ラブ・レター」

出演者: 北村一輝、大塚寧々、佐野瑞樹、滝田裕介、渡辺督子、大森民生ほか

あらすじ

新宿歌舞伎町で裏ビデオの店長をしていた吾郎(北村一輝)は、世話になっているヤクザの介入で中国人女性の白蘭(大塚寧々)に妻の籍を売る。お互いに顔を知らない二人であったが、店が摘発されて逮捕拘留されていた吾郎は、釈放された日に白蘭が死亡したことを知らされる。しぶしぶヤクザの子分であるサトシ(佐野瑞樹)と共に遺体を引き取りに行くことになった吾郎。しかし、白蘭が働いていた娼婦宿や警察、病院をたずねて回るうちに彼女への罪悪感にさいなまれていく。そして遺体との対面・・・それは吾郎が会う初めての妻の姿だった。吾郎はわずかな遺留品の中から白蘭からのラブレターを読み進めていくうちに涙をとめることが出来ず声を上げて泣くのだった・・・。

2月19日 (木) 博品館劇場
好きな役者さんの一人である、北村一輝さん。そもそもファンになったのは北村さんの初舞台作品だったために、彼の舞台作品は極力観に行くようにしています。が、今回パンフレットを見ると・・・私の知らなかった作品があったことが判明(苦笑)。というわけで、今回で北村さんの舞台は3回目ということになります。(ちなみに『秋ランマン』は知っていたのですが脚本家が好みと違うので断念してます(爆))
この『ラブ・レター』という作品は『ぽっぽや』の作者浅田次郎さんの物語ということで、映画化もされています。この作品を観にきていた方の年齢層が割と高めだったのはもしかしたらその影響かもしれません。というわけで、原作ファンも多く劇場に来ていたようなのですが、私は原作は愚か映画も観ていないので全く内容を知らずに舞台から入りました。ハッキリいって、今回感動したのは
『無知だった』ことがかなり大きかったと思われます(^-^; つまり、原作のイメージをひきずってこの舞台を見るとかなり違って見えるとか…(苦笑)。ミーハー根性だけでチケットを取ったことが功を奏したというわけです(それも言いすぎか 爆)

正直言って、今回は本当に『北村さんの舞台観なきゃ』の精神だけで取ったチケットだったので、舞台の話自体にはもしかしたら入り込めないかもしれないなぁと思っていました。なんか観る前は今ひとつノることが出来なかったんですよねぇ…。今回の北村さんの演技はどんなかな、程度にしか構えていなかったのですが・・・なんと、
久しぶりに泣きが入ってしまいました(T_T)
舞台全体のセットは
いたってシンプル。休憩ナシで芝居が進むこともあり、場面展開がかなり多いのですがそのたびに椅子や机が場面によって配置されるだけという質素さ…。なので、もうどうしたって本当に役者に集中してしまうんです。物語は淡々と細かい場面転換のなかで繰り広げられていくのですが、なんだかその流れ自体が私には新鮮に感じられました。ハッキリ言ってほとんど気を抜くことなくガーっと真剣に見入ってましたんで・・・私(^-^ゞ
田辺誠一さんの奥様、
大塚寧々さんは今回が初舞台ということでしたが、いや〜〜生の寧々さんはめちゃくちゃ奇麗なお方でございました。白蘭という中国人女性の役だったのですが、あのしっとりとした色気が中国人としての雰囲気をムンムンに醸し出していてとても合っていたと思います。ただ舞台の演技としては・・・やはり初めてということもあり今ひとつ客席まで訴えかけるだけの何かを感じることは出来ませんでした。すごい雰囲気はあったんですけどねぇ・・・それだけがちょっと残念かな。でも、これから回を重ねていくごとにさらに深みが増していくんじゃないかと思います。
佐野瑞樹さんは市村さんの舞台で観て以来2回目。彼はかなり舞台の場数を踏んでいるようで、発声や動きなどとてもよかったと思います。それに口ではものすごくシビアで冷淡なことを言っているんだけど顔が可愛くって(笑)なんだか憎みきれなかったです。一応ヤクザの子分ということだったようなのですが、それだけはなんだか可愛すぎて見えなかったかも(^-^;; これはそう感じてよかったのかなぁ・・・ま、気になった点はそのくらいで、なかなかの熱演でした。
意外だったのは
滝田裕介さん、なんと出番はワンシーンのみだったんですよ!!中国に遺骨を持ってやってきて白蘭の母の幻影を見つめて立ち尽くしている吾郎に「白蘭の母親はもう死んでいる」と告げて立ち去ってしまう・・・それだけ!!(笑) たったこのワンシーンだけの登場にもかかわらず異様なオーラを放っていた滝田さんはやはりすごい俳優なのだなぁと改めて実感してしまいました(^-^ゞ

