# 1 Reviews (1993)
●「Frosting on the Beater」 The Posies (MCA Victor/MVCG-116)
ボウジーズ3枚日にして初の日本盤。解説は当然のように吉本栄さま。そこにすべて書いてある!と言っては後が続かないので、この‘攪拌機で冷やす”レコードのことを少し。アートワークも中身も凝り通ぎの感があった前作の反省を受けて、今回はシンプル&ラウド。ジャケも、単純だが見ているとグルグル、冷たく固くなっていくような気がしてくる優れもの。だいたい今時ゲスト参加なしの正真正銘4人だけで演ってるバンドなんて滅多にないぞ。今回、名前と顔がようやく一致。黒髪でややくどい顔がジョン、小柄で茶色の髪がケンと判明。新ベースはメガネ君で、リズム隊のルックスはなんとなくマイク・ミルズとビル・べリーを思わせるものに。戯事はさておき、ポップで覚えやすい1からヘビーで感傷的なメッセージ・ソング20まで、聞き飽きのしない流れがすばらしい。インタビュウのたぴに彼らがタイトルを挙げる「Oddessey & Oracle」「I Am The Cosmos」のように名盤として残っていく可能性大。あとは来日公演だ! ここで追加倍報。ジョンとケンはマリア・マッキーの新作「You Gotta Sin To Get Saved」にコーラスで1曲参加。あっと驚くカントリーソングです。そして前々から噂のあったビッグ・スター再結成への参加がミズーリ州コロンビアで実現。アレックス・チルトン、ジョディ・スティープンズ(今はアーデント・スタジオの重役!)と共演の大役を無事果たし、3枚のオリジナル盤の曲とカヴァーを教曲、さらに「I am The Cosmos」も演ったとのこと。当日の録音はZOOレーベルからこの秋リリースの予定。クリス・ウィルソン(元フレイミン・グルーヴィーズ)とスニーチーズみたいなものね。と思っていたら、何とロイ・ロニー(この人も元フレイミン・グルーヴィーズ)はヤング・フレッシュ・フェロウズとスタジオ人りしているそうです! さらに追加情報。ついさっきWOWWOWのビデオ・クリップ番組でファースト・シングル「ドリーム・オール・デイ」のビデオを目撃。動くボウジーズを初めて見た。雪山の上で演奏しているだけのチープなものだが、妙に説得力あり。この番組は先週マリア・マッキーを放送したはかりで、なかなか頑張っているぞ。(添野知生)
●「Spilt Milk」 Jellyfish (Toshiba-EMl/VJCP-28159)
「ポップ・マエストロに相応しい仕上がり」(森田敏文)−−僕の頭にうかんだ言葉は、まさに同じものだった。ジェリーフィッシュの"New Mistake"を聴いた瞬間から、それは変わっていない。 「こぼれたミルクに泣かないで」は今年の僕の年間アルバムの、多分1位か2位になると思っている(まだわかんないけど)。しかも、それは「ニュー・ミステイク」ただ1曲のためなのだ。春から夏にかけて、僕の車の中でこの曲が途絶えた日はなかった。「一曲集中」を銘とする僕にとって、珍しいことではないのだが、ことこの曲には、どうやら特別な魅力があるようなのだ。 それにしても、悔しいのが「"日本版"ニュー・ミステイク」の発売である。XTCに続いて、「また、やられた」状態の僕である。XTCならなんとなく納得してしまうのだが、何故にジェリーフィッシュが……。3種類のCDsを手に入れた際の、言い知れね喜び(あなたにもわかるはずだ)は無に帰すのだろうか? 「たとえそれが過ちでも/そんな過ちなら本望さ」−−答えは「ニュー・ミステイク」の中にあった。この曲は、普遍の愛の過ちを名曲と言い切ってしまいたいメロディにのせて、あの美しいコーラスが絡まる極上の(至上の)ポップ。 「そう、たとえそれが過ちでも、そんな過ちなら本望さ」愛する彼らがやって来る九月を待つ僕は、思ったのである。(大町克紀)
●「America's #1 Recording Artists」 The Liquor Giants (1+2/Barn Homes/1+2CD019)
久しぶりにこれがロックだと叫びたくなるバンドの登場である。LAで活躍していた元ポンティアック・ブラザーズのギタリスト、Ward DotsonがNYで結成した新バンドだけど、音の方はかなり変化している。ポンティアック・ブラザーズの売りだったフェイセズ風R&Rは影をひそめ、バーン・ホームズからの発売と言っても全然パンク色はなし。帯にある通り「Big Starを思わせるメロディ」と「Replacementsにも通じるシンプルかつストロングなサウンド」が上手くブレンドされた強力な1枚だ。Lucky Recordから出ている「You're Always Welcome」と内容は同じもので、これがデビュー・アルバム。お薦め。(渡辺睦夫)
●「Tell It To Yourself」 Matt Keating (Alias/A035D)
