「ART −アート−」池袋・サンシャイン劇場

注意:
今回の感想は、この舞台で見たような芸術性をちょっと真似してみようと思い、わざと文字色を見にくくさせました。読みやすくするためには、ドラッグをしていただくか、[編集]→[すべてを選択]をしてみてください。このページはもちろんタダです(爆)

キャスト

マーク 市村正親 セルジュ 益岡徹イワン 平田満

<あらすじ>
マーク
(市村)、セルジュ(益岡)、イワン(平田)は15年来の大親友。ところが、芸術嗜好のセルジュが白い一枚の現代アートを500万円払って購入したことから、今までの3人のバランスが崩れていく。セルジュの行為がどうしても理解できず彼を非難してしまうマーク、自分の価値観を真っ向から否定されて憤慨するセルジュ、その二人を何とか収めようとあれこれ奔走する羽目になるイワン。やがて、一枚の絵から始まったこの騒動は3人のそれぞれの今までの胸中を吐露していくまでに発展していく…。

 

6月19日(土)1階12列31番 17時開演

感激度 ★★★★★★ (★6つで満点)

公演前からこの濃い〜〜〜キャストに話題が集中していましたが(^_^;)、この方達はすべてにおいて濃厚でした!その存在はもちろん、演技力、カリスマ性…とにかく「すごかった!」というのが正直な感想です。なんていうか・・・久しぶりに「芝居を見た」っていう実感があるんですよねえ。良くぞこの3人を集めたな〜なんて思ってしまいます。イワン役の平田さんは最近テレビでの露出が多いですが、実は、つかこうへいさんに師事していた実力派だし、セルジュ役の益岡さんは最近知ったのですが、無名塾出身者!そしてそして、市村さんといえばもうありとあらゆる舞台をこなしてきた天性の俳優さん!う〜〜〜〜ん・・・こう書いてみると、すごさを改めて実感してしまいます。この3人を見れただけでも観にいった甲斐があるというものです!

幕開きはセルジュが購入してきたばかりの一枚の白い絵を嬉しそうにマークに見せるところから始まるのですが、幕が開いた瞬間、どーーんと舞台に立っていらっしゃる黒服姿の市村さんにちょっとドキドキしてしまいました。舞台セットがほぼ真っ白(それでいてなんだかすごいオシャレ!!)だったため、黒の衣装がとても映える!(ちなみに、登場人物は3人とも黒い衣装)。これだけでもうすっかりこのお芝居の魅力に引き込まれちゃったのかもしれないなあ・・・私。本当にカッコよかったんですよ〜市村さん!それに髪型がいつものボンバー(すごい失礼(爆))じゃなくてきっちりと整えられているのも久しぶりでとても魅力的でした(^○^)
セルジュ役の益岡さんの絵を持ってきた時の、そして見せている時のあの嬉しそうな得意そうな表情がとっても魅力的!この間、約3分半(もっとかなあ)くらい二人の間にセリフはないのですがその表情だけでも退屈させないのは流石です。セルジュの得意満面の顔とマークの理解しようとしてもどうしても理解できないといった苦笑いの顔の対比が実に面白かったですねえ。ちなみに、その絵というのは真っ白なキャンバスに薄く白に近い色の線が数本斜めと横に引かれているもの。この絵になんと500万円もの大金を払ってしまったセルジュ(^_^;) う〜ん、芸術性の低い私としてはやっぱりこの場合マークのほうが理解できるなあ。「このクソったれの絵」とは言わないと思いますけど(苦笑)、「こんな馬鹿げてる絵」とは言っちゃうかもしれない(爆) セルジュにしてみれば余計なお節介!て怒りたくなる心情でしょうけど、親友が訳も分からない絵に大金を費やしてしまったことへの妙な苛立ちを感じてしまうマークの気持ちがなんだかすごくよく分かるんですよねえ。少なからず、似たような体験が自分にもありますし(^_^;) でも待てよ…よ〜く考えてみると今の自分の状況ってセルジュの立場なのかも…(爆) 私が観劇することにかなりのお金をつぎ込んでいるっていうの…これもかなりヤバイことだよなあ(苦笑)… なんだか見終わってからかなり時が経っているというのに色々と考えてしまう私です。
ともかく、この1枚の絵をめぐって険悪なムードにどんどんとはまっていってしまうマークとセルジュの過程がとても面白かったですね。本人達にとってはものすごくシリアスなんだけど、見ているこちらとしてはそのやり取り自体だけでも笑えてしまう…これって、巧い役者さんだからこそできる業ではないでしょうか。で、この2人のイザコザになんとか仲を取り持とうと奔走していくのがイワン役の平田さんなんですが、彼が登場したことでこの芝居がますます笑える舞台になったのがまたすごい!イワンって今度結婚する予定でとてもハッピーなはずなのに、自分よりもパワフルなお嫁さんと自分の母親との間に挟まれてアタフタしてしまうすごい憎めないキャラクター(文房具やさんっていうのがピッタリ(笑))なんですが、これが、平田さんにぴったり!!(というとなんだか失礼かもしれませんが) 気が弱いくせに、何とか二人を仲良くさせようとあれこれ試行錯誤するのにコトゴトク失敗し、やがて巻き込まれていってしまう過程がすごく面白かったです(^○^) 喩えは悪いですが、私はイワンを見て『MッチーとSッチーを仲直りさせようと余計なお節介を焼いてそのとばっちりを受けたK氏』がちょっと頭を掠ってしまいました(爆)←K氏とイワンとのキャラクターはまったく違いますがね・・・念のため(^_^;)

