「KUNISADA −国定忠治−」   銀座セゾン劇場

主なキャスト

国定忠治 … 市村正親 / お徳、お町、お鶴 … 藤真利子 / 堀田、虎吉 … 清郷流号 / 泉、勘太 … 串田杢弥 / 円蔵 … 中嶋しゅう / 浅治 … 西川忠志 / 安五郎 … 堀米聰 / 弁之助 … 三松明人 / 清二郎 … 小西泰久 / 五郎 … 大川浩樹 / 治右衛門 … 二瓶鮫一 / 京蔵、岩蔵、市助 … 真名古敬二 他の皆さん

嘉永3年、ついに御上に捕らえられた国定忠治(市村)は処刑のために故郷上州へと護送される。その護送の旅のなかで忠治は今までの自分の足跡をしみじみと振り返る。8年前の田部井村、6年間の旅烏から戻ってきた忠治だったが、その間縄張り争いや、子分の数の減少、まだ見ぬ不吉な敵、そして次第に厳しくなる取り締まりといった事件に次々と見舞われる。次第に疑心暗鬼になっていく忠治を支えたのがお町、お徳(藤)の2人の愛人だった。ところがある時、子分の浅治(西川)に有らぬ疑いをかけてしまった忠治は彼に母親、叔父を殺すよう仕向けてしまう。次第に子分達との歪みが生まれ、ますます心の焦りを隠せなくなっていった忠治は…

 

10月2日(土)1階 4列 26番 18時30分開演

感激度 ★★★★★☆

セゾン劇場に足を運んだのは実に久しぶりでした。この劇場ももうすぐクローズ…通った劇場ではないけれど、やはりひとつの劇場が姿を消してしまうのは寂しいものがありますね。おそらくこれが最後のセゾン劇場になるんじゃないかなあ…と思うとなんだかちょっと切なかったです。
さて、今回の「国定忠治」!はっきりいって、市村さんが主演でなければ観に行かなかったであろう演目だったのですが(笑) さすが市村さん!この任侠ものを見事なエンターテイメント舞台にして下さいました〜〜(^○^) かなり見ていてドキドキするところが多かったです、というのも… 座席の位置がまさに舞台にかぶりより状態(@_@) 時々、舞台の真中が見えなくなることがあったのですが、お客さんの頭が邪魔なのではなくて舞台の上の役者さんの配置で見えなかったという(苦笑) まさにものすごい位置でこのお芝居を拝見した次第です(^_^;)

舞台のセットも超日本的で、まるで歌舞伎の舞台を観に来たような感じ。脇に木の扉があってそこに時代や場面が客席に分かるように変わるような仕組みになっていました。過去と現在が交互に出てくる構成だったので、この演出はありがたかった(笑) また、上から映画の様な画面が出て来て、忠治の歴史の解説が字幕プラス音声でご親切に語られていました。はじめこの画面が出て来て音声があまりにも映画チックだった(しかもすごいカッコよかったんです)ので、自分が映画館にいるのではないかという錯覚に陥ってしまったほどでした(笑) そういった意味では非常に画期的な舞台でしたね。
まず一番始めに突然、忠治のカッコイイ殺陣シーンがありました!これがすごい迫力!!それにしても市村さんの殺陣はすごく奇麗ですねえ〜〜。感動しました!流れるようなあの剣捌きは最高です(^○^) おお〜〜〜!と思っていると、次の瞬間は暗く処刑場へ護送される途中の忠治に早変わり(@_@) あの場面説明がなかったらちょっと分かりにくいところだったので助かりました(^_^;) 護送途中の忠治がうどんを啜るシーンがあるのですが、啜る途中でうどんが一本ぽろりと落ちてしまったのです。でも、セリフのやり取りを聞くとこれはどうやらアドリブではない模様…だったのですが、お箸でその1本のうどんをすくおうとするのですがなかなかこれが取れない市村さん(笑) 4-5回うどんとの格闘を繰り返していたのは、あれは芝居ではなかったようで(笑)客席から笑い声も起こってました(^_^;) で、市村さんどうしたかと申しますと、「ええい、もういいや」って感じで手で落ちたうどんを口に入れてました(笑) それがまた市村さんらしく、なおかつ芝居の一部に溶け込んでいて楽しかったですねえ〜。
この護送シーンは周囲の明かりも暗く、静かな感じだったのですが、一度8年前になるとガラッと雰囲気が変わりまさに男たちの熱気に満ち溢れた舞台に!!そのギャップがあまりにもすごくて私は圧倒されっぱなし!!舞台があまりにも近かったこともあったのですが、なんといっても、フンドシ姿の男性群が目の前でひしめいているのは…かぶりつきで観るには刺激が強い(爆) この光景に慣れるのにちょっと時間がかかった私(爆) いや、だって、すぐ目の前にたくましい男たちのお尻が…お尻が…って感じで(笑) あと、それに加えてもっと圧倒されたのが、縄張り争いから戻ってきたばかりの子分達の激しい息遣い… もう、すぐ近くの舞台で10数人の男たちが一斉に「ハ〜ハ〜ゼィ〜ゼィ〜・・・・・」とものすごい勢いでやるものだからこちらはもう… たまったものではありません(笑) と、まあ、序盤の頃はずっとそんな余計なところに目がいって興奮してしまった私なのでした(爆)

