7月2日 13時開演
TSミュージカル「風を結んで」 サンシャイン劇場

出演者: 鈴木綜馬、坂元健児、畠中洋、今拓哉、川本昭彦、風花舞、絵麻緒ゆう ほか

あらすじ

幕末から明治に時代が変わった頃、かつて武士だった者達は廃刀令により一斉に失業を余儀なくされ生活が苦しくなっていた。或る日、剣の腕では下っ端だった片山平吾(坂元)は道場一の使い手・橘右近(今)に奇跡的に勝利してしまう。下っ端仲間の郡平衛(畠中)、弥助(川本)と共に祝い酒に浸っていたがそこへ右近から再び真剣勝負を挑まれてしまう。焦った平吾達はなんとか難を逃れるが、その場を救ったのは帰国子女の由紀子(絵麻緒)と捨吉(鈴木)。助けた見返りに武士を集めたパフォーマンス一座に入るよう言われた3人は悩んだ挙句にその話に乗ることに。その頃、右近の妹・静江(風花)が金銭的に追い詰められた兄を救う為に売られることになる。その話を知った平吾は自分の首をかけて200円で静江を買い戻すと右近に約束してしまう。郡平衛や弥助たちの武具を売り払っても到底200円は集まらず途方に暮れていた平吾を救ったのは捨吉だった。平吾の心意気に心を打たれたという捨吉は200円をポンと渡した。
パフォーマンス一座にも仲間が集い始める。参加を拒んでいた右近も生き抜くため、剣を奮うためについに参加を決意。一座の運営も順調に進んでいたのだが、刀に筆をつけて舞うというパフォーマンスを巡って座員達の不協和音が出てくる。一座の裏方仕事ばかりさせられていた平吾たちはその舞台を必死に努めて成功を収めた。しかしその頃、九州地方で旧武士の反乱が始まっていた。次々と座員達は戦いの場へ旅立っていき・・・ついに西南戦争が勃発する。

「天翔る風に」以来のTS幕末ミュージカル。しかも参加している俳優さんが鈴木綜馬さん、坂元健児さん、畠中洋さん、今拓哉さんと…かな〜り私的に好みの方ばかりという、観る前から期待度100パーセントでございました!TSって本当に俳優集めが上手いよなぁ〜。某大手製作会社以外でここまで集められるのはTSだけではないだろうか(笑)。
今回は一緒に観劇したAさんがチケットを手配してくださって・・・な、なんと、
前から2番目というこの上ない座席に!!もうそれだけで感動でした!Aさん、本当にありがとうございましたm(__)m。幕末モノは私の大好きなテーマでもあったので本当は3回くらい観に行きたかったのですが、如何せん劇場が…。劇場の中はけっこう好きなんですけど立地条件が私的にちょっと好きではないので(暗くなればなるほど治安があまりよくないんですよ)、結局1回だけになってしまいました。うう〜ん…もう1回でも観れたらもっと好きになれた作品だったのになぁと思うと残念です。パンフレットは「タック」の時と同じくらいの小ささで持ち運びするのに非常に親切でございます(笑)。しかも小さいながらも内容はかなり充実していて、それぞれのキャストの16歳だった時分の写真が掲載されているのが嬉しい!幕末から明治にかけての時代考証などもキッチリ描かれてあってとてもしっかりしています。まさにファンに優しいTSですね。

まず舞台美術ですが、スッキリした中にも『和』のテイストが感じられるような素敵なセットでした。衣装も昔の瓦版の文字らしきものが入っている継ぎ接ぎチックな感じでなかなかGOOD!廃刀令が発令されて生活が苦しくなった武士達を象徴するようなつくりになっていたと思います。また、1幕と2幕の冒頭は真白い装束で群舞が繰り広げられていたのですが、これも
めちゃくちゃカッコよかった!男優陣がカッコイイのはもちろんですが、その中で特に美しく目立っていたのが風花舞さん!いや〜・・・思わず見とれちゃいました(笑)。この白装束についてはラストで種明かしがあるんですが・・・それが涙な展開で(T_T)。で、この群舞シーンや他のアクションシーンで2列目から観て気になったのが…ワ●毛のない方がけっこう多かった(←どこみとんのや!爆)。あまりにも近いとなんだか変な方向に目が行ってしまいまして(^-^;; スミマセン(爆)。

