3月29日(月) 14時開演
「新・近松心中物語 〜それは恋〜」 日生劇場

出演者: 阿部寛、寺島しのぶ、田辺誠一、須藤理沙 ほか

あらすじ

大阪新町の女郎屋にひょんなことから訪ねてしまった飛脚屋の真面目な養子・忠兵衛(阿部寛)はそこで出会った梅川(寺島しのぶ)と一瞬にして恋に落ちる。逢瀬を重ね愛を深めていく二人であったが、ある日梅川に身請け話が持ち上がる。養子の忠兵衛には金がなく、困り果てた彼は友人の古道具商の婿養子・与兵衛(田辺誠一)のもとに相談に行く。同じような境遇の忠兵衛に同情したお人好しの与兵衛は、店のお金であった30両を手付けとして忠兵衛に渡してしまう。忠兵衛は梅川を身請けできるが、このことがかえって事態を悪化させ忠兵衛と梅川、与兵衛と妻のお亀(須藤理沙)は宛てのない逃避行に出る。

蜷川演出の代表作である『近松心中』が新しくなって上演されましたが、旧作を一度も観た事がない私にとってはどこが新しくなったのか全く分かりませんでした(笑)。というか、この手の演劇は正直言ってシェイクスピアに匹敵するくらい実は苦手で・・・田辺誠一さんが出演してなかったら絶対に行かなかったであろう作品です(爆)。 客層は若手の出演者が多いにもかかわらずかなり高め(^-^; おそらくは蜷川演出の『近松』ファンの方が多かったと思われますが、今回の出来にはいったいどう感じたのか・・・気になるところではあります。
今回の私の座席は
久しぶりの2階席。端っこのほうだったのですが、横のほうには人もなく(苦笑) ものすごくゆったり観れたのが良かったかも。2部の時には一番舞台に近い端の席まで移動して観れてしまいました(笑)。でもかえってこの演劇は2階席から見れて良かったのかもしれません。舞台の奥行きまで良く分かったし、なんといっても田辺ファンの私にとっては山場の水シーン(笑)がよ〜〜く見えたことがかなり嬉しかった。蜷川演出ならではの舞台美術の美しさを感じることが出来ましたね。

蜷川さんの演出は正直言って好きです。『草迷宮』も『グリークス』も『オイディプス王』も退屈することなく魅入る事が出来たし、今回も決して私の好きな分野の演劇ではないけれど蜷川さんならってけっこう期待が大きかった部分がありました。が、う〜〜ん、やはり
題材に対する苦手意識がどうしても最後まで抜けきれなかったかも・・・。
オープニングは多くの群集を使う、まぁ、蜷川さんの特徴がよく現れた演出だったのですが・・・シーンが
女郎屋の中の出来事だったので・・・(爆) 斬新といえば斬新ですが、あまりにもリアルに描いてまして・・・超エロかったっす(^-^;;;;; だって、舞台の上で数十組の男女が真っ赤なライティングの中でけっこうな時間帯「営み」続けてるんですもの〜〜〜(爆)。芸術的にはすごいと思うけど、正直私はこの冒頭でドン引きしました(爆)。この嫌悪感が抜けるまでにかなり時間かかったもんなぁ・・・。
で、そんな心境の中に突然登場した一人の
気弱な町人さん。私はこの人が田辺誠一さんだと認識するのに5分くらい要しました(爆)。顔立ちはどう見ても田辺さんっぽいのですが、声の感じが全然別人に聞こえたんですよ〜。高めの声でカツゼツもものすごくしっかりしてる・・・(田辺さんは時々ちょっとカツゼツ悪いかもって思うことが多いので 苦笑)
「え、もしかして今日は田辺さん病欠!?田辺さん目当てで来たのにぃ〜〜。次の観劇日を検討しなければ・・・」
と、真剣に悩んでました(爆)。本当に驚きましたねぇ〜、今までの田辺さんとは全然違うイメージです。これは嬉しい発見! 田辺さん演じる与兵衛のキャラクターって
すごくナヨナヨしててハッキリしない、でもなんか可愛くて放っとけない・・・目が離せないとても印象深いものでした。客席のウケも非常によく、ファンとしてはかなり嬉しいところ(^-^)。 
モデルの先輩である
阿部寛さんと田辺さんのツーショットも大変見応えがありました。なんか阿部さんが田辺さんに土下座してお金のことを相談している図が妙に可笑しかった(笑)。でもやはりさすがはモデル出身のお二人・・・目の保養・・・ス・テ・キでございました〜。二人並んでというシーンは1シーンしかなかったのが残念っっ!幼馴染っていう設定なんだからもっと二人のシーンを多くしてほしかったなぁ。でも、メインは男と女の『心中』ですからねぇ、仕方ないか(笑)

