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【注意】 このドキュメントは、W3CのFrequently Asked Questions on W3C's Web Ontology Language (OWL)の和訳です。
このドキュメントの正式版はW3Cのサイト上にある英語版であり、このドキュメントには翻訳に起因する誤りがありえます。誤訳、誤植などのご指摘は、訳者までお願い致します。

First Update: 2005年6月25日 | Last Update: 2005年6月25日


W3C

W3Cのウェブ・オントロジー言語(OWL)に関するFAQ

問. オントロジーとは何ですか?

答. オントロジーの概念は、非常に長い間、哲学で扱われてきましたが、近年では、異なる語彙どうしの正確な関係づけを十分な精度で可能にするために指定される機械可読語彙のひとつとして認識されるようになってきています。

言語要件ドキュメントによると、より正確には、

オントロジーは、知識の一分野について記述し表現するために使用される用語を定義するものです。オントロジーは、領域情報(領域とは、医学、工具生産、不動産、自動車修理、財務管理などのような、ある特定の主題分野あるいは知識の一分野にすぎない)を共有する必要のある、人々、データ・ベースおよびアプリケーションによって利用されます。オントロジーは、領域の基本概念と、概念間の関係に対するコンピューターが扱える形の定義を含んでいます[...]。オントロジーは、ある領域の知識、および、複数の領域にまたがる知識をコード化します。このようにして、オントロジーはその知識を再利用できるようにします。

問. OWLは以前のオントロジー言語とどのように異なっていますか?

答. OWLはウェブのオントロジー言語です。以前の言語は、特定のユーザ・コミュニティー(特に科学分野や会社独自の電子商取引アプリケーションにおける)用のツールとオントロジーを開発するために使用されてきましたが、一般的なWWWのアーキテクチャや、とりわけセマンティック・ウェブと互換性があるようには定義されませんでした。

OWLは、以下の性能をオントロジーに加えるために、RDFが提供するリンクを使用する言語を提供することにより、上記の点を是正しています:

問. 何のためにウェブ・オントロジーを使用できますか?

答. ウェブ・オントロジー・ワーキンググループは、ウェブにおけるオントロジーの主要なユースケースを特定し、それらをユースケースおよび要件ドキュメントで記述しています。実装済みのアプリケーション(以前のウェブ・オントロジー言語を使用した)の調査が、約25台のシステムを実際に配備して行われました。

以下の通り、WGはこれらを6つの主なカテゴリーに分けました。

問. だれがOWLのツールとアプリケーションを実装していますか?

答. 多くの組織がOWLの利用について調査しており、現在、多くのツールが提供されています。ワーキンググループは実装およびデモンストレーションのリストを維持しています。さらに、米国政府(DARPAとNSFを通じて)と欧州連合(ISTプログラムの第5および第6世代のフレームワークを通じて)の両方がウェブ・オントロジー言語の開発に出資しました。DAML、OIL、およびDAML+OIL(OWLの基となった先行言語)を使用するシステムの大部分は、現在、OWLにマイグレートされています。さらに、広く利用されたProtegeシステムなどの多くのオントロジー言語ツールは、現在、OWLをサポートしています。

問. OWLオントロジーは既に提供されていますか?

答. ウェブにはOWLで提供されている多くのオントロジーが存在しています。DAMLオントロジー・ライブラリーにオントロジー・ライブラリーがあり、これにはOWLまたはDAML+OILで書かれた約250の例が含まれています(DAML+OILからOWLへのコンバータがウェブで提供されています)。さらに、いくつかの大規模なオントロジーがOWLで公開されました。これらは、米国国立ガン研究所センターのバイオインフォマティクス・センターが開発したOWLによる癌のオントロジーを含んでおり、約1万7000の癌に関する用語とその定義や、有名なGALEN医学オントロジーのOWLバージョン(マンチェスター大学で開発された)が含まれています。

RDFスキーマでは不可能なことで、OWLで追加されたことは何ですか?

