6月4日 19時開演
「nine The Musical」 天王洲アイル アートスフィア

出演者: 別所哲也、大浦みずき、純名りさ、池田有希子、高橋桂、花山佳子、田中梨花、剣持たまき ほか

あらすじ

映画監督であるグイド・コンティーニ(別所)は、妻のルイザ(高橋)から離婚を切り出される。映画制作もスランプに陥った状態だったグイドは事態の打開を求め、ルイザをヴェニスのスパ・リゾートへ誘う。しかしそこでもマスコミの追求を受け、グイドは疲れきってしまう。そこへグイドを追って愛人のカルラ(池田)や映画プロデューサーのリリアン(大浦)が現れ、事態はさらに悪化。精神的に追いつめられたグイドの前に、少年時代の自分があらわれる。甦ってくる少年時代の苦い記憶。サラギーナ(田中)に“愛すること”を教わった遠いあの日。それが原因で母親(花山)から疎まれてしまった過去…。
グイドは愛人でもあった女優、クラウディア
(純名)をヴェニスに呼び寄せる。クラウディアと再会してインスピレーションを得たグイドは『カサノヴァ』をモチーフに新作映画の撮影を始めるが、その映画はグイドの実際の体験が交錯する世界で、撮影が進むにつれてグイドは女性たちを深く傷つけてしまい映画は破綻してしまう。女性たちは次々にグイドの元を去って行く。絶望の淵にたつグイド。そして・・・。

珍しくダンナが私をミュージカルに誘いました(笑)。どこぞの新聞に載っていた演劇評を見て『行きたく』なってしまったのだとか。この作品は昨年も上演されていてかなり高い評価を得ていたのは知っていたですが、如何せん登場人物が男性一人に後は女性だけというのに抵抗があって観に行かなかったんです。ところが、ダンナが私をミュージカルに誘うなんていうことは今後もめったに有り得ることではないので(笑)、それじゃあ、行こうか・・・てな訳で観に行ってきました。しかも、言い出したのが当日の昼間だったのでチケットは当日券待ち(爆)。ただ、あまり並んでいる人数が居なかったので1階席の『ナインシート(見切れ席なのでお値段がお得)』をあっさりゲット♪最初は3階席にしようかと思っていたのですが、やはり見切れ席でも1階席のほうが臨場感が伝わると思ってナインシートを選択しました。お値段が安くなっているだけあって本当に思いっきり端っこでしたけど(笑)特に観づらくて疲れたということはなかったので良かったです。
パンフは細長くてちょっと小さめのお手軽版。しかも、中に協賛会社のパンストが入っておりました(笑)。これ、女性にはいいかもしれないけど男性が買ったらどう思うんだろうか…(爆)。あとCDの予定もあるということで、観る前に事前予約入れてしまいました(笑)。今となっては予約入れたのは正解(^-^)。
曲はかなり私好みだったんで♪

さて、ミュージカルの内容でしたがこれは
かなり玄人ウケする作品だなぁと言うのが正直なところ。観劇に慣れた人や独特の感性を持った人とかは文句なしに堪能できると思います。逆に観劇初心者の人が観に行くとちょっと疲れちゃうかもしれませんねぇ。内容がめちゃくちゃ難しいわけではないのですが、女性が大量に出演しているし(笑)場面転換も多いし現実と妄想の間を行ったり来たりする感じなので観劇慣れしてるつもりの私でもちょっとついていくのに必死ということはありました(^-^;;。特にそれを感じるのが1幕の頭だったかなぁ。実際のところ、ダンナも気を抜けなかったと少々お疲れ気味のようでした(笑)。
ところが、
それを苦痛と感じさせないのがこのミュージカルのすごいところ!話の内容は付いていくのが大変な部分もあったのですが、それを苦と感じないのはあの舞台セットの美しさと見るものを惹きつける演出です。舞台中央に大きくて透明な丸テーブルと椅子が並んでいて、それを動かしていきながら場面転換していく手法は素晴らしかったです。それにあの螺旋階段!ものすごい高さをスマートで美しい女優陣が行き来するのに目を奪われましたねぇ。光の使い方もとてもうまくて、舞台全体の透明感が観ていてとても心地よかったです。演出ですごかったのはグイドの愛人であるカルラが舞台の上から巨大シーツに包まって降りてくるところ!あれはよほどの度胸がなきゃ出来ない業ですよ!!登場した時はシーツをブランコみたいにして降りてきて『オー!』と思ったのですが、更にビビったのが去り際・・・。なんと、シーツを鉄棒のようにして身体を回転させてラストはシーツを命綱にカルラ役の池田さんがまっ逆さま状態で舞台上に引き上げられていったんですよ!!もう、観ているこちらはキモ冷やしましたよ(笑)。この大技をやってのけてる池田さんに100点満点!と言ったところです、ホント。それから、2幕のグイド新作映画撮影シーン。舞台がヴェニスということもあり、後ろの壁をつたって水が流れ出していました。最初は『あー、キレイだなあ』的に観ていたんですが、しばらくして演じている役者さんたちの足元からビシャビシャと水音が響いてくる・・・!よく観ると舞台の上には役者さんの足のくるぶし近くまで水がたまっていてそこはまさに水槽状態に!いや〜、何かと魅せますねぇ〜D.ルヴォー氏の演出は。このシーンは特にストーリーのクライマックスにかかっていて、バシャバシャという激しい水音が物語の盛り上がりの相乗効果となっておりました。で、この水はラストにはすっかり引いてしまってた・・・。私はこのあたり物語に集中してたのでいつ引いたのか分からずじまいでした(笑)。
それからオーケストラは小編成だった故か舞台のかなり上のほうにあるバルコニーにいたのも驚きでした。私たちの座っていたナインシートからよく見えました、小編成オケ(笑)。ここに女優陣がちょくちょく登場したりしてまさにオケも舞台演出の一部となってました。

