Menuへこのコーナーの目次へ

6月18日 記念コンサート(4)「本番」

 午後2時、記念コンサートの本番です。袖待機は開演10分前。最後のチューニング(音合わせ)が始まりました。Bb(A=442Hz)で軽く確認します。袖から客席を覗いてみたら、結構な入りでした。今回、力を入れた広報活動が実ったようです。
 袖待機の時間、パーカッションのメンバーと「『A列車』って何でA列車って言うか知ってる?アメリカではAとBトレインがあって---」そんな会話をしながら「『日本民謡メドレー』また気合いを入れていこう---」なんて言ったりして、本番前の緊張感を楽しみます。こういう時間は、人によって緊張度が違うと思いますが、できるだけのことはやったという自覚があるといわゆる「あがる」ということはなくなるようです。逆に、あまり練習をしていなかったり、一部のパッセージに不安があるという人にとっては、間違いなくあがってしまうようです。「できないところは千回練習!」これは、これまでの練習で呪文のごとくでた指揮者からの指令。でも千回やった人はいなかったみたいです。

 いよいよ時間です。このホールには始まりを知らせるベルがありません。ステージの両袖からメンバーが入場することで開始の合図です。司会の横田は、陰マイクでスタンバイOK。指揮者の私がステージ中央へ。一礼をし、オープニングの「ディズニーメドレー2」を早速演奏し始めました。前奏が終わるあたりで、アナウンス開始「みなさま本日は鷲宮ウィンドアンサンブル10周年記念コンサートにお越しいただき誠にありがとうございます。早いもので鷲宮ウィンドも創立10年となりました---結成当時はたった5人だったメンバーも本日は総勢35名と---この10年間にお送りしたあの曲この曲を---」と横田の名調子に乗り、記念コンサートは開幕しました。
 鷲宮ウィンドは、平成2年に結成し、その年の町主催のファミリーコンサートに参加、金管アンサンブルの編成でデビューしました。吹奏楽編成になったのは、翌年の平成3年です。プログラム1番めの曲は、その頃練習していたルロイ・アンダーソンの「シンコペイテッド・クロック」。タイトル通り、時計の様子を実にうまくあらわした作品で、時計の秒刻みはウッドブロックで、時計のアラームはトライアングルで表現しています。前話にも書きましたが、中間部のトライアングルは2本使って左右に別れて交互に演奏してみました。見事、その効果がでて面白さが増しました。
 2曲めは上岡洋一の「秋空に」。第1回定期演奏会の一番最初に演奏した記念すべき作品です。冒頭からのリッチなサウンド、主題は軽快に、そしてトリオはややメランコリックに。実用的なマーチというより、コンサート用の作品です。
 3曲めは、「A列車で行こう」。第2回の定演に登場しました。この曲はあまりにも有名なジャズのスタンダードナンバー。列車が走っているさまを巧みに表したとても楽しい作品です。トランペットのアドリブ・ソロは、荻野、依田、アルトサックスは横田が取りました。次回やるときは、前に出てきて演奏します。
 4曲めは、第3回定演で取り上げた「日本民謡メドレー」です。司会の横田が日本人のDNAがどうのこうのと言っていましたが、確かにそういうものがあることを感じました。若い人たちには、すっかり忘れられたものばかりですが、日本の心が吹き手、聞き手ともあるのですね。
 5曲めは、「キャンディード組曲」から2曲。第4回の定演で演奏しましたが、これほどしっかりとした作品を吹いたのは、たぶん、後にも先にもないかもしれません。みなさんご存知のミュージカル「ウェストサイド物語」などで知られるアメリカの作曲家・指揮者のレナード・バーンスタインの作品です。"Make our garden grow" におけるバーンスタインのメッセージは、心の底から音楽を造るということを教えてくれます。ただ上っ面の技術だけでは、この作品は演奏できません。そういう意味では鷲宮ウィンドもまだまだ。今後もこの種の曲に挑戦していきたいと思います。