今回の脚本もレミゼなど東宝ミュージカルでもお見かけしていた
大谷美智浩さん。最近大谷さんはTSでのお仕事が多いようですね。そういえば天翔けるのときもスタッフとして名前を連ねていたっけか…。この方の脚本はけっこう胸にジーンと響くものが多いのですが今回も他聞に漏れず。幕末のお芝居でよく取り上げられるのは坂本龍馬であったり西郷隆盛であったり新選組であったり・・・比較的歴史に大きく名前が残っている人物が多いのですが、今回は江戸から明治に代わりその時代の狭間で必死に生き抜こうとした下級武士にスポットライトが当っています。江戸時代までは『武士』として刀を持ち命を懸けて戦うことが誇りであった彼らが、明治という時代になって「廃刀令」という誇りであったはずの『刀』を奪われ活躍の場を失ってしまう。今まで『誇り』を持っていたものが否定されてしまい、時代に取り残された武士の悲哀・・・こういったテーマの物語は今まであまり無かったと思います。あくまでも『武士』でありつづけることに拘り時代から取り残されていく者と、新しい時代に必死に迎合して生き抜こうとする者の激しい想いがぶつかる素晴らしい舞台でした。
1幕では
落ちこぼれ士族3人組の平吾・郡兵衛・弥助がドタバタと盛り上げる展開だったので笑いも多く楽しかったです。特に畠中さんの郡兵衛の壊れっぷりが見事で(笑)他の2人を圧倒するようなマシンガントーク繰り広げてましたね〜(畠中さん、また顔の筋肉一段と緩みました? 笑)。それゆえに平吾や弥助の情けなさっぷりも浮きだっててこれぞまさに凸凹トリオって感じでしたよ。でも結局は一番ガンガンしゃべりまくって2人をまくしたててた郡兵衛が一番弱い男だったのかもしれないんですけどね。そんな3人とは全く対照的に頑固なまで武士道を貫こうとしていた剣豪が今さん演じる橘右近(一人だけすごい「侍」の雰囲気がムンムン出てたような・・・)。あの当時、右近みたいな『プライド』を捨てられない士族だった人ってたくさんいたんだろうなぁ。落ちこぼれ3人組がドタバタ楽しそうにしているのに対して右近は決して笑ったりしない。すごい不器用で・・・なんだか観ていて辛かったりしました。私はこういう人物にけっこう感情移入しちゃったりするんだよなぁ。
右近の果たし状を受けて平吾がやむなくそれを受ける羽目になりいよいよ平吾の身に危険が迫った時、警官を呼んできた郡兵衛の起点で助かります。この対決シーンでのサカケンくん、今さんがスーッと筋の通った殺陣を見せていただけに
情けないへっぴり腰っぷりが妙に可愛くて笑えました(笑)。警官から助けた見返りに20円を要求され窮地に立った3人を救ったのが帰国子女の由紀子とその使用人・捨吉(へ〜い♪と現れる第一声で笑いが取れるとはスゴイ!)。わたし、はじめ由紀子さんが登場した時『この人誰だろう?』と思ってしまったんです・・・絵麻緒さん、ごめんなさいっ(爆)。いや、なんか、けっこう恰幅のいい感じで分からなかったんですよ〜(^-^;;; この由紀子さんの妙にアメリカナイズされたセリフに翻弄される3人組がまた可愛い(^-^)。とうてい3人には英語なんて分からないですからね(笑)。で、その由紀子さんの英語を訳しているのが綜馬さん演じる捨吉というのもナイスです!英語といえば綜馬さんですし(^-^)、しかもその訳し方が口語調だったり江戸弁だったりでかなり笑えました!由紀子さんが英語を言ってから訳を入れるときのタイミングがドンピシャでかなりツボでしたよ〜。で、由紀子たちに20円の借りができ、挙句に彼女の主催する一座へ右近を口説いて入ることを要求されてしまった3人。