秋も懲りずに花火だ

赤い火 青い火

夏が去ったら花火が終わりだという人は、実に甘い!
春夏秋冬、そこに花火があがる限りシーズンは続くのだ。もちろん、花火好きに遠いも近いもない。
そ〜れ、
赤い火青い火が呼べばどこでも行くのだ(飲みに行くんとちゃうで)。
富士を横目に箱根を越えて、お江戸も過ぎて、茨城県は水戸の手前、霞ヶ浦の北の端、土浦まで、ハイ、わからない人は地図を出す!

土浦全国花火競技会 2004

毎年10月の第1土曜日(2004年は10月2日)に開催される「土浦全国花火競技大会」は、73回を重ねる伝統のある花火競技大会で、秋田「大曲」の大会と並ぶ日本の2大競技大会とされている。花火師にとっては、まさに勝負をかけるにふさわしい格式の高い大会である。
「10号玉(いわゆる尺玉)」、ユニークな形を競う「創作花火」、「スターマイン」の3つの部門で競い合う。その間に3箇所からの連続上げの「ワイドスターマイン」などがあり、打ち上げ総数約20000発。本当にすごいのだ。

道 中

改札出て、突き当りから見た人並み名古屋から行こうと思えば、もちろんのこと日帰りは(徹夜のドライブがたまらなく好きという変わり者でない限り)無理である。
土浦に向かう常磐線の始発駅である、上野駅そばのビジネスホテルに宿を取っての泊りがけである。
上野駅で惣菜と握り飯、すしなどの晩ご飯と、赤ワインと酒を買い込む。本来ならビールと行きたい(無類のビール好きの姉御殿がメンバーに入っているので)ところだが、花火会場でのトイレ事情を考えると、強力利尿剤ビールは、電車の中用の1本にして、やめにしたのだ。
上野を発車したとき(3時過ぎ)は余裕の乗車率だったのが、茨城県に入ったあたりからどっと人が乗り込んで、「牛久」あたりで通勤電車並みのぎっしりさになる。
土浦で降りたときには、押し合いへし合い状態。いっしょに行ったいった「姉御」をはじめ「追放1号」などとも、降りたとたんに離れ離れになってしまう。
改札を出て突き当たり右の階段を下りる「徒歩組」、左の渡り廊下を行く「バス組」に人波は分かれる。もしはぐれたら、左の渡り廊下のどこかで待ち合わせするのが良い。
降りたとたん電車の中の利尿剤が作用してトイレに走る。駅前にあるホテルのトイレを借りた。
バス乗り場は100メートルぐらいの列ができているが、人捌きがよいのと、バスが切れ目なしにやってくるので、意外に早く乗車できる。しかもバスは専用の高架道路を走るので、10分そこそこで会場に着く(片道420円)。歩けば30〜40分であろう。

会 場

高架バス専用道を降りてすぐバス専用高架道路が、打ち上げ会場の川にかかる橋に合流するところで、花火会場のバス停がある。橋の上からは見物不可(ベニヤ板で打ち上げ方向がふさがれている)になっている。
屋台が並ぶ前を通り過ぎて、土手下の畑を通る道端にすでに相当な人が場所を取っている。土手を越えて河原の一般席は、昼から場所取り開放されるが、すぐに埋まるらしい。
そこで見るためには、東京なら11時ごろの電車に乗らないといけないが、いったん場所をとって「牛久」に戻って、地ビールレストランで昼ごはんという裏技もあるらしい(地ビールつながりの「
みゅうさん」情報)。
われわれは、帰りのバス停までの便と、川原の土手までの人波にめげたのと、腹がへってきた(5時前なのに)のとで、畑道にすぐのところで宴をはることにした。
今年の高温傾向が残って、10月にしては汗ばむほどの暖かさ。惣菜もワインもすぐなくなって、後は暗くなるのを待つばかり。ただ、例年はスタジャンやフリースベストあたりが必要なほど夜は冷える。
そこは夏の花火と思ってくると、花火のあいだ中、震えながらトイレを待つ長い列の中に居るはめになるので注意が必要である。
そうそう、トイレ事情について言っておこう。右の写真の一番左手にトイレがいくつか並んでいるのだが、30分は待つ覚悟がいる。しかし、列に並ぶことによって、打ち上げ場所に近づくので、花火はよりはっきり見ることができて退屈しないそうだ。
ちなみに肝心の花火は、右の写真の正面に創作花火、やや左が10号玉、写真の切れたさらに左からスターマインが上がる。

