「蜘蛛女のキス」ミュージカルナンバー

この作品の素晴らしさの要因は、ジョン・カンダーとフレッド・エブによる珠玉の名曲によるところも大きいんですよね。本当に音楽に一貫性がなくて、文句ナシに場面場面で楽しめましたし大感動させてもらいました。

第1幕

M1 : OPENING (蜘蛛女)
蜘蛛女が、遠くから呼びかけるようにして歌います。物語のオープニングをより神秘的にしていました。

M2 : AURORA (オーロラ)
モリーナが、傷つき運ばれてきたヴァレンティンをみて脅えながらオーロラを呼びだします。さっそうと現われ歌い踊るオーロラは美しくかっこいい、モリーナにとっての憧れの女性でした。とにかく、麻実さんのダンスが素晴らしい!長い足をふんだんに(^^;)使ったかっこいいナンバーでした。

M3 : 塀の外1 (アンサンブル)
囚人達が、外の世界への想いを馳せて歌います。塀の外ではラム酒があったり、美女がいたり・・でも、最後に一人が歌います。「もう一度見られるだろうか」と・・・・。ここの部分がものすごく切なかったなあ。。。

M4 : BULE BLOODS 貴族の血 (モリーナ)
モリーナがヴァレンティンの気を惹くために歌います。ヴァレンティンは「地獄に落ちろ」としか反応してくれないため、最後に「面倒見てやったのに感謝してくれないの?」とおちゃらけてヴァレンティンを非難します。このときの市村さんがとても可愛らしい(^_^) 軽くて、なんだかちょっとおちゃらけてて、思わず微笑んでしまうようなナンバーでした。

M5 : 飾り付け / 引くぞライン (モリーナ/ ヴァレンティン)
どうにかしてヴァレンティンに振り向いてほしいモリーナは、自分が勤めていたお店のことを歌います。それによるとモリーナはかなりの優秀なスタッフだったようです。もうこれはとっても軽くて誰にでも楽しめるようなメロディーでした。市村モリーナ、本当に楽しそうに歌ってたなあ。
しかしそんなモリーナの話をただウザッタイとしか思わないヴァレンティンは、目には見えない境界線を引き、モリーナの立ち入りを禁止します。宮川さんの迫力ある歌声にただただ感動。モリーナの歌とはうってかわって、宮川さんの歌声を最大限に生かせるようなすごいナンバーでした!

M6 : DEAR ONE (モリーナ、ヴァレンティン、モリーナの母、マルタ)
気が狂いそうだというヴァレンティンにモリーナは大事な人のことを想うように言います。モリーナは大好きな母を、ヴァレンティンは愛するマルタを想って歌います。とにかく、曲が涙が出るほどきれい。

M7 : 塀の外2 (アンサンブル)
再び囚人達が塀の外の生活を夢見て歌います。そのさなか、ひとりの囚人の脱走劇が繰り広げられています。必死に穴を掘って牢から脱出しますが、その一部終始をすべて監視されあと一歩のところで射殺・・・つまり、蜘蛛女のキスを受けるのです。日本では鉄格子を登る囚人と、地面を這いずり回る囚人の2バージョンがありました。幸運にも私は2つ観ることができました。どちらもすごく衝撃的・・・

M8 : WHERE YOU ARE (オーロラ)
囚人の叫び声に脅えるヴァレンティンにモリーナはオーロラに重ねて「どんなひどい光景でも目は向けても見てはだめ」と歌います。モリーナの語りの途中から登場するオーロラのなんとも華やかなこと!思わず体が踊り出してしまいそうなナンバーでした。

M9 : 塀の外3<マルタ> (ヴァレンティン)
ヴァレンティンからテロ組織の名前を引き出そうと、刑務所長は彼の監房に囚人をたくさん詰め込みます。極限状態の中、ヴァレンティンは恋人マルタのことを想って歌います。これは涙誘います。メロディーもとっても悲しくてきれいなのですが、宮川さんの歌唱力に尽きると思います。

M10 : 尋問の場 (蜘蛛女)
モリーナが所長に呼び出され、ヴァレンティンから仲間の名前を引き出すように命令されます。なかなか命令通りに動かないモリーナに、拷問される囚人を見せつけられます。蜘蛛女の誘うような歌声の中、ついに力尽き蜘蛛女のキスを受ける囚人、、そしてそれを目の当たりにして脅えるヴァレンティン。ここも衝撃的でしたねえ。特に麻実さんの長い手足は蜘蛛女そのもの。大迫力でした。歌声も恐かったし・・・(^^;)

M10a : 聖なるイエス (アンサンブル)
拷問を受けて気を失っているヴァレンティンを囚人達の前で見せつける看守。囚人の一人である牧師が祈りの歌を歌い続けています。最後の「父よ許したまえ!彼らは何をしているかを知らないからです!」の言葉は胸に響きましたね。その後の囚人達の叫び声が何とも悲痛でした。

