志賀高原

東館山山頂からジャイアントスキー場を望む

志賀高原とリフト

亭主のメインゲレンデというか、一番よく行くスキー場といえば、長野県志賀高原ということになる。晴れた日にスピードに乗ってすべる楽しさをはじめて知ったのも、このエリアの一角「横手山」だった。
志賀高原にかかっているすべてのリフト、ゴンドラ、ロープウェイに乗るというスタンプラリー「リフトチャレンジ」にはまっていたこともある。初めて挑戦した1985年当時はその数83本、今ではほぼ絶滅したシングル(一人乗り)リフトが相当あり、平行して3本架かっていれば、同じコースを3回滑らないといけなかった。しかし、それより厳しかったのは、スキーを担いで往復小1時間かけ、「石の湯」というスキー場に架かるたった1本のリフトに乗りに行かねばならなかったことだろう。
現在は、リフトの数も70本ほどになり、昔シングルが架かっていたところは高速リフトに架け替わり蓮池から発哺温泉へ渡るロープウエイも廃止され、石の湯スキー場もコースから外れた(あるいは閉鎖されたのかな)。どんなにがんばって、かつ運がよくても(運は大切、風でリフトが止っていることがある)2日半かかっていたのが、今なら普通に2日で達成できる。人間は楽できるほうに流れされていくということである。
ちなみに達成の暁には、亭主が始める前の年までは、オリジナルトレーナーとアクリル楯(志賀高原の地図と、すべてのリフトに乗ったことを証明する云々が英語で書かれている)、亭主のころには、トレーナーの代わりにTシャツとアクリルの楯、現在はピンバッジとTシャツのみ。亭主は、石の湯が外れたあたりで「価値が低くなった」と感じてやめてしまった。
それにに横手山と奥志賀エリアはスノボ立ち入り禁止なので、スキー限定のラリーとなり時代錯誤なものとなってしまったといえる。

志賀高原というのは、単一のスキー場ではない。11の中小のスキー場が相互につながりあって大きなスキーエリアを構成している。どこにどんなスキー場があるのかという詳しい地理関係は、志賀高原のホームページを参照してほしい。各スキー場は、スキーで滑り込んでいけるほか、「スキーシャトル」というバス(長野電鉄バス)でも結ばれていて、スキースノボを抱えてさえいれば自由に乗り降りすることができ、異常にゴンドラが混んでいる場合(20分待ちとか)、風でゴンドラが運休しているときなどの移動手段として大変便利である。

志賀高原のパノラマ、東館山から、西館山、一の瀬ダイヤモンド、焼額の各スキー場を望む。これらすべてはつながっていて、一筆書きでわたっていける。遠くに見えるのは、妙高、黒姫などの山並み。

いわゆる脳内麻薬っていうやつ

志賀高原は、およそ1400メートルから2200メートルの標高なので、いわゆる「山の天気」であり、晴天に出会うことはシーズン中に何度もない。
現に、このパノラマ写真を撮った2日前は、10メートル先も見えないほど猛吹雪で、昼ごはんの後、まったく滑る気がせず、本を読みながら「高天ヶ原ホテル」の食堂(豚カツが揚げたてで美味しいとのこと)でぐずぐずしていると、お友達たちが現れ、さらに時間をつぶすことになり、あっさり3時過ぎに宿に戻っている。
吹雪の日のスキーヤーの根性のなさは、今更ながらあきれるほどだ。そんなに寒さと雪が嫌なら来なければよいのだが、たまさかの晴天の下で味わう爽快感、高揚感が、麻薬のように脳内を満たすから仕方がない。スキーヤーは、皆この晴天のゲレンデをぶっ飛ばす快感の中毒患者に過ぎない。

