週刊墨教組 No.1364   2002.4.19

「主任手当」拠出運動を成功させよう
 《協力》《協働》《仲間》《決定権》を大切にする職場を守ろう!

 私たちは、一九七五年秋以来、「主任」「主任手当」制度化に反対し、私たちの総力を挙げて、さまざまな形の反対運動を進めてきました。
 私たちが「主任」制に強く反対してきたのは、「主任」制度化のねらいが曇りなき眼で見るならば誰にも明らかなように、「主任」という中間管理職を設けることにより管理体制を強化し、上命下服の学校管理体制を整備・確立すること、それを通して、教育に対する全面的国家支配の体制を作り上げることにあるからでした。そのねらいを貫くため文部省は、敢えて教職員の平等・対等な協力関係や、個々の教職員の自発性・創造性に基づく努力を破壊し、圧殺することも辞さず、教職員集団の中に分裂と分断を持ち込む「主任」「主任手当」制度化を強行しました。
 しかしながら、私たちの力で「主任」を、中間管理職としては十分に機能させてきませんでした。今般提示された「主幹」制は、そのことを如実に物語っています。「主任手当」拠出の運動は、この愚かな「主幹」制度への反対の声であり、これまで以上の意義をもつものです。

「主任」制は「百害あって一利なし」
 一人ひとりの子どもたちの持つ可能性の全面的開花、個性の伸長を目的とする教育の営みにとって、個々の教職員の自発性の尊重と、平等・対等な立場に立った協力・協働関係の確立が不可欠のものであることは言うまでもありません。「主任」「主任手当」制は、私たちが手をこまねいているならば、それらを破壊するものとして機能していくでしょう。だからこそ私たちは「主任」制は「教育にとって百害あって一利なし」として反対してきましたし、今も、これからも反対していきます。

拠出運動の意味
 私たちは、「主任」「主任手当」制の撤回を求め続けるとともに、そのためにも、また、教育にとっての「百害」をいくらかでも減じ、そもそものねらいを貫徹させないためにも「主任」「主任手当」制に期待されている機能を果たさせないとりくみをすべての学校において進めていきたいと考えてきました。
 「主任手当」支給に対して、私たちが進めている「拠出」の運動はこれらのとりくみの一つです。「主任手当」を個人の所得にして、そのねらいにのるのではなく、これを拠出し、必ずしも十分でない教育条件整備や地域の文化推進向上の事業等に生かしていくこと、それを通じて、反対の意志を世論にも強くアッピールしていこうという考え方です。
 この運動は私たちの「主任」制に反対し、それを機能・実体化させない意志と態勢を明らかにするものでもあります。

「拠出金」事業
 墨田教組は、この「拠出金」による事業として、主に二つの事業をしています。
 ひとつは、反戦平和・人権教育のための教材・資料の整備や補助事業です。
 これまでに
・小中学校に図書寄贈
・毎年三月十日を一つの節目としてとりくんでいる平和教育特設授業への補助
・墨田教組フィルムライブラリーの充実(現在十六ミリ映画三二本、ビデオ八四本、他に原爆・沖縄戦・東京大空襲関係のパネル多数所有)
・教育実践記録集「墨田の教育」の発行(二〇〇〇年度に第六集を発行)
等の事業をおこなってきています。
 もう一つの事業は、墨田の地に反戦平和・反差別の運動がしっかりと根付くことを願い、さまざまなイベント等を行うことです。
 これまでに、
・「平和のための区民の夕べ」(過去六回開催)
・「戦争展」( 年 月に開催、 年〜 年下町反戦による「戦争展」に協力)、
・「平和のための映画会」(過去六回開催)
等を開催してきています。
 今年もこの二事業を継続していくことになります。

「主任手当」拠出運動を始めます
 私たちはこの運動を過去二十年間にわたって継続してきています。
 この種の運動が、こんなに長期にわたり、しかもかなりの数をもって継続されていることは珍しいことです。このことは、「主任」制度を機能させず、実体化させない意志と態勢、さらに制度撤回に向けて闘う意志と態勢が厳然として存在することを示しています。この意志と態勢を維持、強化していくためにも、この運動へのとりくみ、拠出率の拡大に積極的にとりくむことが重要な意味を持ちます。

拠出金額算出と拠出の方法

(200日−20日)×200円×65%=23,400円


(年間授業日数-休暇等の日数)×手当日額×拠出率=年間拠出金額

・拠出する金額は年額23,400円とし、6月に2,400円、7月〜1月は毎月3,000円ずつという形で拠出します。
・年間授業日数から休暇等の日数を減じているのは、手当が支給される日数の最低限をおさえようというものです。
・200円は支給日額。その65%拠出とするのは、「主任手当」も課税対象額であるため、35%を税金分として保留しないと、拠出運動参加者が税金分を持ち出すことになってしまうからです。
・昨年度までは年額26,000円としていましたが、今年度からの完全五日制実施で年間授業日数が減った(220日→200日)ので、減額(26,000円→23,400円)したものです。


週刊墨教組 No.1363  2002.4.12


正念場をむかえる「主幹制度」
区教委 四月中に強行か


 墨田区教育委員会は、都教委の「管理規則改悪」をうけて、四月中にも「管理規則改悪」を強行するものと予想されます。まさに、「主幹制度」問題は区段階での正念場をむかえようとしています。
 十日五時から、墨田区教職員組合は、東京都教職員組合墨田支部とともに、「主幹制度」を導入しないよう、墨田区教育委員会に要請行動を行いました。
 要請にあたり、「東京都教育庁人事部」が作成した黄色いパンフレット『都民の期待に応える学校をめざして』について左掲資料のような問題点を指摘し、生方指導室長に、その回答を求めました。

説明責任を果たさない管理職
 三月八日午前、都教委の定例教育委員会が開かれ、「主幹制度」を導入させる、「東京都立学校の管理運営に関する規則」改悪が強行されました。その直後に、さりげなく黄色いパンフレットは各職場に配布されたのでした。書かれている内容が余りに粗雑で杜撰なので、ただすと、管理職は「説明を一切うけていないのでわからない」という答えをくりかえすだけでした。『主任制度に関する検討委員会』最終答申では、白々しくも「検討委員会の今までの検討状況について会議要旨や資料を逐次公表したり、また、校長会を通じて、周知を図ってきたところである」(報告四二ページ)としていました。
 だが、管理職は、当事者である教員に対して、前述の対応が示すように、いっさい周知しようなどとはしていないのが実状です。パンフレットを配布すれば、事足れりとする都教委のやり口は、いかにも姑息で卑劣です。

矛盾だらけ都教委パンフ
 「主幹制度」を導入することは、「主幹」という「中間管理職」を設置することによって、校長の意思をトップダウンする上命下服のシステムを学校に作り上げることにほかなりません。
 そのことを隠して、巧妙で空虚な美辞麗句を連ねたのが都教委パンフです。矛盾はおのずから露呈します。
 墨田教組と都教組墨田支部は共同して、左掲資料のような問題点を指摘し、回答を求めました。
 区教委は、ほんとうに、矛盾だらけの都教委パンフに盛りこまれた内容を踏襲して「主幹制度」を導入する覚悟なのでしょうか。

区教委よ、英知と洞察力を!
 文部省は一九七五年十二月二五日、省令をもって、学校教育法施行規則を改悪し、主任を制度化しました。
 省令化に際して永井文部大臣が発表した「調和のとれた学校運営」補足見解には、つぎのような含蓄に富んだ珠玉の言葉がありました。
「6、中間管理職でないことは、度々明言しているところであるが、それがごまかしでないようにするためにこそ省令の中で、主任の仕事は、指導や助言、連絡調整にあることを明記した。主任の職務は上司として職務命令を発することにあるのではない。また、主任の制度化は、五段階給与を実現しようとするものでもない。」

なんと、まっとうな正論であることでしょう。
 私たちは、墨田区教育委員会がこの言葉をしっかりとかみしめ、「主幹制度」について、地方自治の立場をつらぬき、深い英知と洞察力をもって、導入しないことを強く求めるものです。
 都教委が、全国にさきがけて行った「主幹制度」導入という愚挙を、区教委は踏襲することなど全くないのです。

