埼玉エスニック

 今回は新宿でエスニック食材を仕入れてきました。
 ご存知のように歌舞伎町から大久保方面に歩いて職安通りあたりまでいくと、「新宿コリアンタウン」と呼ばれ、遠藤周作が毎日徘徊していた、のではなく、韓国料理店や韓国エステやキーセンパブがずらりと並んでいる。その通りの「韓国広場」で韓国食材を、「アジアスーパー」でタイ食材を購入。ついでに中華食材も欲しかったのだが、見つからなかったので断念。
 「韓国広場」では、自家製キムチ、スンデ(朝鮮風腸詰)、マッコルリ(朝鮮風濁り酒)、アミソース、インスタントラーメン数種を購入。
 「アジアスーパー」では、サテ(マレー風ヤキトリ)の素、紅焼豚(中華風焼豚)の素、ガイヤーン(タイ北部風焼肉)の素、ラオラオ(ラオス風焼酎。ラオカーオと間違えてつい懐かしがって買ってしまった)、レモングラス、そして前回も買った蟻の卵を購入。
 さらに「肉のハナマサ」で、ペーストを使ってエスニック羊料理をすべく、冷凍マトンブロックを購入。適当な大きさのがなく、いちばん小さいのを買ったのだが、それでも2.3キロある。解凍したら再冷凍は不可だろうし、これから2週間くらいはマトン三昧だろうなあ。

アリンコ白いなあいうえお
ラオラオのラベルには「らおらお」とひらがなで書いてあります

 ややこしい料理の前に、とりあえず食えるものを食ってみる。
 キムチは和製のキムチより辛く、酸っぱかった。和製キムチの注意書きで「このくらいになったら炒め物などにお使いください」と書いてあるくらいの時期の酸っぱさが、韓国広場での購入直後の味だ。やはりこのくらい発酵していないと本場ではキムチとは呼ばないのであろうな。
 スンデはパックごと茹でて、添付の唐辛子塩をつけて食う。「血の腸詰」と言われているので、さぞや血生臭いものかと期待していたが、実際は「血まみれの春雨」みたいなものだったのでちょっとあてはずれ。かすかなほろ苦さと黒い色だけが血をしのばせるのみだった。こんなもんなのかな。まあ、職安通りをもうちょっと北に行くと、スンデを売り物にしてる店があるそうなので、そこで最終判断をしてみよう。
 ラオラオはタイのラオカーオより蒸留度合が低いのか、やや甘味がある。米の甘味が、ラオカーオとベトナムのルアモイの中間くらい。アルコール度数45度のわりには飲みやすい。

 まず羊を解凍し、紅焼肉にしてみる。袋裏のレシピ通り、なんだか赤いパウダーを少量の水で溶き、豚バラブロックくらいの塊に切ったマトンを3時間ほどつけこむ。これをオーブンで焼け、とレシピにはあるが、うちにはそんなハイカラなものないので、魚焼きグリルを前熱して弱火でひっくり返しながら焼く。
 マトンはそもそも赤身なので、白身の豚肉のように内と外の色のコントラストが出ないので、見た目はあんまり面白くなかった。しかし味はたしかに、あの中華屋台の店先なんかに吊している、あの中華風チャーシューだ。マトンの方が味が濃いぶん、焼豚よりうまいかもしれない。日本で売っている中華焼豚ほど甘くない、ほんのりした甘味が、マトンに合っている。

紅の羊

 さらにガイヤーンのタレにつけこんで同じように焼いてみる。
 カレー粉が混じっているのか、やや黄色く油っぽいルーみたいなものをサラダオイルで溶き、羊肉をつけこんで焼く。紅焼肉より甘さは控えめだが味も控えめなので、ちょっとナンプラーをたらすとうまい。キャベツ千切りとナンプラーでベトナム風サンドイッチにしてみたら、これもうまい。

負け犬だが羊

 さて、蟻の卵はどう料理しようか。まずはシンプルに炒めてみる。ゴマ油でレモングラスと葱を炒め、そこに蟻の卵を投入。しばらく炒めていると卵がぷちっという音とともにハジケはじめるから、そこで火を止めて(これを「アリの三つはね」という)ナンプラーで味付け。

これを蟻の戸板焼きと申します

 蟻の卵とはいうが、実際は蟻のサナギであるらしい。真っ白なサナギ、中で成虫になりかかって目玉の黒が透けて見えるサナギ、かえりたてで目玉だけ黒くほかは真っ白な成虫、しばらくたって体色が褐色になりかかっている成虫、など、いろいろなバリエーションが皿の中で楽しめる。サナギはつるっとして淡泊な味わい、噛むと口の中でぷちっとはじけるのが嬉しい。成虫はややもしゃもしゃして、エビの脚の天ぷらを脱皮したてのエビで作ってスモールライトをあてるとこうなるかという味わい。とにかく淡泊な味だから、シンプルな調理法のほうがよさそう。
 蟻のサナギは色といい形といい大きさといい、ちょうど米粒に似ている。日本の米とタイの長細い米の、ちょうど中間くらい。というわけで、スープに蟻のサナギと日本米とタイ米を入れてリゾットにしてみました。さあ、どれがどれでしょう?

全部当てた方には蟻を贈呈

 ところで今回間違いなく確認したのだが、蟻のサナギはやはり、冷蔵庫に入れて一日おくと、発育して黒くなった蟻が増えてくるぞ。こんなの、購入時にはぜったいいなかった。蟻はバナナみたいに追熟するのか? それとも、やはり生きているのか?

硬い皮膚は蟻、牙も蟻、もえる瞳は原始の蟻


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