答. OWLは、RDFSを拡張し、異なるRDFSクラス間の複雑な関係の表現と、特定のクラスとプロパティーにおけるより多くの正確な制約の表現を可能にします。これらの例としては、- 数とタイプに関してクラスのプロパティーを制限する手段 - 様々なプロパティーを持つアイテムが特定のクラスのメンバーであることを推論する手段 - クラスのすべてのメンバーが特定のプロパティーを持つのか、それらのいくつかだけが持っているかもしれないのかを決定する手段  -1対1と多対1や1対多の関係を区別する手段(データベースの「外部キー」がオントロジーで示されることを可能にする) - ウェブ上の異なるドキュメントで定義されているクラス間の関係を表現する手段 - 他のクラスの和集合、積集合、補集合から新たなクラスを構築する手段、そして - 特定のクラス/プロパティーの組み合わせに対して範囲と領域を制限する手段 があげられます。OWLガイドでは、食品とワインについて説明している部分で、これらのすべての例を提供しています。

問. OWLドキュメントの集合にはどんなドキュメントが含まれていますか?

答. ワーキンググループは、OWL言語を、学びたい人、利用したい人、実装したい人、理解したい人、という異なる対象者に向けた6つのドキュメントを作成しました。ドキュメントには、- OWLの動機付けとなったユースケースおよび要件の提示 - OWLの機能と使用方法を簡潔に説明した概要ドキュメント - OWLの機能の使用に関する多くの例を掲載し、OWLの機能を段階的に説明している総合的なガイド - OWLのあらゆる機能を詳細に掲載しているリファレンス・ドキュメント - OWLの実装が言語の設計と一致していることを確認するために使用できる100以上のテストを提供している、テストケース・ドキュメント、およびテストスイート - OWLのセマンティクスとOWLからRDFへのマッピングの詳細を提示しているドキュメント(このドキュメントは、完全なOWL推論システムを実装している人々が言語設計の全局面に対しアルゴリズムの整合性を保証することができるように、OWLの全機能のモデル理論の詳細を提示する) が含まれます。

問. セマンティック・ウェブのオントロジーって何が新しいのですか?1980年代に推進されたエキスパートシステムやその他の人工知能(AI)技術とどのように異なっているのですか?

答. AIで機能するための、セマンティック・ウェブと特にOWLとの関係は、ウェブとハイパーテキストのコミュニティーとの関係に多少似ています(いくつかの同じ動機に基づいていますが、技術を展開できる方法を一変させる非常に異なったアーキテクチャーを持つ)。 Scientific American誌の広く引用されている記事の中で、バーナーズ=リー、ヘンドラー、およびラッシーラは以下のように書いています。

セマンティック・ウェブが機能するためには、コンピュータは、自動推論を行うために利用できる構造化された情報の集まりや一連の推論規則にアクセスする手段を持たなければなりません。人工知能の研究者達は、ウェブが開発されるずっと前からそのようなシステムを研究してきました。「知識表現」としばしば称されるこの技術は、現在、ウェブの出現前のハイパーテキストに匹敵する状態にあります。これは疑いようもないほどの名案であり、いくつかの非常に良くできたデモンストレーションも存在していますが、まだ世界を変えるまでには至っていません。これには重大な応用の種が含まれていますが、その可能性を最大限に開花させるためには、単一のグローバルなシステムに結び付けなければなりません。

OWL言語は、この可能性を開発するための一つの大きなステップです。

問. 頭文字「OWL」は何を表しますか?

答. 実際には、OWLは本当の頭文字ではありません。この言語は「ウェブ・オントロジー言語(Web Ontology Language)」として始まめられましたが、ワーキンググループはその頭文字「WOL」が気に入りませんでした。そこで、我々はOWLと呼ぶことに決めたのです。メンバーの一人がこの決定に対する以下の正当な理由を、著名なオントロジストであるA.A.ミルンが彼の影響力のある本「くまのプーさん」で賢明なキャラクター「OWL(ふくろう)」について次のように書いていることを引用して指摘したため、ワーキンググループはこの決定により満足しました。

「彼は自分の名前を「WOL」と綴ることができますし、Wednesday(水曜日)ではないことが分かってもらえる程度にはTuesday(火曜日)を綴ることができました…」

Jim Hendler(W3Cウェブ・オントロジー・ワーキンググループの共同議長)、およびW3Cコミュニケーション・チーム
$Date: 2004/02/10 13:17:42 $