3月24日(木) 14時〜
『お父さんの恋』 パルコ劇場
出演者
堺雅人、前田吟、星野真理七瀬なつみ、菊池麻衣子池田成志

海のそばの真新しい一軒家でねたきりの植物状態になっている杉本正樹(前田吟)。妻に先立たれ、3人の子供たちも独立してめったに家には現れない。そんな正樹の世話をしているのは住み込みヘルパーのさおり(星野真里)。さおりは毎日のように正樹に会話をしているがごとく優しく語り掛ける。そんなさおりに正樹も答えているのだが植物状態なのでその真意は伝わらない。しかし、優しいさおりや近所の医者・一平(池田成志)に囲まれ正樹はそれなりに幸せだった。
そんなとき、母親の七回忌の為に久しぶりに子供たちが家に戻ってきた。長女の正子
(七瀬なつみ)と次女の美樹(菊池麻衣子)はさおりの存在を怪しいと感じ、次々と尋問形式で問い詰める。また、2人はどちらが父親を引き取るかでもめてばかり・・・そんな様子に激怒したさおりは『正樹さんと結婚する』と言い放ち、正子と美樹は大混乱。特に次女の美樹はさおりを辞めさせようと必死に。そこへ末弟の大樹(堺雅人)がフラッと帰ってくる。大樹は小説家になる夢を立たれてから自分の道を見失い、30過ぎた今でも無職(ニート)生活を続けていた。姉2人がさおりをうっとうしいと思っている中、何故か大樹だけはさおりを擁護する立場になる。正樹もさおりを愛しく思っていて彼女を必死に守ろうとするが植物状態ではどうにもならない…。しかし、さおりは何か秘密を抱えているようで…

堺雅人さんが出演する舞台ということで、チケット確保が非常に難しかった今公演。ダメモトで某サイトからアクセスしてみたところ奇跡的に購入できた、まさにプラチナものチケットでございました。パルコ劇場はけっこうお久しぶり♪この劇場は見やすいからけっこう好きなんですよね(^-^)。で、中に入ってみるとWOWOWの撮影カメラが多数入っておりました。私が観に行く公演ってかなりの確立でカメラ撮影日なんですよ(笑)。カメラ撮影日って役者もかなり気合はいるみたいなので見る前から楽しみになってしまいました(^-^ゞ。入り口には多くの楽屋花があり、ど真ん中には『新選組!』で近藤局長を演じた香取慎吾君からの大きなのが置いてあったのがなんか嬉しかった!でも花は咲いてなかったなぁ(^-^;; 
さてかなり苦労してチケットを手に入れたわけですが、観劇前は題名や大まかなストーリーを見て
「ほのぼのしてちょっとホロッとくる作品」といった軽いテイストものを想像していた私。ところが!!私の想像をはるかに超えたとても深い大感動作品だった!!もう1幕中盤あたりから涙がボロボロ止まらなくなっちゃって、自分でも驚くほど終始号泣状態に(T_T)。いつもは涙が出てもあまりハンカチ出したりしないんですが(笑)、今回はあわててかばんの中からハンカチを取り出して目頭抑えっぱなしになってしまいました。劇場出たとき、絶対目が赤かったよ・・・(苦笑)。私の周りからもかなりすすり泣きが聞こえてきて・・・ほんと、こんなに泣けるなんて思わなかったよ〜〜(T_T)。

まず幕が開いてビックリしたのがセットです。真新しい一軒屋という設定だったのですが、すごく居心地の良さそうな
妙にリアル感のある部屋でした。居間の端にはクローゼットや大きな鏡があってそこに正樹用の介護ベッドが置かれてました。で、下手側にはキッチン、そしてコタツ部屋も(^-^)。なんか本当に住んでみたいような素敵な感じでセットっぽいところが感じられなかったのがすごいなぁと思ってしまった。あと、庭にはものすごく大きな桜の木があってクライマックス付近とかにサラサラと花びらが落ちてくる演出も非常にきれいでした。私の席からは見えなかったのですが、この庭もかなり凝っていたようで昔飼っていた犬の小屋もあったらしいです(笑)。
物語は海の音が聞こえ、庭の大きな桜の木が美しい平和な状況の中で正樹が子供たちに殺されかける夢にうなされているところから始まります。そこへ介護ヘルパーのさおりが登場し、汗をかいた衣服などの交換をしながら正樹に優しく語り続け正樹もそれに答えています。この時の前田吟さん演じる正樹はかなり健康そうな状態で傍から見ると