別所さんのグイドはとてもパワフルで素敵でした。多くの女性人が惹かれてしまうのも分かる魅力があったと思います。妻と愛人との間でアタフタする情けないところも面白かったのですが、私が一番感動したのはやっぱりラストシーン。全てを失って崩壊状態になり自殺を試みようとした時に9歳の自分と向かい合うところですね。グイドって天才映画監督と呼ばれてはいるけれども実際は心に孤独を抱えているんです。9歳の時に母親から疎まれてから時が止まってしまっている…。そんな彼の拠り所だった女性達も自分のふがいなさから去っていってしまい自己崩壊してしまうグイドは見ていて胸が詰まりました(;_;)。その極限状態で、彼は初めて正面から9歳の自分と向かい合い受け入れる。ここでグイドは再生していくんだなと感じさせられました。この下りの演技が別所さんとてもよかったと思います。思わずジーンときてウルウルしちゃいましたし(T_T)。なんだか最後にストーンと胸にくるものがあって心地よいラストでした(^-^)。
大浦さんのプロデューサーはめちゃくちゃカッコよかったし、さすがのオーラをはなってました。で、一幕途中には客いじりをするシーンがありました(笑)。『あなた、パリに行ったことはあるの?』とか『私にバラを送ってくださったのはあなたでしょう』などなど。最初は本気で絡んでいるとは思わなかったのですが、目をつけられたお客さんとキャッチボール会話が成り立ってたので本気で絡んでいるんだと悟り、自分に来なくてほっとした私(笑)。この日は『バラを送ったのはあなたでしょう?』の答えが大浦プロデューサーの求めているものになかなかたどり着かず、『あなたも相当がんこねぇ。この答えが出ない限りずっとこれ続けるわよぉ』と脅しておりました(^-^;;;。つまり、いじられていたお客さんは正直に『バラを送ったのは私ではない』ということを伝え続けてたのを『あなたでしょう』と大浦さんが迫り続けてたんですよね(笑)。で、結局そのお客さんは諦めて違う男性のお客さんに『バラを送ってくださったのはあなたね?』と振ったところ、『ハイ!』という期待通りのお返事が。これに満足した大浦さん、バックの女性コーラス隊(出演者の女優さんたちですよ 笑)達と一緒にその方の名前を歌にしておりました(笑)。で、このバラ・・・ですが、『あなたじゃないのは分かっているのよ〜』というオチがついておりました(^-^;;。勇気を持ってウソでも「ハイ」と言ったお客さん、偉いです(笑)。
純名さんのクラウディア・・・彼女もものすごくカッコよかった!!もともと可愛い方だなぁと思っていたのですが、サングラスをかけてさっそうと歩く姿はとてもスマートでカッコイイ!多分今回の出演者の中で一番目に付いたのが純名さんだったかも。歌声もとっても素敵でしたし、ダンナもけっこう注目してたみたいです(笑)。グイドの新作映画で自分が奥さんの役柄をやらされていると気付いた時に大粒の涙を流していた姿がとても印象的でした。
池田さん、
ものすごくセクスぃ〜〜〜!あれでは別所グイドもメロメロですねぇ。でも彼女のカルラはセクシーだけではない悲哀も含んでいて・・・グイドと一緒になる為に涙ぐましい努力をしているんです。で、ようやくグイドと一緒になれる目処が付いた時にグイドから冷たい言葉を浴びせられて心身ともに傷ついてしまう…。このストーリーの中で一番哀れな女性はカルラだったんじゃないかな。池田さんは本当にあのアクロバットもこなしていたし、このミュージカルでは本当に頑張られていたと思います。
妻のルイザを演じた高橋さんも素敵な女性でした。グイドについていけず精神的に彼女もとても傷ついているんだけど、やっぱりグイドを捨てきれない自分もいる。そのあたりの葛藤が特に後半よく出ていて切なかったです(;_;)。それだけに、ラストシーンで再び現れたときはなんか嬉しかったなぁ。
剣持さんの美しいスパのマドンナ田中梨花さんの迫力あるパフォーマンス、グイドの母親の花山さんやところどころで目立ってた(笑)山田ぶんぶんさんなどなど、皆さん本当に素晴らしかったです!

日本版のCDも発売予定ですが、曲が良かったというのとこのミュージカルを
かつてブロードウェーでアントニオ・バンデラスがグイドとして出演していたということもあり、●マゾンからブロードウェーバージョンの「ナイン」CD購入してしまいました!バンデラスのハスキーなグイドも素敵な一枚です♪
この作品は最初に書いたとおりちょっと玄人好みするような感じでもあるせいか、
客入りがあまりよくなかったのが気になりました。まあ、私もダンナに誘われなければ観に行く予定はなかったのですが…(苦笑)、素晴らしい作品だったのでもう少しお客さんが入ればよかったのになぁと思います。