フレデリック・サンズ

Frederick Sandys

(1832-1904)

 

 イラストレーション成立初期に、重要な役割を果たした人物。

 ノリッジの画家の息子として生まれ、土地の公立デザイン学校に学び数年間仕事をした。その後19才でロンドンに出て、ロイヤルアカデミーに出品した(1851)。57年J・E・ミレー作品をパロディーにしたエッチング「夢魔」でロゼッティに注目され、ラファエル前派の人脈と出会う。ロゼッティに大きな影響を受け、もっぱらシンボリックな女性の肖像画を描いた。油絵も多いが、中でもパステル画の技法は魔術的である。他方でまた卓抜なデッサン力と構成力で雑誌や本の挿絵を描き、挿絵のレベルを格段に向上させて後世のイラストレーターたちに大きな影響を与えた。ウォルター・クレインはサンズのことを「現代英国イラスト界のマスターの一人」と絶賛している。

 サンズは1866年にはロゼッティと同居したりしていたが、やがて喧嘩別れし、女優メアリー・クライヴと同棲を始めた。そして9人の子供を得ている。子供たちはそれぞれサンズのモデルとなったが、中でもお気に入りは末の娘ガートルードだった。このガートルードは、奇しくもウォルター・クレインの息子、ライオネルと駆け落ち同然の結婚をしてしまう。サンズはそれがよっぽどショックだったのか、それからすぐ世を去ってしまった。

(クレインがどうしたかは知らない)

 私としてはサンズのデッサン力は認めるが、精神性やロマンティシズムとなると心許ない。アカデミズムとポップアートの橋渡しをしながら、自分自身のオリジナル・ドラマはないような職人肌の人物だったように思える。

 

「不思議の時:ガートルード・サンズの肖像」パステル(1900)

"harold harfagr"george borrow(1862)

"the old chartist"(1861)

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