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no.81 10月1日 オーケストラのコンサート

 何年ぶりだろう、自ら進んでオーケストラのコンサートに行ってきました。学生の頃はN響はもとより、ベルリンフィル、レニングラード、シカゴ響、パリ管、ロンドン響など世界的に有名なオーケストラの演奏の数々を聴きました。それらの個性的な演奏は今でも覚えています。

 さて、その久々のコンサートとは、10月1日(月)、上野の東京文化会館で行われた「《響の森》コンサートvol.7」でした。指揮・小泉和裕、管弦楽・東京都交響楽団、琵琶・田中之雄、尺八・クリストファー遥盟の演奏で、プログラムはすべてが日本人の作曲家による作品。

 芥川也寸志:交響管弦楽のための音楽(1950)
 小山清茂:管弦楽のための「木挽歌」(1957)
 三善 晃:オーケストラのための焉歌「波摘み」(1998)
 武満 徹:ノヴェンバーステップス(1967)
 外山雄三:管弦楽のためのラプソディ(1960)

 演奏が始まる前に東京文化会館館長でもある三善晃氏によるプレトークがありました。この《響の森》コンサートのコンセプトやプログラムの簡単な説明を主にする予定であったのだと思いますが、最初に日本の作品によるコンサートが素晴らしいプログラムであるから多くの人が来てくれるだろうと考えていたが、担当職員からは日本の作品には集客力が無いことを知らされていた、というスピーチです。そして当日を迎えて、本当に来場者が少ないので嘆いておられました。(私の見たところでは4割程度の入場者でしょうか?)
 今回、私が行こうと思ったきっかけは吹奏楽の方で「木挽歌」を練習しているので、オーケストラ版を生で聴いてみたかったからです。あまりにも有名な「ノヴェンバーステップス」や「ラプソディ」もこれまで生で聴いたことが無かったので、この際、是が非でも聴きに行こうと思ったのです。このようなプログラムを組んでくれるオーケストラは滅多にないんじゃないでしょうか。今の私の場合、いつも同じようなプログラム(ベートーベン、ブラームス、チャイコフスキーなど)では行く気にならないのです。何も、これらの作品を嫌っているのではありません。学生の頃聴いたベルリンフィルのベートーベン、レニングラードのチャイコフスキー、シカゴ響のマーラーなんか本当すごかった!

 コンサートの内容に戻りますが、パンフレットにも書いてありましたが、明治から昭和初期までにヨーロッパ音楽を受け入れて、日本の作曲家たちが日本の作品として創造を試み、そしてさまざまな作品群を生み出しました。今回聴いた作品は、1950年以降のもので日本のオリジナリティと西洋音楽との融合が見事にできた、まさしく日本のクラシック音楽の歴史そのものだと感じました。オーケストラも実によく鳴っていて、また5つの作品に変化を持たせようとする指揮者の姿勢は、聴き手に心地よいものでした。

 「木挽歌」だけ詳しく書いてみましょう。
 この作品は、1957年、九州地方の労働歌を素材に長野県出身の小山清茂(1914- ※会場にいらしていました)がオーケストラのための変奏曲として作曲したのだそうです。その後、吹奏楽用に作曲者自らが編曲し、吹奏楽のレパートリーとして重要なものになっています。「主題」「盆踊り」「朝の歌」「フィナーレ」の4部で構成されており、締め太鼓、やぐら太鼓、あたり鐘などの日本の打楽器を使います。都響の演奏は「主題」は思ったよりも速めのテンポでしたが、チェロの、のびのびとした、ふくよかな弾き方に新たな発見をしました。「盆踊り」は、逆に遅めのテンポ。これは最後に演奏される「ラプソディ」との差別化をねらったものだと思います。「朝の歌」は4分の5拍子なのですが、2つ振りであっさりとこなしていました。「フィナーレ」は力強く、雄大なことは勿論なのですが、最後の主題の再現部分の「こぶし」の部分にあたる装飾音の処理の仕方が参考になりました。全体としてとても素晴らしい演奏たったことは言うまでもありません。

 また、このようなプログラムが登場したら、駆け付けたいと思います。その時は、みなさんもいかがですか。

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