右近を口説きにオズオズと出向いていったところでちょうど右近の妹・静江が奉公に出される場に遭遇してしまいます。この静江さん・・・まさに古き良き時代の清楚な女性といった感じでとっっても美しい!風花さんの舞台って見たこと無かったんですけど、彼女の舞台での美しさは群を抜いておりますねぇ。立ち居振る舞いが本当にきれいでした。で、右近の前で萎縮していた平吾が静江さんが売られていく現場を目撃してしまい態度が一変。あんなにビクビクしていた右近に対して毅然として『私が200円で静江さんを買い戻します!』と宣言。しかも自分の首をかけるという、右近もそのまっすぐさに圧倒されてしまうくらいの強さを見せます。いつもは情けなさばかりが目立っていた平吾の「強さ」がここでグッと出てくるんですね。何のためらいも無く自分の意見を直球でぶつける平吾に胸打たれました…。サカケンくんの声がまたストレートに澄み切っているのでなおさら・・・ね。そんな平吾の心意気に心動かされた郡兵衛と弥助は彼とともにこの混沌とした時代を一緒に生き抜こうと約束し、更に固い絆が生まれます。ここでこの芝居のテーマ曲である『風を結んで』が歌われるのですが、これがなかなかジーンとくるいいナンバーでしたよ。サビの『かーぜーをむすんーでー♪』はけっこう頭に残りました。
静江を買い戻す為のお金を工面する為にそれぞれ家宝でもあった武具や馬具を売り払いますが、結局は200円からは程遠い金額しか集まりません。
かつては重宝とされてきたものも時代が移り変われば何の価値もなくなってしまうとは・・・悲しいものですよね。200円をどうにかしなければ平吾の首が飛んでしまう・・・と困り果てていたところに現れたのが由紀子の使用人である捨吉。彼は何の見返りも要求せずにポンと200円の大金を平吾に渡します。このあたりで捨吉さんが相当の謎の人物として浮かび上がってきました(笑)。あっけらかーんと『ハイ、200円』と笑顔で渡してしまうこの人物は只者ではないし、平吾たちが立ち去ったあと一人残って急に真剣な顔つきになり『生きて、生きて、生き抜く・・・か』と呟く姿もなにやら抱え込んでいるものがある様子。いや〜、あっけらかんとしている捨吉も可愛いけど、真剣な表情になる捨吉もすごく素敵!!綜馬さんのグッとくる芝居に思わず引き込まれました〜。
静江は無事に200円で買い戻され、平吾たちもなんとか一座に加わります。そして更に武士の地位にこだわりながらもそれを許されず、各々何らかの事情を抱えた人たちも続々と一座に加わり、200円の借りができた右近も最後には折れて一座に加わることを決意します。右近が一座に加わるのには、本当に並々ならぬ妥協が彼の中であったと思います。『武士』のプライドを頑なに持ち続けた彼がついに芸の道に足を踏み入れざるを得ない状況に陥ってしまうわけですからね…。その点、平吾たちは『武士』としてのプライドよりもこの先の時代を生きようとする柔軟性がある。一座には加わったものの、彼らとはその志は違ってくるわけで・・・そう考えると、う〜ん・・・
不器用な右近がなんだか哀れに思えてならなかったかなぁ。とにもかくにも、一座に人数がそろい、一丸となって盛り上げていこうという明るい空気の中一幕は終了します。このラストシーンで撮影した集合写真が後半大きな意味を持ってくるだろうなと予感させました。彼らにとって一番幸せな瞬間だったと思うしね・・・あのとき・・・。

2幕はまた剣舞で始まるのですが、この
振り付けがまたすごくカッコイイ!しかも、前から2列目の私と目の前で跪いているサカケンくんの距離がものすごく近くて・・・なんか目が合いそうでドキドキして思わず視線をそらせてしまいました(笑)。皆さんの息遣いもすごい聞こえてきて臨場感ありましたよ〜!その中でもやはり目を惹いたのが風花さんだったかなぁ。もう本当に凛としていて目立つんですよ、すごく!