 

10号(尺)玉

競技会は、10号玉の打ち上げから始まる。高く上がって、胸に響く振動と大音響とともに、色を変えながら大きく咲く花。物量勝負のスターマインもいいけれど、「やっぱり花火は大玉にとどめを刺す」と思っている花火ファンは多いはず。
完全な球形(まん丸ということ)、パッといっせいに火がつくこと、色変わりの鮮やかさ、最後はあとを残さず(しだれのように例外はあるが)さっと消えるいさぎよさ。
このあたりが採点の要素になるということだ。
亭主の目も口も花火に合わせて大きく開きっぱなし。とにかく、競技会だけ合って気合入りまくっている、色が本当に鮮やかである。
1社4発。
このように枝垂れてくるのを「かむろ=禿」というらしい。
そう、昔、「おいらん=遊女」の見習いをしていた子供のおかっぱの髪型に似ているから。
10号玉の連続上げの中でもひときわ観客の歓声が大きいところ。
3色の色変わり(三重芯)が見事な1発。
パッパッパとリズムよく変わるところが見どころ。
ワイドスターマインと呼ばれる3箇所同時連射では、10号玉が連射される。
ほとんどの花火大会では、高価な10号玉は、間を置いて単発で上げられるが、一つが消える前に重ねてあげられると本当に豪華である。しかも色や種類が計算された演出で上げられる。
期せずして会場全体から拍手と歓声が沸き起こる。
この花火大会で、競技会を離れて演じられる花火の白眉である。

 

スターマイン

スターマインもまた、通常の花火大会では1回しか見られないだろうという工夫を凝らしたものが、20回以上もあがる。とにかく色と形、上げられる組み合わせが驚くほど多様で、見るものを飽きさせない。「ただ数だけ」という単調なスターマインとは、一味ふた味どころでなく、軽く十味くらいは違う。

まるで大輪のダリアのようだと、亭主が一番感動したスターマインのシリーズ。
これは本当に珍しくも美しかった。賞をとったかどうかは、花火のタイトルを忘れたため分からないが、来年、どこかの花火大会で再会したいと切に思う。
スターマインの最後は、しだれ花火の一斉打ち上げで、どんどん高く打ちあがり、回りを昼間のように照らし、滝になって空中から降ってくる。
右は「ザーッ」という音とともに滲んだような余韻をもたらす最近の流行の花火で締めくくっている。

 

ワイドスターマイン(10号連射)

   
圧巻である。何せ10号玉を使ったスターマイン(といっても10号は、コンピューター制御ではなく手上げだそうだが)。大音響と色彩の競演。
最後は、昼間のような明るさになる白色花火の一斉上げ、それがしだれて「空中ナイヤガラ」といっていい状態になる。背後にさらに10号玉が鮮やかな絵を描く。
   

帰り道

行きのバスは客が分散するため流れが良いが、帰りはそうはいかない。会場の観客が一斉に動きだすからである。帰り楽したければ、バス停の近くに陣取るに限る。川原まで行った場合は、歩きを選択するほうが良いかもしれない。とはいっても、しばらくは少しも進まないと思うが。
もちろん、あっという間に仲間とは離れてしまうので、同じバスに乗ろうとは思わないことだ、どうせ行き先は一つなのだから。
9時過ぎに終わって、土浦駅に着いたのは9時半を回ったあたり。臨時列車も出ていて、3駅か4駅立っていても、茨城県を抜けて千葉県にはいれば、かなりすいて座ることも可能になる。上野までは70分、1110円である。贅沢をしたければ、一月前に特急の指定席を予約しておくことだ。

もっと見たい、各部門の優勝者はといった込み入ったところが知りたい方は、土浦市のホームページをご覧いただきたい。見ればあなたも花火の「薀蓄」が語れるようになること請け合い。
来年も行ってもいいかな〜
いいとも!