Menuへこのコーナーの目次へ

1月10日 すてきな(私的な)曲目解説

 本当は、正月の話を書こうと思ったのですが、今度の日曜日に鷲宮ウィンドアンサンブル 21世紀 はじめのコンサートが午後1時半から開催されるにあたり緊急にその演奏曲について書きます。

 今回のプログラミング(どの曲を演奏するかとか、曲の順序を決めること)は、指揮者の私が勝手に決めさせていただきました。指揮者はいつも独裁的な存在ですが、実はその身勝手に見える決め方にもこの吹奏楽団に対する愛情があるのです。まず、難しい曲ばかり並べても団員の演奏技術がついてこないし、かといって簡単な曲ばかりでは彼らの演奏技術の向上が望めなくなってしまいます。聴く方もどちらかというと同じサウンドに聞こえてしまい飽きてしまいます。すなわち、このさじ加減が難しいのです。その点で、一番難しいと思えるのは真島俊夫さんの「波の見える風景」ですね。そしてもう一つ考えなくてはいけないのは、私たちは大人であるということです。吹奏楽の作品は(たぶん、中学・高校の時からみんな吹いているせいかもしれませんが)、下手をするとちゃちな演奏になってしまうのです。その点では、バーバーの「アダージョ」やサンサーンスの「白鳥」などは、私たち大人の感性を表現するにはうってつけの作品です。----こんなことを考えながらプログラミングするのです。候補曲は他にもたくさんあったのですが、その中から今の鷲宮ウィンドにあった曲を選んでみました。それでは、曲目の解説をはじめましょう。

「祝典行進曲」(團伊玖磨)
 この行進曲は、今の天皇陛下の御成婚パレードのために作曲されたものですが、私が中学生のときに、はじめて行進曲は楽しいなあと思った作品です。その頃の行進曲のサクソフォーン・パートというと、いつも後打ちばかり。いわゆる「ンタンタ、ンタタタッタ」(ンは休符の意味)の世界です。そんな中、この曲には前奏に続く主旋律が14小節後にテナーサクソフォーンに出てくるのです。私はあこがれに近い形で得意満面に楽器を吹きました。
 作曲者の團さんは「パイプのけむり」の執筆でも有名で、その風貌もダンディでとても素敵な方です。

「波の見える風景」(真島俊夫)
 全日本吹奏楽コンクールの課題曲にもなって、あのフレデリック・フェネルさん(東京佼成ウィンドの指揮者)をもうならせた作品です。ちょうど私が全日本吹奏楽連盟に勤めていた頃で、課題曲の録音の時にアメリカに持って帰りたい曲だとおっしゃいました。真島さんは、吹奏楽愛好者におなじみのニュー・サウンズ・シリーズの編曲者として有名です。今回演奏する第2部の曲も編曲しています。
 この作品のイメージは曲名に表れていますが、オーボエのソロや、ティンパニのソロ、波しぶきを表現しているフレーズ、重厚なサウンドなどが印象的です。

「白鳥」(カミーユ・サン=サーンス)
 「動物の謝肉祭」の中の1曲ですが、今回は何と言ってもバリトンサックスのソロが聴きどころです。新品の楽器を手に小沢君の公式ソロデビューです。しかし、演奏する曲は、あまりにも有名な曲。どれだけ本番に強いかがこの手のソロでわかります。
 曲の解説する必要はないかもしれませんが、チェロのようなバリサクの甘美な音色とそれを伴奏する吹奏楽のハーモニーを満喫ください。湖面で美しく舞う、白鳥の姿がきっと見えてくるでしょう。

「ラデッキ―行進曲」(ヨハン・シュトラウス)
 この曲はウィーン・フィルの新年コンサートのアンコールで手拍子と共に毎回演奏されます。21世紀の幕開けのコンサートは、これしかないと思い選曲しました。鷲宮のメンバーにはちょっと苦手な前打音が主旋律に出てきますが、私の特訓に次ぐ特訓でようやくできるようになりました。音楽の都ウィーンの粋を感じ取ってください。

