オペラ座の怪人がマスクをはずす時(ニュース23にて)

対談 ・ 今井清隆 vs 筑紫哲也

日時  99年6月5日(土) 24時50分〜58分くらい 
     野球中継が入ったため30分延長されました(^_^;)

場所  赤坂ミュージカル劇場の舞台上。セットはマスカレードの階段

オペラ座の怪人を演じていらっしゃる今井清隆さんが「筑紫哲也のニュース23」というニュース番組内の特集で筑紫さんと対談されました!役柄の上ではすごい大胆な演技を見せてくださるのですが、実際の今井さんはとてもシャイ(笑) 筑紫さんとのトークなんて大丈夫かなあ…とこちらが気をもんでしまいました(^_^;) が、8分という短い時間の中、充実したトークが展開されました。
というわけで、どんな感じだったかここで記録を残したいと思います。

序章(筑紫さんの始めのコメント)

久しぶりにスケールのあるミュージカルの人が登場したという感じです。今井清隆って名前は知られているけど顔は知られていないんですよね。

本番(録画撮り)

筑 : もう何回くらいになります?

今 : そうですねえ…300回くらいになります。(今井さん、初っ端からハズカシそう(笑))

筑 : ずっと同じ役をやって来て、最初と今とでは演じ方に違いとかは?

今 : 最初の頃は演じきることだけで精一杯だったんです。神出鬼没な役で舞台の上から下まで走り回ったりとか、いきなり奈落の底に落ちたりとか… ただただ無事に終わるのが自分にとっては大成功って感じでした。が、最近はカーテンコールの時にお客さんが喜んでくれたかなと感じる余裕は…ホンの少しですけど出てきましたね。

筑 : (ハズカシそうな今井さんをみて) あがる質なの?(笑)

今 : (もう心底ハズカシそうに) ・・・・もう・・・・とんっでもなくあがるんです・・・(苦笑)

筑 : いつまで立ってもあがってしまうタイプの人と全然気にしない人ときっかり分かれるんですよね。

今 : あ・・・そうなんですか・・・(まだハズカシそう(笑))

筑 : (3大テノールのトークの話を持ち出し)パブロッテイなんかは「俺は今もってこんなにやっていても緊張してあがるんだよね」と…。あれだけの人がね、そう言ってるので。

今 : (ホンとに安心したように) ちょっと安心しました(笑)

今井さん、筑紫さんの3大テノールの話を真剣に聞き入ってました。それにしてもここでは関係ないですが、パブロッティの眉毛って…ずいぶんとご立派なんですね(爆) 私はこの部分のトークで一番気になったのがこれだった(爆) いや、ほんと、すごかったんですう(笑) テレビ見られた方、そう思いませんか?(笑)

−ここで「ファントム・オブ・ジ・オペラ」の舞台シーンが流れる−

筑 : 本当に難しい役ですよね。

今 : そうですねえ・・・今までやった中で、おそらく一番難しかったと思いますけど。。。

筑 : でも、今井さん自身はこれを一生の間にやりたい!という思い入れの強いやくだったんでしょう?

今 : ええ。あの、僕、ロンドンでこの芝居を見た時に言葉はよく分からなくて予備知識もなく観たんですけど、ものすごく感動したんです。もう涙がぼろぼろ出てきちゃって。「言葉は分からなくても人を感動させることができるんだな、こういう役者になりたいなあ」と思いました。

−マスカレードで登場する怪人シーンが流れる−

筑 : 10年前は何をやってたんですか?

今 : あの〜、ミュージカルはもうやってたんですけど、なかなか役がもらえない…アンサンブルみたいな感じで。徐々に名前のある役とか、だんだんと階段を上るような感じでした。(ん?10年前っていえば、今井さんけっこう良い役ついてなかったか?ジャベールとか。)

筑 : なるほど。今井さんは階段上るっていったけど、もうひとつ非常に…良い表現じゃないかもしれないけど…たたき上げというか、どんどん上がってきた人ですよね。オーディションやったりとか。

今 : そうですねえ。でも自分ではたたき上げといった感覚はないんですけど(苦笑) とにかく与えられた仕事をメいっぱいこなしていって今に至ったという感じなんですけど・・・

筑 : そのたくましさなどを含めて久しぶりに大型のすごい新人が出てきたっていうのが今井さんにはあって。(?今井さん、まだ新人なの?もうベテランになりつつあると思うけど・・・)

今 : あ〜、そうですか・・・(あくまで謙虚。というか、すごくハズカシそう(^_^;))

筑 : 自分ではどうですか?