資料 「主幹」制度についての問題点


・「主幹」制度は、「主任」制度(1975年12月25日.文部省令をもって、学校教育法施行規則で規定)という現行法制度の枠を逸脱していて、法的整合性がない。
・現行「主任」制度は、「主任」は「連絡調整及び指導、助言に当たる」と規定しているが、「主幹」制度は、「主幹」は「主任を兼務する」とあり、「所属職員を監督する」ので、下位法が上位法を否定することになる。
・「主幹」制度が、「いじめや不登校などのほか、薬物乱用や携帯電話による犯罪、学校の安全確保など、新たな課題」に対して迅速・的確な解決をはかるものというのは、飛躍しすぎた論理である。
・「主任」制度の範囲内で「今でも、一部の主任や教員が」管理職を補佐している例があるのなら、「主幹」という職を新設する必要はない。
・「主幹は、」「分掌内ばかりでなく、他の分掌や学年内などの調整を行うという役割を担」うので、他の分掌まで介入することになり、協力・共働しながらなかまを大切にする学校を否定することになる。
・「担当する校務について適切に進行管理を行い、必要に応じて教員に指示します」は、いかなる意味でも『ボトムアップ』とは逆であり、世間では、これを『トップダウン』という。
・「主幹」制度という「中間管理職」を設置することは、「児童・生徒と離れてまで管理職になりたくないという教員のライフスタイル」を阻害するものでしかない。
・「主幹」は、「教頭とのコミュニケーションを図りながら、学校の意思決定や事案決定に関することになるので、主幹は大変やりがいのある職とな」るそうだが、「主幹」のみではなく、職場のなかま全体が学校運営に関与できる学校組織こそ、教員すべてがやりがいを実感し、より学校がよみがえる。
・「家庭・地域とのコーディネーターとしての役割等を担うこと」は、「主幹」の職務ではなく、本来、管理職がするべきことである。
・個々の児童・生徒の個性を尊重した教育指導は、多様なものである。最も身近にいる担任を中心に、充分な時間をかけて合意形成がはかられるべきである。「主幹」による形式的で迅速な「意思決定システムが確立され」ることは、児童・生徒の個性を無視した画一的な教育指導になりかねない。


週刊墨教組 No.1353 2002.1.24

都教委検討委員会、「主幹」制「最終報告」を強行
  「教職員の『横並び意識』の払拭、『鍋蓋型組織』の改変が課題」
  「学校を経営層、指導・監督層、実践層の三層構造に」
  私たちは、中間管理職「主幹」制度化にあくまでも反対する!

 都教委の「主任制度に関する検討委員会」(以下「検討委員会」)は、一月二四日、「最終報告」を東京都教育委員会に対して行いました。
 「最終報告」は、「学校運営組織における新たな職『主幹』の設置に向けて」と題され、「主幹」制度導入を声高に主張するものとなっています(裏面に「検討委員会」発表の「最終報告(概要)」を掲載)。

 「最終報告」は、現在の学校運営組織の問題点として、以下の三点を挙げ、それを「今後の学校運営改善の視点とすべき」だと主張しています。 
「○意志決定のシステムが十分機能していない
 ○教職員間に、『横並び意識』が存在
 ○学校組織が、『鍋蓋型組織』になっている」
 そして、これらを改善するために、経営層(校長・教頭)と実践層(教諭)の間に、指導・監督層として「主幹」を設置する必要があると主張しています。
 教職員が、平等な立場で協力・共働する学校を完全に否定し、上命下服のピラミッド型組織として学校を再編成しようということです。
 それが何をもたらすか。「沈滞」と「硬直化」、ひいては「(子どもたちのための)学校の死」をもたらすものでしかありません。

 都教委の「主任制度に関する検討委員会」(以下「検討委員会」)は、一月二四日、「最終報告」を東京都教育委員会に対して行いました。
 「最終報告」は、「学校運営組織における新たな職『主幹』の設置に向けて」と題され、「主幹」制度導入を声高に主張するものとなっています(裏面に「検討委員会」発表の「最終報告(概要)」を掲載)。

 「最終報告」は、現在の学校運営組織の問題点として、以下の三点を挙げ、それを「今後の学校運営改善の視点とすべき」だと主張しています。 
「○意志決定のシステムが十分機能していない
 ○教職員間に、『横並び意識』が存在
 ○学校組織が、『鍋蓋型組織』になっている」
 そして、これらを改善するために、経営層(校長・教頭)と実践層(教諭)の間に、指導・監督層として「主幹」を設置する必要があると主張しています。
 教職員が、平等な立場で協力・共働する学校を完全に否定し、上命下服のピラミッド型組織として学校を再編成しようということです。
 それが何をもたらすか。「沈滞」と「硬直化」、ひいては「(子どもたちのための)学校の死」をもたらすものでしかありません。

「問題点」は、むしろ大切にしてきた理念
 「検討委員会」が、指摘している「現在の学校運営組織の問題点」として挙げている三点は、いずれも私たちが、また戦後の学校教育がむしろ大切にしてきた理念と関係しています。都教委は、現行組織の悪口としてあげていますが、そうでしょうか。

戦後教育法制の基本理念
 戦後の教育法制は、戦前の教育への深刻なる反省に立って、教育、学校、教員が、時の権力や支配的な政治勢力から独立して、自立的、自主的に教育活動をおこなうことを保障したのでした。そして、それを具体的に保障するための制度的保障として、教育委員会の任務を「教育条件の整備」に限定し、教員の「教育の自由」を含む教育権を保障し(例えば、学校教育法二八条は、何らの限定をつけずに「教諭は児童(生徒)の教育をつかさどる」と規定している。このことは教員の教育の自由、職務の独立性を保障したもの)、教育課程編成権は学校にある等を法的に規定したのでした。
 これらは、教員、そして学校の自主性、主体性を保障し、その民主的運営を保障したものでもありました。
 「学校の経営においては、校長や二、三の職員のひとりぎめで事をはこばないこと、すべての職員がこれに参加して、自由に意見を述べ協議した上で事をきめること、そして、全職員がこの共同の決定に従い、各々の受け持つべき責任を進んで果たすことーこれが民主的なやり方である」(文部省「新教育指針」一九四五年)。
 こうした理念により、戦後の教育法制は整備されたのです。

学校の教育課程編成権の意味
 このことは、例えば教育課程編成についての規定でも、明確にされています。学習指導要領でも、東京都学校管理運営規則でも「校長は、教育課程を編成する」ではなく、「学校は、教育課程を編成する」(東京都学校管理運営規則)と規定されているのも、教職員が平等な立場で、話し合い、討議し、具体的な子どもたちを眼前にしながら、そのより良き成長、個性伸長のために、協力・共働することが大切だという考え方に基づいたものと言えます。

戦後理念を悪口として表現した「問題点」
 学校の民主的運営、教育の自由を持ち独立して職務を行う教職員の平等な立場における話し合いと協力・共働、それらを別の言い方で、つまり悪口(問題点)として都教委流に表現すると上記のように「現行の学校運営組織の問題点」ということになるわけです。

戦後教育の総決算を許すな
 こうして見てくると、都教委が何をねらっているかが明確になります。戦前の学校教育への深刻な反省に立ってつくりあげられた教育理念、教育法制、それに基づいて私たちの先輩たちが営々として創り上げ、私たちも創り上げようと努力してきた子どもを中心に据え、教職員の自由な議論の中で学校をつくりあげようとしてきた営み、それらの全面否定です。
 言い換えれば、戦後教育の総決算とも言うべきものです。
 教育基本法改悪策動とも連動したきわめて危険な動きと見なければなりません。けして、許してはなりません。 

資料
   主任制度に関する検討委員会 ― 最終報告 ―

学校運営組織における新たな職「主幹」の設置に向けて(概要)

T 学校運営組織の現状と課題
1 学校運営組織の見直しの必要性
 21世紀を担う児童・生徒の健全育成のため、教育や学校の変革への期待が高まってきている。先行き不透明と言われる現在、これからの学校は、どのような課題に対しても、柔軟かつ機動的に対応していかなければならない。このため、下記の点に留意し、新しい学校6運営組織の創造に努めていく必要がある。
○課題に対する迅速・的確な対応
○保護者や地域ニーズへの積極的な対応
○教育の地方分権や課題の多様化への対応

2 現在の学校運営組織の問題点
 様々な教育課題に対して、学校では、校長・教頭をはじめ多くの教職員が努力を重ねてきた。しかし、急激な社会変化や、それに伴う子どもや保護者などの学校教育への要望に対しては、必ずしも迅速・的確に対応してきたとは言い難い状況も多く見られる。
 このため、以下の学校運営上の問題点を、今後の学校運営の改善の視点とすべきである。
○意思決定のシステムが十分機能していないこと
○教職員間に、「横並び意識」が存在していること
○学校組織が、いわゆる「鍋蓋型組織」になっていること

3 現行の主任制度について
 学校運営組織の問題点を解決するためには、指導・調整層である主任の役割が重要である。このため、東京都教育委員会は、主任制度を適正に機能させるため、近年になって次のような取組を順次行っている。
○授業持時数の軽減 ○ 発令方式の改善 ○ 企画調整会議の構成員
○主任研修の実施 ○ 国(文部省)への要望

