ツユクサとオオボウシバナ

 ツユクサのことを徳富蘆花が「花ではない、あれは色に出た露の精である」と評したとか。 生い茂る緑の葉の間から青色の花びら、黄色の飾り雄蕊のコントラストは眼に美しく、「露の精」の名にそむかない風情があります。 特に、静かに降る雨に濡れている花姿は、見るものをはっとさせるほどです。

 近寄ってよくよく花を眺めると、青色の花びらにはさまれて、黄色の雄蕊がくるくると巻いている姿、なんとのいえないほどの可憐さとこっけいさがあります。 それだけにツユクサは淋しい花で「露の命」のようにはかなさを花の中に秘めた植物として多くの文学作品の中で扱われています。

 

 万葉集にも歌われてきた、古くより私達の生活に密着していた植物で、染料として花が用いられたりしています。 滋賀県ではツユクサの栽培品種であるオオボウシバナを畑一面に栽培し、京友禅の下絵書きの染料の原料として供給をしています。

 小説、短歌、俳句などの材料として身近かな植物であるだけに、雑草としてもやっかいな草で、取っても取っても尽きることなく庭の草むらで陣地を確保しています。 蚊に刺されながら草むしりをしていると、美しいけど憎らしい草と呼びたくなってしまいます。 しかし、緑の草の中に点々と青い絵の具を垂らしたようにツユクサの花が昨夜の雨が乾かぬのか、雫に濡れて花を開いている姿に接すると、

     朝の庭青とりどりの草の中に
             紫濡れし露草のはな        鈴木 金二

と、詠まれるツユクサを愛でてしまいます。

 ツユクサと栽培品種とされるオオボウシバナの花の姿を花の大きさ、形を比べてみてください。

                         うめだ よしはる

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