「奇跡の人」 シアターコクーン

主なキャスト

アニー・サリバン:大竹しのぶ / ヘレン・ケラー:菅野美穂 / アーサー・ケラー:渡辺哲  / ケート・ケラー:余貴美子 /ジェイムズ・ケラー:池田成志 / エヴ伯母:平木久子 / アナグノス:古田鋼太郎 / ヴァイニー:安田ひろみ

観劇日 3月11日(土) ソワレ 

 

あらすじ

アラバマ州のケラー一家に新しく誕生したヘレン。1歳半のときに原因不明の高熱を出し音・光を失ってしまう。絶望するケラー夫妻…。5年後、わがまま放題に育てられたヘレンと向き合うことができなくなった一家が呼び寄せたのが若干二十歳のアニー・サリバンだった。彼女は盲学校の卒業生で天涯孤独であったが自立という目的に向かってはじめて舞い込んできたヘレンの家庭教師という仕事に果敢に挑もうとしていた。しかし、わがまま放題に育てられたヘレンとなかなか向かい合うことさえできない。また、ケラー一家からも疎まれてしまうこともしばしばだったが、それでもあきらめずに必死にヘレンと向かい合おうとするアニーの姿にケラー家の人たちも次第に心を開いていく。しかし、肝心のヘレンはなかなかアニーに心を開かない。そこで彼女がとった手段は離れの家でヘレンと二人きりで2週間過ごすことだった。2週間後、一見おとなしくなったように見えたヘレンであったがそれはうわべだけでアニーの必死の教育「物に名前があること」を理解できないヘレン… やりきれない思いで2週間を終えたアニーはヘレンを家に戻すが家に戻ったとたんにヘレンは食卓でナプキンをはずし床に投げつける。そんな彼女を庭に連れ出したアニーは…

 

3月11日(土) ソワレ観劇

97年、川平慈英さん目当てで観に行ったはずがそれ以上に大感激してしまったすばらしい作品…この再演は本当に待ってました!って感じでした。今回は主演のヘレンに菅野美穂さんがキャスティングされているとあってチケットを確保するのも前回よりかなり難しかったようですねえ。私はあるマイナーな(?)チケット販売から購入したのであまり苦労はしなかったのですが、欲を言えばもう一枚買っておけばよかったなあ〜なんて(笑)
舞台は前回の青山劇場よりもかなり狭いシアターコクーン。舞台の上のセットは前回とあまり変わらないのになんだか恐ろしく狭っくるしいという印象をはじめに持ってしまいました(^_^;) いやだって、井戸とケラー家の扉が目鼻の先だったしテーブルもなんだか小さく見えてしまったので…。登場人物も多い芝居だし、(ただ、アニ―の盲学校の生徒数が減ってました(^_^;)) こんな小さな舞台で大丈夫かなあ〜なんて観る前にちょっと不安に刈られてしまった私でしたが、始まってみればもう舞台の狭さ云々よりも物語に引き込まれてしまいました!この芝居にはやはりそれだけのパワーがあるんですねえ〜…。
今回は演出のほうもかなり変わっていてとても興味深かったです。特に菅野ヘレンの登場シーンはものすごく印象的!!ケラー家のセットが舞台上で回転する中、両手を上に上げて何かを探るように、光を求めるように2周くらいあちこちさまよい続けるんです。このときの光の使い方もすばらしかったし、なんだか胸を衝かれたような気持ちになってしまいました…。大竹サリバンと菅野ヘレンの戦いもまた前回よりもパワーアップしており、特に2幕は戦場状態(笑)ヘレンにナイフとフォークで物を食べることを教えるために壮絶な争いが展開されるのですが、そこにはまったく芝居っけが感じられないというのが本当にすごかったです(*_*) もう本気も本気。プロレス技(ヘレンをバックドロップしたときはほんとにびっくりしました(^_^;))まで飛び出してもう見ているこちらとしてはハラハラドキドキ…。サリバンが「ようやくナイフとフォークを使い、ナプキンもたたみました」とぼろぼろになって出てきたときは私もボロボロになったような疑似体験をしてしまいました(笑)見所はこの戦いのみあらず、家族それぞれの不器用さにもあります。今回は特にそれが顕著に表れていて切なかったです…だからこそ、ラストの井戸のシーンがより感動的に感じられましたねえ。結末がわかっているのにあのシーンでは私は絶対に涙が出てしまう(T_T) それにしても、今回の井戸は派手でした〜。セットはこじんまりなんだけど(笑)なぜか排水溝がついてない(^_^;) だからラストシーンではもう水がビンビン飛びまくり状態で前列の席の人はかなりかぶったんじゃないでしょうか(^_^;)舞台の上ももう水浸し、しのぶさんも菅野ちゃんもドロドロになってました…それがまたすごいリアリティでドラマチックになったんですけどね。

