修羅の一族
MAHIRO MEMORIES








小学校最後の運動会は
紅白ではなく、
1組から4組までのクラス対抗という新趣向によって開催されました。


私や、ボビシ、S君などは2組でしたから、
赤白帽子に黄色いハチマキをつけて競技を行いました。



そして1組から4組までそれぞれ、応援団長が選出されます。
それは6年生の各クラスから選出され、その人物が全学年のクラスを仕切ります。


そして、2組の応援団長。

全学年の2組を取りしきる最高指揮官。

全学年の2組は応援団長によって指揮され、統括される。



これはある人物の卒業文集の文面の抜粋です。
この文集の文面をよくご覧下さい。






この文章を書いた人物、

それは





ボビシ。





「ボビシ!ボビシ!ボビシ!」
という、ボビシコールが起こると、
「シュボボボボ!ボフ!シュボーフ!」
と、叫びながら何にでも果敢に挑戦していったボビシ。


多分彼は、
「ボビシ!ボビシ!ボビシ!」
という、ボビシコールが起これば、
核ミサイルのボタンでも、その場のノリで押せる男。


人類が神と戦う為に創り出した最終兵器ボビシ。
ある意味、救世主(メシア)




今回は、
「ボビシ!ボビシ!ボビシ!」
という、ボビシコールによって、
引き起こされたお話。




応援団長を決める時の学級会。
誰もやりたがらない応援団長。

教室の片隅で沸き起こる
「ボビシ!ボビシ!ボビシ!」
という、ボビシコール。


ボビシ応援団長になる。





そして、2組の明暗はすべて、ボビシに託された。



もしかしたらボビシの人生でもっとも輝いた瞬間だったかもしれない。



小学校6年にして人生のクライマックス。




しかし、

応援団長までやりました。って、
お前が他に何をしたというんだ。






運動会には応援合戦という時間があり、
その時間には応援団長の指示にしたがって応援歌を唄う事になっていました。
その応援歌。

3組などは「それいけ3組」という歌集に載っているような既製の歌を
一つ覚えに歌うのですが、
2組は違います。

2組の応援団長はボビシなんです。



「2組を応援する歌」
作詞:ボビシ





応援歌のプリントが
1年生から6年生までの2組に配布され


全学年の2組児童約240名及び教師6名は
ボビシが作った「2組を応援する歌」を憶えさせられる事になった。




一年生達は人生初めての運動会をボビシの作った歌とともに過ごすです。
そして我々六年生は人生最後の運動会をボビシの作った歌とともに過ごすのです。

2組児童のその後の人生に多大な影響を与えかねない事象です。

トラウマ(心的外傷)ともなりかねない。


ただ、


ボビシが作った歌詞が
あまりに内容が衝撃的だったので、
コダイラ先生によって大幅に改変されました。


ギリギリでトラウマ回避。





そして応援合戦。



壇上にのぼるボビシ。

長い黄色の鉢巻のボビシ。


2組応援団長ボビシ挨拶


さあ、ボビシよ。時は満ちた。
お前のもつ、

生命の躍動を、

修羅の宿命を、





この、運動会という晴れの舞台に、




すべて叩きつけるがいい。



その場にいるすべての

児童、

父兄、

先生、

敬老会の老人達、

教育委員会の役員、




それらが固唾を飲んで見守っていた。







――間。



ボビシ「…。」
壇上で固まったままのボビシ。





運動場を静寂が包み込んだ。


運動会に静けさをもたらしたのは後にも先にも君だけだ。




ボビシ文集より抜粋


ボビシよ、君も人の子だったか。


静寂のまま進む2組の応援。



いわゆる、頭真っ白状態のボビシ。




闘う前から、
真っ白に燃え尽きて灰になっちまったボビシ。




結局、しどろもどろのボビシをサポートする先生の音頭で、
応援は進められました。









しかし、その年、優勝しました。2組。










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