2月8日 13時30分開演
劇団四季ミュージカル「エビータ」 四季劇場・秋

出演者: 井上智恵、芝清道、下村尊則、渋谷智也、久居史子 ほか

あらすじ

貧しい村に生まれた私生児エバ・デュアルテ(井上)。いつも都会への夢を抱いていた彼女は15歳の時タンゴシンガーのマガルディ(渋谷)と関係を持ったことを機にブエノスアイレスへ野心を抱いて出てくる。たくさんの男を踏み台にしながらラジオスターにまでなったエバは、ある時ホアン・ペロン(下村)と知り合い、結婚。そしてついにはペロンが大統領になりエバは大統領夫人となる。上流階級の冷たい視線を浴びながらも次々に政策を行うエバ。ところが無計画な政策はアルゼンチン経済を大きく揺るがし、エバ自身も癌に倒れてしまう。アルゼンチン大統領夫人エビータの人生をチェ・ゲバラ(芝)が狂言回しとして語り継ぐ実話。

97年に観劇したのが初めてだったから・・・実に今回8年ぶりとなる劇団四季の『エビータ』。あの当時は映画『エビータ』も公開されていてまさに『エヴァブーム』が巻き起こってました(笑)。実はこの公演、四季が本当は違う演目をやる予定だったのをちょうど映画『オペラ座の怪人』PR活動中だったアンドリュー・ロイド・ウェバー側に「東京でALWものを上演してほしい」と言われて急遽変更したという多少イワクつきだったようですが(^-^;;; 『キャッツ』『オペラ座の怪人』『エビータ』と3作品を同時上映というのもまた悪くは無いです。8年ぶりの再演ということで、変わらないだろうと思われた主演(苦笑)が野村玲子さんから井上智恵さんにバトンタッチされており、装いも新たにスタートという意気込みを感じました。しかも8年前はマガルディだった下村さんがペロン大佐に昇格!当時は今井清隆さんがペロンをやっていてこれがかなりハマリ役だったので、下村さんのペロンってどんなだろう・・・という期待と不安が入り混じってた私(^-^;; 。舞台セットなどもずいぶんと客席に近く明るい感じになってました。後ろの高い白壁セットなんかは『マンマ・ミーア』を髣髴とさせるものでスッキリした印象。前回は『黒』っぽいイメージを今回は『白』っぽいイメージに一新してましたね。
パンフレットにもありましたが、今回の『エビータ』演出にはかなり気合が入っていたようです(笑)。オーケストラボックスをなくして
ギリギリ観客席の近いところまで美術を構成していることもそのひとつ。あ、その代わり生オケではないんですが(^-^;。あと廻り舞台とセリも多用していましたね。特にセリの部分はかなり効果的に使われていて、舞台全体に立体感が出ていてよかったと思います。特に、2幕頭でエヴァが『アルゼンチンよ、泣かないで』を熱唱するシーン。以前は舞台上にバルコニーが設けられていて、実際にそこへ上って演説するといった形・・・つまりはオーソドックスな形(笑)の演出だったのですが、今回はバルコニーセットは一切無く、登場した時も普通に舞台中央から出てくるという形に。「これだと、高いところから演説するというイメージが無いんじゃ?」と疑問に思っていると・・・途中から客席に一番近いところの舞台一部分がグオーーッと上昇して一気に会場全体が演説場みたいになるんですよ!!しかも、エヴァを熱狂する民衆役の役者さんたちが一気に客席通路までバーッと出てきて「エビータ、エビータ!」ってハンカチみたいなのを振ってる!まさに、私たち客席も実際にエビータの演説をその場で聞いているといった臨場感が味わえるような錯覚を覚えました。これはすごい!!気合入れただけのことはあります(笑)。しかし、あの高く客席まで競り上がった、何の柵も無いところで歌うエヴァ演じる井上智恵さん・・・度胸あるよなぁ〜〜。客席から見るとすごく臨場感があっていいんですけど、演じてる役者さんはかなり怖いと思いますよ。
と、舞台演出とかはなかなか見応えがあるのですが・・・