U 新たな職の設置について
1 現行主任制度の限界
 現行の主任制度は、権限、選任方法等の点で、以下のような制度上の限界があり、制度を学校に定着させる取組だけでは、望むべき学校運営組織の構築は困難である。
○監督権限を持たないこと
○主任が「職」として設置されていないこと
○主任としての能力の育成が難しいこと
○主任の職責に見合った教育職員給料表の級が置かれていないこと

2 指導・監督層に求められる職責
 現在の学校運営組織に、経営層である校長・教頭と、実践層である教諭等との調整的役割を行い、自らの経験を生かして教諭等をリードしていく指導・監督層を設置する必要がある。
○教頭の補佐機能……学校運営に対する意見の具申や相談などによる学校運営の充実
○調整機能……………担当校務の状況把握と学年間や校務分掌間の調整
○人材育成機能………教諭等への適切な指導・助言と校内研修の実施
○監督機能……………適切な指示による担当校務の進行管理

3 新たな職の基本的な考え方
 「学校教育法」及び「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に定める組織編制権に基づき、学校運営組織に、監督権限をもった職(以下「主幹」という。)を新たに設置し、教諭をもって充てる。
○主幹の職責…………担当する校務に関する事項について、教頭を補佐するとともに、教諭等を指導・監督する。
○主幹の任用管理……選考合格者を主幹級の職員として各学校に配置するなど、任用管理(異動等)を行う。
○主幹の処遇…………手当ではなく給料として支給する。給料表に新たな級(特2級)を設け、主幹級職選考合格者等に適用する。

4 新たな職の設置時期
 都立学校については平成15年4月より実施する。なお、東京都の公立学校の教育環境を一定水準に確保する必要から、小・中学校においても同時に実施できるよう、都教育委員会は今後とも区市町村教育委員会と連携を図る必要がある。

5 新しい学校運営組織に期待される効果
 主幹を置くことによる主な効果としては、学校の組織的な課題対応力が高まり、保護者や都民の要望に迅速かつ的確に対応することができるようになる。また、校長・教頭とともに主幹が、教諭等を指導育成する役割を担うことから、計画的な人材育成が可能となり、学校全体の教育力を高めることができる。
 このことによって、学校は児童・生徒に対して、より質の高い教育を提供することが可能となり、地域に信頼される開かれた学校づくりを一層推進することができる。

V 学校運営組織への新たな職の配置
 主幹を、学校運営組織に設置した場合の各校種別の基本的な考え方及び組織図(例)は、4頁に掲載する。(※次号に掲載します)

W 教頭職との関連について
 主幹は、担当する校務について、教頭を補佐することを主な職責とする。このことから教頭の管理スパンは適正なものとなり、学校の管理職としての役割を十全に果たすことが可能となる。

X 主幹選考について
1 選考の名称
「主幹級職選考」とする。
2 受験資格
「満38歳以上56歳未満、都教職経験10年以上」とする。
3 合格者数の設定
 校種ごとに、必要な主幹数を算定し、任用及び異動管理上の計画に基づき合格者数を設定する。
4 選考方法
 書類選考、業績評価及び面接とする。
5 選考の実施時期
 異動事務作業、教育管理職選考の実施時期等から、7 〜9月頃とする。 ただし、初年度(平成14年度)は、11月下旬から12月上旬の間に選考を実施する。

Y 主幹職の任用管理について
1 主幹への任用
@ 昇任時の任用
 現任校または現任校以外の学校等に異動の上、主幹級に任用する。
現任校で昇任する場合は、現任校における勤務年数にかかわらず、3 年以内で異動させる。
A ジョブ・ローテーションの実施
 主幹は、原則として同一の主任を3年程度兼務することとする。また、校長は、主幹が同一校に勤務する間に、異なる分掌の主任を計画的に経験させることとする。

2 主幹の定期異動
@ 異動方針
 原則として、現任校における主幹としての勤務が6年を超える者を異動対象とし、8 年になる者は必ず異動させるものとする。
A 異動方法
 主幹職は、東京都教育委員会の指定する学校に異動する。
B 異動申告書
 異動は、自己申告書及び異動についての校長所見を用いて行う。

3 主幹の配置計画
@ 平成15年度
 配置予定者数は、全校種で2,400 名程度とする。なお、現任校で主幹職に昇任できる人数は、小学校及び盲・ろう・養護学校は2人、その他の校種は3人までとする。
A 平成16年度以降
 主幹級職選考の申込状況等を勘案しながら、段階的に配置していく。

4 その他
 人事考課制度において、主幹職用の自己申告書を作成するとともに、主幹職として業績評価を行う。また、主幹研修を実施する。
おわりに(今後の検討課題)
 平成15 年度から、主幹制度を全ての公立学校に円滑に導入するため、残された課題である人材育成の方策や新しい制度の周知方法及び実施に当たっての諸課題について、引き続き検討を行っていく。



週刊墨教組 No.1352   2002.1.17

「主幹は教員のリーダー」(都教委)。
否!「中間管理職」だ!
私たちは、「主幹」制導入にあくまでも反対する

 前号では、都教委の「主任制検討委員会」が十二月十八日に確認した「関係団体からの意見と検討委員会の見解」の内、PTA団体の「意見」それに対する「検討委員会見解」を紹介し、必要な批判を加えました。
 今号では、「教育長会・校長会・教頭会等各団体の意見」と「検討委員会見解」を中心に紹介、批判を行います。

 なお、「検討委員会」は、早ければ今月二十四日に予定されている都教育委員会に「最終報告」を行おうとしています。私たちは、これに反対し、また、「主幹」制導入にあくまで反対し、さまざまなとりくみを進めます。

校長に目を向け、意向に適う教員の育成
 PTA団体の「意見」の中には、「主幹」制導入に賛成意見とともに、導入に否定的ないし批判的意見も出されていました。しかし、「教育長会等団体意見」は、そのほとんどが導入を前提とした「要望的意見」になっています。
 冒頭にあるのは「校長が教員を主幹として推薦すると、昇任時異動の原則が適用され、他校へ異動するという心配がある」というものです。校長が「育てた、優秀な教員(校長が良いように利用できる教員)」を「主幹」として推薦し、選考に合格したら、他校へ異動させられてしまうのではたまらんという校長の「悲鳴」です。
 これに対する「検討委員会見解」は、「教員の更なる成長を考えれば、異動は能力開発を行う手段の一つであるが、今後、校長の意向を踏まえ、柔軟な対応ができる仕組をつくることが必要」となっています。ここでのポイントは、「校長の意向を踏まえ、柔軟な対応」ということです。推薦するもしないも、そのまま現任校で「主幹」とするか否かも、「校長の意向をふまえ」る、つまり校長の胸先三寸を重視するということです。
 PTA団体の「意見」の中にあった「子どもに目を向けず、現場から離れた出世主義の教員を増やすことになる」との危惧は、全く正しいのです。「主幹」ないしその「予備軍(主幹選考受験希望者)」は、子どもにではなく、校長に「目を向け」、その「意向」に適うようにしなければならないと言っていることになります。

「主幹」異動は「主幹」間で
 なお、「主幹」の異動に関連して「主幹の異動は主幹間で実施するのか。任期はどの程度になるのか。短期間では学校の実態等を理解するのに時間がかかり、その職責が発揮されないのではないか」との「意見」が出されています。
 これに関わる「見解」、「主幹の異動は、適切な在職年数を考慮し、現行の『異動要綱』とは別に、『主幹職異動要綱』を作成し、対応する。校長・教頭や他の主幹の異動との調整を図るなどの工夫をする」。
 「主幹」制導入後、人事異動は四本立てにするということです。「主幹異動」が重視され、私たち一般教員の異動はますます強制が強まり、希望が通りにくくなることが予想されます。

都教委は神か!
 「意見」の中に、「各主任経験のないまま、主幹となる教員が出てくることにもなるが問題ないのか」というのがあります。「出世主義者」の横行を心配しているともとれます。
 これに対する「見解」は、「主幹選考は、主幹としての資質能力が総合的に検証されるものであるため、問題はない」というものです。問題をずらして答えているとともに、ここでも自ら行う「選考」を、絶対的なものとしています。「選考は・・・資質能力を総合的に検証されるもの」、選考方法の正しさが選考の結果によって「検証」されることはあり得ても、選考自体が「資質能力」を「検証」するなどということは、「選考」主体を神の位置に持ち上げなければ、言えないはずです。
 またしても言わざるを得ません。
 都教委は、神か!