「アダージョ」(サミュエル・バーバー)
 私がこの作品を初めて聴いたのはアメリカに留学していた頃です。ちょうど大学のオーケストラのコンサートで演奏していました。オリジナルは弦楽オーケストラの作品で、これはいい曲だと思いましたね。その後、映画「プラトーン」の挿入曲としても使われたため、日本の人たちにもおなじみの曲となりました。合唱曲でも作曲家自身の編曲により「アニュス・デイ」として出版されています。
 曲はゆったりとしたテンポの中で、息の長いフレーズの旋律が重なり合っていきます。そして最高潮に達し---。これこそ私たちが求める大人の演奏かも知れません。どうぞ、ゆったりとした気分の中で私たちのサウンドをお楽しみください。

「テキーラ」(明光院正人編曲)
 ライムの果汁をなめながらぐぐっとテキーラを飲む、ような人は鷲宮ウィンドにはいませんが、テキーラはメキシコ特産のとても強いお酒です。まあ、テキーラをベースにしたカクテル「マルガリータ」を飲むやからは私も含め結構いると思いますが---。この陽気なラテン音楽に初めて鷲宮ウィンドが挑戦します。最初の手拍子がどうしても「ひょっこりひょうたん島」に聞こえる人は要注意! アルコール依存症かもしれません。

「マンボNo.5」(岩井直溥編曲)
 鷲宮ウィンドがラテン音楽に初めて挑戦と書きましたが、ニュー・サウンズ・シリーズにラテンが初めて登場したのが、この曲だそうです。編曲者の岩井さんはこの道の大ベテランです。でも、トランペットの音域の高いこと! 自身がトランペット吹きだったせいもあるのでしょうか? それにしても最後のトリプル・ハイEはラッパ泣かせの音です。
 実は、高校の頃、OBとの合同ステージはいつもこの曲でした。右に左に体を振りながらのメロディーの演奏は今でもなつかしく思っています。

「ムーン・リバー」(上柴はじめ編曲)
 映画「ティファニーで朝食を」の挿入曲として、ポップスやジャズのスタンダードナンバーとして有名ですね。実は、ジャズコーラスを楽しむ会というのを毎月開催しているのですが、その会で最初に練習した曲でもあります。原曲は3拍子。トランペットのソロはいい雰囲気です。なお、この編曲では中間部は4拍子のボサノバ風のアレンジになっていて、フルートのソロがさわやかに奏でます。

「メモリー」(岩井直溥編曲)
 日本では劇団「四季」の上演で一世を風靡したミュージカル「キャッツ」。その中の一曲で、世界的に大ヒットしました。アルト・サックスのソロは、当団随一のコメディアン、失礼、人気者の横田君がお贈りします。これまでとは、ひと味違った彼の名演を満喫ください。本当は私が吹こうと思ったのに---。

「トリビュート・トゥ・カウント・ベーシー・オーケストラ」(真島俊夫編曲)
 ビックバンドと言えばカウント・ベーシーと言われるほど、ジャズ界に君臨した名オーケストラです。「A列車で行こう」など数々の名曲を生み出しました。幸運にもアメリカで生の演奏を聴くことができ、さすがプロフェッショナルとはこういうものなんだと教えられました。
 鷲宮ウィンドでも好んでこの手のスタンダード・ジャズを演奏してきましたが、これほどアップ・テンポ、そして対照的にスロー・テンポの曲は初めてです。音もリッチでゴージャス。最後まで体力が持つかどうか---乞う御期待!


 本日の朝日新聞朝刊(さいたまマリオン)にコンサートの案内記事が音楽欄トップで掲載されました。みなさん、ぜひ来てくださいね。そこには21世紀のしあわせがあります。開演時間・会場などはこちらをご覧ください。

Menuへ