ここまでの感想だけ読みますと、私が涙した所以がまったくつかめないと思いますが(笑)・・・どうしてボロ泣きしちゃったかって、それはもう
北村一輝さんの存在のヒトコトに尽きますねぇ、今回は。冷静になって今回のお芝居の話だけを取ってみてみると『泣ける』ところまでは行かないと思うのですが、私は北村さんの演技だけで相当泣かされてしまったわけです(T_T) 正直、観劇前までは彼にここまで感動させられるとは思ってなかったですからねぇ・・・自分でもちょっと嬉しいビックリ。
初登場の、なんかおよそ『裏ビデオの店長』にしては可愛すぎる笑顔の吾郎に早速ノックダウン(笑)。これは『吾郎』の人物像としてどうなのかということを差し引いても(爆)ここから北村さんからもう目が話せない状態に。嫌々、白蘭の遺骨を引き取りに行くのですが娼婦宿で白蘭の様子を聞いていたあたりから
だんだん自分への苛立ちを感じていくところなど、かなり上手く表現していたと思います。そして、病院で遺体と初めて対面し、自分への『ラブ・レター』を読みながら号泣するシーン・・・私はまずここでボロ泣き(T_T) いや、だって、一輝さんの涙している姿を見ているだけで本当にこちらも泣けちゃうんですよ〜。なんか思わず舞台まで駆け上がって抱きしめてあげたくなっちゃうくらいだった(爆)。
そのあと、サトシと白蘭のお通夜だといって飲み明かすシーンでは互いの辛い過去の告白が展開されるのですが、ここもなんだかとても奥深かったです。
サトシは元暴走族で優しかった母親を捨ててしまったことを抱えていて、吾郎は母親が死んですぐに父親が他の女性に目移りしたために父親から捨てられてしまったトラウマを抱えているのですが・・・このときの北村さんの父親に対する悲しい想いの告白がまた泣けた(T_T) もうねぇ、すんごく寂しそうで観ているだけでどうしても泣けちゃうんですよ〜…。
そして、白蘭の遺骨を中国に持ってわたり白蘭の母親の幻影と対話をするシーン。白蘭の母親は寧々さんが二役で演じているのですが、これがちょっとぎこちないなぁなんて違和感あったりもしたのですが(^-^; それを超越させたのがまたしても
北村さんの涙(T_T) 白蘭を思いやる母親から『結婚してくれてありがとう』という言葉を聞き、偽装結婚をしたという自分の罪の意識に耐えかねて吾郎は涙をとめることが出来ないのですが、その泣いている姿がもう身につまされるようで・・・愛しくて、私涙止まりませんでした・・・。ほんと、一緒に舞台に駆け上がって泣いてあげたいって思っちゃったくらい(^-^; なんていうか、北村さんの涙ってこんなにも母性本能を刺激しまくるものだとは知らなかった(爆)
そして、私の号泣きポイントはラストシーン。遺骨を前にお酒をあおっている吾郎のもとに真っ赤なドレスを着た白蘭の幻が現れ、初めて二人はここで対峙します。「踊ろう。ぼくだってタンゴくらい踊れるんだ」と酔って足元がフラフラながら
初めて妻である白蘭に愛をぶつけていく姿は本当に感動的!「誰が君を切り裂いたんだ!」「ぼくはそいつを殺してやりたい!」この絶叫がとても痛々しくて北村さんの表情を観ているだけで私もう号泣き状態(涙)。白蘭のお骨を船の上から海に投げ、(ちょうど私の席の横あたりに遺骨が飛んできてちょっとビックリ 笑) 自分もこの海に眠るんだとつぶやく姿が大変印象的で感動いたしました。今回の吾郎は本当に感情がとても繊細で壊れやすくて観ているだけで泣けてきてしまいました。
チケットを1枚しか取れなかったのが(金銭と日程上・・・)惜しまれます。ホント・・・。たぶん、あと10回見たとしても10回とも北村さんで泣いちゃうと思います、私(T_T) 久しぶりに本当にいい涙を流せたなって思いました。