LoudfamilyやHypnolovewheel等、このところ快調なリリースを続けるAliasから、また有望なアーティストが登場。NYのシンガー・ソング・ライターで、これがデビュー作。フリーディー・ジョンストン風という触れ込みだけど、あれほど泥臭くなく、もっと洗練された感じ。前半はよいが(2が最高)、後半スローになるにつれてどんどんアクが抜けていき、何となく没個性的な気もする。トータルすればまあまあかな。Mary Lorson(Madder Rose)、Phil Hurley(Gigolo Aunts)の他、要注目のKevin Salem(元Dumptruck/Madder Roseのプロデューサー/F. Johnston、C. Harfordのアルバムに協力)などが参加している。(渡辺)
●「Unlucky」 Freedy Johnston (Bar/None/AHAON-028-2)
去年の個人的ベスト1「Can You Fly」に続く新作が早くも? と思わず驚いてしまったが、これは前作からの曲も含む6曲人りのミニ・アルバム。新曲も4曲人っているので、ファンなら買いでしょう。誰それ? という人は、マーシャル・クレンショウ、クリス・ステイミー、シド・ストローらがゲスト参加、いま東海岸で一番熱い(芙)ホポーケン・ポップが堪能できる「Can You Fly」をすぐ購入すること。ここでは元dB'sのジーン・ホルダーが、Swalesに続いてプロデュースを担当しており、前作よりもリラックスした音作りをしている。そういえはエレクトラに移籍したらしい。メジャー・デビューも間もなくか? (渡辺)
●「The Real Underground」 Tommy Keene (Alias/A-045)
ジュールズのページでも紹介したワシントンDCのSSW。これまた新作かと思ったら編集盤でした。しかし、がっかりしないように。このコンピは(1)84年のEP(2)初期のセッション(後にEPに収録されたものもある)(3)89〜91年の未発表曲の豪華三本立て、全部で23曲も人っている超お買い得盤なのである。音は完璧なので、何らかの事情でお蔵人りになっていたものではないかと思われる。1では84年の時点で既にアレックス・チルトンをカヴァー。他にもフレイミン・グルーヴィーズやフーのカヴァーも発掘されており、新作が待てない人も十分満足できる作りになっている。さすがAliasといえよう。(渡辺)
●「In Thrall」 Murray Attaway (DGC/DGC-24495)
元Guadalcanal Diaryのリーダーが出した1stソロ。GUadalcanal Diaryは80年代にアセンズで活施し、ドン・ディクスンのプロデュースでも知られていたバンド。今までにエレクトラから4枚のアルバムを出している。割と重苦しいザウンドが特徴のバンドだったと思うが、このソロでは一皮むけて、実に軽やかになった鹿じがする。マイケル・ペンともいい仕事をしていたTony Bergプロデュースのもと、実にのびのびとしたギター・ポップを展開しており、1のようにマーシャル・クレンショウを連想させる曲もある(そういえば顔も似てるぞ)。いや、こんなにいいメロディが書ける人だったのかと認識を改めさせられてしまった。(渡辺)
●「Crawded」 Tim Lee (DB/DB154)
何とDBはまだ生きていた。1年ぶりのリリースだ。とは言っても、番号で言うと153のReivers(91)と155のJodyGrind(92)の間だし、もともとは92年にリリース予定だったものだから、素直に祝復活と言えないところが何とも。それはさておき、南部を代表するギター・ポップ・バンドWindbreakersのティム・リー。「What Time Will Tell」(Coyote/88)「The New Thrill Parade」(New Rose/92)に続く通算3枚目のソロである。音の方は前作より渋めで、カントリーをべ一スにギター・ポップ風の味付けを効かせている。元Swimming Pool Q'sメンバーが3人参加。アン・ボストンの声が久々に来しめるのも見逃せない。(渡辺)
●「Foever」 Blown (Parasol/CD001)
7インチを中心にリリースしていたイリノイのレーベル、CD進出第1弾が、このブロウン(ブラウンじゃないよ)である。プロデュースはアダム・シュミット(新作が出る!)。タイタニック・ラブ・アフェアの新作EPではもう一つそのポップ・センスを生かしきっていなかった感もあったが、今度は上手くバンドの持ち味を引き出している。こうした優良ギター・ポップ・バンドを型通りだと言って批判するのは簡単だけど、それはグランジだってパンクだって同じこと。要は好みの問題でしょう。ヴェルヴェット・クラッシュやレモンヘッズのファンにもお薦め。今後次第では彼らにに続いて浮上してくる可能牲もあり。(渡辺)
●「57」 Whitty Whotesell & The Life Parade (Parasol/Par-WW02)
ブロウンに続くパラソル第2弾。ブロウンの一種素朴なサウンド・アプローチに比べ、こちらはシンセ、コーラスなどの小技がきいており、多彩なポップ性が楽しめる。ただ、これは……かなりUK寄りの普だよねえ。ずばり言えばネオ・アコ。曲にも哀愁が漂ってるし、裏ジャケの花と帽子の写真もそんな感じだし。ゴー・ディスクやサラから出てもおかしくない気がする。いや、何もこの手の普が嫌いなわけじゃないんだけど(むしろ好み)どうも釈然としないものが残ってしまって、う−ん。7インチをあまり聞かないので何とも言えないが、パラソル自体もともとUK寄りのレーベルだったのだろうか。(渡辺)
