12月31日(木)
「クリスマスキャロル〜市村正親ひとり芝居〜」
サンシャイン劇場
12時30分開演
1階2列23番

感動度★★★★★★ (★6つで最高)

年も押し迫った98年の大晦日に観劇して来てしまいました(爆) 街はすっかり大晦日だというのに、一度会場に足を踏み入れればそこはもうクリスマスの世界。大晦日にクリスマスソングを流していたのは、おそらくサンシャイン劇場だけだったのではないでしょうか(笑)

さて、初演では1階席の一番後ろで観劇したのですが、今回はなんと前から2番目で観劇!市村さんが登場した時、あまりにも間近だったのでものすごくドキドキしてしまいました。出てきてから腹話術っぽく「私は、これから、この本を、しゃべります」の仕草。これが妙に可愛くって受けてしまいました。ちょうど本を置く台が目の前にあったので、ますます市村さんが近くにいてドキドキ… でしたが、見る見る間に机や椅子を配置してクリスマスキャロルの雰囲気を作ってしまうのはさすがだと思いましたね。セットは本当に椅子と机とバックにたまに照明で形がある程度。なのに、市村さんの周りにたくさんの風景や人物が見えるんです。市村さんがひとりでやっているというのが信じられないくらいでした。

まずうまいなあ〜〜〜と思ったのがスープの飲み方。本当にスープの器が見えたし、スプーンも見える!実際、小物は一切使っていないのに…! そしてスクルージの家の扉!これもあたかも目の前に扉があるように見える!市村さんのパントマイムって、本当にすごいです。そこに形を作るだけじゃなくて、匂いや感触、そしてなにより重さを感じるんですよねえ。
そのパントマイムだけでも大変なのに、今回はなんと風の音まで演出。そしてスクルージが歩くときにきしむ音。ここも単なる擬音語じゃなくてちゃんとアドリブまで入れてくださって私たちを笑わせてくれました。たとえば、ぎぃぃっぎぃぃっごぎぃっごぎぃっ…ガギグゲゴギィッ(笑)とか(^_^;)
あと、語りの部分と芝居の部分がきちんと分けられているのもすごいですね。ただでさえ53役も演じているのに、あの抑揚ある、ある時は切迫感を、ある時は面白おかしく、と実にこちらを乗せるのが巧い! あの語りだけでも充分ひきつけられてしまいました。

まずはじめに面白かったのはマーレイの「顔」。初演で観たときは実はあまりスクルージの話を理解していなかったのですが、今回は前回のミュージカルの知識があり、すぐさまマーレイのイメージが浮かんでしまいました(^_^;) あの顔は、何だか恐いんだけど笑えてしまう… 市村さんだからなのかなあ(失礼)。登場したときはすごいドキっとするんですけど、途中であごがボヨ〜ンと落ちてしまうのはやっぱり可笑しい(笑)。一番ここで感心したのはマーレイの鎖!重苦しい鎖が目に見えるようでした。何だかすっごく重そうだったし。
それにしても、このシーンで起こったスモークの迫力はすごかったです。前から2番目だっただけに、もろに直撃。スモークってすごい臭うんですよ。この日はでも炊きすぎ… 途中、市村さんの姿が見えなくなったほどでしたので(苦笑) 市村さんもちょっと辛かったんじゃないかなあ。

過去のクリスマスの精霊はなんだかとっても中性的な雰囲気。美しくてすらっと透き通ったイメージがありました。ミュージカルではスクルージの姉の設定なので、そのイメージを引きずって見てしまったからかもしれません。ここで印象的なのは子供のスクルージが青年に成長していくところ。効果音も手伝ってとてもドラマチックでした。で、このシーンではたくさんの人物が登場するんですけど、これがまた個性豊かでそれぞれがとても面白い!特にお気に入りのキャラとしてはフェジウィッグ夫妻!豪快で愛敬たっぷりのオヤジと、満面笑顔の固まりの奥さんには思わず吹き出してしまいました(笑)
前半の見せ場がこのフェジウィッグ家でのダンス。初演に観たときも圧倒されましたが、今回は間近ということもあってなおさら圧倒!なんという軽いステップ!なんだかバレエのステップを観ているようでした。ひとりで踊っているのに、なぜか周りにたくさんの踊っている人が見える!もうこのシーンは圧巻で、思わず会場からも手拍子の拍手が沸き起こってました。さすがにすごい汗でした。もう、こちらまで吹き飛んでくるくらい…なのに、踊っているときは微塵も疲れを感じさせないんだから、本当に市村さんはすごい役者さんです。しかも、後から聞いた話なのですが、どうやら市村さん、東京の初日あたりに足の肉離れを起こしてしまっていたらしいのです(@_@) 確かにすごい汗だとは思いましたが、言われなければ絶対に分からない!市村さんのプロ根性を痛切に感じてしまいました。