焼額第2ゴンドラ沿いから、一の瀬を見るスキー場の集合体である志賀高原は、同じ長野県の白馬にある八方尾根や北海道ニセコと違って、標高差800メートル、長さ数キロのコースを、一気に滑り降りるという豪快さはない代わりに、それぞれのスキー場で個性があり、いろいろな楽しみ方ができる。
たとえば、天気がよくない日は「フードつきリフト」があって風当たりが弱い「西館山」か「焼額山」、ロングコースなら「奥志賀」「焼額」「東館山」、景色を楽しむなら「横手山」「渋峠」、初心者を連れてきてしまったら「発哺・ぶな平」というような具合。
逆に好きではないところというと、「高天ヶ原」か。マンモススキー場と呼び名がついているのだが、広さも長さもそこそこで、コースの半分は右傾斜、しかも寒いので、亭主はできるだけ通らないようにしている。

 

西館山、フードつきリフトを降りたところ。樹氷が美しい。

高天原、寒いのでたいていパスする

発哺ぶな平、傾斜がゆるいので初心者がいっぱい

 

 奥志賀、第1高速リフトからの急斜面。整地されていると非常に気持ちいい。  寺子屋、横手山に次ぐ志賀高原最高点。穏やかな日でないと来られない、風が強いので軽い雪が飛ばされ積雪不足であることも多い。  一の瀬ファミリー、リフト降り場の1本杉、遠くの山並みが美しい。

奥志賀~焼額で遊ぶ

奥志賀~焼額~一ノ瀬ダイヤモンドをめぐる「サーキットコース」をぐるぐる回る。
奥志賀焼額間は連絡が面倒なので連続では回らないが、まあこうだ。

奥志賀第2高速リフトを一度降りる、同じ第2とその上の第3を乗り継いで一気に降りる。
もう一度2つのリフトに乗って今度は左手奥志賀ゴンドラ下スラロームコースを降り(整地してあれば何度かスラローム一気を繰り返す)。...
ゴンドラ降り場さらに左の第4リフトで山頂へ行き、非常に煩わしい連絡路をスケーティングして、焼額第1ゴンドラ降り場。
そこを通り越してパノラマインコースをプリンス西館まで降り、高速第2リフトから焼額第2ゴンドラ(風に弱いのでよく運休する)であがり、今度はパノラマアウトコースから途中右に折れて「白樺コース」を一番下まで行って(昔はそこからリフトがかかっていたが廃止)細い林道をたどり、終着地点から右手も「山の神第2リフト」で一ノ瀬ダイヤモンドの短い斜面を降りて登って、山の神第2リフト沿いのコースで焼け額第2高速へ、降りたら第2ゴンドラルートの途中を左に行って連絡路をごそごそ進んで、焼額第3高速リフト(フード付き)、コース最後を頑張って第1ゴンドラで上がって、ゴンドラ下のコースの途中にあるわかりにくい標識から「奥志賀連絡コース」で奥志賀ゴンドラ~奥志賀第2高速の乗り場でゴール。
圧雪してあれば2周はできる。奥志賀と焼額は別々に周回してもよい。

奥志賀第2第3高速リフトでスタート 第2から1回、第3から1回一気降り 第3からゴンドラコースへ
難関、奥志賀から焼額へ歩く 焼額第1ゴンドラ降り場を過ぎて パノラマインコース
焼額第2ゴンドラからパノラマアウト
コース~白樺~一ノ瀬ダイヤモンド
焼額第3高速(フード付き) 焼け額第1ゴンドラ途中左折して
奥志賀へ


奥志賀のプチホテルEpi(エピ=フランス語で麦の穂)
お一人様OK、1泊15000円ほど

KATAYAMAコース

志賀高原の取っつきであるサンバレーから、バスなら小1時間、滑り込めば、丸池→蓮池ジャイアント発哺東館山一の瀬ファミリー一の瀬ダイヤモンド焼額山とたどって、1時間半ほどでたどり着く奥志賀を目指す。
この間「一筆書き」つまり同じコースを2回滑らずに行けるところが、スキー場集合体である志賀高原の楽しみ方の一つであるし、志賀高原に来る人々の標準的な楽しみ方だろう。
奥に見える急斜面と手前長い緩斜面、どちらも疲れる焼け額山山頂には、「この先奥志賀高原はスキー専用エリアです、スノーボードは立ち入れません」と看板がある。つまりスキーヤーの保護区である。