そんな感想ばかりではなんなので(爆) キャストについて少し触れてみたいと思います。
まずはやはり市村さん!洋物のミュージカルでの市村さんもはまっているのですが、和物の市村さんをはじめて見て…「国定忠治だ!」と思ってしまったのはやはり市村さんが洋物だけには収まらない俳優さんなんだ!!ということでしょうねえ。国定忠治の印象っていままでは「けっこうカッコイイヒーロー的存在」というものだったのですが(というより、忠治自体を名前以外あまり知らなかった私(爆))、市村さんの演じる忠治はとてもやんちゃな子供みたいな面を持っているすごい人間的な忠治でした。だから変にヒーロー扱いされていないし、逆に心の弱い部分がかなり浮き彫りになっていてすごく感情移入しやすい魅力的な人物に思えました。「ああ〜、今の時代にもいるよね、こんな人。」みたいな(^_^) それでも彼を慕って集まってくる子分達の気持ちがすごく伝わってくる…これはやはり市村さんがいかに魅力的な忠治を演じたかということだと思うんです。なぜか、憎めないんですよねえ、市村さんの忠治って。こういった人間像って私はとても好きなので、見ていてとても楽しかったです。それに、やっぱり客席を意識した要所要所のつぼの押さえ方も最高!!やっぱりすごい役者さんだ〜〜〜〜市村さん!!!
今回3役を演じた藤真利子さん。テレビではよく拝見する藤さんですが(ガラスの仮面ややんちゃくれなど(^_^))、実際に観る藤さんはめちゃくちゃ美人!!しかも、女性の色香がプンプン香ってくる(なんかすごい表現ですね(爆))のはすごい!初登場シーンは忠治の第1の愛人「お徳さん」だったのですが、着物の着こなしがものすごく色っぽいんですよねえ。口はすごく悪くてヤクザ口調なのですが(笑) 忠治に甘えるときなどの色気はまさに「大人の女性」って感じ!! そして第2の愛人「お町さん」はお徳さんとはまったく性格の違う、可愛らしさを披露… すばらしい〜! 一番すごいと思ったのが舞台の上でのひとり二役(笑) あの早変わりはビックリしました〜(@_@) そして本妻の「お鶴さん」 成りは百姓で2人の愛人よりも品疎な感じなのですが、見ていて一番魅力的な女性でした。2人いる愛人の存在を知りながらも、影からずっと忠治を思ってきた切ない気持ちが伝わってきてよかったですねえ。特に処刑される忠治の前に現われたとき…「処刑されるところを見るのが辛い」と立ち去っていく姿にはジーンときました(;_;) う〜ん、藤さんてすごい女優さんだ!
子分達で印象的だったのがまず、西川忠志さん。彼はずいぶん市村さんの芝居に登場していますね(^_^) 荒くれものの子分のなかでひとりだけちょっと知的な雰囲気を醸し出していました。忠治に疑いをかけられてしまったときの辛そうな表情、そして母親を殺してしまったあとの絶望感漂う表情はとても印象的でした。
髪型でものすごく目を惹いたのが五郎役の大川さん!いや〜〜〜〜あの角刈り頭はこの芝居のためにカットしたのでしょうか〜〜〜(@_@) その頭に負けじの鬼気迫ったすごい演技を見せてくれました!特に、あの「お控えなすって〜」のあとの早口セリフは圧巻でした!
圧巻は圧巻でも違った意味でドキドキしたのが堀米さん。そう言えば、昨年の「シーラヴ」で市村さんと共演してたなあ…なんてことを思っていたのも束の間。目の前でこの芝居唯一の結構きわどいラブシーンが(@_@) もうすぐ目の前で堀米さんのお尻が(爆爆爆) しかも、フンドシの締まり具合が結構ゆるめで… (爆爆爆爆) … これ以上は語るまい (完全に自爆… こんな感想でごめんなさい、、、堀米さん)
もうひとり注目した子分が清二郎役の小西さん。この方初めて拝見するのですが、殺陣シーンの迫力はすごかったですねえ。それに、水もばっさりかぶってたし(^_^;)まさに熱演。で、熱演すればするほどその顔は「すすぬ電波少年」で有名になった「なすび」に似ている〜〜〜〜(爆) なので、敵に立ち向かうためにスローモーで迫ってくるところ(ここで思わず思い浮かんだのは…レ・ミゼラブルのあのシーン(笑))では友人と「なすびが襲ってきたのかと思っちゃった」…(爆) 特に私達側に来ることが多かったのでけっこう注目して観てしまいました(笑)

は…!!!私ったら、はっきりいってほとんどまともな感想を書いていないじゃないか(爆)
あ、舞台で印象的だったシーンをもうひとつ。最後の国定忠治の磔場面。これを見たとき、真先に私の脳裏に浮かんだのが「ジーザスクライスト・スーパースター〜ジャポネスクバージョン〜」 そう、市村さんがジーザスにみえてしまったのです〜〜〜(爆) 磔は西洋も日本も同じ感じだったんですね。でも、忠治のほうがジーザスよりはましかな…釘で刺されてもいないし、棘の冠もしていないし。それでもやっぱりあの姿は痛々しいです・・・。市村さんの忠治がとても魅力的な人物だったのでなおさら観ていて切なくなってしまいました。それにまわりには彼が信じていた農民達が独りも来ず、最期を見守ったのが影の敵と忠治を恨みに思う浅治の妹とは…かなり残酷ですよね。突かれる瞬間、忠治のまわりにたくさんの子分がやって来て「浪花節」に合わせて楽しそうに踊る姿が何とも幻想的でよかったです。その時の忠治の嬉しそうな顔が…なんだかちょっと救いでした。しかしあの場面で、「浪花節」とは(笑)

カーテンコールも盛り上がってました〜!浪花節に合わせて躍りながら満面の笑みで登場する市村さんはやっぱり最高!!! あと、舞台に全員が正座して「本日はどうもありがとうございました」と挨拶する様はまるで歌舞伎舞台のようで圧巻でした(^_^) たまにはこういったに本物の舞台もいいですね(^○^)