『身体が思うように動かせない』だけであとは元気なお父さんって感じなんですよ。さおりとの会話もちゃんと成り立っているように見えるし。あ、オムツの交換の時は『選手交代』って言ってそばにあった大きなぬいぐるみのクマを自分に見立てていたシーンはかわいかったなぁ♪(吟さんはカーテンの奥に隠れてこっそりお着替え中・・・でもさおりの問いかけには嬉しそうに答えてます 笑)。無事にオムツ交換されたクマちゃんはこれでお役御免になって正樹さんの洗い物と一緒に退場していきました(^-^;;。こんなほのぼのした場面のあと、突然次女の美樹が尋常ではない状態で帰宅。ここから物語が一気に動いていきますがこのあたりの演出も上手いです。ただ事ではなさそうな美樹に正樹は『悩み事があるならお父さんに話してみろ』とベッドの上から必死に語りかけますが美樹は一切無視・・・なんて冷たい娘なんだろう!と思っていると続いてまたまた血相を変えて『痴漢に追いかけられた』と長女の正子が飛び込んできます。ここで正樹はまた娘の心配をして必死に話しかけますが、その声にも彼女らは本当に全く無視状態で観客から見るとものすごく非情な娘達に思えてしまいます(^-^;;;。で、正子が追いかけられたと言っていた相手は昔馴染みで隣近所の医者・一平頭から血を流しながら庭から登場した成志さん演じる一平はめちゃくちゃ滑稽で思わず噴出しちゃいました(笑)。しかし正子、怪しいと思っただけで石を投げつけて逃げてくるとは・・・恐いぞ(笑)・・・っていうか『痴漢』だと勝手に思い込まれちゃった一平もかなり笑えますけどね(笑)。この一平、正樹の世話をしている医者なのですが苗字が『藪』・・・つまり続けて読むと「やぶ・いっぺい」になってしまうわけで・・・正子から『ああ!藪一平!』とフルネームで呼ばれたあとすかさず『フルネームで呼ぶなぁ!』とキレてたのがまためちゃくちゃ笑えました(^-^;;。こういったお芝居は成志さん、お見事です♪ で、この一平さんの登場で正樹さんの現在の状況が明かされるわけです。正樹さんは奥さんが亡くなったあと倒れて2年間植物人間状態・・・今まで発してきた言葉の全ては正樹さんの心の声で周りの人間にはその声は聞こえていない状態だったのです(T_T)。。正樹さんのベッドの傍には一平が開発したという妙なライトが点っているのですが、これは生命確認ライトだということ・・・つまり、ライトがついているときは正樹さんがまだ生きているという証拠なのです。それがなんだかとっても哀しかった・・・。そのライトでしか正樹さんは『生きている』と確認してもらえないんですよねぇ(T_T)。さおりはそんな正樹さんにまるで会話をしているかのように語りかけ続けていたんですねぇ・・・ええ子やわぁ(←なぜ関西弁!? 爆)
長女の正子は玉の輿結婚したものの
夫婦関係が微妙な状態で浮気めいたメールに忙しく、次女の美樹はインターネット会社の社長でありながらトラブルをかかえています。そんな自分のことで忙しい彼女たちは植物状態の父親をどちらかが引き取るべきだという話で大モメ状態に。こういう展開ってすごくありがちだと思うんですけど、現実問題ありえる話なんですよね…。なんか妙にリアルな話に思えてしまいました。もちろん、自分の親の引き取り先でモメルなんていうのはとても残酷なことだし傍から見ると許しがたいことなのですが、一方で彼女達の言い分も少し分ってしまう…。なんかそんなことを感じてしまう自分がすごく複雑で・・・私も年をとってしまったのかなぁと。ただ、彼女達は父親はもう『植物状態』という頭があって正樹さんとのコミュニケーションを一切取ろうとしていない・・・自分のことだけで精一杯な彼女達はやっぱり残酷です(-_-;。正樹さんのことで激し言い争う2人を見たさおりは『自分の親に対してそんな醜い言い争いをするなんて許せない』と憤慨し、『私が正樹さんと結婚して一生面倒をみてあげたい』と宣言!