いまやスキーヤーの多くは中高年のオッサン・オバハン、つまり世間といわずゲレンデといわず、傍若無人の限りを尽くしているやからなので、保護はまったく必要ない。本当は隔離が必要なくらいである。
しかし、中高年は若いニイチャン・ねえちゃんに比べて格段に金を持っている。スキー場としても、これを見過ごすわけにはいかず、あれこれとチューコーネン(漢字よりカタカナがふさわしい)をひきつけるための媚を売り、罠を仕掛けているわけである。
チューコーネンを誘引するものは何か、一といって二がないのが「美味い飯=えさ」である。
一人でレストランに入ってコース料理を食うことができない根性なしもいるが、亭主は平気である。
右→の斜面を滑ったところに建つ「奥志賀高原ホテル」でのコースランチを目指すのである。

このホテルのフレンチレストラン「現代」には、何年か前まで「北村シェフ」という凄腕の料理長がいて、飛び切りのセンスと深い味わいに満ちた料理を供していた。今は、往時のレベルの高さはないが、それでもスキー場で食べる料理、ではなく、れっきとしたホテルフレンチである。

もちろん、スキーブーツは脱がなくてはならないが、スキーウエアは、雨合羽のような安物から、上下で10万円するような上物であるとを問わない。
前菜(パプリカピーマンのムースが美味かった)、肉か魚のメイン(亭主の選択はは、黄金豚のソテー バジルソース)、デザート、3500円・税サ別なり。
カレーが1000円のゲレンデ食と比べて、高いのか、リーズナブルなのか、結論は人それぞれかもしれない。

スキー場ーでこんな「エンゲル係数(家計に占める食費の割合のことで、高いほど貧困だとする、19世紀経済学の指数)」を上げる遊び方をするのを、亭主はひそかに「KATAYAMAコース」と呼んでいる。そういうことに、それこそ命をかけそうなお人(雌のチューコーネン)がいるのだ。

こんな贅沢な昼ご飯はいらない、という普通の方には(といってまずいメシはゲレンデとはいえ論外な方)、奥志賀高原ならここ。

 グランフェニックス、和、洋食、ラウンジカフェが充実。奥志賀高原ホテルとはリフトを挟んで向かい側。スポーツブランドのPhoenixのアウトレット店も入っている。室内プールもある高級ホテル。くつろげる。 サンクリストフ、奥志賀ゴンドラの隣、志賀高原スキースクールの名門「杉山スキースクール」の拠点でもある。 焼きたての自家製パンが充実、ただし昼前には売り切れている可能性がある。コーヒーが安い。

このほかに、サンバレー~焼額までの巡回ルート途上では、一ノ瀬の宿街(バス通りの1本上の道)には3種のカレーとナンお代わり自由という本格インドカレー店がある。ホテル「ジャパン志賀」1階にあるKamoshikaで、平日以外ではとても混んでいる。連休の昼には30分は待つ覚悟がいる。 肉好きの亭主としては「マトンカレー(辛口)」がお勧めである。チキンカレー野菜と豆のカレーもよい。


熊ノ湯・横手山エリア

スキーの交友範囲の広いお友達に斡旋をお願いして、「はなのきスキークラブ」という団体のツアーにもぐり込んだことがある。
「1級を目指すコース、こつこつ小回りコースとかのレッスンコースもあったけど、ゆったりツアーコースにエントリーしておいたから」という言葉に「そこでいいぜ、ありがとよ」と元気よく答えた。