 休憩の後、メンバー紹介をパートごとに行いました。メンバーは非常に大切です。簡単でも良いので紹介する機会を作りましょう。
 6曲めは、横田のアルトサックスで「スターダスト」。これまでに第5回定演、メンバーの結婚式の2次会での演奏2回、アンサンブルコンサートでの演奏と、バックの演奏スタイルは違いますが、いろいろな場所で演奏してきた得意のナンバーです(これらの詳細は本家鷲宮ウィンドのページをご覧ください)。横田はその場で立って演奏したのですが、やはりソロは前に出てきて吹いた方が良いですね。演奏というのは視覚的要素に左右されやすく、聞き手は自らの視覚行動により、見ている楽器の音を拾う作業をします。ですから同じ演奏でも格段の差がでてきます。ソロは当然のこと、打楽器なんかでもわざと視覚に訴えかけるような叩き方をすると小さいな音でも聞こえるようになります。
 7曲めは、第6回定演で演奏した「もののけ姫メドレー」。この年、この曲が爆発的にヒットしました。みなさんの中にもカウンターテナー(男性が女声の音域で歌う人のこと)の存在をはじめて知った方も多かったのではないでしょうか。このアレンジには、映画全体の曲が収録されており、いろいろな要素があり、また変化に富んだ作品です。作曲者は久石 譲。彼はミニマル・ミュージックという、音型を反復させる音楽の手法を得意とした作曲家です。いろいろな場面にその手法が出てきていますので、そういう聞き方をするのも面白いですね。一番有名なもののけ姫のメロディーは、ホルンの石川とトランペットの荻野が取りました。終了後のアンケートではホルンの音が絶賛でした。音がもう少し確実におさえられるようになると何も言うことはありません。低音楽器群もなかなか良い演奏でした。
 最後の曲の前に、祝電などの紹介と今年の運営委員長の河野があいさつしました。あいさつは初々しく、聞き手を惹き付けていました。彼女いわく、すぐ飽きる性格なのに音楽だけは小さい時から続けているのだそうです。数年前に鷲宮町から隣県に引っ越ししたのですが、それでも鷲宮ウィンドに参加しています。
 いよいよプログラム最後の曲。昨年の定演のトリを飾った「オーメンズ・オブ・ラブ」です。T−スクウェアというフュージョンバンドの曲です。アンケートでは一番の評価でした。この手の曲は、ドラムが第1のポイントですが、ドラムなしでも軽快な乗りを表現できれば文句無しになります。
 万来の拍手に応えて、アンコール2曲をお送りしました。1曲めは十数年前、アメリカの音楽シーンを魅了したフリューゲル・ホルン奏者のチャック・マンジョーネのナンバー「Feels So Good」(フリューゲル・ホルンのソロは荻野)と、知る人ぞ知るサミー・ネスティコの作品「Lonely Street」(アルトサックスのソロは私)をお送りしました。実は私のアルトとバンドの合わせは、当日の朝1回だけ。スロー・テンポの曲は、底辺にながれている1拍、1拍のテンポ感をしっかりと、ちょっと固めに押さえておけばOKです。
 以上でコンサートは終了しました。いろいろと反省点はありますが、これまでのコンサートの中で実に良くまとまった演奏でした。特に「シンコペイテッド・クロック」「A列車でいこう」「日本民謡メドレー」「スターダスト」「もののけ姫メドレー」「オーメンズ・オブ・ラブ」は来場者にも満足いただけた内容で、これらの作品を鷲宮ウィンドのレパートリーとして確立させていきたいと思います。
 ご来場いただいたみなさまはもとより、陰ながらご支援いただいた鷲宮町教育委員会、関係各位には心よりお礼を申しあげます。ご都合で来られなかった方は、ぜひ次のコンサートにお越しください。鷲宮ウィンドのアットホームなコンサートは、きっと心をリフレッシュし、ご満足いただけるものと確信しています。

Menuへ