さおりの言葉に姉妹は呆然とし、当の正樹も動揺を隠せません。このときのオロオロしちゃう正樹さんの様子がなんかすごく可愛かったです(オロオロしてたのは心の中の状態なんですけどね)。でもいつも優しく語り掛けてくれた、自分の一番信頼している子から『結婚したい』という真剣な言葉を聞いた時の正樹さんの喜びは大きかったと思います。この言葉に正樹さんが本気になってしまい、さおりに恋をしてしまうのはすごく自然な流れではないでしょうか。正樹を車椅子に乗せてさおりが外出しようとした時、堺さん演じる大樹が登場。さおりの『結婚』宣言で呆然となっている周りの状況を理解できず『?』マークでいっぱいの大樹(笑)。目の前を父の車椅子を引いて『散歩に行ってきます』と出て行くさおりに反射的に『いってらっしゃい』と答えている大樹くんは可愛かった(^-^)。堺さんってなんか周囲を和ませる妙なオーラがありますよねぇ。

さおりと正樹が散歩に出かけた後、姉2人はさおりの『結婚』宣言に憤慨して今すぐにでも彼女を辞めさせようと躍起になります。特に次女の美樹はさおりの存在自体に嫌悪感を抱いており、何とか追い出そうと必死。そんななか、一平とのんきにコタツで将棋をさしている大樹(笑)。この将棋をさしている時の堺さん・・・
正座して腕組して考えている姿が・・・山南さんだった(笑)!一瞬大樹くんに髷姿が見えてしまった私は未だに『新選組!』の魅力にとりつかれているようです(爆)。で、この将棋シーンがけっこう面白くて、一平さんが『待った!』をすると大樹くんが『先輩!我が高校将棋部の精神を忘れたんですか!先手必勝、待ったなし!』と容赦ないお言葉を(^-^;; たまらず一平先輩は『参りました』と負けを認めてしまうのでありました(笑)。ここで『やったぁ〜』と無邪気に喜んでいる大樹がまたかわいい♪本当に末っ子って感じでした(^-^)。しかし、和やかなのはそこだけで、姉2人・・・特に美樹はさおりの件で大憤慨している最中、のんきな大樹を見てイライラを爆発させるのも当然の流れ(^-^;。『よくこんな時に遊んでられるわね!!』思いっきり自分のスリッパで大樹の頭をペシーッと叩いておりました(笑)。いや〜、なんかすごい久しぶりに見た気がする、このスリッパたたき!以前テレビのコントとかでけっこうありましたよねぇ。この叩かれっぷりがやけにお見事でして、大樹が『我関せず』的な態度を取るごとに美樹さん笑いもせずにペシペシ連続で叩きまくっておりました(笑)。逆に叩かれまくってた堺さんのほうがちょっと吹き出し気味だったりして(成志さんや七瀬さんもちと受けてたかも 笑)こちらもつられて笑っちゃいました(^-^)。そんな暢気そうに見える大樹、実は大学も行かずパチンコで借金を作って20代で自己破産してしまった(一平にも借金していたことがバレ、大樹に責められた一平がなんか憐れだったけど笑えた 笑 成志さん、サイコーです!)、とんでもない経歴を持っているのです。しかも、30過ぎた今でも就職せずに相変わらずパチンコなどでフラフラしている・・・まぁ、グレなかっただけいいのかもしれないけど・・・ヤバイでしょう(苦笑)。で、そのことを美樹に激しく詰られると言葉に詰まってしまうところがすごく脆い…。あの強烈な姉2人に囲まれていた大樹は自分の居場所を失っていたのかもしれません。
それから時間がしばらく経ち、あたりが暗くなってきても正樹を散歩に連れたままさおりはなかなか戻ってこない。業を煮やした美樹は大樹に迎えに行くように命じ、彼はしぶしぶ迎えに出かけます。散歩先ではさおりが正樹に正子や美樹にひどいことを言ってしまったと詫びています。正樹は心の中で