「主幹」経験を管理職選考の受験資格に
 「ある程度主幹が配置されると、その後は適格者がいても主幹として任用されない事態が起こるのではないか」との「意見」も出されています。これに対し「検討委員会」は、「一定期間経過後、主幹経験を教育管理職B選考(経験十四年以上、四四歳以上五六歳未満が対象、言わば「叩き上げコース」)の受験資格とするなど適切な任用管理を行う」との「見解」を出しています。
 「主幹」経験を管理職選考の資格要件とすることを明確にしているわけです。そうすることによっても、「主幹」の位置を高め、また「主幹」選考受験者を確保しようということだと思われます。
 選考に関連して次のような「意見」が出されています。「主幹選考に当たっては、その職務に鑑み、重みのある選考になることを望む」。
 これへの「見解」ー「選考方法については、業績の重視、選考の公正性、受験率の適正な倍率の確保に視点をおいて検討する」。
 昨年九月六日の第三回検討委員会で出された「生涯一教師として児童生徒に接することに生きがいを感じる教師が多いという現状から、多数の受験者を確保できる選考の方法を検討する必要がある」という意見(「第三回検討委員会会議要旨」、「週刊墨教組」一三三六号参照)を思い出してみましょう。「主幹」選考受験率をいかにしてあげるかが、検討委員会にとって重要な検討課題であったわけです。そうした観点から、都教委・検討委員会が考えたのは、「魅力ある職」することと、管理職への道の一つとすることでありました。

管理監督しないと多忙になる「主幹」
 「魅力ある職」とするためにということで、考えられたのが「給料表の新設による給料アップ」「授業持ち時数の軽減」「教員を指導監督という権限強化」というものでした。ところで、この内、「授業持ち時数軽減」については、次第に強く言われなくなってきています。そして、その替わりに次のような論理が展開されています。
 「主幹としての職責を十分に発揮させるため、現行主任の授業持ち時数軽減より、さらに拡大してほしい」(「教育長会等からの意見」)に対する見解ー「主幹の責任は主任より重くなるが、主任自らが動いたり独りで抱え込んでいたりする現状とは異なり、業務を割り振り、進行管理を行うなどが職務となるため、極端に業務量が増えることはない」。
 つまり、管理・監督業務が職務の中心であることを強調し、業務量が増えるとするならば、それは個々の「主幹」の「管理・監督能力」に問題があるのだという主張になっています。「主幹」の業務量が大幅にふえ、多忙を極めることを知りつつ、またそう期待しつつ、こうして自らの「逃げ道」を用意する行政官僚の悪辣さを見よ!

「主幹」は中間管理職だ!
 「教育長会等からの意見」に「主幹は、管理職に準じた位置付けとしてほしい」というものがあります。これに対する「見解」は、「主幹は管理職ではないが、教頭を補佐する職責をもつ。管理職を増やすことよりも、教員のリーダーをつくることが重要である」。
 よくもまあ、こうしたことをぬけぬけと言えるものだと感心さえしてしまいます。
 「主幹は、教諭を指導監督する」「主幹は教員に対し指揮命令権を持つ」「主幹は、教員の職務上の上司である」「主幹は校長の学校経営方針を教員に周知徹底する」「主幹は教員の情報を管理職に集中させる」こうした職責、権限、位置を持つ者、それは明確に管理職です。「教頭の補佐」という位置付けであることにより「中間」がつき、「中間管理職」ということになるだけです。
 「教員のリーダー」との言葉を検討委員会がどういう意味で使っているのか、明確ではありませんが、文脈的には「教員の中のリーダー」と受け取れます。しかし、前記の「職務」「職責」「権限」を持つ「中間管理職」たる「主幹」は、「教員の中のリーダー」ではありえないことは明確です。都教委・検討委員会の言葉遊びはいいかげんにしてほしいものです。

研修づけになる「主幹」
 また、「主幹には監督権が付与されるため、指導監督者としての資質能力を育成できるような主幹研修を実施する」との見解も明らかにしています。別のところでは、選考合格後の任用前研修を実施することを明らかにしています。
 「主幹」は各種「研修」にも追い回されることになります。

 「検討委員会」が意見聴取したPTA団体、教育長会等団体の「意見」とそれに対する「見解」からでも、「主幹」制がどのようなものとして構想されているか、より明らかになってきました。
 私たちは、「主幹」制導入に反対する意志をますます強くします。

「主幹」制は、石原構想でもある

 前号で扱った「PTA団体からの意見」の中に、「財政難の折、主幹として給与が上がる分を他にまわすべきという職員団体の声を聞いたが、、東京都は大丈夫なのか」というのがあります。
 それに対する都教委見解は、「都財政は厳しい状況下にあるが、東京都は予算査定に先立ち、重点的に実施すべき優先度の高いものを『重要施策』として選定することとし、限りある予算や人員等を措置することとした。この主幹制度は、平成十四年度の『重要施策』の一つとして選定されている」。
 これは、つまり、石原都政の「重要施策」つまり「目玉」となっているということを意味します。あるいは、もともと石原都知事からの指示で、始められた「検討」であるのかもしれません。いずれにせよ、都知事の構想と完全に合致しているが故に都の「重要施策」として位置付けられているわけです。強権的、差別的な言辞に示されている石原知事の危険な側面がこの問題にも明確に示されていると言えます。

ご紹介BOOK
「教育委員会に踏みにじられた街
 ―国立二小の不当処分」
     蓮沼 敏雄著  

 健友館発行 千五百円
 西の広島、東の国立、といわれるほど、国家権力の「日の丸・君が代」強制攻撃のひどかった国立二小に勤務していた著者、蓮沼さんは、かつて、墨田の柳島小分会に所属し、ともに闘う墨田の組合員でした。
 権力・右翼・一部マスコミのあまりにもひどい教育破壊攻撃によって、自由な雰囲気の中で、伸びやかに展開されていた国立の教育が管理的な教育に変質されていく現場にいたたまれず、ついに自ら退職を決意しました。そのことは、朝日新聞の投稿欄にも掲載されましたので、ご覧になった方も多いことでしょう。そして、退職後、「本当のことを知らせなければ」という思いで執筆されたのが本著です。
 第一章「『文教都市』国立」から始まる本著は、全七章、三十二の資料を集めた三百ページにものぼる貴重な記録になりました。
 教育関係者必読の本です。

一月中申し込み受け付け
組合事務所まで


週刊墨教組 No.1351   2002.1.10

都教委は、神! 都教委に誤りはない!
そう豪語する都教委の思い通りにさせてはならない
私たちは、「主幹」制導入にあくまでも反対する
(その1)

 新年、おめでとうございます。
 今年、二〇〇二年も、多難な年となることが確実です。しかし、私たちは、いままでどんな問題があろうと、それらひとつひとつの本質や問題点を明確にとらえるとともに、それに抗する論理、手立てを模索し、考え、発言し、行動し、抵抗してきました。今年も、そうした姿勢を崩さず、自分たちの道を自分たちで切り拓いていこうではありませんか。

 今年最大の課題となることが確実なものとして、「主幹」制の問題があります。
 昨年十二月十八日、都教委の「主任制度に関する検討委員会」は、第六回会議を開催し、「関係団体からの意見と検討委員会の見解」と「主任制度に関する最終報告(骨子)」を確認しました。
 その基本的内容は、「中間管理職としての『主幹』を全都の公立小中高校に配置し、学校を上位下達のピラミッド型組織として構築する」ことを強行するというものであり、当初からある結論をさらに合理化するための屁理屈を並べ立てたものでしかありません。

各団体から意見聴取
 「検討委員会」は、PTA団体、教育長会・校長会・教頭会等の団体、職員団体から、この問題についての意見聴取を行いました。また、十一月の「中間報告」に対する意見を都民その他に求めました。それらを通じて出された意見に対する「検討委員会見解」を文書にまとめ、それを第六回検討委員会で確認しています。
 各団体からの聴取で出された、あるいは寄せられた「意見」には、職員団体(組合)を除いて反対意見はなく、特に、PTA団体は、「学校運営への貢献は間違いのないところであり、主幹制導入に賛成である」と意見陳述したとしています。
 今号では、PTA団体からの「意見」、それに対する検討委員会の「見解」を中心に紹介し、必要な批判を行います。
 
出世主義者増やすだけーPTAの批判
 PTA団体からは、「導入賛成」意見の一方、「生涯一教師として子どもと直接関わっている教員が対等の立場で自由に意見を出し合うことによって生活指導等の問題は解決が図られる。子どもに目を向けず、現場から離れた出世主義の教員を増やすことになる」との意見も出されています。
 まさに「その通り!」、現場を踏まえ、またこの問題の本質的問題点を指摘した意見ではありませんか。
 これに対し、検討委員会は、「主幹は教諭を持って充てるため、子どもと触れ合う場を離れることはなく、その職務を遂行する。共に教育をつかさどる立場で、子どもの情報を得たり、自ら観察するなど、状況を総合的に判断することから、問題を未然に防ぎ、早期解決が図られる」との「見解」を出しています。問題点指摘に真っ向から答えるのではなく、問題をずらして見解表明しています。と同時に「(主幹が)状況を総合的に判断」という言い方で、「主幹」が一段上に立って「判断する」ことを明確にしています。
 こうした答えの仕方を、官僚的答弁・見解表明と言います。指摘に対して、答えるふりをしながら、問題をずらし、ついでに今後に生かせる言いたいことだけははっきり言っておく、こんな官僚的発想で「主幹」制は、構築されようとしているのです。