現在のクリスマスの精霊はこれもまたミュージカルのイメージ通りの豪快気ままなオヤジ。ここで一番印象的なのがやはり事務員のボブ一家の様子。ボブの家族は大家族なんですけど、これまたひとりひとりが手に取るように分かるからすごい!特に末息子の体の弱いティム。母親がティムを抱える動作…その手の中に、確実にティムがいるんです。それから、食事!七面鳥を食べるときの仕草なんて絶品です。思わず私はつばを飲み込んでしまいました(爆)いや、本当にすっごくおいしそうだったんですよ〜!!

未来のクリスマスの精霊は大きな影で表現。巧い演出ですよねえ。ここで面白かったのがいかがわしい取引所のじいさん。思いっきりしかめっ面してパイプを吹かすところでは思わず吹き出してしまいました。それから、ある男(スクルージのこと)が死んで心動かされた若夫婦のシーンも笑えました。何だか思わずぷっと吹き出しちゃいそうになるところの持っていきかたが実に巧いですねえ、市村さん。でもなんといっても、ティムが死んで嘆き悲しむボブ一家がとてもよかった。目の前で、涙ぐんでる市村さんを目の当たりにした時、おもわずこちらもむねがあつくなってしまいました。

そしてラスト、スクルージが改心してボブの一家の助けになったエピソードがとても感動的でした。「ティムは、、ティムは、死にませんでした」の語りがとっても温かくってここでも思わず涙が…(;_;)
神様のお恵みが、私たちみんなにありますように」で締めくくられるわけですが、本当にお恵みがあればいいなあ。。。と心が温かくなりました。

<カーテンコール>

何か一言くらい挨拶はあるかな、と期待していたのですが、なんと、「このまま帰してしまうのはもったいないので」と、クリスマスキャロルグッズの抽選会を催してくださいましたぁ(^0^)その景品とは、昨年の市村さんのクリスマスキャロルのビッグな写真5点!チケットの半券で抽選が行われました。
しかも、「98年最後の日なので『5点しかないの?』という人のために、出口で大入袋を全員にお渡しします」とのこと!会場のお客さん大喜び!ああ、市村さん、本当になんて観客想いの役者さんなんでしょう!!
抽選の時、マイクを持った市村さん、不意に「マイクもつと歌わなければならない気がする」(笑) これにはお客さんまたまた大喜びで拍手したんですけど、さすがに歌はなかったです(^_^;) 抽選で当たった人に対して会場から溜息が漏れるたびに、「当たらない人にもありますからねえ」というお茶目な市村さん。(結局私は外れました)
当たった人に「まさか、こんなもんもらって困るっていう人いないよね。そういう人は、誰かに売るとか」(爆・笑) いやいや、そんな人いないって!市村さん!! 盛んに「パイプを吹かして顔を顰めているオヤジ」の写真を推薦していた市村さんですが(ご自身でも、これが最後に残る気がする!と笑ってましたけど(笑))、結局最後まで残ってしまい、一番ラストの人がもらってました。←でも嬉しそうだった(笑)

最後のコメント(概要ですが…)
「31日という忙しい時期に大勢来ていただいて本当に幸せです。来年、50になります。」←ここで客席からどよめきが起こり市村さん、「それは見えるという『えー』なのでしょうか」と突っ込んでました(笑)(注.1月28日がお誕生日です。ちなみに宮川浩さんも同じ日なんですよねえ)
「役者になりたくて勉強している人、いつか一緒に舞台に立ちましょう。来年も舞台一筋で頑張ります。ということは、変な役しかありません(爆) 変な役が一番皆さん喜んでくれます(笑) 来年も、変な役をどうぞよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました」

ちなみに、大入袋には市村さんの描いたウサギの絵(すごいカワイイ!)と、市村さんの決意のことば『耳を立て、瞳を燃やし、高く飛びたい卯年』の文字とサインが書いてありました(^0^)←もちろん直筆の印刷ですけどね。

今回感じたこと… 市村さん、めちゃくちゃ善い役者さんだよぉぉぉぉ〜〜〜〜!!! 本当に私たち観客のことを想ってくれているっていうのが分かるんですよね。すごくすごく嬉しかったです。99年も、応援してます!市村さん!!