ちなみに、このお芝居に関して一つだけ苦言を述べるとすると・・・白蘭の遺体の前で号泣きする吾郎の
大感動シーンの後のシーンのBGM・・・♪シミジミ飲めば〜シミジミと〜♪・・・っつうの(爆) これだけは止めてほしかったよ(;_;) 私、吾郎の号泣きと共に涙しまくってたのにこのBGMのせいで涙ひいちゃったし〜〜(苦笑)。つくづくBGMの重要性を痛感した瞬間でした・・・(^-^;;;;;

と、とにかくこの舞台は
北村一輝さんにすべてやられてしまった私でした(^-^ゞ テレビでは人殺しとかヤクザ風な役柄が多いのですが、舞台で見る北村さんは本当にものすごく可愛い方なんですよ〜。カーテンコールではちょっと恥ずかしそうにハニカミながらちょこちょこっと手を振っているんですが、これがまた母性本能刺激しまくりです(爆)かわいすぎるっっっっ!と、それを差し引いたとしても(笑)北村一輝さんの演技は私にとってはものすごく心揺さぶる素晴らしいものでした。初舞台の彼を知っているだけになんだかちょっと嬉しかったりして♪・・・終演後にはアンケートに北村さんへの『ラブ・レター』を書き添えてしまいました(^-^ゞ またぜひ舞台に挑戦して欲しいと思います!!

(今回はかなりミーハー的感想でスミマセン 爆。 でもやっぱり・・北村一輝はいい俳優ですっっ 嬉)



3月8日(月)
愛知厚生年金会館
本来なら東京公演1回で我慢するはずだったのですが・・・想像以上に泣きが入り一輝さんにめちゃくちゃ燃え上がってしまい(笑)、気がついたら名古屋公演のチケットと新幹線の往復チケットを購入しておりました(^-^;; 名古屋遠征・・・結婚してから初めて〜〜! しかもマチネではなくソワレ・・・名古屋から日帰り・・・自分でもゾッとするような行動力を示してしまいました(爆)。こんな状況で名古屋遠征したので、ハッキリ言って観光らしい行動は一切なく・・・土産のういろうと、味噌カツの駅弁(新幹線の中で帰りに食べるぶん)を購入しただけでした(^-^; 
そんなミーハー根性だけで突っ走った遠征でしたが、
やっぱり行ってよかったです〜〜! ほかの観劇感想などを読むとけっこう評価が低い『ラブ・レター』ではありましたが(苦笑)、やっぱり私は好きでしたねぇ。ただ、2回目としてちょっとだけ冷静な視線でこの舞台を評すれば・・・北村さんが吾郎を演じていなかったら遠征するほどの魅力はなかったかもしれません(爆)。セットがシンプルすぎるのは別にいいのですが、物語の細かい部分の詰めがちょっと甘いんですよね。白蘭はなぜ一度も会った事もない吾郎に熱い想いを抱きつづけられたのかとか・・・。1時間30分という短い時間の中ではやはり人物の心情を深く掘り下げることに限界があったのかもしれません。せめてあと15分でも長い時間があればなぁ・・・と・・・。

