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修羅の一族
MAHIRO MEMORIES
「ボビシの理由」の巻 |
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ボビシ君。
暴力を振るうわけでも、何か言うわけでもないのに、
近くに寄っただけで女子を泣かす事ができる、
ある意味、最強のスティンガー。
初めて買ったファミコンソフトは「カラテカ」。
(しかも、その時、彼はファミコンを持っていなかった)
アントニオ猪木のテーマの
「猪木!ボンバイエ!」を、
「猪木!お前!」
だと思っていたボビシ。
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しかし男子達は何故、そんなボビシを、普通に友達として迎え入れていたのか。
今回はその事について触れてみたいと思います。
しかし、
ちょっとブルーになる話です。
少なくとも楽しい話ではありません。
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小学校5年の1月ごろ。
ボビシの父ちゃんと母ちゃんは別居しました。
ボビシは父ちゃんと一緒に暮らすこととなり(ボビシは一人っ子)、母ちゃんが家を出て行きました。
ボビシはその事を逐一、
「父ちゃんと母ちゃんが大喧嘩した」
「母ちゃんが出ていった」
「母ちゃんがテレビを取りにきた」
など、マヒロ少年に報告していました。
そして、2月。土曜日。
普通に授業をしていると教室の引き戸をノックする人がいます。
先生が出てみるとボビシの母ちゃんでした。
「母さん来ているから」と先生に言われ、ボビシは廊下に出て行きました。
物好きのマヒロ少年が教室の後ろの引き戸から廊下を覗いて見ますと、ボビシとボビシの母ちゃんが小さな声で立ち話をしています。
ボビシを廊下に残したまま、授業は再開されました。
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そして、日曜日が過ぎて月曜日。
朝、登校中。
うっすらと雪の積もった校庭。
そこを走ってくるボビシの姿があります。
ボビシは一目散にマヒロ少年に向かって走って来て、言いました。
「俺の母ちゃん、死んだ」
それは「ドラクエ、クリアーした」とか「ファミコン買った」とか、
そういう、ごく日常的な出来事を言うかの様に発せられた一言でした。
「昨日の午前2時に、俺の母ちゃん、死んだ」
繰り返すボビシの表情には、特に何の変化もありませんでした。
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ボビシの母ちゃんの葬式が終った次の日、
ボビシは何事も無かったかのように日常の言動に戻っていました。
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死ぬ前にボビシに逢いに来たボビシの母ちゃん。
死因は僕達には伏せられました。
今、考えると、その死因が何であったのか、容易に推測できます。
その後、先生に聞いた所によると、
ボビシは葬式の席で「母ちゃん」と母親の名を呼んで泣きつづけたそうです。
あんなに普通みたいにしていたボビシ、
どんなに明るく振舞っていても、やっぱり心では泣いていたんだな。
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でも、
でも、
でも、
ボビシはやっぱり
女子には嫌われつづけました。
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ね?ブルーになるでしょ?
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