと、山賊のボスに「どくがのこなを撒かない、全体攻撃しない」ということで勝ちを拾ったと聞いています。
 逆に勇者がカネをもらってわざと負けることもあります。高価な武器防具が欲しいときなんか、よくあるそうです。これは傍で見ていても八百長だとすぐ分かりますよ。まず、闘う直前に銀行にゴールドを預けている。これがあればまず八百長です。闘いの内容もぎこちなくなります。具体的に言うと、メルビンやガボが、効きもしないラリホーを中ボスにやたら唱えたり、マリベルが意味もなくホイミを唱えたり。
 八百長にもテクニックが必要なんですよ。いかにうまく、惜敗したように見せかけるか。私と魔物で、作戦をいろいろ考えます。むかしは素朴だったそうですね。魔物がまったく無抵抗で、防御だけしていて殴るに任せる、なんてあからさまな八百長があったこともある、と聞きます。今ではまず考えられないことですけどね。

 直接のカネの受け渡しには絡んでいませんが、所長はとうぜん承知しています。雲の上のことなんで、私にはよくわかりませんが、どうもアミット家から所長に定期的に送金されているらしいです。そのへんのフィクサーを勤めているのが、あのホンダラです。
 メルビンが怒っているって? 怒っても事実は動かせませんよ。「伝説の勇者の名誉にかけて」って言っても、あの人の伝説時代って、いまだれも知らないんでしょ? 履歴書にも、「伝説の英雄としていくたの戦歴を重ね」としか書いていないはずです。
 どうやら、メルビンを伝説の英雄として売り出すことに、アミット家とホンダラは何か思惑があるらしいです。そのためにも、八百長でもなんでも、メルビンの勝ち星を増やす必要があるのでしょう。

 Pさんの驚くべき八百長告白に対して、勇者側はまともな反論が出来ない状態である。
「そういうことは協会を通してください」(アルス)
「オイラ……そういうことは、わかんね」(ガボ)
「またあんたたち?! しつこいわね。八百長なんかないってば!(この後本誌スタッフを二時間にわたり殴打)」(マリベル)
 これが、週刊ペスト取材陣の直撃インタビューによって得られた、回答のすべてである。

 「過去にも現在にも八百長はない」と言うのみで、まともな反論もできない勇者たち。
 発売後一週間で三百万を売り切り、”国民的ソフト”とまで呼ばれる、ドラゴンクエスト7が、堂々と”国民的”を名乗るためには、早急にこの腐敗した八百長体質を一掃する必要があることは言うまでもない。


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