場所は、熊の湯・横手山エリアである。蓮池など中心エリアからはバス(シャトルだから無料)に乗らないと行けない志賀高原の中の独立エリアである。

朝一番の熊の湯、整備したてのコースが呼んでいる「整備された平らなコースを滑る」「休憩の提案があれば決して断らない」「スキーは遊びだ」というチューコーネンのスキー3原則に従うものと、「ゆったりコース」という名称から思うのは自然だろう。
しかし、それはとんでもない誤解だった。とにかく、休まない。楽なコースとハードなコースがあればハードな方へ行く。そして、休まない。やっと、と思うころに昼飯。
「いやぁ、ゆったりと聞いていたので、もっと休憩しながら滑るのかと思ってました」との言葉に「いつもより、ゆったりですよ、お昼にビールも飲んでるし」とのお答え。普通のチューコーネン・スキーには、昼のビールは、寝るときの枕ぐらい、つき物のはずなのだが、どうやら違うらしい。
このグループ、実は、「準指導員」とか「指導員」「テクニカル」といったスキー資格の最高位にランクされる技術を持った方々の集まりだったのだ。そう、「ゆったり」の意味は、「もうレッスン・トレーニングの必要がないので、ゆったりしている」、そういうことだったのである。

ああ、それにしてもいい日である。空は青を通り越して、サングラス越しに見ると黒いほど。
熊ノ湯は硫黄の臭いがバンバンする本格的温泉街である。長くはないがけっこうガッツがいるコースがあるので「練習」死体というスキーはスポーツだと考えている人にはいいところである。
下の写真(しばしば志賀高原のポスターになっている)円錐形の笠岳を有し、ポールレース練習場がある笠岳スキー場が隣接している。

熊の湯最上部から笠岳とその上の有明の月
クリックすると拡大、月が見えるか

 

この快晴、帰る日のもの。「滑る日は吹雪、帰る日は晴れ」とは、スキーヤーなら誰しも実感する言葉。ま、今回は午前中いっぱい滑れるのでよしとしよう。
左の高い山「横手山」は山頂から富士山が見える、志賀高原最高の絶景ポイントである。しかも山頂には「日本一高いところになるパン屋」がある。といってもちんけな店ではなく、右→のように食事もでき、宿泊もできるちゃんとした宿である。
「ジャンボ***が焼きあがりました」と時々案内が入る。みると、笑いが止らないほどの巨大パンである。誰がどうして食うのだろう、一度一部始終をビデオに収めたいものだ。

横手山とそこから長野山梨県境をまたぐ渋峠スキー場へは、熊ノ湯から延々と林間道を滑ってゆくことができる。
横手山は一番下にかかるリフトは異常に長くて平行移動状態なので辟易するが、山頂から中腹にかかる高速リフト乗り場までのコースは、写真のように天気がよければ大変快適である。横手山はコース数が少ないので隣の渋峠と行き来しながら過ごすのがいいだろう。
渋峠には、建物の真ん中に県境が走るという宿がある。外壁にも県境が書いてあるので記念写真もいいだろう。
ただし2000メートルの高さにあるので、寒いときは容赦なくマイナス20度を下回るのでそれなりの覚悟がいる。

暇つぶしとお土産に

スキーに行って晴れた日に滑り続けていると喉が乾く。滑る気の起こらない吹雪の日は時間をつぶさなくてはならない。そんなときにはこれがなくてはならない。

地ビール3本セット、 IPAの一杯

志賀高原の属する長野県山之内町の酒蔵(玉村本店)が醸造している地ビール。左からペールエール、インディアペールエール(IPA)、ポーター。この順番で色が濃くなる。どれも香りと味わい豊かな一品である。
焼額スキー場の「プリンスホテル東館ダイニング」、奥志賀高原スキー場「サンクリストフ」、一ノ瀬ダイヤモンドなどで飲むことができる。飲むことができる。
お土産に買うなら、国道を湯田中まで下りてきたところにある「道の駅北信州やまのうち」で。ほかに720㎖の個性的なビールなど様々な種類が出されており、どれも秀逸である。
飲むときはくれぐれも冷やしすぎぬように、キンキンに冷やすと香りが立たず味も薄れる。特に一番右のポーターは黒ビールなので15度ぐらいが美味しいと思われる。
グビグビ喉越しのビール飲みはやめて、中高年たるもの、ゆったりゆっくり味わってほしい。