修羅の一族
MAHIRO MEMORIES



マヒロが小学2年生だったある日。


なにげなく小学校の校庭を自転車で走っておりました。

そのとき、その校庭では6年生が野球をやっており、
その周りにはグローブなどが雑然と置いてありました。


そして、ボーっと走っていたマヒロは、そのグローブを
自転車のタイヤで踏んでしまったのです。

すぐに駈けつけて来る一人の6年生。

あろうことか、その6年生は、当時悪名をとどろかせていた、
名うての悪ガキだったのです。


「お前、俺のグローブ踏みやがったな!」

6年生の怒りの表情。震え上がるマヒロ。


そしてその6年生は周りに遊んでいた下級生(5年生以下数人)達を呼び集めました。



そして衝撃の一言。
「お前等、こいつを殴れ」

下級生に、その6年生の命令を断れる奴などいなかった。
特にその6年生は名うてのワル。




マヒロ少年は殴られる事を覚悟した。









そうさ。





その集められた下級生の中に君はいたね。







そして君は言った。





「俺は殴れない。…友達だから」









その一言でその場の空気があやふやになり、
その6年生も「ふん!」とばかりに去って行った。





正直、感動したよ。


自分も一緒に殴られるかも知れないのに、


「俺は殴れない。…友達だから」



君は言ってくれたね。



「俺は殴れない。…友達だから」




友達だから。




友達だから。




友達だから。





なんという響きだろう。




人は一生にどれだけの人とめぐり合い、
どれだけの人を友と呼ぶのだろう。




自分の身を挺して、
友を守ることが何度あるのだろう。








でもね。







僕はそれまでに
君を友達だと思った事が
一度も無かったのだよ。






いや、今に至っては、
名前すら思い出せない。













友よ。

小 説 マ ヒ ロ