●「With A Picture in Wind」 Lava Hay (Nettwerk/W2-30066)
カナダの女性デュオ。90年の1stに続く2枚目。カナダからは最近他にもOdds、Crash Vegasなど良いアルバムがたくさん出ているけれど、ここではその中で一番気に入っているこの1枚を紹介する。基本的には穏やかなフォーク・ロック。適度にリズミカルな部分もあり、飽きさせない。何と言っても魅力的なのはその声。それほど印象的ではなく、むしろ平凡なヴォイスが透明感あふれるハーモニーに結実して行くのが面白い。全編に渡って流れるチェロの低音も効果的。Grapes of Wrath、Blue Rodeo、Crash Vegasとカナダの主要グループ・メンバー総出演だが、全体的にはプロデューサーBill Dillonの手腕が光る。(渡辺)
●「Charade」 Charade (WEA/4509−90676−2)
ドイツからとんでもないグループが登場した。アバのメロディー・センスにS・スウィッチプレイドの方法論を取り込んだ、究極の女性ポップ・デュオ「シャレード」である。シンセをベースに、ピアノ、スパニッシュ・ギターまで導入し、70年代風黄金ポップスを再現している。そうそう、アバをやるならこのラテン風味まで押さえなきゃね。裏にいるのは誰だと思ったら、プロデュースと曲作りを、かつてELO+ボール・マッカートニー+クィーンという離れ業をやってのけたフライハイトのステファン・ザウナーとアロン・ストローベルの2人が担当していて納得。それにしても力人れてるな。バンドの方は大丈夫?(渡辺)
●「National Disaster」 (69年) After Tea (Repertoire/REp4248-WP)
ロイ・ウッドを彷彿させると言われていたオランダのグループが唯一残したアルバム。実は僕は熱烈なロイ・ウッド・ファンでもあるので(シングル以外は全部集めた)、正直この再発には相当期待していたのだ。うれしいことにその期待は裏切られなかった。全編に渡って繰り広げられるポップ・サウンドは確かにロイ・ウッド、というか、時代的には彼の在籍していたムーヴに匹敵する輝きをはなっている。確かに一部古びてしまったところはあるものの、今でもその音楽性は十分通用するのではないか。メロディアスな1や7に加えて、ビートルズ風の小品5、初期ビー・ジーズを思わせる壮大な11など聴き所多数。(渡辺)
●「Around Grapefruit」(69年) Grapefruit (Repertoire/REP4363−WP)
今年のRepertoireはすごいぞ。アフター・ティーに続いて、全世界のビ−トルズ・マニアが泣いて喜ぶグレープフルーツまで再発してしまった。きっと企画は岩本晃市郎か和久井光司にちがいない(笑)。まあ、どこの国にもマニアはいるわけで、結局考えることは一緒なんでしょうね。グレープフルーツは60年代に2枚のアルバムを残して消えていった幻のグループ。1stをRCA、2ndをEMIから出しているが、今回は両方一度に再発され、しかもボーナス・トラックつきというから泣ける。ビートルズの従兄弟と形容されるだけのことはあって、音はかなりポップ。初めて聴くのに何だか懐かしいサウンドである。(渡辺)
●「Emitt Rodes」(70年) Emitt Rodes (One Way Records/MCA/MCAD−22078)
ビートルズというか、ポール・ファンには絶対お薦めのこの人も再発されている。ダンヒルのポール・マッカートニーとも、一人バッドフィンガーとも言われるエミット・ローズである。以前A&Mからソフト・ロック路線でメリー・ゴー・ラウンドというグループが出ていた(国内盤のみ)が、そのリーダーだった人。この後は「American Dream」(未発表曲を穎焦したもの/71)「Mirror」(71)「Farewell To Paradise」(72)と3枚のアルバムを発表し、その後は引退してスタジオの経営とかしているらしい。2枚目は未聴だが、3・4枚日は段々AORっぼくなっており、この1stの出来が一番いいように思う。(渡辺)
●「Basement Tapes」(80年〜81年) The Rubinoos (One Way Records/OW 27733)
このOne Way RecordsはアメリカのRepertoireといってもいいだろう。エミット・ローズに続く本作も渋い。何とRubinoosの未発表曲集の登場だ。Rubinoosはジョナサン・リッチマンでも知られるBeserkleyレーベルから75年にデビューした4人組で、「The Rubinoos」と「Back To The Dreaming Board」(「I wanna Be Your Boyfriend」収録)を発表、83年にはトッドがミニアルバムをプロデュースしたこともある。その音楽性は一言で言えはアメリカン・パワー・ポップ。ここには結局お蔵人りしてしまったアルバム用のデモがメンバーのコメントつきで13曲収められている。デモとはいっても完成度は高く、ラズベリーズが好きな人ならきっと気に人るはず。(渡辺)