修羅の一族
MAHIRO MEMORIES
「S903文書-予告編-」の巻
予 告 編
数々の修羅場を創り出してきた

S君。

彼はまさに、修羅の星の下に生まれついた男。

私はここに、新たなる事実を報告しなければなりません。

小学校を卒業し、中学では違うクラスになった私とS君。

中学校での彼の行動を、私はほとんど知る事が出来ませんでした。

しかし。
ここに、一冊の文集が存在します。

中学校卒業文集です。

当たり前のことですが、ここにはS君の文章も掲載されています。

そして、彼の文章には、衝撃的な一文があるのです。
タイトルは
…――過ぎし日のSelfishness

Selfishness=自己本位

修羅の男の自己本位。
まあ、それは良いとして、
問題は以下の文章です。
中学校生活三年間、いろいろな事がありました。思い出
として心に残る事は小学校六年間よりむしろ多いかも知
れません。それほどいろいろな事があったのです。



注意:傍線は「小説マヒロ」編集部にて書入れ

小学校時代、アレだけの事件を何度も起こしておきながら、
中学校生活三年間について、


「心に残る事は小学校六年間よりむしろ多い」
と言い切ってしまうS君。


中学校生活3年間の間に何があったのか。
何が彼の身を襲ったのか。


小学校時代の数々の事件も、

ローマ字を習った時に
自分のイニシャルである「SM」
喜び勇んで持ち物に書いていったS君。
サッカーや野球のチーム分けをする時に、
上手い人から順番に指名されて、所属チームが決まって行くのですが、
毎回、絶対最後まで残ってしまうS君。
おじいちゃんに毎日せがんで、「大事に使えよ」と、
やっと貰ったデジタル腕時計を、
貰ったその日に、水につけてしまい、壊してしまったS君。
放送委員になったとき、
早口で何を言っているのか分からないと、
学校中から苦情が出たS君。
学校から分けてもらった兎に「優太郎」と名を付けて育てたら、
メスだった事に気づいたS君。
物の重さの授業で、
ひとり代表して、着ている上着の重さを量った時、
スチームのきいた暖かい教室だったにもかかわらず、
カーデガンやトレーナーや運動着やシャツやチョッキや腹巻やランニングや、
それこそ、「野球拳でもやるのか?」ってくらいに何枚も何枚も着込んでいて、
量りに全部乗せたら、2キロまで量れるはずの量りが振切れ、測定不能だったS君。
絵画教室、体操教室、スイミングスクール、そろばん、フルート、算数教室、公文など、
信じられないくらい沢山の御稽古ごとをやっていたのに、
結局一つも身に付かなかったS君。
遊びの中から自分なりの拳法をあみ出し、
武器にリード線を使うその拳法を「蛇刀風拳」と名付けたS君。
小学五年生の時の水泳記録大会の平泳ぎ25メートルに出場し、
他の生徒は30秒台前半なのに、
一人だけ50メートルのタイムと同程度の
56.7秒という、脅威的な記録を叩きだし、
観客からあたたかい拍手を受けたS君。




そんな小ネタの数々も、

波乱の神に魅入られた男にとっては
鼻毛の先で吹き飛ばせる程度の些細な出来事なのか?

現在、総力をあげて調査中であります。

そして、この文書の事を
発行された年月とS君の名を取り
今後、「S903文書」と呼ぶ事にします。

さらに、
我々「小説マヒロ」編集部では
新事実を追求する為に、
真下マヒロを委員長とする「S903文書評議委員会」を発足しました。

今後の報告にご期待下さい。

小 説 マ ヒ ロ