「さおりちゃんは自分に娘達の関心を寄せさせようとして言ったんだろ」と語りかけますが、さおりはその声が聞こえているかのように『結婚したいというのは本当のこと』と告げるのです。彼女は本当に正樹のことを大切な存在に思っているんだということがジワーッと伝わってきて思わずホロッときてしまいました。正樹はその言葉を聞いて本気で彼女のことを愛していきたいと思い始めます。ただ、さおりの様子はどこか寂しげで・・・そんな様子を大樹はずっと見つめていました。大樹の存在に気付いたさおりは正樹の散歩を彼に任せ先に家に戻っていきます。植物状態で何の反応も見られない正樹に語りかけていたさおりに複雑な感情を抱いている大樹もなんだか見ていて哀しい…(;_;)。散歩を任された大樹は家に帰らずに車椅子の正樹を連れてパチンコ屋へ行ってしまいます(^-^;; そんなところがなんだか不安定な大樹らしい。パチンコ屋からの帰り道、大樹は相当儲かったみたいですがその表情はちっとも嬉しそうじゃないんですよ。逆に車椅子の正樹は息子のパチンコの腕に大感激して心の中で手放しで大樹を褒めちぎっているのですが、大樹はその声に耳を傾けようともしません…。父の語り掛けに息子が全く答えようとしていないこのシーンは見ていてとても胸が痛くなりました(;_;)。やりきれない想いを抱えている大樹も、必死にコミュニケーションを取りたがっていながらその思いが通じない正樹もとても哀しくて思わずウルッとしてしまいました(T_T)。

一方、家に戻ったさおりに一斉に結婚反対の意志を伝える正子と美樹。結婚というのはお互いの意思と利害が一致してするものだと力説する2人にさおりは
「私は正樹さんを愛しているし、正樹さんは私の介護を必要としているのでその条件は満たしている」と言い放ちます。そう言われてみれば、そうなんですよね。さおりと正樹の意思は観客から見れば完全に通じ合っているし結婚することもそんな反対されるようなことではない。その言葉にますますヒステリックになる美樹・・・彼女はなぜあんなにさおりを激しく詰り続けるんだろうとこの時点で思ってしまいました。さおりを詰っている美樹の様子からは、だんだんと父を取られたくないといったような娘としての感情が見え隠れしてくるんです。そんなとき、正子のもとに浮気相手からメールが入ったりしたものだからイラついている美樹はその怒りの矛先をさおりから正子にぶつけてしまいます。「あんな男と結婚したからこんなことになったのよ」と言い放つ美樹に思わず平手打ちをしてしまう正子・・・美樹はそのまま家を飛び出してしまいます。それを黙って見つめていたさおりに正子は静かに「あの子は悪い子じゃないのよ」と告げながらも「結婚には反対」とやんわり伝えます。
そこへパチンコでもうけたと言いながら正樹を連れた大樹が戻ってくると、正子は大樹を激しく攻め立てます。
「母親の死に目に合えなかったのを境にパチンコはやめたといっていたのに!」と・・。正子に詰られてまた何も言えずに佇んでいる大樹がなんだかとっても切ない(;_;)。そんな大樹の悲しみを察知した正樹は「母さんのことはもう過ぎたこと、お前が火葬場で泣いているのを見てからそのことは許そうと思った」と庇うのですが、その声は観客にしか聞こえなくて大樹には届かないんですよ…(T_T)。植物状態じゃなかったらこの想いが届けられるのに、といった正樹さんの心情が痛いほど伝わってきてすごく泣けました(T_T)。大樹を責めていた正子はそのあと、自分が叩いてしまった美樹を探しに家を出て行きます。正子は正子でちゃんと兄弟のことを思いやってるんですよね・・・大樹のこともちゃんと心配しているわけで、でもそれを上手く伝えられなくてすごく不器用なところがまた切ないです。
さおりと2人きりになった大樹は父をベッドに一緒に寝かせると、一緒に飲もうと誘います。暗くなったリビングで静かに語らう2人。すると、さおりが押入れから見つけたという家族カルタを取り出します。家族みんなが幸せだった頃、
5・7・5で家族のことを綴ったカルタ…大樹は懐かしみながらさおりとコタツでカルタを楽しむのですが、このカルタの内容がめちゃくちゃホノボノしていて面白いんですよ(^-^)。特に面白かったのは家族カルタにまで登場してるって言われた藪一平さん関連の句(笑)。『変態は、藪一平です、痴漢です』(爆)。この頃から変態呼ばわりされてた一平さんっていったい…(^-^;;; このカルタの様子を正樹さんもベッドの上から楽しそうに見つめていたのですが・・・そんな正樹さんを見つつ、次第に家族のことを想った句が続いて…
