ツワブキやヤツデの花は、秋から冬にかけての季節に咲く花で寂しい花といっても
まだ明るさがありますが、ビワの花はどうでしょう。 茶色のうぶげに包まれて咲く
目立たない花です。 5ー6月に食卓に上がるビワは、初夏の味、さわやかで甘く、
果汁も多く美味しい果物ですが、今からの時期に花を咲かせ、寒い冬をじっと耐えて
結ぶ果物だと知りますと、来年のビワの味わいがまた格別というところでしょう。
ビワが日本の果実として今日の地位を得たのは幕末、中国(当時は清国)より長崎
に入港した船が食べられる部分の多いビワを持ち込み、その種が長崎県は茂木村で蒔
かれ、有名な「茂木ビワ」の誕生のきっかけになったとされています。
隣より伸びし枇杷の枝花つけぬ
寄りてただずめばよく匂うなり 平野 梶子
あれあれと花咲く枇杷をよく見れば
綿毛の萼をみなつけて咲く 桧野 陽七
ビワの木は庭に植えると大樹になり陰地をつくり、庭全体を陰気な雰囲気にするこ
とから庭木としては悪い話しが多く、例えば、庭にビワを植えると死人が出るとか、
「枇杷貧乏、柿金持ち」とか、ビワの木は住んでる人の精気を吸い取って大きくなる
とかいわれ、庭木としては喜ばれていないようですね。
それでも、食べた後の種を庭へ捨てたものが大きくなったのでしょうか、住宅街を
散歩しながら注意して眺めますと、ビワの木にずいぶんと出会います。 ビワの花を
ご覧になったことがない方は、散歩の折に気にしてご覧ください。
うめだ よしはる
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