背びれ、胸びれ、尾ひれ
 特徴的なオスの背びれは、子供である間はイルカ型でメスと区別がつきませんが、性的成熟とともに、本来の機能である垂直安定板として必要な高さを超えて高くそびえ立ち、最大2mにも達します。また同様に胸びれは巨大化し、尾ひれの先端も内側にカールしてきます。 このように、成熟したオスがきわだった特徴をもつことを一般に性的2型と言います。さらに年齢が高まると、背びれの後部は次第に波打ってくることもあります。

 オルカの背びれは水面上に露出する機会が多く、またその形は個体差が大きいため、野生オルカの研究者たちは背鰭の写真を撮影することで個体識別を行っています。
 背びれ、尾ひれ、胸びれには皮下脂肪がほとんど無く、広大な表面積をもつこれらには、体内の熱を逃がすラジエターの機能があるとも考えられます。
 鯨類は陸上哺乳類から進化しました。もちろんオルカも例外ではなく、陸上を歩いていた頃の痕跡は、彼らの胸びれの中に5本の指の骨格として残っています。筋肉は退化しており、指の痕跡を動かすことはできません。また、左右に身体をくねらせる魚類とは異なり、背筋と腹筋を用いて尾ひれを縦に振る推進運動も、オルカの祖先が陸上を疾走した運動の名残であると言えます。

 

水族館のオルカは、なぜ背びれが曲がっているのか。

オルカの背びれは内部に骨格を持たず繊維組織でできており、外力がかかればしなやかに曲がります。しかし、水族館で見られるオスのオルカの背びれは、100%折れ曲がっています。これは、つぎのような原因が複合したものと考えられます。
・背びれを長時間水面上に突き出しているため、背びれが自重による負荷にさらされている。
・限られた範囲を低速で周回し続けることで、背びれに対し同じ方向に外力がかかり続けている。
・肉体的、精神的ストレスによる体調の変化。
残念ながら、折れ曲がったオルカの背びれが復元した例はありません。

 野生オルカにおいても、ごく希に背びれが折れ曲がった個体が観察されています。先天的な変形が無いとは言い切れませんが、長期間の観察データがあるカナダ太平洋岸、アラスカ沿岸のオルカで知られている2つの例は共に後天的なものであり、前者は何らかの疾病、後者は前後状況からタンカー座礁による海洋汚染の影響が強く指摘されています。これら2つの例とも、背びれの変形が観察されてまもなく後に該当する個体が死亡していることから、背びれの状態はオルカの全身状態とも関係があると思われます。