第6話 アメリカだ

 とうとう、アメリカにやってきました。飛行機の中で、ほとんど一睡もできなかった私は、もうろうとしながら入国審査へ。一応習ったとおりに定型句で入国目的を審査官に話したのですが、その後の質問にうまく返答ができません。情けないのですが、相手が話していることは、ほぼ8割はわかるのですが、自分から話すことがうまくできないのです。「乗ってきた航空会社の日本乗務員が間もなく来るから、ちょっと待ってて」と、その女性審査官に言われましたが、乗務員のお陰で何のことなく入国できました。
 空港には、白タクやら、変な輩がいるから十分に注意しなさいという事前の情報のものと、はじめて、たどり着いたアメリカでも屈指の大空港、シカゴ・オヘア空港を、スースケース2つと楽器を持って、まずは、両替所へと右往左往しました。日本からトラベラーズチェック(旅行者用小切手)しか持っていかなかったためです。両替を済ませると、次はタクシー乗り場へ。やはりいました、変な輩。「どこまで、行くの? ダウンタウン(シカゴ)までなら××ドルだよ。」(英語)と親しげに言葉をかけてきます。あぶない、あぶない。そこは知らぬ顔をして、タクシー乗り場へ。車体の横にチェッカーの模様の入ったイエローキャブに乗り込み、今日の宿泊ホテルに、連れてってもらいました。アメリカでは、タクシーにもチップが必要なのですが、そのタクシーの運転手は差し出すドル札を、そんなにいらないと所定の金額だけ受け取り返してくれました。なんと紳士的!
 ホテルでチェックインを済ませると、離れのような部屋に案内されました。そのベットの広いのなんの。いわゆるツインなのですが、一つのベットが日本のダブルに相当していたでしょうか。おもむろに、テレビをつけていたら、映画「グレン・ミラー物語」をやっていました。以前、日本でもみたことがあるので、あらすじは知っています。満足に英語は聞き取れなくとも、彼の音楽を十分に楽しみ、明日からのわが身を重ねました。翌日からは、英語の勉強が始まります。9月に始まる新学期前の1ヶ月間に、不足している語学力をさらに補うのが目的でした。大学に行く前に、まず、生活することに慣れなくてはと思いながら、深い眠りに入っていきました。(つづく)

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