M11 : 起こそう奇跡 (オーロラ、マルタ)
傷つき気を失っているヴァレンティンを見にオーロラが現われます。「彼はどうしてあんなに強くなれるの?」というモリーナに「愛よ」と答え、奇跡を起こそうと歌います。静かで暗く沈んだ場面なのですが、どこか優しくて流れるようなメロディが胸にジーンときました。途中からすっと現われる下着姿のマルタ。私はいつも『マルタがうらやましい・・・』という想いで観ておりました(爆)← 宮川=ヴァレンティンに抱きしめられるんですものぉ(^^;)こんな私には奇跡は起こらんだろうな(苦笑)

M12 : ガブリエルの手紙 / 最初の女 (ガブリエル、ヴァレンティン)
モリーナの心の恋人、ガブリエルが登場します。モリーナの幻影の中のガブリエルは「気の毒だね、君はいい人だよ」と歌いますが、なぜかモリーナにはとっても冷たい。モリーナが本当に痛々しく見えます。そのガブリエルと重なるようにヴァレンティンが初めて抱いた女性のことを思い出して歌います。そのときのことをここに書くとかなり危ない(爆爆)ので割愛しますけど(笑)、ガブリエルとヴァレンティンの二重奏はなんだかうっとりするほどきれい。それでいてなんだかほのぼのしているんですよね。

M13a.d : モルヒネ・タンゴ1,2 (アンサンブル)
毒入りの食事を食べてしまったモリーナが診療所へ運ばれます。診療所では男の看護夫(苦笑)が歌い踊っています。これはきわめて怪しいメロディーでした(^^;) なんだか催眠術でもかけられているような、ある種、不気味な音楽&動作でしたねえ。唯一、あんまり好きになれなかったナンバーでもありますが(苦笑) でも、最後のほうではけっこう興味深く観てたかもしれません(^^;;;) そもそも題名からして超怪しいですよね・・・(笑)

M13b : 恥じたりしない (モリーナの母)
診療所で朦朧としたモリーナの意識の中にモリーナの母が現われます。「僕のせいで恥ずかしい想いをさせてごめんよ」と詫びるモリーナに「恥じたりしてないよ。息子は私の誇りだよ」と優しく歌います。このナンバーも泣かせどころです。モリーナのお母さんて、本当に強くて優しいんですよね。まさに理想の母!普通オカマの息子を持ったら多少なりとも嫌な思いをするだろうに、彼女は息子を深く深く愛して信用しているんです。モリーナが「一番大切な人」として慕い続けていたのが分かりますね。大方さんの温かみのあるすばらしい歌唱力に涙が出ました。

M13c : モリーナと蜘蛛女 (蜘蛛女、モリーナ)
これも、モリーナの意識の中の出来事。母が去った後に現われたのは大嫌いな蜘蛛女。「消えて」と脅えるモリーナに「いつかキスするわ。でも、まだ今じゃない」と蜘蛛女は去っていきます。麻実さんの蜘蛛女の存在感はすごかったです。まさに死の象徴・・・あれじゃあ、モリーナならずともみんな怖がると思うなあ(^^;)

M14 : 彼女は女 (モリーナ)
毒入りの食事を食べ、激しい腹痛を起こして倒れてしまったヴァレンティン。そんな彼を優しく介抱してやるモリーナですが、ヴァレンティンが気を失う前に出る名前は「マルタ」・・・これを聞いて、「彼女になりたい」とモリーナが悲しく歌います。このシチュエーションはとっても切ない。ゲイであるが故に自分は受け入れられないだろう、という気持ちが切々と伝わってきて泣けるんですよね。「もしも、彼女になれたら・・・」という最後のフレーズがとても物悲しいのです。この味は、市村さんだからこそ出せたんじゃないかなあ。モリーナが彼女のことを色々と想像しているところなど、その光景が目に浮かぶようでしたから。

M15 : LET'S MAKE LOVE (オーロラ)
再び苦しみだしたヴァレンティンの気を紛らわすために、モリーナがオーロラの映画の話をはじめます。それは愛する男を裏切れずに逃亡に手を貸す恋する女の物語「極楽鳥」。極楽鳥に変装したオーロラがラテンのサンバに乗せて華々しく歌い踊ります。これはすごい!とにかくビジュアル的にも最高に楽しめるナンバーでした。麻実さんののびのびと生き生きとしたダンスは本当に素晴らしかった!