物語は忠兵衛が無理をして梅川を身請けしたことで、そのことに加担した与兵衛もろとも転落の道に陥っていくというものですが、
忠兵衛と梅川のシーンは終始重く重く・・・ひたすら悲劇っぽく演出されているのに対し、与兵衛とお亀のシーンは「心中」のときまでも観客を笑いに巻き込むような演出で、そのあたりはメリハリがきいていて面白かったと思います。二組の心中シーンはあまりにも落差がありすぎるって感じはしたんですけどね(笑)。
物語の主題はあくまでも忠兵衛と梅川であると思うのですが、なぜか始まりと終わりは与兵衛の物語になっている・・・これは
田辺ファンに対する蜷川さんのサービス!?(爆)。ま、何度も繰り返し上演されている作品なのでそういう話の流れは変わっていないかもしれませんが、印象に残っているのは与兵衛とお亀の心中物語なんですよ〜。阿部さんと寺島さんも熱演しててとても印象深かったんですけど、いまひとつなんかインパクトに欠けるんだよなぁ。猛烈に舞台に降り注ぐ吹雪のなかで忠兵衛が梅川の首を絞めるシーンはとても緊迫していて良かったんですが、感動っていうものはなかったかも。むしろそのあとの忠兵衛が自分の首を切って自害したときのワザトらしい血しぶきが印象深かったかも(笑)。
与兵衛とお亀は「心中のときにこんなに笑えていいんかい!」ってくらい面白くて(笑)。
田辺さんの情けなさぶりと、須藤さんの元気娘ぶりが妙にマッチしててかなり笑えました。お亀の死に方もバックに森山良子さんの重い切ない主題歌が流れているのにふさわしくないくらいアッケラカンとしたもので(笑)、あの音楽のなかで起こっている爆笑の雰囲気っていうのはなかなか味わえない感覚だったかも(^-^;;; これ、前回までは寺島さんがお亀を演じていたらしいのですが・・・こんな感じだったんでしょうか・・・う〜ん、ある意味恐るべし、蜷川演出って感じです。
で、この芝居のメインイベントであるらしい
与兵衛の川飛び込みシーン!!休憩時間に1階席の4列目くらいまでのお客さんにはビニールシートが配られており、濡れ対策もバッチリ(笑)。ああ〜〜私も浴びたかったよ〜〜!
お亀を殺してしまっ与兵衛が川べりで後を追おうと剣を握るのですが、それがポロッと川の中に落ちてしまうんですよ〜。その落ち方があまりにも間抜けな落とし方でめちゃくちゃ笑えました(笑)。田辺さん、なかなかいい味出しているっっ!そしてその剣を探そうと与兵衛は
ふんどし一丁になって川に飛び込みます。いや〜〜〜大迫力でしたよ!!あれは水泳が得意な田辺さんだからこそできるパフォーマンスだったのではないでしょうか。あの狭い川のなかで何往復もイルカ泳ぎ!!客席のかなり奥のほうまでしっかり水をバチャンバチャン飛ばしまくっておりました〜(笑)。それにしても本当に素晴らしい泳ぎっぷりで、これは2階席だからこそ見える田辺さんの泳ぎ姿って感じでかなり得した感じでした。しかも〜〜田辺さんの小さく引き締まったお尻もしっかり堪能(爆)。とにかく見応え満点のシーンで思わず拍手を送りました。このシーンの後に猛吹雪の忠兵衛たちのシーンが行われたので、そのせいもありインパクトに欠けると思ってしまったのかもしれません(苦笑)。

ラストは結局死ねなかった与兵衛が「寿命が尽きるまで生きさせて」と乞食坊主になって町をさまようシーンで幕。ここでも
死にきれなかった与兵衛の情けなさがトコトン浮き彫りにされていて、哀れでありながら最後まで笑いを誘っていました。
いや〜田辺さん、客席をあそこまで乗せることが出来るなんて・・・
本当に成長されましたよ。ファンとしては本当に嬉しかった!そのことを堪能できたということで私の評価はかなりのアップです・・・というか、それがすべてって感じでもあります(笑)。

それにしても帰りの日生劇場で繰り広げられていたオバサンたちのチラシ奪い合いはすごかった・・・。そのチラシとは・・・明治座公演の上川隆也主演『燃えよ剣』。 私も一枚欲しくて何とかゲットできたのですが、周りのオバさんたちの力は強烈でビックリ(苦笑)。上川隆也は未だに高い年齢層に熱烈支持されている模様です(^-^;;;