一座で活躍しているのは右近ら腕の立つ剣豪だった者で、平吾、郡兵衛、弥助の落ちこぼれ3人組は
下働きしかさせてもらえない状況(笑)。縫い物とかしてるんですが、弥助の川本さんの仕草がすごく細かくて笑えました!まるで本当に繕い物してるかのような手つきで糸を切るときの仕草とかがめちゃくちゃ可笑しい(笑)。まるで新婚の奥さんのようでした(^-^;;。郡兵衛は下働きの状況にもはや我慢の限界が来ていてストレス爆発寸前(^-^;、平吾も一見まじめに下働きに甘んじているようで自分の行き着く崎が見えずに悩んでいます。『生きがいとは』の答えが見つけられない3人…。そんなところへ捨吉が静江を連れてやってきます。気を利かせて平吾と2人きりにさせようとする中、最後まで抵抗していた郡兵衛がなんだか可愛かった(笑)。で、このシーンでは2人のもどかしい会話がボソボソ続いているのですが、恋愛模様といった感じではなかったですねぇ(^-^;。この作品はあくまで男臭さにこだわっていたせいかこのあたりの心の描写がちょっと淡白に感じられました。平吾と静江が近づいたシーンって結局ここだけだったしね(苦笑)。そこはちょっと物足りなかったかも。
平吾と静江の会話がじめじめ続いている中(笑)、由紀子の提案した剣に筆をつけて舞うというパフォーマンスに怒り心頭の右近たちがなだれ込んできます。武士の命、プライドの象徴でもある剣に筆をつけて客の前で舞うなど
彼らには耐えられない出来事。それでも強く要求してくる由紀子に右近はパフォーマンスを承諾する代わりに終わったら切腹すると告げます。女性にとってそれはあまりにも理不尽で信じられないことでも武士の誇りを持ち続けている右近にとっては当然のことなんですよね…。それをなだめたのは平吾。剣舞は落ちこぼれ3人がやり遂げるから、それが終わったら自分と剣の勝負をしようと右近に言い放ちます。こういったいざという時になると、平吾はとてつもない強さを発揮するんですよね。しかもまっすぐに筋が通った主張なだけに聞いていてとても清々しいのです。サカケンくんの声がまたいいですからねぇ・・・胸に響きますよ。そして四苦八苦の末、落ちこぼれ3人組は見事に筆の剣舞を成功させます。なんか大きな半紙にババッて書いていくような感じだったんですが、出来上がった文字が『人生晴れ舞台』だったかな。郡兵衛さんの文字が『舞』の字に当ってしまってて、畠中さんが全身でなかば暴れ気味にザザーッと書いてたのが笑えました(笑)。ただこのストーリーの展開の中で剣に筆をつけてというくだりはちょっとマンガチックすぎだったかなぁ。パフォーマンスを見るのはとても楽しめたけど、ちょっと引いちゃった部分もあって・・・(苦笑)。3人が成長する出来事としてもうひとつドラマチックな筋書きがほしかったような気がします。
剣舞成功の後、平吾たちはおそるおそる右近との立会に向かいます。以前はあんなに堂々と右近に対して意見を言ってのけたのに、いざ本番が近づくと怖気づいてしまう平吾はやっぱり可愛い(^-^)。郡兵衛たちのアドバイスで立会直前に謝るといった奇襲作戦をたてたのですが、その瞬間、右近も同じように剣を置いて謝ってしまいます。この時の郡兵衛の