意見具申は校長の経営方針の枠内でのみ
 また「主幹の設置により上意下達は進むが、ボトムアップは現状よりさらに行われなくなってしまうのではないか」との意見もPTA団体から出されています。これに対し検討委員会は、「主幹の設置により、ボトムアップによる意志決定や迅速・的確な意志決定を行うシステムが確立される。教職員参画型の学校運営を何ら妨げるものではない」と見解表明しています。これに関連し、別の意見に対し、検討委員会は「主幹は教頭を補佐するため、分掌の責任者として、教員の意見を取りまとめ、管理職に対して意見を具申したり、教員に対して学校経営方針を周知徹底する。また、所掌する校務の進行管理を行い、必要に応じて指示を行うなど、監督する権限を持つ。このため校長・教頭の学校経営が円滑に行われる」と見解表明しています。
 ここでも、問題をずらしつつ、「主幹」の中間管理職としての機能、権限を抜け目なく規定しています。
 ボトムアップは、経営方針にまで及ばなければ意味がないことは企業の例を見ても明らかであり、多くの企業がそうしたルートを取り込んだシステムをつくっています。ところが、「主幹」の職務として上げられているのは「教員に対して学校経営方針を周知徹底する」です。「教員の意見を取りまとめ、意見具申する」は、その範囲内のことと限定されているのです。

教職員参加型の学校運営妨げぬと強弁
 ところで、先の「ボトムアップが行われなく・・・」の意見に対する見解の中には、つづいて「教職員参画型の学校運営を何ら妨げるものではない」とあります。また、別のところで「教職員の意志疎通と共通理解等は、学校運営において重要な要素である・・・」とも見解表明しています。 これらの見解は、「主幹」制の導入は、学校がその機能と役割を明確に果たしていくために不可欠な教職員の自由な意見表明に基づく意志疎通や共通理解、協力・共働と矛盾を来すことを認めざるを得ないことを示しています。
 この矛盾を避ける道、それは「主幹」制など導入せず、学校における教職員の自由な討論とそれに基づく学校の自主性、自立性を保障することです。それにより学校が活性化すること間違いありません。
 しかし、都教委は、その矛盾を覆い隠すため「学校運営の重要な要素である」に続けて「が、これにとらわれ過ぎると課題に対する迅速な対応ができなくなり、責任の所在が曖昧になる」と述べ、「だから、『主幹』制を」としています。これまた官僚的発想であり、現場を知らぬ者の机上プランと言わざるを得ません。それがもたらすものは、何か。現場にいる者は誰でも感覚的、本能的にわかっています。

急務の課題は組織運営より資質向上
       ーPTA団体の批判

 PTA団体からの意見の冒頭には、「急務の課題は、組織運営よりも教員の資質向上である。自覚と責任ある子どもを教育するに相応しい教員を選び、ジョブトレーニング等をきちんと行って、育ててほしい」「校長は、教員との意志疎通を図ることが重要であり、積極的な取組がほしい」との意見が出されています。
 この意見は、基本的に保護者団体であるPTAの意見として、しごく真っ当なものだと言えますし、「校長・・・」の部分は、日頃、学校と接触している中で、強く感じていることでありましょう。
 これに対する検討委員会の見解は、「主幹の設置により、教員の情報がこれまで以上に管理職に集まることにより、コミュニケーションが一層図られる。このため、個々の教員に応じた育成課題がより明確となり、組織的・計画的な指導体制で適切な人材育成が行われる」となっています。
 ここでも、PTAとしての真っ当な意見と、ずらしたところで見解を出しています。「急務な課題は組織運営ではない。教員の資質向上だ」との意見に対し、真っ当に答えていません。
 続いて出されている「校長・・・」と重ね合わせて見た時、PTA団体が言いたいことは、教員のみならず校長・教頭の管理職まで含んだ「資質向上」を言っていると見て良いでしょう。資質・能力を疑わざるを得ない管理職の何と多いことか。それを、感じているのは私たちだけでなく、管理職と接触することが多いPTA役員たちも同じであるようです。そのことが、あちこちでささやかれていることを、私たちは事実として知っています。それらの声が集められたものとしてこの「意見」は、出されたものと思われます。そうしたものとしての「意見」に対し、「個々の教員に応じた育成課題がより明確になり、組織的・計画的な指導体制で適切な人材育成が・・・」という「見解」。明確に、ずらしています。
 校長、教頭を中心とした「指導体制」そのものへの疑問に、何ら答えていません。

「主幹」にスパイの勧め
 ところで、「見解」は、「主幹の設置により、教員の情報がこれまで以上に管理職に集まることにより・・・個々の教員に応じた育成課題が明確に」といっています。 これは「主幹」へのスパイの勧めではありませんか。
 「教員の持つ情報」(それは、子どもに関する情報であったり、問題・課題を考える上で必要な知識・技能・知恵・経験であったりする)ではなく、「教員の情報」、つまり「(個々の)教員についての情報」です。それを管理職に「注進」せよというのです。中間管理職たる「主幹」を設置することの意図がここに露骨に出ています。

都教委は神!「誤りはない!」と豪語
 「意見と見解」の中で、「資質」の問題に触れた「意見」が、「中間報告に対する意見」の項目中にひとつ入っています。それは「主幹としての資質・能力に問題がある職員が選考に合格した場合の対応について伺う」というものです。
 これに対する「見解」は、次のようになっています。
 「主幹は、都教育委員会が行う選考により任用されることから、資質・能力に問題のある教員が選ばれることはない。
 しかしながら、主幹としての任用後、仮にその職責が果たせなくなれば、厳正に対処していく」
 都教委は、神か!
 「都教委が行う選考により任用されることから、資質・能力に問題ある教員が選ばれることはない」!
 校長・教頭の選考は、誰がしているのか。言うまでもなく、都教委です。そうして選ばれた校長・教頭に、資質・能力に問題がある人は、一人としていませんか。そうではないこと、そればかりか「資質・能力に問題のある」校長・教頭がかなりの数にのぼること、私たちだけでなく、PTA団体役員も、多くの地教委も、さらに都教委自らさえもがはっきり知っているではありませんか。にもかかわらず、「都教委が行う選考により任用されることから、資質・能力に問題のある教員が選ばれることはない」と言い切る。何たる鉄面皮!
 自らを「神」の高みに持ち上げる感覚、その感覚で、事を強引に推し進めることが何を生み出すか、さまざまな歴史が物語っているではありませんか。歴史に学ぶ事なき、歴史感覚なき人たち。その人たちの思い通りにさせてはなりません。
 私たちは「主幹」制導入にあくまでも反対します。
 


週刊墨教組1343号 2001.10.29

中間管理職「主幹」の制度化を改めて主張
 学校組織を経営層、指導監督層、実践層の三層構造に
     十月二五日「主任制検討委員会」が中間報告

 十月二五日、都教委の「主任制検討委員会」は、この間の検討の「中間のまとめ」(以下「中間まとめ」)を行い、都教委に報告しました。
 「中間まとめ」の中核部分は、「新しい職」=「主幹」の設置であり、その内容は、今まで明らかにされた考え方・内容と変わっていません。
 「主幹」制度とは、明確に中間管理職の設置です。管理体制を強化し、学校運営組織をピラミッド型に再編成し、上命下服型の組織にするということでもあります。
 それは、「管理あって教育なし」という状況をさらに進めるものでしかないのではないでしょうか。
 私たちは、こうした方向に断固反対します

新たな学校運営組織の構築
 「中間まとめ」は、その冒頭で、「社会環境の変化やそれに伴う新たな教育課題に積極的に対応できる態勢づくりが急務」とした上で、「従来の学校運営組織を見直し、新たな学校運営組織を作り上げる」ことが「検討委員会」の任務であるとしました。
 そして、その視点から「現在の学校運営組織や運営上の課題」「新たな職として指導監督層を置く必要性」「新たな職の職務上の責任及び処遇」を示したとしています。

現行運営組織は鍋蓋型組織
 「中間まとめ」は、現在の学校運営組織の問題点として以下の三点をあげ、それを「今後の運営改善の視点とすべき」だと主張しています。
@意志決定システムが十分機能していない。
  職員会議は、学校経営方針や教育計画の具体化の方策を検討すべき場
A教職員間に「横並び意識」が存在。  主任を始め、先輩・同僚が指導助言しにくい雰囲気があり、OJT(On Job Training職場内訓練)態勢が整っていない。
B「鍋蓋型組織」(管理職以外が全てフラットである組織)になっている。 管理職以外は主任も含め職位に差がなく、校長の学校経営方針・指示が教員に十分に浸透しない。

