静岡県伊東市で起きたイルカ漁
(1996年10月)


(写真提供:イルカ・クジラ・アクションネットワーク)

  1996年10月18日、静岡県伊東市・富戸にてイルカ漁が行われ、総計200頭を越えるバンドウイルカ(上写真)+オキゴンドウの群が富戸港に追い込まれました。現地で調査を行ったイルカ・クジラ・アクションネットワーク(以下I.K.A)のまとめでは、漁の目的は水族館へのイルカ供給と食用であり、追い込んだ中から計32頭を各地の水族館への売却用として選別した後、残るイルカを食用として屠殺、その場で解体し始めました。現地漁協は水産庁及び静岡県より今年度あたり75頭の捕獲割り当てを受けていますが、今回の操業だけで200頭以上を追い込み、明らかなだけでも30頭以上を解体。また、捕獲時にショック死、又は衰弱死した個体も多数いるとのこと(これは捕殺数としてカウントされていません)。I.K.A は割り当て超過の可能性を県に指摘し、最初は否定していた県もそれを認めて23日・港内で死を待っていたイルカ約100頭(種類内訳不明)を解放しました。一方、追い込まれた群の中には水産庁の勧告により捕獲ができないとされているオキゴンドウも混入していましたが、この時既に数頭が殺され(下写真)、2頭が下田海中水族館(下田市)へ、4頭が伊豆三津シーパラダイス(沼津市)に買い取られていました。これも、先のI.K.Aの指摘により、県などは捕獲できない鯨種を売却したことを認め両水族館に対し解放を指導しました。当初水族館側は解放の意志を見せませんでしたが、I.K.Aなどが国際世論を動員しての抗議活動を行った結果、10月31日、事前のアナウンスも無く、非公開ながら6頭のオキゴンドウ全てが解放された模様です。

 
関連情報

● IKA-Net

● 光海丸.com

食文化としてイルカを捕殺すること自体の是非はともかく、問題は次の2点にあります。

(1)イルカ捕獲割り当てが守られず、監視するシステムも無いこと。

今回もし客観的な調査や指摘が無ければ、水族館に売却された以外のイルカは皆殺しにされたことでしょう。イルカ捕獲割り当てにしても、遠洋捕鯨全面禁止後代用品としてイルカ肉が高値で流通し始め、乱獲が指摘されたことにより80年代末に制定されたものです。しかし実態はそれまでの捕獲数を追認したものであり、イルカの生態、生息数などに基づいたものではなく、違反しても罰則はありません。

(2)水族館が捕獲禁止鯨種を買い取り、行政の指導にも関わらず解放する意志を見せなかったこと。

捕獲禁止でありながら購入に踏み切ったオキゴンドウについて、両水族館は、オキゴンドウは既に群から隔離されているため解放するには手遅れである。むしろ飼育を通して彼等の研究、保護に役立てたい、と主張しました。しかし、もし水族館が鯨類の研究、保護に役立つ施設であるならば、むしろ購入以前に、今回の漁に関する正確な現状報告を行い、捕獲枠以上のイルカや、捕獲禁止種の積極的な解放を水産庁や現地漁協などに提案しなくてはなりません。

なお、一部マスコミによるこの件の報道は、伝統と生活を賭けたイルカ漁が、いいかげんな環境保護活動により妨害された、という図式で行われ、事態の本質とはかけはなれたものとなりました。
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