『いつまでも、長生きしてね、お父さん』 
この句を聞いたときに私の
涙腺が決壊いたしました(T_T)。もう一気に溜め込んでた涙がボロボロ落ちましたよ〜〜…。家族がばらばらになりつつあるときに読まれたこの句の、なんと懐かしく暖かい響きかと思うと切なくて切なくて、思い出すだけでも涙目になっちゃいます(T_T)。

で、泣きながらこのシーンを観ているといつの間にか「幸せだった頃」の杉本家にタイムスリップ。さおりちゃんは杉本家のお母さんになり、大樹君は小学生
(赤い体操帽に背中にクラスと名前入りの体操着姿の堺さん、めちゃくちゃ違和感ないくらい可愛かった 笑!)、美樹は超ガリ勉少女姿の中学生(笑)、そして正樹もいつの間にかベッドから起き上がって背広姿に着替えていました。唯一、長女の正子は・・・なんと不良姿で登場(笑)。頭はアフロで全身スケバン状態・・・かな〜り徹底されてて『本当に七瀬さん!?』と疑いたくなるような見事な変身っぷりで、まさに大爆笑(笑)!しかも、一平君が正子に蹴られてしまったという犬のコロを抱きながらリーゼントばりばりの長ラン姿で登場(笑)。この頃から正子さんにシゴかれてたようです(^-^;;;。正子の不良だけが幸せな家族に水を挿していたころ、父親の正樹は身体を張って更正させようとします。揉み合いになって正樹が倒れた時、正子は自分の愚かさを悔いて泣いて謝るのですが・・・正子さんのあまりのすごい格好に今まで笑ってばかりだったはずが、私は笑いながらまたもやこのシーンで涙腺決壊状態に(T_T)。なんか泣けるんですよ〜…。で、みんな丸く収まったところで家族写真を撮るのですが、なぜかそこに混じっているリーゼント姿の一平がまた笑えます(笑)。この家族写真は新しく新築した今の家の暖炉のところにちゃんと飾ってあって・・・正樹さんが家族のことをバラバラになってしまった今でも愛していたことがすごく伝わるのです・・・。この家族写真が暗転する時にクローズアップの光で照らされたとき、またまた涙してしまった私・・・(T_T)。ヴヴ・・・前半からこんなに泣くとは思わなかったなぁ(;_;)。

幸せだった頃の家族の話からまた現代へ戻った時、さおりに自分と父親との関係を話し出す大樹。小説家を目指した時期に父親から強く反対され、
実際に小説も書けず、パチンコにはまって借金して自己破産…と散々な堕ちを経験していたんですねぇ。あんなにホノボノしているように見えて、実はかなり屈折した人生を歩んでしまっている過去がなんだか悲しい…。そして、父親が持ってきた就職話も無視してしまった時、大樹は問い詰める父に対して『あんたみたいになりたくない』と告げてしまったのです。これが倒れる前の父と交わした最後のセリフというのがまた辛い(;_;)。淡々と語っているけど、大樹はけっこうこのことで苦しんでいるんだなっていうのがすごく伝わってきました。こういうセリフの抑揚とか、堺さん上手いです。
そこへ酔いつぶれた美樹を担いで正子と一平がやってきます。美樹を寝かしつけて2人きりになった一平と正子はちょっといい雰囲気に(^-^)。一平はバツイチで娘がいて、その娘が翌日会いに来るのが不安だと正子に打ち明けます。正子はついそんな一平を励ます意味でハグしてしまうのですが、正子に気があった一平は彼女を襲ってしまいそうに(^-^;; しかしそこは
昔不良だった正子さんの方が何枚も上手(笑)。ものすごい勢いで引き離して一平さんは憐れKO状態(^-^;; このとき、成志さんは部屋のセットからはみ出してデローッと気絶状態になってて(笑)、七瀬さんが思わず『部屋からはみ出てるよ〜』と笑いを抑えながら言ってたのがめちゃくちゃ面白かったです(笑)。そして最後まで客席を笑の渦に巻き込んだ一平はケタケタ退場〜。成志さん面白すぎ!
