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修羅の一族
MAHIRO MEMORIES
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特異なあだ名を持つ奴等。
一人目。
マヒロよ。答えてみるがいい!の中で、こう書いたことがあります。
バレンタインね。罪な風習ですよ。中学の時、全然もてない奴がいて、でも一丁前に14日になったらドキドキしているのがわかるんだよね。なんかそわそわしているんだよ。それ見てたら悲しくなってきちゃってさ。そいつ結局なしのつぶてだったらしいな。
そしたら次の日休みやがんの。
休みやがって、でも、その次の日に何故か嬉々として学校きやがってさ。
「チョコレート貰った」って。
どうやら、そいつの母親が知り合いの女の子に頼んで、チョコレート渡してもらったらしいんだよね。 |
その当事者、それはタキンパ。
中学一年。ある日の出来事。
学年集会で突然手を上げるタキンパ。
そしてスタスタと前に出て行くタキンパ。
開口一番。
「僕をタキンパと呼ばないで下さい」
一応、言っておこう。
その頃、彼のことをタキンパなどと呼んでいる人は一人もいなかった。
というか、彼の存在自体、学年に知れ渡っているというわけではなかった。
完全な被害妄想状態。
そしてこれは、
芸人が「絶対押すなよ!」と言って押してもらうのと同じ効果があり、
彼はその日からタキンパとなりました。

彼はたいそうな虚言癖の持ち主で、
多くの嘘でクラスメートの失笑をかっていました。

たとえば。
昔、ファミコンのソフトでソンソンというのがありました。
誰かがタキンパに、
「ソンソンの続編でトントンというのが出た」
と、軽い冗談を言うと、
即座に
「俺持ってる」
とか、言い出しちゃうタキンパ。
どこで買ったんだよと問い詰めると、
「大阪のほうで買った」
とか、言い出しちゃうタキンパ。
じゃあ、行くからやらせろよ。というと、
「今、親戚に貸している」
とか、言い出しちゃうタキンパ。
さらには「ファミコンは三台持っている」
「地域のバレーボールチームのキャプテンで、この前優勝した」
「小学校時代家出して一ヶ月家に帰らなかった」
など、すぐにばれちゃう嘘のオンパレード。

一冊のノートが机の中から発見されちゃうタキンパ。
復元するとこんな感じ。

ご丁寧に(秘)とでっかく書いてある。
秘密にしたければ(秘)なんてマジックで書くなよ。
彼はその中で、
クラスの女子を
ABCDEの5段階評価でランク付けしていた。
それをクラスの女子に見られちゃうタキンパ。
それで嫌われない奴がいたら、そいつは神だと思う。
でも、
「私、Bだった」「なんでCなの」とか、
なんだかんだで結構盛り上がってる女子たち。
以上、タキンパでした。
さて、次の登場人物は…

その名も、
メタキン
彼は、
恋に果敢に挑んだ男。
クラスの女子の半分以上に告白した男で、
そのすべてにおいて、
ことごとく討ち死。
脅威の恋愛成就率0.00%
彼の家は、いわゆる貧乏でした。
幼少期に父親が蒸発。
住んでいる長屋は大きく傾いていて、
母親と三人兄弟が1つの部屋で寝ている。
というか、部屋が一つしかない。
母親が
「子供達に人並みの生活を」と、
一家の存亡を賭けて買ったファミコン。

好きなファミコン名人は高橋名人。
胸(っていうか心)に七つ(以上)の傷を持つ男。
そんなメタキンが、
小学校卒業文集で修学旅行の事を書いています。
(メタキンは小学校時代1組でした)

食事はごうかでとてもおいしかったです。
その食事というのはこれだったんですが…。

乾いたハンバーグ。
刺身が三切れ。
半身のバナナ。
名称不明の魚の切り身。
ワカメのおひたし。
トマトが一切れ。
我々のような飽食の時代に生きた人間にとっては、
あまりにも質素な内容。
これらがその修学旅行のメインディッシュ。
その食堂を包んだ言いようの無い絶望感。
しかし、
メタキン。

食事はごうかでとてもおいしかったです。
メタキン。
君はなんて、いじらしいんだ。

メタキン
このあだ名の由来はペキン原人からきている。
つまりそういう風貌だという事である。
え?
イジメ?
違うね。
彼はそのあだ名「メタキン」を
ドラクエVの勇者の名前に使うほど
気に入っていた。
勇者メタキン。
ある意味、本物の勇者だった。
メタキンは今でもたまに一緒に飲みに行きます。
すごく良い奴です。
やっぱり、傷を背負った人間は他人にやさしくなれる。
ところで、S君ですが。

彼にはあだ名がありませんでした。
あだ名さえ付かなかった男。S君。
それもいわば修羅の宿命。 |
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