『あれ、あっちも謝ってるよ』っていうせりふの言い方が絶妙で笑ってしまった(笑)。サカケンくんは頭で逆立ち状態になりながら『参りましたーっ』って言ってるしね(^-^;;;。ここはかなり笑どころだと思うんだけど、右近が実は最初の試合の日以来刀を持つことに恐怖を感じて握れなくなってしまったという事実が明かされるので逆に切なくなってしまうのです。武士としてのプライドは人一倍強いのにその魂とも言うべき剣を持てなくなってしまった右近の苦しみはいかばかりかと…(T_T)。平吾との勝負を持ちかけたのも、自分が再び剣を握れるかどうかの賭けであったというのがまた悲しいです…。
そして時代が動き、薩摩方面で西郷隆盛が兵を挙げるという噂を聞いた一座の一員、小弥太と伝四郎は武士の世の中をもう一度取り戻すために飛び出して行き、大輔もそれに呼応するように抜け出して行きます。これが世に言う西南戦争の始まりですね。それを平吾は止めることができず見送ることしかできない。そして大輔と行動を共にしていた右近は追ってくる警察から大輔を庇って一人奮闘し、
最後は銃弾を体中に受けて絶命してしまいます。彼は最後の最後まで武士への拘りを持ち続けた、それ故に新しい時代に対応できなかったとても哀れな人だったと思います…。あの当時、こんな生き方しかできない元武士の人って大勢いたんだろうなぁと思うとものすごく切ないですね(T_T)。この一件で一座は解散に追い込まれてしまいます。
しばらく時が立った頃、一座の一人で警察官で密偵
(過激な会津藩士・久坂檄を探っていたらしい)の誠一郎が平吾のもとを訪ねてきます。な、なんと、いつの間にかこの時既に平吾と静江は夫婦になっていたんですよっっ(苦笑)。2人の恋愛らしきシーンってあれだけだったのにねぇ… なんか、『えっ!あんたらいつの間に!?』って感じでしたよ(^-^;;。まあ、この物語の中ではこの2人の関係は大して重要ではないって事なんでしょうけどね。ま、それは置いといて・・・(笑)。
誠一郎は士族の反乱を抑える為に薩摩方面へ旅立つ挨拶に来たのです。戦いに出てしまうかつての仲間を複雑な表情で迎える平吾に彼は手紙を渡します。手紙は郡兵衛と弥助から…。
郡兵衛は新聞記者となり戦地へ、弥助は政府軍の一員として戦地へ、それぞれ『生きることの意味』を見出し旅立っていくのです(T_T)。『生きて帰ってくる。もしまた生まれ変わってもおまえの友達だ』という手紙には思わず落涙ですよ・・・(T_T)。いつも3人でワーワーやっててそれぞれがとても大切な存在であったはずなのに、こうして別れが突然訪れてしまう・・・。どうしようもない想いに突き動かされた平吾は居ても立ってもいられずに新橋駅へ走りますがそこにはもう彼らの姿はありません(涙)。『どうしてそんなに死に急ぐんだよ〜!!』という平吾の涙ながらの絶叫が観ていて痛くて痛くて仕方なかった・・・(T_T)。よもやこんな別れが彼らに訪れようとは思いませんでしたしね・・・。そこへ捨吉が現れます。今まで謎だった捨吉さんの過去。彼の本当の名前は誠一郎が追っていた『元会津藩士・久坂檄』で、一座にもぐりこんで武器弾薬を集め決起に備えていたことが判明します。平吾に渡した200円はそのための軍資金・・・。それを平吾に渡してしまったのは捨吉なりの心の葛藤があったからだったんですねぇ・・。会津藩の恨みを抱きながらもこれ以上戦うことへの疑問も感じていた矢先、『何があっても生き抜いてみせる』と言っていた平吾の言葉は彼に深く深く響いてきたのだと思います。だから軍資金も『生きよう』と前に必死に進もうとしていた平吾に与えたんだと・・・。その平吾の姿に捨吉は白虎隊の姿を重ねていたと言う下りも泣けます(T_T)。白虎隊の少年達が生きていたらちょうど年のころは平吾と同い年くらいだったと…。