一人になった正子は自分の子供に不意に電話をかけますが、そっけなく切られてしまう。そのとき、彼女は
初めて植物状態になってしまっている父親に語りかけるのです(;_;)。『お父さん、不安なの…』。この言葉に正樹は優しく励ましの言葉を心の中でかけるのですが、正子には届かないんですよね…。そのまま眠いといって寝てしまう正子を優しく見守る正樹さんの姿がまた泣けました(T_T)。


2幕にはいると、外でパンをかじっている大樹が。
パンかじってる堺さんもなんかホノボノしていてかわいい〜(^-^)。そんな正樹にやってきたさおりは『また小説を書けば?』と勧めるのですが、正樹はその気がないと自分を諦めてしまっている。そんな彼にさおりは『人生はやり直せる』と告げると、大樹は突然さおりに『結婚してください』と告白。さおりは大樹がふざけているんだと思い込み怒って去ってしまうのですが、私には大樹は本当にさおりのことが好きなんじゃないかなって感じました。まだなんとなく本心が掴めないんですけど・・・彼が寂しい人間だっていうのは何となくわかるなぁ(;_;)。
杉本家では一平が植物状態の正樹の言葉を音で伝えるという怪しい機械を持ってやってきます(^-^;; 正樹がちょっとでも動けばそれに反応してコンピューターから父親の言葉が出てくるというものですが…どうにも反応がない(笑)。そこへ一平に会いにきたという別れた娘が来たということで、渋々帰ってしまいます。一平が帰ったあと、さおりは正樹に
『おはよう』といつものように語り掛けるのですが、それを見てイライラを募らせる正子と美樹。そんな娘達を「なぜさおりちゃんを嫌うんだ」と悲しく呟いている正樹がなんだか悲しい…。そして美樹が声を荒げた時に母親の大切にしていたという湯飲みを思わず落として割ってしまったさおりに、正子も怒って立ち去ってしまう。ガラスの破片に傷ついたさおりを手当てしたのは大樹・・・。父の正樹はさおりのことをとても愛しく思っているのに植物状態であるがために何もしてあげることが出来ないことをベッドの上で嘆いているのですが・・・その無念の想いが痛いほど伝わってきてまたもやここで涙腺決壊(T_T)。吟さん、上手いですよ〜…。大樹とさおりを見てちょっと嫉妬している姿もなんだか可愛くて切ないんですよねぇ…。
さおりと2人きりになった美樹はさおりの経歴を調べたと言い放ちます。さおりは
借金を抱えていて、介護士の資格も持っていなかった・・・彼女も両親の縁薄い寂しい人間だったんです。そんなさおりに美樹は家の権利書を盗んで自分に渡せと迫ります。この時の美樹さん、かなり極悪非道に見えました…。家の財産目当てって感じでちょっと嫌な感じ…。美樹さんの真意がイマイチわからなくなりましたねぇ。なんだか素性を隠しているさおりのほうがずっと正樹のことを思いやっているんだよなぁ・・・。そこへ仕事の電話が鳴って、どうしようもないほど追い詰められた表情で美樹は棚の中にあったものをめちゃくちゃにしてしまいます。タンスの中のものをバラバラにしたとき、ふと目に入ったのは昔、父が美樹に買ってきてくれたという赤いバッグ・・・。家族みんながそのバッグをバカにする中で美樹だけは父の買ってきてくれたものをとても大切に思っていたんです…。このエピソード聞いたとき、またまた涙腺決壊(T_T)。しかも、ベッドの上から正樹さんが『オマエがこんなに辛いのに私は何もしてやれない、申し訳ない』と心の中で詫び続けているんですよ〜〜(T_T)。もう思わずここで自分のバッグからハンカチ取り出しちゃいましたよ、わたし(苦笑)。普段はあまり涙が出てもそこまでにならないわけでハンカチは出さない主義だったのですが、今回はダメでした(爆)。赤いバッグを抱きしめながら泣いている美樹を見て、彼女も本当は父を愛しているんだって気付かされました。

美樹がバラバラにしてしまった家の中を大樹やさおりが片付けている中、外では正子と一平が出会って語り合っています。一平に会いにきた娘について話すのですが・・・これはコチラが想像していた娘さんとはずいぶん雰囲気が違っていたようです(笑)。ケバイ化粧にピアス、しかも
目がジーコだったって…(笑) 目がジーコってどんな娘だ!?と思わず頭の中に想像図を描いてしまったよ(笑)。しかも高校を辞めてキャバクラに通っているらしいという・・・しかも、小遣い10万円を要求してきたらしいのでかなりのグレ方らしいです(苦笑)。