キャストについてですが、大竹しのぶさんはこれが5回目とあってもう、サリバン先生が身に染み付いていらっしゃるようで本当にすばらしかったです!20歳という設定がさすがにちょっと苦しくなってきてはいるのですが(笑)あの芝居を感じさせない本物感は彼女にしか出せない味ではないでしょうか。ヘレンが「水」を理解したとき、小刻みに震えながら「そうよ!!!」と絶叫する姿は涙なくしては見れません。20歳が通じなくなる前に(爆)もう一度近いうちに大竹サリバンと出会いたいです。
菅野美穂ちゃんのヘレンはめちゃくちゃ可愛かった!!もともと可愛い美穂ちゃんですけど、このヘレン役がまたさらに彼女の可愛さの魅力を引き出していたようでした。動作がもう子供そのもの(笑)これじゃあ、両親に馬鹿っ可愛がりされても仕方ないな〜って感じでした。暴れ振りも天晴れ!投げ飛ばされたりたたかれたり水かけられたり…もう大熱演でカーテンコールで放心状態みたいになっていた姿が印象的でした。
余美貴子さんのケートはまだちょっと若さが残る未熟さを微妙にあらわしていてとても印象的でした。ただ、余さんといえば、けっこう意地悪な役柄が多い方だったので時々そのイメージがチラッと頭を掠めてしまった失礼な私(爆)でもとても美しいケートでした〜(^.^)
渡辺哲さんのアーサーは今までの石田太郎さんのイメージとはかなり違っていたと思われます。もう不器用そのものって感じで…一家の長で一番の権力者であるにもかかわらずどこかちょっと臆病な面もあって(^.^) だから彼が権威を振るっていてもなんだかちっとも憎めないんですよ。これは哲さんの人柄そのものが出ていたんじゃないかなあ〜。とても親しみやすいアーサーでした(^。^) カーテンコールのとき、哲さんのファンの人たちがプラカードみたいなものを掲げて応援していたのが印象的でした(笑)
主演の二人のすばらしさに勝るとも劣らない存在感を出していたのが池田成志さんのジェイムズ!ジェイムズってすごくひねくれ者で家族にあまり干渉しないため本来ならあまり目立たないんです。前回の川平さんは目立たないながらもすごい存在感を出してくれましたが、今回の池田成志さんもめちゃくちゃ存在感ありましたっっ!ひねくれ者をやらせたら右に出るものはいないといわれているらしく(笑)ものすごく自然。本当は自分も家族の仲間に加わりたいくせに素直にそれが表現できない微妙な不器用さが随所に見られてついつい池田ジェイムズに肩入れしたくなってしまいました。それだけに、ラスト近くで「僕の母さんのことも忘れないでほしいんだ!」と叫んで走り去った姿は胸打たれました(T_T) また、父親の前に立ちはだかって「僕は正しい、お母さんは正しい、アニーは正しい、おとうさんは間違っている…」と叫んだシーンは「ウォーター」にも匹敵する名シーンでした!!う〜ん、舞台の成志さんは本当にカッコよかったですぅ〜(^○^)←結局ファンモードの私(爆)
そうそう、ラブラドールレトリバーのベルちゃんも名演技(!?)でした〜!あの強暴な菅野ヘレンにペチペチやられても大人しくされるがままになっていたのは素晴らしい!!あそこまで調教するのって大変だったんじゃないかなあ(^_^;) ベルちゃん、お疲れ様でした(^。^)

ラストがわかっていても、いつのまにか涙が出てしまう…そんないいお芝居がこの「奇跡の人」!この感動はやはり生でしか味わえないものです。近いうちにまた再演してほしい一作です!!