学校組織を三層構造へ
 この三点に立って、今後の学校運営組織を考えた時、「経営層である校長・教頭と、実践層である教諭等との調整的役割を行い、自らの経験を生かして教諭等をリードしていく指導監督層を設置する必要がある」というのが都教委の「主幹」設置の論理です。
 つまり、学校運営組織を、「経営層」(校長・教頭)、指導・監督層(「主幹」)、実践層(教諭等)の三層構造とする、そのために「主幹」という「新たな職」を設置ということです。

「主幹」に四つの職責を付与
 そして、「主幹」を指導・監督層として機能させるために、次の四つの「職責を付与する」としています。
@教頭の補佐ー教諭の意見をとりまとめての意見具申、教諭に校長の経営方針を周知徹底する
A調整機能ー分掌の責任者として、その状況を常時把握し、調整する
B人材育成ー教諭のリーダーとして、校長・教頭の指導のもと、教諭にアドバイス、種々の課題に率先垂範して取り組み、他の教諭の模範となる
C監督機能ー分掌の責任者として、分掌の状況を把握し、学校経営方針を徹底や所掌する校務の進行管理のための指示を行う
 つまるところ「教頭を補佐するとともに、教諭等を指導・監督する」のが、「主幹」の職責ということです。中間管理職そのものです。

「主幹」の処遇
 「中間まとめ」は、「主幹」の処遇について、次の二点をあげています。
@「選考」(試験)を行い、「主幹」級として学校に配置するなど任用管理(異動等)を行う
A給料表に新しい「職務の級(特2級)」を設け、適用する。
 こうした職責、処遇の「主幹」を小学校に二名ずつ、中学校に三名ずつ置くというわけです。

管理体制強化のもたらすもの
 かねてから批判してきたように「主幹」は中間管理職そのものであり、その設置によって、管理体制ー校長を頂点とした上命下服の管理体制ー強化以外のなにものでもありません。
 そのことは、都教委の言うように「学校の活性化」や「課題への柔軟で機動的な対応」につながるものではなく、逆に学校に「沈滞」「硬直化」、ひいては「(子どもたちのための)学校の死」をもたらすものであることを、私たちは経験的、直感的に知っています。そうした面からも、「主幹」設置に強く反対します。


週刊墨教組1339号 2001.10.11

新たな職=「主幹」は、中間管理職
  「教頭を補佐し教諭を指導・監督、教諭の職務上の上司」
   都教委の危険な策動、ますます明確に@

 都教委が考え、強行しようとしている「主任制度の見直し」なるものの内実が明らかになってきています。それは、けして「主任制の見直し」などではなく、明確に「新たな管理職」の設置です。
 そもそも「主任」制度は、学校に「主任」という中間管理職を置き、管理体制を強化するために構想されたものでした。しかし、ストライキを機軸に据えた私たちの強い反対運動、教育学者を初めとする学者・文化人の批判等を通し、この問題は世論の中に持ち込まれ、批判の声が強くなる中で、文部省は次の諸点を強調せざるを得ませんでした。
 しかし、制度化は強行したのでした。
 「校長・教頭は主として管理面を担当するのに対し、主任は教育指導面を担当する」「主任は校務分掌の一環であり、中間管理職ではない」「主任はその職務にかかる事項について連絡調整指導助言を行う」「主任は固定化せず、適格者ができるだけ多くこの経験を積むことが望ましい」「主任発令を教委が行うか校長が行うかは教委規則で決めるが、従来の選び方を変えるものではない」(いずれも一九七五年十二月の「文部大臣見解」「文部省指導通知」より)
 こうした文部省の見解は、事実として「主任」制度化の本質を覆い隠すものでしかありません。しかし、こうした「見解」を出さざるを得ないところまで文部省を追い込んだ私たちの闘いは、期待されている機能(中間管理職)を果たさせない、実体化させない闘いへと引き継がれてきたのでした。全国的にみれば、「主任」が中間管理職として機能しているところも少なからずあります。都においても同じです。しかし、全都全校で中間管理職として機能していないことに焦った都教委は、今回、「主任制の見直し」という言い方で、それを飛び越し「中間管理職」の設置に踏み切る姿勢を明確にしたものです。「主任」制度化の「原点に返る」ということなのでしょう。
 「主任」制度化は、自民党が学校管理体制の強化、組合つぶしの妙案として発想、強力な圧力で押し付けたものです。今度は、それを都教委がやろうというのです。この問題はいずれ、全国に波及します。その先兵を都教委が買って出ているというわけです。

 九月六日、都教委「主任制検討委員会」の第三回委員会が開催されました。この委員会に都教委は、「新たな職の職務について」と「校種別の新しい学校運営組織」の二案を提示しています。この大要については、一三三三号でお知らせしました。今号から、その中味について詳しく見ていきます。

新たな職(仮称「主幹」)の職責
 「担当する校務に関する事項について、教頭を補佐するとともに、教諭等を指導・監督する」
 これに関連し「担当する校務においては、その校務に関係する教諭等の職務上の上司となる」と「説明」しています。
 さらに都教委は、その根拠として「法令用語の定義では、『監督には指揮命令権を含む』となっている」、ところで「主幹は教諭等に対して指導・監督する」、だから「指揮命令権」を持つ、だから「職務上の上司となる」との論理を展開しました。
 何ともおかしな論理ではありませんか。まず自分たちで勝手に「『主幹』の職責は教諭などを指導・監督する」と決め、次に「法令用語の定義」を挙げ、「監督には指揮命令権を含む」、だから「上司」。「なりふりかまわず」というのは、こういうことをいうのでしょうか。
なお、六日の「検討委員会」の中では、「主幹の責任は重くなるが、学校全体の仕事量は変わらない。現行の主任が一人で抱え込んでいた分掌を所属教諭に割り振るなど、指導・監督することによってむしろ軽減される」との「意見」が出されています。「主幹」は、「この部分の仕事は、お前がやれ」と教諭等に「命令」することができるし、「命令」してやらせれば良いということを明確にしていると言えます。

「主幹」には教諭を充てる
「主幹」を任用上の職として位置付け教諭をもって充てる。

 任用上の職として位置付けることについて都教委は、地方教育行政法に「教育委員会が学校の組織編制を管理し、執行する」と規定していることを根拠としてあげ、したがって「教育委員会が学校に主幹をおくことができる」としています。
 しかし、「主幹」には「教諭をもって充てる」。それは、都道府県が給与を負担する市町村立学校職員(県費負担教職員)は「市町村立学校職員給与負担法」により、校長・教頭・教諭・養護教諭等と明確に規定されているので、「教諭をもって充てる」ことにしないと、「主幹職」を県費負担職員にすることができないからと説明しています。
 さらに、「義務教育費国庫負担法」により、「国は公立の小・中学校等の職員の給与の二分の一を負担すると規定しているが、この対象となる学校職員は『給与負担法が適用される職員』と規定している」そこで、「教諭をもって充てる」としたとしています。
 給与上の問題については都が責任を持つ、だから全都一律におく、さらに都の負担軽減のために国庫負担法の対象としても位置付けておく(つまり教諭身分)というわけです。
 実にいろいろ考えるものと感心させられます。        (以下次号)

週刊墨教組 No.1336

2001.9.27

新たな職=「主幹」は、中間管理職
  「生涯一教師として児童生徒と接することに生きがい持つ教員が多い」
   ーその教員をいかにして「主幹」にするかを検討
     都教委の危険な策動、ますます明確にA


「主幹」選考試験の実施
 「教育委員会が選考を行い、合格者を『主幹』として配置するなど任用管理(異動等)を行う」
 現在、都は、校長・教頭・指導主事の選考を一本化し、教育管理職A選考とB選考の二種の選考を行っています。
 教育管理職A選考
 A選考は、「行政感覚にも優れた教育ゼネラリスト的な管理職の養成を図る」として、その受験資格を「経験七年以上、年齢三三歳以上四二歳未満」としています。つまり、若年の内から管理職として育成を図るという言わば「エリート育成コース」です。選考合格後五年間の候補期間(研修期間)を経ることになっています。この期間中の「業績・研修・面接結果等を総合的に評価して適格」と「任用審査会」が認めた者から任用となっています。当然「不適格」と判定される場合も出てきます。
 教育管理職B選考
 B選考は、「即戦力として活用する学校運営のスペシャリスト的な管理職の養成を図る」とし、その受験資格を「経験十四年以上、年齢四四歳以上五六歳未満」としています。つまり、言わば「叩き上げコース」です。選考合格後二年間の候補期間をおくことになっています。
 A、Bどちらの選考も、「研修の受講状況、課題論文、面接、業績評定」で行われ、都教委の「任用審査会」で合否を決めることになっています。また、受験回数は三回までと制限されています。
 なお、指導主事、教頭から校長への任用については、その在職期間四年以上の者について任用審査会が「在職期間中の業績、面接結果等を総合的に評価し、適格の判定」をした者から任用するとなっています。