部屋の中を片付けていた大樹でしたが、正子が帰ってくると急いで庭へ飛び出してしまいます。正子はなくなった指輪を探していたんだと勘違いしますが
(正子の指輪は大樹がこっそり盗んでいて、大樹はさおりにプロポーズする時にそれを差し出していたんです)、そろそろ母の法要が始まるということで準備しようとします。美樹の状態を分らない正子は協力的ではない態度に腹を立てまた姉妹げんか状態になるのですが、そこへ例の言語回復機械から父の声(この声がなんだか演歌調でかなり笑えました 笑)が聞こえてくるのです。驚いて父へ駆け寄る一同。泣いて喜ぶ彼女達は、やっぱりすごく正樹さんのことを愛しているんですよねぇ…。本当は心の中で父に元気になってほしいと思ってる…。でも結局は庭へ出ていた大樹が機械を操っていただけだった事が判明…。美樹はそんな大樹を詰り倒し、正樹をオランダで安楽死させると騒ぎ出します。植物状態で生かされている父のほうがよほど可哀想だと…。興奮する美樹を必死に止めようとする正子と大樹でしたが、正樹は『お前達がこんなに自分のことで苦しむくらいなら、死んだほうがいいから今すぐ殺してくれ!』と叫ぶんですよ(T_T)。自分の想いを伝えたくても伝えられないもどかしさ、それ故に争い続ける子供たちを見て正樹さんはもういたたまれなかったんですよねぇ・・・(T_T)。そんな無念の想いが痛いほどコチラの胸を打って・・・もう号泣状態です(T_T)『殺してくれ』と叫んだあと正樹さんは呼吸停止状態になってしまい、やってきた一平とさおりは必死に蘇生術を試みます。安楽死させると興奮していた美樹も『死なないで』と叫び、正子はショックから過呼吸症候群になってしまう。みんな、植物状態であっても父に生きていてほしいってこのとき初めて気持ちが一つになっていたように思いました。一平たちの必死の措置で正樹は息を吹き返すのですが、『また死ねなかった』と寂しく呟く姿がとっても悲しく映りました(T_T)。正子や美樹は父が倒れてから自分達の生活のリズムがおかしくなったと告白し、それを聞いていた正樹は『お前達に苦しい想いをさせてしまってすまない』と心の中で詫びます…。そんなとき、正樹が倒れる前日に書いたという遺書が見つかります(T_T)。この遺書の内容には、母親が死んで子供たちもめったに現れない生活に疲れた寂しい父親の心情が綴られていました・・・。ここでまたさらに涙腺決壊(T_T)寂しさを埋めてくれるのは家族しかいないと思っているのに口には決してそれを出さなかった頑固な正樹さんの心の内を思うと、子供たちだけでなくてもコチラも泣けてきちゃいますよ(;_;)。遺書を書いた翌日に脳出血で倒れた正樹は、それは家族を省みなかった事への罰なんだと心の中で寂しく呟くのです…。でも、正樹はちゃんと家族のことを想っていた。それは子供たちがよく知っているし観ている私たちにも十分伝わっています。だから、この『罰』というセリフはとっても悲しくて涙せずにはいられませんでした…。
自分達に本心を明かしてほしかったという姉達に、大樹は父はそれを言わない人だと語ります。父の愛情は新しく新築した家のあちこちにちゃんと示されていたんです。
時代遅れの暖炉は幼い頃にサンタクロースを夢見ていた大樹のもの場違いなシャンデリアは正子がほしがっていたもの、大きな鏡は美人になりたいと言っていた美樹のもの…このエピソード聞いただけで泣けます〜〜(T_T)。そして子供たちは改めて父親から逃げていた自分達を悔いるのですが、正樹は愛情の形は一つではない、自分は子供たちを今でも愛している、それが親なんだと心の中で呟きます。この正樹さんの言葉にまた号泣です(T_T)。愛情の形なんてどこの家庭も違うもの。それでも形は違っていても親の愛はとても深いもの。そんな当たり前のことを改めて気づかされた気がしました。
改めて父親の存在の大きさ、愛を悟った兄弟たちは昨日までとは違った何かを得るのです。その様子を見ていたさおりは正樹を連れて花見に出かけます。さおりの後姿を見た正子と美樹はと
父親との結婚も許してあげようという優しい気持ちに…。
ちなみに、この涙のシーンのあとで父を運ぶために呼んだ救急車に不要になったと説得していた一平さんが戻ってくるのですが
