パウリーニョ・ダ・ヴィオラと並び70年代にサンバの世界に新風を吹き込んだマルチーニョ・ダ・ヴィラも、今年芸暦30周年の記念アルバムを出して、もはやベテラン。
それまで、サンバの録音といえば、ピアノ入りのオーケストラをバックにというのが当たり前だった時に、カヴァキーニョとギターとパーカッションだけでスタジオに入り周囲を驚かせたというのは有名な話。今でこそ、当たり前のことが当時は画期的なことで、その後のサンバのレコード製作に大きな影響を与えることとになったわけです。
69年のデビュー作以来、サンバのアーチストとしては異例な程コンスタントにアルバムを発表しています。最も多作のサンバアーチストと言っていいでしょう。その中から最近のものを中心にいくつかお勧めのアルバムを御紹介しませう。
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Martinho Da Vila Isabel (RCA 103.0632)1984年の作品。まだCD化されていないものを取り上げるのは気が引けるのですが、あまりに素晴らしい1曲の ためにどうしても御紹介しないわけにはいきません。 1曲と言うのは正確ではなくて2曲のメドレー なんですが、「PAULO BRASフO - VILA ISAVEL」がその曲。サウダーヂって何?と聞かれたら、間違いなくこの曲を聴かせます。彼の自作ではないのですが、泣きながら微笑んでいるような、彼の歌い方が胸にググっと来ること請け合いです。以前にサンバのオムニバスCDに収められたこともあったんですが、今では聴くのが難しい。早く再発 してくれぃ。 |
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O Canto Da Lavadeiras (CBS 850.084/2-464120)1989年の作品。マルチーニョは、以前から地方の音楽を取り入れたサンバを作っていましたが、このアルバムは、そうした試みを中心に作られたもの。リオのサンバの洗練された所を、あえてある種の野暮ったさで置き換えてしまうことで、汎ブラジル的なスケールの大きさを持った傑作になったといえるのではないでしょうか。何よりも聴いてて楽しいってのがなによりです。 |
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Ao Rio De Janeiro (Columbia 758.208/2-476279)映画「ORFEU」で、カエターノが作ったラップ入りエンヘードが話題になっていますが、マルチーニョは94年のこのアルバムで早くも、ガブリエル・オ・ペンサドールと組んでいます。ただラップが入ってるというような代物ではなくて、全編サンプリング感覚で作られたハイパーサンバとでもいうようなものですが、サンプリングも打ち込みも使われてないって所がミソかも。 |