+home  +contents 

Samplerのこと、あれこれ

◆はじめに
クロスステッチを始めてから、インターネットで様々なデザインのクロスステッチを見て、図案を買って刺しているうちに、気になってきた"Sampler"。Samplerって一体何?と調べていくと、とても長い歴史のあるものだということがわかってきました。
最近知ったことをごく簡単にですが、まとめました(まとめたと言うより箇条書きですが・・)。今後も少しずつ調べていこうと思います。

最新の追加項目には↓NEW!がついています。




◆Samplerのごくごく簡単な歴史
辞書でSamplerという言葉を調べてみると、
A decorative piece of cloth embroidered with various designs or mottoes in a variety of stitches, serving as an example of skill at needlework.
(The American Heritage Dictionary of the English Language,ThirdEdition)
とあります。
刺繍の歴史は非常に古く、古代エジプトには刺繍を職業とする人々がすでにいたそうです。「刺繍見本」は、記録に現れるずっと以前から存在していたと思われてます。

以下、Betty Ring "GIRLHOOD EMBROIDERY : American Samplers & Pictorial Needlework"によると、サンプラーと女性の教育の関係は深く、産業革命前までのヨーロッパ社会では女性の教育で最も重要なことは裁縫の技術でした。また、裁縫は必要不可欠な技術であるだけでなく、読み書きを習う機会のない女性達にとって芸術的な表現をできる手段でもありました。
1枚の布に様々な刺繍技法をほどこす"Sampler"が正式な教育として扱われ始めたのは、おそらくルネサンス初期のフランスの宮廷や女子修道院で、それをSamplerと呼ぶようになったのもその頃だと思われます。それが16世紀にヨーロッパ中に広まりました。
多くのサンプラーは刺繍の技能のある大人の女性の監督のもとに、子供たちによって作られました。初期のサンプラーはBand Samplerと呼ばれる、幅がせまく長い布に様々技法の刺繍(stitch)がほどこされているものでした。
17世紀のサンプラーは、イギリス、オランダ、ドイツのものが数多く残っています。17世紀が進むにつれ、アルファベットや作者の名前、日付、道徳的な文章がバンドサンプラーのパターンの中に入るようになりました。サンプラーを作ることが盛んになるにつれ、地域ごとに特色のあるものが作られるようになります。また、このころのアメリカのサンプラーはあまりなく、18世紀以降イギリスからの移民が盛んだった頃に多く作られるようにななります。(ここまで前述のBetty Ring の本より)




◆アメリカのサンプラー
アメリカでも、Betty Ringによると多くのサンプラーは学校で教えられ作られたものだそうです。アルファベットや宗教的な文の1節がしばしば使われ、またとても多くのサンプラーが残っているのはこのためです。当時女の子を学校に行かせることができることはその家庭の誇りでもあり、学校で少女が作ってきたサンプラーはしばしば額に入れて飾られたそうです。
また、教える人によって特徴ある図案のサンプラーができました。ほとんどの場合、学校で少女達に刺繍を教えていた女性達の名前などの記録は残っていませんが、似たような図案のサンプラーは同じ地域、同じ学校で作られたものであることがあります。アメリカのサンプラーは、後世に名前はおろか存在していたことすら記録に残らなかった女性達がある時代に生き、コミュニティーにおいて重要な役割を果たしていたことを証明する歴史的な資料でもあるのです。


Sep/14/2000
参考文献
Ring, Betty. Girlhood embroidery : American samplers & pictorial needlework, 1650-1850 : New York : A.A. Knopf, 1993.



◆Historic Sampler と Designer's Original Sampler
このようにして100年以上も前に刺繍されたサンプラーの中にはすばらしいものが沢山あります。これら、古いサンプラー(アンティークサンプラー)を元に図案を起こし、新たに作ったものをHistoric Sampler、Reproduction Sampler等と言います。元になるサンプラーは美術館所蔵のものであったり、個人のコレクションであったり様々です。完全なReproductionのものから、適当な大きさやデザインに変えられているものまで様々なものがあるようです。古いサンプラーを復元したり、元にして作ったサンプラーはHistoric Samplerと総称されるようです。また、アンティークサンプラーの雰囲気を持つものだけでなく、新しい現代のサンプラーが沢山作られており、それらはデザイナーのオリジナルサンプラーということになります。色々なステッチや糸が使われているものもあれば、シンプルなクロスステッチのみのものもあります。インターネット上で、沢山のデザイナーや、サンプラーを取り扱うお店のサイトを見ることができます。このページの下の方にあるサンプラー関連リンクもご覧ください。
Dec/15/2000:一部書き換え