それにしても、1枚の絵からあれだけ人間の胸の内が次々と吐露されるとは正直驚きです(*_*) 3者3様…私には3人の言い分がすごくよく分かっちゃうんですよねえ。いつもは自分のことを崇拝してくれていた友人セルジュにある種の優越感を抱いていたマーク。ところが、芸術嗜好の高いセルジュはあるとき自立し、自分の価値観の赴くまま一人歩きを始める…そう、マークはこれを友人の裏切りだと思ってしまうんですねえ。これってすごい勝手な思い込みだと端から見ると思えますが、私にはマークの寂しさがなんだかすごく伝わって来ました。これに対するセルジュの「自分の価値観を人に批判される覚えはない」というのもすごくよく分かる、そして思わずマークの奥さんの悪口も口走ってしまう(この奥さんの煙草の煙を避ける仕草っていうのがすごく笑えた(笑))。これだけだととてもシリアスチックなやりとりなんですけど、これに笑いのペーソスを加えてくれているのが炸裂トークで二人を翻弄させようと必死になるイワンの存在。言い合いになったときに一番必死だったのはもしかしたらイワンだったのかも(^_^;) でも、イワンみたいなタイプの人って多いんじゃないでしょうか。笑っちゃうんだけど、彼の苦労は見ていてとても痛々しいのです。

このお芝居、休憩なしの1時間30分だったのですが、クライマックスにきてもますます彼らの言い合いはヒートアップする一方だったので、いったいどう収拾つけるのか本当にヤキモキしてしまいました。一応の収拾はしたんでしょうけど、すっきりとしたわけではない。でも、お互いの胸のうちを暴露しまくった結果、彼らの友情はますます強まったんじゃないかなあ〜なんて思いました。3人ともなんだかんだお互いの悪口を言いまくっていても、それは結局、3人がお互いを必要としていたから…。そう考えるとなんだかすごく羨ましいですねえ・・・男の友情って。それにしても、あのクライマックスで市村マークが白いキャンバスに描いた絵が絶妙でございました(笑)最初、鳥の顔のように見えたので「いったい何を描いているんだろう?」と思ってしまいましたが、見る見るうちに現われたのは斜めの薄い白い線を滑っていくスキーヤーのイラスト(笑) いや〜〜〜ナイスな発想!!!しかも市村さんの絵のセンスが抜群にいい!思わずブッと吹き出しちゃいました(^_^;) またラストにマークとセルジュが一緒になってその絵を消す姿もなんだか笑えました。私的に見るとなんだか消えてしまうのがもったいなく感じられてしまったんですけどね(^_^;)

さて最後にキャストの感想…といっても、もう語るにい足らずって感じですが少しだけ。
イワン役の平田満さんの見せ場はなんといっても、3人で映画にいこうと約束していたのに5分以上遅刻をしてきた時の彼の言訳シーンでしょう(これが発端となり、3人の関係がますます険悪になってしまうのですが(^_^;))!いや、すごい!!うわさには聞いていたけど本当にすごい!たったひとりでセリフのトチリもなく息つく暇なく約5分間くらい(もっとだったかも!?)の炸裂トークを展開したのには心底ビックリいたしました(*_*)言訳の内容っていうのはフィアンセと母親との板挟みに遭っていたというものだったんですけど、その理由の如何を問わず、私はただそのダイナミックなしゃべりに唖然としてしまいました。これだけでも観にいった甲斐があるってもんですわ(^○^) で、一緒に見にいった友人が帰り際に一言「平田さん、寿嘉子(橋田先生のこと(^_^;))オッケーだよね」(笑) いやはや、まったくそのとおり!オッケーどころか余裕だよ(笑)
セルジュの益岡さん、彼の顔ってもともとなんだか神経質系って感じがしていたんですが、今回のお芝居ではそれがすごく生きてきてました(笑)ってすごい失礼なこと書いてるような気がするなあ(爆) 彼がむきになって白いキャンバスを裏に下げてしまったりするのがなんだか知らないけど妙に笑えるんです(^_^;) 市村さんもそうですけど、益岡さんも間の使い方がすごく巧いなあ〜と思ってしまいました。
そしてマーク役の市村さん。いつもは観客席を意識してアドリブたっぷりかましてくれる楽しい嬉しい役者さんなのですが、今回は綿密な本格的ストレートプレイってことでアドリブが一切なかったように思われました。なんだか新しい市村さんの魅力発見ってかんじでしたねえ(^_^) いつもとは違う演技プランのはずなのに、やっぱり観客の心をつかんで話さないお芝居はホントさすがです!!面白いんですよ〜その仕草ひとつひとつといい、セリフの間の取り方といい(^○^)特にセルジュへの暴言を後悔して優しく接しよう…と必死になるところがすごい面白かったです。
カーテンコールでは市村さん満面の笑みを見せてくれて(^○^)ここでようやくお客さんと対話できるっていう喜びみたいなのが伝わって来てこっちもすごく嬉しかったです(^○^) 5回くらいのカーテンコールで益岡さんと平田さんを引っ張って何回も顔出ししてくれた市村さんが私はとても好きです!!

誰の心にもマーク、セルジュ、イワンはいる… コメディだけどなんだか人間の心の中を見透かされたようなちょっと考えてしまうような… 何とも言えないすごい芝居を見たって感じです。