どうも雰囲気暗いんですよねぇ・・・なんとなく(^-^;;。まぁ曲がそんな感じだから仕方がないのかもしれないのですが、そもそもこの作品は映画から入ってしまった私としては舞台版がなんだか物足りなく思えてしまうんです。マドンナ主演で公開された映画と曲目はほぼ同じなのですが、舞台よりも全体の雰囲気に勢いがありました。この映画が大好きで何回かリピートして見ているだけに、なんとなく乗り切れない部分があるんですよねぇ…。せっかく演出も新しくなったんだから、全体の雰囲気にももっと勢いがほしいところだと思います。特に同じフレーズをリピートするバラードやフラットのナンバーにはもうひと工夫ほしいですねぇ・・・。2フレーズが終わった時点で『まだ歌うの?』とか思っちゃったこともしばしば…(苦笑)。『ハロー、ブエノスアイレス』『ニューアルゼンチーナ』『金は出て行く湯水のように』といった勢いのあるナンバーは曲もダンスもすごく素晴らしくてゾクゾクできただけにとても残念です。エヴァが癌に倒れてしまったあとからは、もう暗さ一直線でして(苦笑)…まあ、たしかに曲もトーンダウンしてしまうし元からそういう作品だから仕方ないのかもしれないけど・・・ちょっと退屈しちゃったかなぁ。映画のほうが最後までじっくり見れる感じです。このあたりの改善がほしいところ。
今回、新しいエビータに抜擢されたのが
井上智恵さん。私この女優さんかなり好きでして、彼女がタイトルロールを演じるのがなんだかとっても嬉しかったりしました(^-^)。8年前の野村玲子さんも迫力があったけど、井上さん演じるエヴァもすごく生き生きしていて良かったですよ!歌声も申し分ないし、元気な時の小悪魔的な役作りがすごく良かったと思います。あと『アルゼンチンよ、泣かないで』のナンバーのとき、最後の言葉で感極まるところなどは見ていてけっこうグッと来ました。今まではかない女性を演じることが多かった井上さんですが、見事に新境地開いたのではないでしょうか(^-^)。そういえば、ペロンの配役のなかに井上さんと同期の柳瀬さんの名前もありました。井上・柳瀬ペアがお気に入りな私はこの二人の『エビータ』も見てみたいな、なんて思ってしまいます(^-^ゞ
メインキャストの中で8年前と同じチェを演じたのが
芝さん。やっぱり芝さんにはこういった激しい狂言回しの役が似合いますねぇ♪『JCS』のユダを髣髴とさせる役どころですが、エヴァとは一線画しているようで実は彼女のことをかなり気に掛けている様子がすごく伝わってきました。『金は出て行く湯水のように』(題名はとんでもないけど 笑)のナンバーなんかは最高ですね!!ロックロックしてます!(笑)。
マガルディ役からペロン役に昇格した
下村さん。最初はどうもペロンのイメージと下村さんのイメージが思いつかなくて『どんな感じだろう』と心配したのですが、冒頭で登場した時から『おっ!ペロンだ!』と思ってしまった!そこにはマガルディなイメージの下村さんではなく、堂々とした威厳のオーラを放つ下村ペロンがいたんです。これには正直びっくりしましたねぇ。かなりハマってましたよ〜。体格の方もちょっと前よりも大きくなったように見えたのは気のせいかな(笑)。でも、ところどころで下村さんらしさもあり、『ペロンの野心』ナンバーでの椅子取り合戦では音楽が鳴り終わる前にフライングしてイスに座ってニヤリ(笑)。観客の笑いを誘っていました(^-^;。たしか今井ペロンだった頃は今井さんのあの体格のよさで相手の将校を椅子から競り落としてて迫力あったよなぁ(爆)。あと『ニューアルゼンチーナ』では民衆の前ですごい威厳ある態度を取っていたのにエヴァの前では『自信が無いんだ』とショゲてしまうシーンがあるのですが、このショゲ具合が下村さん独特の味があって面白かったです。でも、寡黙で存在感のあるペロン大佐も素敵でした〜。これはかなり嬉しい誤算かも。下村さんも新境地開きましたね。
マガルディは
渋谷さんだったのですが、タンゴの歌い方がものすごく独特でした(笑)。なんというか、ネチネチした感じといえばいいのかなぁ・・・あれじゃぁ、お客は喜ばないだろうななんて(笑)。
ペロンの愛人役の
久居さんは初めての女優さんですが、ちょっと物足りなかったなぁ…。彼女の唯一のナンバー『スーツケースを抱いて』なんですけど、なんというか・・・抑揚が無くて・・・同じフレーズの繰り返しがある歌なので余計退屈してしまった(苦笑)。まだまだこれからかな。

新演出は面白かったけど、どちらかというと
結局は私は映画のほうが好きだということが分りました(笑)。