『怒られた〜』泣いて再登場するのがなんか可愛くて笑えました(笑)。でも、最後の『親は元気であればいいんだ』っていうセリフにはグッときたなぁ。ふざけているようでもちゃんと締めるところは締めてくれる成志さんはやっぱり上手いと思う!(でも最後に昔掘った穴に落ちちゃうオチはやっぱり笑えたけど)。このクライマックスは泣いたりクスッとなったり、本当に忙しかった(^-^;;

桜を見に来たさおりと正樹。さおりは桜の木の下で初めて正樹に出会ったことを思い出します。さおりは前のヘルパーに連れられていた正樹を奪うような形で世話をしてきたことを告白します。正樹と出会った桜の木の下で、さおりは
突然正樹に別れを告げます。本気でさおりを好きだった正樹は心の中で『行かないでくれ!』と絶叫するのですがその声は彼女には届かない(T_T)。正樹さんはさおりちゃんのおかげで楽しい日々を送れていたのに・・・この別れはあまりにも辛すぎでした(T_T)。
一方、家では美樹が多額の借金を抱えていることを告白。そんな妹に正子は家の権利書を担保にお金を借りればいいと提案します。遺書に書いてあったとおり家の権利書書類の封筒は暖炉の上の家族写真の裏にあるのですが、書類の中には権利書だけがない。大樹に連れられて戻ってきた正樹はここで、
さおりが権利書を盗んだことを悟り『無償の愛なんてあるわけないんだ』と落胆してしまう(;_;)。結婚するとまで言ってくれたのに、本気で好きになった子だったのに・・・正樹さんの胸の内を想うと辛くてまた泣けてきます(T_T)。でも、さおりを信用している彼女達は父が大事なものはいつも米びつにしまっていたということを思い出し、米びつの中を探しますが権利書は出てきません。そこへ母の法要の為にお坊さんが訪れ権利書探しは後回しに。
母の法要の読経が響く中、さおりがこっそり庭からやってきて自分が隠した権利書を探します。それに気付いた大樹は彼女の前に権利書を突き出します。大樹はさおりが権利書目当てで杉本家にやってきたことをずっと前から知っていたのです。最初は権利書目当てだったはずが、
正樹と触れ合ううちに自分の居場所をみつけられたようで心が休まっていったというさおり…。家族の縁薄かったさおりは正樹と触れ合ううちにその温かさに心休まっていたんですね(T_T)。正樹と会話したのは「フリ」をしていただけだとさおりは強がっていたけれども、彼女は本当に正樹さんと会話をしていたし成立していたと思うんですよ。だから正樹も彼女に恋をしたわけで…。そんな彼女の気持ちを悟っていた大樹は「また戻ってきてほしい」と告げます。でも、彼女はまた新しい自分探しに出かける決心をしていた。去り際に大樹に小説の原稿を手渡すさおり。その原稿は大樹が大学時代に賞を取ったときのもの・・・大事なものは米びつの中にしまっておく習慣があった父がその小説をそこに入れていたと知った時、大樹は改めて父の愛情を悟るんです(T_T)。小説家になることを大反対していた父でも、実は大樹の小説をとっても大切に保管していたなんて・・・うう・・・泣けます〜〜(T_T)。大樹もさおりも『自分を必要としてくれる人』を求めていたんだと改めて確認しあったとき、またひとつ人間的に成長したんだろうなあ。
そして母の法要を終えて部屋に戻ってきた正子と美樹。そんな彼女達の前で、父の前で、大樹は
『オレ、この家に戻ってきてもいいかな』と告げると、正樹は『勝手にしろ』と返します。しかし、この父の声は確実に子供達に伝わったのです。父が蘇生したのか、それとも心の声が兄弟達に聞こえたのか、それはハッキリとは分りませんが、この家族はまた新しい一歩を踏み出したんだなと思うと、とっても温かい気持ちになれました。


いや〜〜、ほんと、まさかここまで号泣するなんて観劇前までは思いもしませんでしたよ(^-^ゞ。もう少し私が若かったら、ここまで涙しなかったかもしれないのですが、
自分の親が今回の前田吟さん演じる正樹さんとほぼ同世代ということもあって・・・なんだか泣けて泣けて仕方なかったです。あらためて、自分の親の愛情を感じたなぁ…。本当にとってもとっても素敵な作品でした。映像化もするようなので、今回見れなかった方もぜひこの作品に触れてほしいと思います。