「主幹」選考を「昇任選考」として実施
 都教委は、「主幹」の任用に当たっては、管理職A・B選考とは別に選考を行うとしています。これは昇任選考ですから、「主幹」となるや、降任もあり得ず、また異動も「主幹」として異動ということになります。この「主幹選考」の受験資格、管理職選考との関連、合格者の配置(異動)等については、都教委はまだ明らかにしていません。

「主幹異動」に伴う問題点
 九月六日の第三回検討委員会では、「主幹」選考に関連し、「主幹の異動や異動先での人間関係が懸念されるが、異動要綱の見直しや現行主任として活躍している教諭が主幹となるような手立てを検討していくことで解決可能」との「意見」が出されています(都教委発表の「会議要旨」より。以下引用は同「要旨」より)。
 「主幹」は、一般教諭とは別に「主幹」としての異動を行うことになるわけで、この「意見」は、それとからんでの「異動要綱」改定も視野に入れるということです。その場合、さらに強制異動を強めることにならざるを得ません。そうした問題も生じてきます。

落下傘「主幹」に何ができる?
 それにしても「異動先での人間関係が懸念」というのは、全く正しい指摘です。落下傘にのって降りてくる「中間管理職(主幹)」を誰が歓迎するでしょう。また、その落下傘の人が、学校毎の経過や児童生徒や地域状況を知らずに監督権・命令権という権力を振るうとしたら人間関係が良くなる訳がないし、「主幹」にとっても不幸なことになるのではないでしょうか。何よりもまず児童生徒・地域の実態・状況や課題を把握し、子どもたちに顔を向けた仕事ができるでしょうか。断じて否です。

「生涯一教師としての生きがい」ー何が悪い!
 さらに、「生涯一教師として児童生徒に接することに生きがいを感じる教員が多いという現状から、多数の受験者を確保できる選考の方法を検討する必要がある」との「意見」も出されています。
 この「生涯一教師・・・」の認識は、全く正しい! 事実として、管理職選考受験者は以前に比べ大幅に減っています。
 「児童生徒と接することに生きがいを感じる教師の多さ」!
 そうした現状は、きわめて正常であり、かつ喜ぶべきことではありませんか!
 そうした教師を励まし、支えることこそ、教育行政の責務です。都教委はその責務を果たしているか! 
 否! 断じて、否!
 都教委がこの間やってきたことは、学校現場の現実を無視し、教員から気力・意欲・自発性・自立性を奪わざるを得ないようなさまざまな愚行だけではありませんか。学校管理運営規則の改悪しかり、業績評定しかり、勤務時間問題しかり、今回の「主幹」問題しかり!

「子と接することに生きがい」教員こそが
 しかし、そうした中にあっても、都内の公立学校が辛うじて児童生徒、保護者の信頼を維持し、その機能と責任を果たし得ているのは、「児童生徒と接することに生きがいを感じる」多くの教師たちの苦闘の結果ではありませんか。

「管理することに生きがいを」と言うのか
 この「意見」は正しい現状認識を示しながら、一方においてそうした現状を「良くない」と言っていることになります。一体何を考えているのか。
 しかも、主幹の処遇に関連して「主任よりさらに職責の重い主幹を務めるには、授業の持ち時間軽減などを行い、魅力あるものとする必要」「主幹の職務自体にやりがいが感じられるようにすることが大切」との「意見」が出されているのを見ると、「児童生徒と接することに生きがいを持つ」のではなく、「管理することに生きがいを持て」「そういう教師よ、ふえよ」と言っているようにしか思えません。
 東京の学校教育は「崩壊」の一途をたどるしかないのでしょうか。

給与面で優遇ー異例の行政主導
 「給料表に新しい『職務の級(特2級)』を設け、『主幹』選考合格者に適用する」
 現行の給料表は、1〜4級で、教諭が2級、教頭3級、校長4級が適用されています。この3級と2級の間に新たに特2級の給料表を新設し、「主幹」には、その給料表を適用するというものです。
 従来、給料表の作成・改定については、都人事委員会が「勧告」し、それを受けて都が条例改正を行い、確定するという筋道が引かれています。今回のような場合も、「主幹職」を新設する、ついては給料面でも別途処遇するための方策を人事委員会としても検討してほしいと要望する形で行くのが普通です。しかし、今回は、行政の側から新給料表の作成を構想するというきわめて異例のことを敢えて行っています。何が何でも「中間管理職」設置という都教委の策謀の強さだけが感じられます。

金で釣ろうという根性が丸見え
 しかも、先の現状認識(「児童生徒に接することに生きがいを感じる教員が多い」)に立って、給与面で優遇しよう、つまり金で釣ろうという根性が丸見えではありませんか。
 その上、先に見たように「授業持ち時数軽減」「魅力ある職(権限強化と管理職選考の資格要件化しか考えてないと思われる)」等の「意見」を見ると、「児童生徒に接することに生きがいを感じる多くの教員」を、いかにして、そうしたところから、子どもたちから、「ひっぱがすか」を考えているとしか言えません。何とも主客逆転の発想、思考ではありませんか。

週刊墨教組 No.1337 2001.10.1

新たな職=「主幹」は、中間管理職
  学校をピラミッド型組織に再構成する
都教委の危険な策動、ますます明確にB

「主幹」は教頭の「子分」
 「主幹の職務内容
(1)教頭の補佐
(2)調整(分掌部・学年間)
(3)人材育成(主任を含む教諭等の育成)
(4)監督(主任を含む教諭等への指導・監督)」
 第一の職務として上げられているのが、「教頭の補佐」。別の言い方をすれば、教頭の「子分」でしょうか。
 検討委員会の中では「主幹配置により、管理職と教諭との間に一部見られる対立構造を解消するクッションとなったり、教頭の補佐を務めることで教頭が本来の職務に専念できる等の効果が期待できる」との「意見」が出されています。「対立解消のクッション」とは、何という言い草でしょう。校長・教頭への不満を中間管理職に吸収させるということではありませんか。
 ピラミッド型組織は、上命下服の管理体制を強化するとともに、下からの不満・要求あるいは提案を中間で吸収し、上位の責任を軽減し、その無責任を容認し安定を図る組織体制です。学校をまさにそういうものとして構成し直そうということです。それが生み出すものは何か。
 慄然たるものを感じざるを得ません。

どのような人材を育成?
 「人材育成」もその職務内容に上げられています。この点に関連して「新たな職を設置することは、校内における組織的・計画的な人材育成が可能となることから、指導力不足教員を減少させ、ひいては児童生徒の学力向上につながる」との「意見」が出されています。この意見の趣旨は必ずしも明確ではありませんが、どうやら校長・教頭だけでなく中間管理職たる「主幹」が、平教員に対する指導・監督陣に加わることにより、その指導・監督のもとに「人材育成」体制が強固になるということを言いたいものと思われます。では、この場合の「人材」とは、いかなる知識、能力、態度、意欲をもつ者として想定されているのでしょうか。少なくとも「生涯一教師として児童生徒と接することに生きがいを感じる教員」ということではないようです。

中間管理職(「主幹」))を複数配置
 「校種別の基本配置人数は、小学校二名、中学校三名、全日制高校六名、定時制高校一名、三名、六名(規模、設置学科によって異なる。多くは一名)、盲ろう養護学校五名(最大で)とする。」
 都教委は、このように配置した場合、小学校では二千七百四十二名(千三百七十一校)、中学校では千九百六十八名(六百五十六校)、全日制高校で千二百三十名(二百五校)、定時制高校で百九名(百校)、盲ろう養護学校で二百六十二名(六十一校)、全体で六千三百十一名の「主幹」を配置することになるとしています。
 都教委は、これだけの数の「主幹」を全校一斉配置するのは困難であるとし、「平成十五年度からの配置を目指し、十四年度中に主幹級試験を実施。小・中学校五年、高校では七年程度かけて全校への配置を完了させたい」(「日本教育新聞」九月二一日号)と考えている模様です。

「主幹」配置、さらに増やすことも
 なお、「基本型が確立した段階で、学校規模や実情に応じた配置人数を検討していきたい。例えば、中学校においても全日制高校のように主幹を学年の上に置くことも考えられる」との「意見」が出されています。 全日制高校の六名の主幹の考え方は、「主幹T〜V」はそれぞれ「主として教務・生活・進路指導を担当」し、「主幹W〜W」は、それぞれ「学年を担当」するとなっています。この「意見」は中学校についても同様に、六名にすることも有り得るということを示しています。 
 いずれにせよ、中間管理職の複数配置、それは管理体制の強化以外の何ものでもありません。