◆Samplerの本
私が持っているか、図書館や書店(!)で読んだり見たりした本です。
  • GIRLHOOD EMBROIDERY : American Samplers & Pictorial Needlework, 1650-1850.....by Betty Ring
    この本は2冊組のハードカバーです。タイトルどおりアメリカのサンプラーとPictorial Needleworkについてとても詳しく、これらが地域ごとに分類され歴史、特色などが書かれています。この本はサンプラー・Pictorial Needleworkを通してその時代を探ることに目を向けており、刺繍の技法等に関しては特に記述されていません。図案もありません。刺繍はほとんど全てカラーだったと思います。+Wyndham Needleworksに本の写真と説明(英語)があります。初版1993年発行。
  • Samplers & samplermakers : an American schoolgirl art, 1700-1850.....by Mary Jaene Edmonds
    1991年11月から1992年2月にLos Angeles County Museum of Artで行われた展示にともない発行された本のようです(同美術館発行)。サンプラーとそれが作られた時代の人々に焦点が当てられていますが、サンプラーの説明欄には使われているステッチの種類なども書かれています。図案はありません。写真は主にカラーです。図案はありません。かわいいサンプラーが沢山載っているのですが、絶版のようです。
  • Samplers from A to Z.....by Pamela A. Parmal
    2000年3月から7月まで Museum of Fine Arts, Bostonで行われた展示に伴い同美術館から発行されています。写真は全てカラーで、各ページごとにAからZで始まる言葉に沿ってサンプラーの説明や歴史、使われている刺繍テクニックなどについて書かれています。図案はありません。Amazon.comやWyndham Needleworksで購入できて(2000.9)手に入れやすいので、おおまかなサンプラーについての知識を得るのに手軽でいいと思います。
  • 刺繍のサンプラ−〜アンティ−クコレクション〜 ..... 日本ヴォ−グ社
    日本に置いてきてしまったので手元になくてタイトルにちょっと自信がないのですが・・。アメリカのサンプラーをコレクションしている人の本です。オールカラー。文章が少なく、サンプラーについての詳しいことは知ることができませんが、写真がきれいで日本語なのでおすすめです。図案はありません。
  • Historic Samplers.....by Patricia Ryan and Allen D. Bragdon
    美術館や個人所蔵の、18世紀から19世紀初め頃までのアメリカのサンプラーの写真が30あり、全てチャートがあります(本の表紙のサンプラーのチャートは無い)。本を開いて右ページにサンプラーの写真、左ページにそのサンプラーについての簡単な由来が書かれ、次ページからチャートと刺し方などの説明がある。由来などの説明つきのチャート集と言ってもいいかも。写真はきれい見やすく、刺繍の技法の説明もわかり易い。アルファベットのみなど地味めな図案がほとんどなので刺すことを目的に買う場合は好みがあると思います(私は好きな方)。チャートは白黒、その他のページは全てカラー。R&R ReproductionからもでているFanny Motsのチャートも載っていました。(すでに絶版のようです。)
    Dec/29/2000



  • ◆Sampler Link
    お店、リファレンス、デザイナーのサイトなどサンプラーを刺すのに参考にるサイトで、私のお気に入サイトのリストです。少しずつ増やして行こうと思います。
    買物ができるところでは、実際に買ったことがあるわけではありませんのでご了承ください。

    +The Scarlet Letter

    Reproduction とオリジナルサンプラー。数が多く、美術館の展示を見ている気分になります。。ほとんどのものはキットで販売されていて、シルク糸とコットン糸を選べるものが多いです。Reproduction Samplerには由来などが詳しく書かれていて勉強になります。サンプラー関係の本や刺繍用品や、アンティークもあります。
    +Wyndham Needleworks
    数多いデザイナーのサンプラーを取り扱っていて、センスのある品揃え。ほとんどは図案のみで売られています。Historic Neddlework Guildなど、他のサイトでは扱っていない雑誌も定期購読せずに買えます。サンプラー関連の本、刺繍用品。更新も多いし、評判も良いようです。
    +The Essamplaire
    Reproduction とオリジナルサンプラー。ここもReproductionものが沢山!Scarlet Letterには pictorialなものも多くありますが、ここはアルファベットやモチーフなどを並べたものばかりで、Reproduction Samplerでも色々な種類のものがあることがわかります。
    +Museum of Fine Arts, Boston
    ボストン美術館では、2000年3月25日から7月23日まで"Past Common Threads" というexivisionをしていました。今でもWeb上で200点以上のサンプラーを見ることができます。ホームページに入ったら、「Exivisions」 → 「Past」へ進むとリストが出てくるので「 Common Threads: A Showcase of Samplers」を選んでください。
    +Needlework Samplers
    アンティークサンプラーについてのあれこれが書かれています。サンプラーって何かなと思ってネットで調べて一番最初にブックマークしたサイト。"Samplery"のコーナーですごく素敵なReproduction Samplerのチャートが3種類販売されています。
    +cfisch 's Home Page
    アンティークサンプラーについてのあれこれが書かれています。ページのトップには"Sampler Site"と書かれています。(どちらが本当のタイトルなのかわかりません。)トップページの一番上にあるサンプラーの画像が時々変わって、横にそのサンプラーの由来などの説明が書かれています。
    +Hoffman Distributor
    小売はしていませんが、膨大なチャートのデータベースを利用できます。「Sampler」で検索すると色々見れて楽しいです。
    +Homespun Elegance
    デザイナーのサイト。オリジナルとReproductionサンプラー他。
    +Homespun Samplar
    デザイナーのサイト。Shopもかねています。オリジナルサンプラーと、他のデザイナーのサンプラーも扱っています。
    +Chartmakers
    The Goode Huswife's と Barrick Samplers、Elizabeth's Gardenの、Shop兼デザイナーのサイト。オリジナルとReproductionサンプラーなど。
    +The Prairie Schooler
    デザイナーのサイト。オリジナルのかわいいサンプラーが沢山あります。
    +Em-Li's
    デザイナーのサイト兼ショップ。Reproduction系のサンプラーを沢山取り扱っています。サイトが見やすく、チャートの説明があるものもあり気に入っています。メールオーダー用のカタログは白黒で画像はほとんどなく、Webで十分だと思います。(2000.12.17)
    ↓NEW!
    +eGroups HistoricSamplers
    一般に公開されているeGroupです。
    ↓NEW!
    +crossstitchcorner.com
    デザイナーごとに分かれている掲示板の中にReproduction Sampler の掲示板もあります。



    これは私が個人的に調べたものです。間違っているところがあるかも知れません。ご指摘などありましたらご連絡いただけると幸いです。 Mail→lumiere@luna.email.ne.jp