そして一座の一員だった大輔はその白虎隊の生き残りであったと・・・(彼は結局薩摩の戦で戦死 涙)。そう、1幕と2幕冒頭の白い装束の群舞は白虎隊を表していたんですよ。このあたりかなり深いです。捨吉は白虎隊で散っていった者たちの分まで生きようと、同じ年頃の平吾の姿を見て思っていたんですね…(T_T)。そして、「もう皆いなくなってしまった」と悲しみに暮れる平吾に「まだあなたがいる!」と一枚の写真を差し出す捨吉・・・。一座結成直後に撮った、皆が一番輝いていたときの写真・・・。私実は「きっとこのあたりであの写真が出るのでは」と思っていてその通りの展開になったわけなんですが・・・分かっていてもやっぱり涙出ましたよ・・・(T_T)。あの頃に戻れたらどんなに素敵か・・・そう思う気持ちは平吾や捨吉と一緒でしたから。このシーン、綜馬さんもサカケン君も涙ボロボロ流してて・・・間近でそれを見た私も本当にそれだけで涙止まりませんでした(T_T)。そして平吾は決意するのです、旅立った友を探し出し帰ってくると!そして再び彼らと一座の旗揚げをするのだと、それが自分の戦いだと。それは一見とても無謀なことだけれども平吾ならやってくれる・・・そんな希望を持たせてくれるラストだったと思います。

キャストもストーリーもとにかく素晴らしかったですね。こういったテーマの幕末話はあまりなかったので色々考えさせられることも多かったです。
サカケンくんのピュアな演技がこの物語の中で光っていたと思います。彼はおそらくTSの舞台で伝えたいことをストレートに演じられる役者なんじゃないかな。畠中さんは今回ものすごいハイテンション演技で頑張っていて、途中でぶっ倒れないか心配になるくらいでした(笑)があの身軽さは素晴らしいですね。そしてただのハイテンションお兄さんで終わらないところが畠中さんのすごいところ。締めるところではキッチリ締めてくれてて、ラストの旅立ちのシーンは泣けました。川本さんは最近TS舞台で上のほうに名前が出るようになってきました。「タック」のときもすごくカッコよかったし、今回のちょっと気の弱い弥助も見ていてとても楽しめました。旅立ちのシーンで一番泣けたのは弥助だったかもしれない…。今さんの役柄は今回すごくおいしかったんじゃないかな。ちょっとカツラが似合わないような気もしたけど(笑)キャラ的にはかなり私のストライクゾーンに入っていました。風花さんや絵麻緒さんといった元宝塚女優さんの美しさも光っておりました。絵麻緒さんはカッコよかったし風花さんは美しい・・・。でも風花さんの声ってすごい高いんですねぇ(笑)。あれって地声でしょうか(^-^;? ただ、男達のシーンがすごくカッコよかったので女2人演技のシーンはちょっと退屈気味だったかな。綜馬さんがまたえらい素敵だったよ〜!!正直、「レミゼ」のジャベよりもこういった飄々としていながら実は何かを抱え持ってるといったキャラの方が好きだなぁ。あの軽いキャラも好きだったけど、時折見せる真剣な表情にすごい心打たれるものを感じましたし。何よりもラストシーンでの涙・・・私、綜馬さんの涙すごい久しぶりに目の当たりにした気がします!・・・あれは・・・「李香蘭」の杉本だったよ!あの時の涙でグッときて四季の会に入って今に至ってる私(笑)。それほど綜馬さんの涙には心揺り動かす魔力があります。他のキャストさんたちも素晴らしかったです(^o^)!
またTSのお芝居見に行きたいです。