校務を七種に分類
 「校務を七種に分類し、各主幹が校種ごとに定めた分担に基づいて、 分掌を所管し、担当する校務について、教諭等を指導・監督する。
 ・教務に関する事項
 ・生活指導に関する事項
 ・進路指導に関する事項
 ・保健に関する事項
 ・総務(庶務)に関する事項
 ・図書に関する事項
 ・研究に関する事項」
 例えば小学校の場合、「主幹T」が「教務」「総務」「図書」「研究」の校務を担当し、「主幹U」が「生活指導」「保健」を担当するとしています。
 中学校の場合、「主幹T」が「教務」「総務」「研究」を、「主幹U」が「生活指導」「保健」を、「主幹V」が「進路指導」「図書」を担当するとしています。
 全日制高校の場合、「主幹T〜V」の担当は、中学校の「主幹T〜V」と同じですが、この三名の主幹は「企画部門として担当する校務について各学年を調整・統括等の監督をする」とされています。そして「主幹W〜Y」は、各学年の学年主任を兼務し「実施部門として担当する学年内の進行管理等の監督をする」とされています。

中間管理職に外ならない
 「主幹」は担当「校務」について「教頭を補佐し、教諭を指導・監督する」ことが職責、さらに担当する校務においては、その校務に関係する教諭等の「職務上の上司」。そうした位置付け、職責を持つ者を、一般的・常識的に「中間管理職」と呼びます。
 都教委は、さらに「主幹」の職務内容として「@教頭の補佐A調整B人材育成C監督」をあげています。
 これらの職務内容を行う者を「中間管理職」と言うのは、社会の常識です。
 「中間管理職」として複数の「主幹」を配置してピラミッド型の校内組織を整備し、上命下服の管理体制を学校につくりあげる、それは「管理あって教育なし」という状況をさらに進めるものでしかありません。


週刊墨教組 No.1333 2001.9.13

「新たな管理職」は、「主幹」職

「教頭を補佐し教諭を指導・監督、教諭の職務上の上司」
都教委「主任制検討委員会」のますます危険な策動、明確に

 九月六日、都教委「主任制検討委員会」の第三回委員会が開催されました。この委員会に都教委は、次のような「案」を提示しています。
・「新たな職」の名称は「主幹」(仮称)とする
・「主幹」の職責は、担当する校務に関する事項について、教頭を補佐し、教諭等を指導・監督する
・「主幹」を任用上の職として位置付け教諭をもって充てる
 教育委員会が選考を行い、合格者を「主幹」として配置するなど任用管理(異動等)を行う。
・給料表に新しい「職務の級(特2級)」を設け、「主幹」選考合格者に適用する
・小学校には二人、中学校には三人の「主幹」を配置する
 明確に、新たな管理職の設置です。しかも、複数配置。
 管理体制の強化以外の何ものでもありません。

「新たな管理職」は、「主幹」職
  「教頭を補佐し教諭を指導・監督、教諭の職務上の上司」
    都教委「主任制検討委員会」のますます危険な策動、明確に
 九月六日、都教委「主任制検討委員会」の第三回委員会が開催されました。この委員会に都教委は、次のような「案」を提示しています。
・「新たな職」の名称は「主幹」(仮称)とする
・「主幹」の職責は、担当する校務に関する事項について、教頭を補佐し、教諭等を指導・監督する
・「主幹」を任用上の職として位置付け教諭をもって充てる
 教育委員会が選考を行い、合格者を「主幹」として配置するなど任用管理(異動等)を行う。
・給料表に新しい「職務の級(特2級)」を設け、「主幹」選考合格者に適用する
・小学校には二人、中学校には三人の「主幹」を配置する
 明確に、新たな管理職の設置です。しかも、複数配置。
 管理体制の強化以外の何ものでもありません。

校務を七種に分類
 都教委は、「主幹」が「担当する校務」について、「校務」を次の七種に分類しています。

 ・教務に関する事項
 ・生活指導に関する事項
 ・進路指導に関する事項
 ・保健に関する事項
 ・総務(庶務)に関する事項
 ・図書に関する事項
 ・研究に関する事項

 そして、小学校の場合、「主幹T」が「教務」「総務」「図書」「研究」の校務を担当し、「主幹U」が「生活指導」「保健」を担当するとしています。
 中学校の場合、「主幹T」が「教務」「総務」「研究」を、「主幹U」が「生活指導」「保健」を、「主幹V」が「進路指導」「図書」を担当するとしています。

教諭の職務上の上司
 「主幹」は、これら担当「校務」について「教頭を補佐し、教諭を指導・監督する」ことが職責だというのです。そして、さらに担当する校務においては、その校務に関係する教諭等の「職務上の上司となる」としています。

 「主幹」が担当する「校務」に関係する教諭等を「指導・監督」する、したがって、それらの教諭にとっては「職務上の上司」だというわけです。そうした位置付け、職責を持つ者を、一般的・常識的に「中間管理職」と呼びます。

中間管理職の設置に外ならない
 都教委は、さらに「主幹」の職務内容として「@教頭の補佐A調整(分掌部・学年間)B人材育成(主任を含む教諭等の育成)C監督(主任を含む教諭等への指導・監督)」をあげています。
 これらの職務内容を行う者を「中間管理職」と言うのは、現代社会の常識です。
 「中間管理職」を設け、上命下服の管理体制を学校につくりあげる、それは「管理あって教育なし」という状況をさらに進めるものでしかありません。


週刊墨教組 No.1332 2001.9.6

新たな職」設置とは、「新たな管理職」を設けること
 管理態勢強化絶対反対!
  都教委「主任制検討委員会」の危険な策動

 「主任」制度の抜本的見直しを行うとして都教委が設置した「主任制度に関する検討委員会」は、七月二四日に開いた第二回会議で、次のような方向で検討を進めていくことを確認しました。
・教頭の下に「新たな職」を設ける。
・「新たな職」の職責は、「主任」の役割に加え、校長・教頭を補佐し、すべての教員を指導・監督する。
・「新たな職」に適用する給料表として「特二級」を新設する。
・現行の管理職同様に選考試験を行い任用する。
・異動も「新たな職」として行うなど、任用管理は都教委が行う。
・「新たな職」は教諭をもって「充てる職」とし、管理職手当は支給しない。
 最後の、「充てる職」とし、管理職手当は支給しないとしているのは、国の制度との整合性を図るためと、「管理職ではない」と言わんがためのものです。
 しかし、その他の項を見れば明らかなように、「新たな職」とは、明確に「中間管理職」の設置です。「主任制度の見直し」を飛び越えて、管理体制強化のために「新たな職」設置という方向に踏み込もうというものです。
 私たちは、こうした動きに断固として反対します。
 この数年の都教委の教員管理体制強化の諸策動の中で、「管理ありて教育なし」という状況が現実にあちこちで生まれつつあります。
 そうした中で、「新たな管理職」をつくりだし、さらに管理体制を強化することは、「管理ありて教育なし」という状況を全都的ひいては全国的に広げていくものでしかありません。


No.1305  2000.12.21

さらなる職場分断につながる
「研究主任」への手当支給反対

十二月五日 都教委、特勤手当見直し提案

 十二月五日、都教委は特殊勤務手当(特勤手当)見直し提案を行いました。特勤手当は、三年に一回見直すことになっており、この提案はそれに基づくものでもあります。今回の提案の特徴は、「勤務実績状況に応じた支給方法を推し進める」としたことと、全体として「縮減」の方向を打ち出していることです。
 前者について言えば、夜間学級通信教育勤務手当について現行は十%を限度として支給されていますが、これを日額化するとしています。つまり、日額いくらとし勤務日数に応じて支給する方法に改めるというものです(主任手当がそうですー日額二百円、勤務日数分支給)。
 また、養護学園勤務手当は廃止、教員特殊業務手当の内、緊急業務については「減額」ないし「支給水準検討」としていることなどは、「縮減」の方針にそったものです。
 教員特殊業務手当の支給対象である緊急業務とは、@非常災害時の児童生徒の保護等の業務(現行日額三千二百円→減額)A被害が甚大な災害時の救援(現行日額六千四百円→減額)B救急業務(現行日額千五百円→支給水準検討)C補導業務(現行日額千五百円→支給水準検討)の四つです。また、これ以外の教員特殊業務手当には修学旅行等引率業務、対外運動競技等引率業務(以上の二つは日額千七百円)、部活動指導手当(日額千二百円)等がありますが、いずれも据え置きとなっています。これらについては、超過勤務手当制度がない教員についてはむしろ増額すべきです。
「主任手当」こそ廃止せよ
 この「見直し案」の最大の問題点は、教育業務連絡指導手当(主任手当)の支給対象を小学校の「研究主任」にまで拡大することを検討するとしていることです。「支給対象の拡大」はさらに職場を分断させるものです。私たちは、拡大のみならず「主任手当」自体の廃止を要求します。「主任手当」こそ「縮減」すべき対象です。