さて、愛知厚生年金会館は初めて行く劇場だったのですがかな〜り広かったんでちょっとビックリ。というのも、博品館劇場は中劇場で割かし客席と舞台の距離が近いんですよね。『ラブ・レター』くらいの短いストレートプレイにはちょっと
箱が大きすぎたんじゃないかと・・・。まだ中日劇場のほうがよかったような気もしたのですが、この時期は森光子さんがでんぐり返しをしているようで(笑)だめでしたね(^-^;; というわけで、大きな劇場で芝居をするのが初めてであろう北村一輝さんにとってはちょっと可哀想だったのかもしれません。発声がねぇ・・・ちょっと端っこのほうの席だったもので届かないことがけっこうあって・・・そこだけが残念だったかも。そういった意味では東京で一度見ておいて内容を知っていた私としてはラッキーでした(^-^;
と、けっこう最初のほうに気になった点を多めに書いてしまったのですが・・・それでも
今回も私は涙してきました(T_T) やっぱりねぇ、一輝さんの涙はめちゃくちゃ私の母性本能を揺さぶるんですよ〜〜。テレビや映画では比較的『凶暴的』な役柄が多い彼ですが、ひとりの弱い人間としての心情表現も絶品でございます。 はじめは興味も抱かなかった亡き妻の存在をシーンが移るごとに自分のなかで一回りも二回りも大きくしていく過程はとても繊細で感動的です。今回の名古屋公演では表情も東京のときより深みが増していて、吾郎の心の移り変わりが痛いほど伝わってきました。 遺体と対面し、白蘭のラブレターを読みながら号泣きするシーンはやっぱり私もボロ泣き(T_T)・・・。サトシに貧乏ゆすりをバカにされ、「俺は今猛烈に貧乏ゆすりがしたいんだよ!」と泣きながら叫ぶ吾郎のシーンは前回以上にグッッッときましたねぇ。場面が暗転してもしばらく北村さんの泣き声が響いていて・・・切な過ぎましたです・・・ほんと(涙)。

でも、でも、やっぱりこの涙のシーンの後の
八●亜●のBGMはなんとかならなかったのか〜〜〜!(怒) たしかにそのあとの弔い酒シーンは演歌な雰囲気かもしれないけど(苦笑)、あの涙涙のシーンの後には絶対ふさわしくないよ〜〜(T_T)

白蘭の遺骨を中国に届け、白蘭の母の幻に遭遇するシーンもやっぱり感動的でした。白蘭母の話にはじめのうちはちょっと落ち着かない雰囲気でいた吾郎が、白蘭が親を自分の命よりも大切に思っていた話を聞くにしたがって
ボロボロ涙を流しながら罪悪感に浸っていく演技は秀逸です!一輝さんの流す涙はとても自然で「演技」っぽさを感じないんですよ。とても純粋なんですねぇ。その涙を見れば・・もう私も泣かずにいられなかったッス(T_T) 彼の涙には魔力があるに違いない(笑)
ラスト、白蘭の遺骨を海に投げ入れて
「やがて僕もそこへ帰っていくんだ」とつぶやくシーンもかなり胸にジーンときましたねぇ。そして白蘭への想いを彼女の幻を見ながら叫び続ける姿にまた涙・・・。もう、本当に繊細で痛々しくて・・・今回もやっぱりたくさん泣いてしまいました。

カーテンコールでは東京の時のようには笑顔振りまいてはくれなかったんですけど(苦笑)、それでも最後には軽く手を振って終始照れ笑いしてて・・・やっぱ、
めっちゃくちゃ可愛かったです♪その笑顔にも魔力があるに違いない(笑) 
一輝さんの涙で泣かされ、笑顔で癒され・・・私にとってはとても充実した『ラブ・レター』観劇でした〜。舞台が苦手という一輝さんですが、またぜひチャレンジしていただきたいと思います。

気がつけば、今回も北村一輝さん一色の感想でした(爆)



追記
ちなみにこの舞台を観て名古屋から帰還した翌日、私は救急車で病院に運ばれてました(爆) 名古屋で倒れなくてよかった(苦笑)