今 : え?(笑) 体はデカイですけど、けっこう気ィちっちゃくて(笑) …なんかちょっと照れくさいですね … (このときの今井さん、めちゃくちゃ可愛かったよ〜(^_^))

筑 : もともと何になりたかった?

今 : 家の家業が鳶職だったものですから、あの〜、長男なもんですから本当だったら継がなくちゃいけなかったのかもしれないんでしょうけど、なんだか肌に合わないなと思って。何かやりたいことを探して群馬から東京に出て来ました。

−発声練習風景(この旋律はコーラスラインの「ワン」だったと思います)−

筑 : もともと自分の声には自信あったの?

今 : いや〜、あの… 歌で商売できるなんて全然考えてなかったんですけども、好きだったんですね、歌が。専門的な教育は受けてなくて譜面も満足に読めなくてそれでも好きで歌ってたんですけども。(今井さんてある意味天才だと思います。あの美空ひばりだって譜面読めなかったしね)
ある日、オペラの方とか先輩方に「普段自分達が出ないような声が、あなたは簡単に出るんだよ」と言われて、「あーそうなんだぁ」と思って。それから自分でも意識して訓練始めたんですけど。

筑 : 実際に全部使いきらなくても、客から見るとゆったり使っている(声を)という感じがするんですよね。思いきりのない人は「くるしーだろーなー」って感じで。今井さんは重量感があるというか…体にもそれが感じられますけどね(笑)

今 : (笑)

−ドンファンの勝利 (ポイントオブノーリターンのラスト部分)−

筑 : それにしても、役の間はほとんどずっとマスクをかぶったままですよね。

今 : そうですね。なんかわりとマスクをかぶった役っていうのが多いんです。この間もBBで野獣やったんですが、あれもほとんど素顔出さなくて(笑) あの・・・あまり出しちゃいけないのかなあ〜、と(苦笑) (いや、そんなことはないと思うよ)

筑 : それは自分としてはどうなんですか?顔が出ないというのは一種のフラストレーションとか溜まるんですか?

今 : そうですねえ。でも、まー、町歩いていても誰も気にしないで歩けるという利点はありますけど(^_^;) ( でも、知っている人は知ってると思う(笑))

筑 : でも一方で、自分がやっているんだっていう主張したいことはあるんじゃない?

今 : ありますね。例えば電車の中で目の前の人が今まさに見てきたオペラ座の怪人のパンフを見ていて、目の前で僕が立っているのに全然気がつかないっていうのはちょっと寂しい感じがしますけどね(苦笑)

筑 : あと何回くらい残っているんですか?

今 : あと2ヶ月くらい…60回くらい・・・ですね。

筑 : それで一旦終わりますね。今後どういう役をやってみたい?

今 : そうですね・・・色々夢はあるんですけど、なかなか口に出すと実現しそうもないような気がして(笑) 割と人にはしゃべらないようにしているんですけど…。 でも、やりたい役もあるし、たとえば・・・あの〜なんですか・・・コンサートみたいなものをやってみたいなあ・・・というのは漠然と思っているんです。(今井さんてけっこう信心深いんですね(笑) コンサート、行ってみたいなあ・・・実現したら。でも、四季にいる以上、コンサートはちょっと無理か(爆))

インタビュー終了

終章 (ラストの筑紫さん達のコメント)

筑 :これ本当に難しい役ですよね。というのは、主人公が複雑な性格で醜いけど、逆に美しいものへの憧れと才能がものすごくあって。役をやることじたい難しいんですけど、彼、本当にむいてますよね。体も大きいし。

草 : ギャップが面白いですよね、怪人とあがり症(笑)

以上、レポートを終わります。