週刊墨教組1252号 1999.9.22

快采的夏令菅
 
雨の中での餃子作り
 第二六回中国引き揚げの子のサマーキャンプ報告 @

今年で第二六回目をむかえた「中国引き揚げの子のサマーキャンプ」が八月十五日から十七日までの二泊三日、墨田区の施設「榛名高原学園」で行われ、途中雨にたたられながらも無事終了しました。参加者は、小学生三七人、中学生十三人、高校生二十人、引率・保護者二五人で、合計九五人の大所帯となりました。

 八月十五日、バスで[東あずま」駅前を出発、一号車は小学生、二号車は中・高校生が乗車しました。参加地区は江東、江戸川、墨田、足立、大田、荒川で、都内に住む引き揚げ・渡日の子どもたちが一年に一度出会えるこの日を子どもたちは本当に楽しみにしていました。久しぶりに会う子どもたちの成長ぶりに驚いたり、すっかり大人っぽくなったかつての教え子にまぶしさを感じたり、こちらもちょっと興奮気味。バスの中では、初めて出会う子どもたちもいて、さっそく自己紹介をして盛り上がりました。中国の出身地を聞くと北から南までさまざまで、遠く内モンゴルからきた子もいました。
 東京は晴天でしたが、榛名に着くと大雨でハイキングは中止となってしまいました。さっそく食堂で開園式を行い、子どもたちの班をつくりました。小学生の班には高校生に世話係としてついてもらいました。日本語のわからない子どものそばにきて一言二言中国語で話しかけるだけで、子どもの顔がぱっと明るくなり表情が和らいだのには感激してしまいました。日本語と中国語を上手に使い分け、帰国して間もない子どもたちを気遣っている高校生を頼もしく思いました。
 班の顔合わせが終わり、夕飯のカレー作りを始めました。雨が止まず、結局、野菜を切っただけで調理は食堂の方にお願いしました。本当なら、外のかまどを使う予定でしたが、そのぶん、たっぷり遊べました。さっそくトラブルもおきました。トラブルをどう解決するかも大切な勉強です。
 夜は体育館で交歓会を行いました。クイズやゲーム、ジェスチャーなど、みんなで楽しみました。また、フォークダンスで体を動かし、中国の歌「我的中国心」を歌い思い切り声を出しました。あっという間の二時間が終わり、長い長い夜への突入です。

 さて、二日目も午前中はずっと雨がふり続いていました。予定していた榛名山の登山には行けず、体育館で班対抗のビーチボールバレーを行いました。小学生の班には高校生が助っ人で参加し、接戦の末、中学生班が優勝しました。その後は得意の餃子を作りました。白菜とネギを刻み、肉を入れて味を付けます。班によりその味は微妙に異なり、それぞれのふるさとの味につながっているのです。
 薄力粉と強力粉をブレンドして、耳たぶぐらいの堅さにこねます。しばらくおいてから小さくちぎって、綿棒で小さな皮を作り上げます。小学生の班も高校生に手伝ってもらいながらも、一生懸命皮をのばしていきました。手際よく皮をのばして包んでいく様子はすばらしいものです。皮を手に取るとふわっとやわらかく、それでいて弾力があり、その微妙な粉の扱いは「文化」と呼ぶにふさわしいものと感心してしまいました。
 さあ、雨も上がりいよいよ外のかまどでゆでて、食べる準備です。お昼の時間もすっかり過ぎています。茹であがるのも待ち遠しくあつあつの餃子をほおばる瞬間は最高です。一気に一皿たいらげてしまいました。このキャンプに参加する第一の目的が達成された満足感でいっぱいです。
 その後は園庭でペットボトルロケットを打ち上げたり、シャボン玉をしたり、また、多目的室でビーチボールをしたりと、それぞれ思い切り遊びました。
 夜は雨もようやくあがって高校生の司会でキャンプファイヤーをやりました。
勢いよく燃え上がる炎をかこんで最後の夜を楽しみました。その後はナイトハイキング、花火でまた盛り上がってしまい、夜はなかなか更けていきませんでした。

 三日目はこのキャンプのメインである「学習会」を開きました。この日私たちにお話してくださったのは中国「残留」孤児だった方で、なぜ残留孤児になったのか、中国でどんな人生を送ったのか、そして日本に戻ってきてからの苦労など、ご自分の歩んでこられた人生を語ってくださいました。子どもの頃中国でいじめられたことや、日本でもなかなか受け入れてもらえなかったことなどのつらかったことも、率直に語ってくださいました。そんな中でも前向きに努力され、通訳の仕事をまかされるようになったそうです。そして子どもたちには、中国語を忘れないようにすること、中国で育ったことを誇りに思うこと、そして、日本と中国の二つの祖国を大切にすることなどを熱っぽく訴えられました。子どもたちは自分の境遇と照らし合わせて聞いていたようです。その後みんなで感想文を書きました。

 こうして、楽しかった三日間があっという間に終わりました。ふだん学校では見せないようないい笑顔が随所に見られ、楽しい中にも有意義な時間が持てたことをうれしく思います。子どもたちの将来は決して平坦なものではないでしょう。辛い時、悲しい時に頼りになるのは、同じ境遇を過ごしてきた仲間であり、先輩達です。お互いに励まし合い、助け合うことのできる仲間をたくさん作ってほしいと思います。
 私たちはこのキャンプが一つの出会いの場所であってほしいと思っています。そして子どもたちだけでなく私たちにとっても新たな子どもとの出会いが実現できる場所でもあります。もちろん、帰国の子どもたちのためのキャンプではありますが、同時に私たち自身もこのキャンプに参加することで自分の生き様を問われることがたくさんありました。それがこのキャンプが二六年もの間、続いてきた最大の理由でもあると思われます。「また、来年も会おうね」と約束しながら子どもたちと別れました。

 このキャンプのためにご協力いただきました皆様に心からお礼を申し上げます。そして、このキャンプを運営してくださった三互会の皆様、実行委員の皆様、本当にありがとうございました。
  

 今年もこのキャンプのためのTシャツ販売に多くの方々の協力をいただきました。墨田では、三十分会で約五五万円の売上げがあり、カンパも四千円寄せられました。心からお礼申し上げます。
キャンプ実行委員会