第2幕

M16 : いい時代が (オーロラ)
ヴァレンティンにねだられてモリーナが映画の話をします。それはロシア革命前夜に恋人を救うために愛してもいない男と結婚する女(タチアーナ)の話。最後のショーのときにタチアーナが「いい時代が訪れる」と歌います。モリーナの大好きな話のひとつだったのですが、私もこの話はとても気に入りましたね。精神的に安定していなかった時期にこの歌を聴いたとき、本当に涙が出ました。「いい時代が訪れる。あなたにも来る」この言葉が本当に胸打つんです・・・・。一度通しで見てみたかった映画ですね。

M17 : その次の日 (ヴァレンティン)
モリーナの映画には現実がない、と、自分の映画の話をするヴァレンティン。それは、辛く貧しい生活から革命に目覚めて戦うまでのヴァレンティンの生きてきた現実の世界の話。「次の日には必ず勝ってみせる」と力強く歌います。これはもう、宮川ヴァレンティンのテーマソングだと思ってます。はじめてこの歌を聴いたときの衝撃は忘れられません。とにかく力強く迫力ある歌声!座席で微動だにできませんでした・・・私。何といっていいのか・・・力強く、それでいて明日への希望を感じさせるような・・・本当に今までにない感動を受けました。曲の流れからしても、今までの中で一番大好きなナンバーです。

M18 : ママ、ぼくよ (モリーナ)
所長からヴァレンティンの動向を探るよう命令されていたモリーナ。なかなか実行に移さないモリーナに、病気の母の声を電話で聞かせる所長。電話の向うの母にモリーナが語り掛けます。大好きなお母さんが、息子を失って気弱になっているというのが市村さんの歌声から伝わってくるんです。「ママ、僕よ」としきりに語り掛ける姿が涙を誘いました。「幸せはママ、どこにある?わかんないね」という言葉が、すごく重い言葉のように感じてしまいました。モリーナの辛い心のうちを想うと、こちらも辛かったですね。市村さんの震える歌声が印象的でした。

M19 : 彼のためなら (蜘蛛女、モリーナ、ヴァレンティン)
明朝釈放になるというモリーナに、ヴァレンティンは仲間への伝言を頼もうとしますがモリーナはかたくなに拒みます。向うを向いてしまったヴァレンティンに「こっちを向いてほしい」と彼のためなら何でも・・・と歌います。そしてヴァレンティンは「俺のためならこいつは何でもやるさ」と、そして蜘蛛女がふたりの運命を操るように歌います。このナンバーは3重奏のようになっているのですが、そのメロディーラインがとってもドラマチックで感動的なのです。でも、その歌詞の内容はとっても切ない。特にモリーナはヴァレンティンを愛する気持ちが押さえ切れなくなって、「お願い、彼にこっち向かせて」と歌うのですが、これが本当に悲しい響きなんです。市村モリーナがとっても小さく見えました。とってもドラマチックなナンバーでした。

M20 : 蜘蛛女のキス (蜘蛛女)
やがて訪れるふたりの運命を暗示するかのように、蜘蛛女が糸を張り巡らせながら歌います。とにかくこれは迫力!麻実蜘蛛女に尽きます!!縦横無尽に張り巡らされた蜘蛛の糸が迫力で、再演時には客席にまでその光の糸がかかっていたほどです。大柄な麻実さんが「どんなにあがいても逃げられやしない!」と歌うところは本当に迫力です。なんだか聞いていて思ったのですが、これは女性の歌っていうよりむしろ男性的(郡部の歌)な感じの歌でしたね。それを見事に表現していた麻実さんは本当にさすがとしかいいようがありませんでした!

M21 : 塀の外4 <ラッキーモリーナ> (刑務所長)
所長の知りたかった名前をついに明かさずに出所したモリーナ。そのモリーナを24時間監視するように所長が不気味に歌います。不気味に・・といっても、音楽自体は不気味というわけではなく(^^;)むしろ、あっけらかんとして明るい感じでした。でも、背景にあるものはなんだかとてもスリリング。モリーナの最後の時間が刻一刻と迫ってくるのが見ていてなんだかとっても辛かったですね。それにしても所長の高品さん。初演のときよりも再演のときのほうが歌が巧くなってた(笑) 迫力にさらに磨きがかかった感じでよかったですねえ。


22 : 映画でだけ (モリーナ、全員)
銃で撃たれたモリーナの、最後の舞台は大好きな映画の世界。華やかな映画のスクリーンの中、彼に関わったすべての人が見守るなかで歌い踊り、最後に大嫌いだった蜘蛛女のキスを受け入れるモリーナ。その前の展開はすごく重くて胸が痛くなるほど辛いのに、この最後の場面は希望さえ感じさせるほどとっても明るいし、お茶目でかわいいんです。それにすごくあっけらかんとして、最後にはタンゴもある(笑) 所長も、看守も、みんなとっても明るいキャラクターになってるんですよねえ。もう見ていてとっても気持ちのいいラスト。この話を、ここまであっけらかんと明るい終わり方にするなんて、ハロルド・プリンス、作詞作曲のカンダー&フレッド、なんて素晴らしいんだあ!ラスト、モリーナと蜘蛛女がキスをするときの音楽が超ドラマチック!