百恵の唇 愛獣

1980年 にっかつ

キャスト:日向明子(楠茉莉)泉じゅん(五木洋子)村川めぐみ(村川ケイ)早川由美(夏明美)小林稔侍(大道)成瀬昌彦(南原)中田譲二(冬木)森洋二(田浦)織田俊彦(吉岡)

監督:加藤彰

500万円を楠茉莉に差し出すFミュージック社長の吉岡。「1980年度レコード大賞は7割方うちの夏明美に内定しています。しかし、後の3割は根回ししきれませんでした。一番の強敵は一城企画の五木洋子です。彼女を葬り去るには致命的なスキャンダルが必要です。一刻も早く突き止めてください」

料亭で会う五木洋子と洋子のマネージャーの大道と人気俳優の田浦と民自党会長の南原。「会長。私たちは九州に飛びますので」「ああ、忙しいのにすまなんだな」「それでは失礼します」席を立つ洋子と大道。田浦の手を握って微笑む南原。芸者に扮して様子を伺う茉莉。

撮影スタジオにいる茉莉にまた会ったねと言う大道。「君の名前は楠茉莉。人気タレントをスターの座から引き下ろす芸能界の仕置き人。トリックガールのやり手だそうだね」「あなたは大道正信。32歳。独身。一億人の娼婦・五木洋子を発見し育てた敏腕マネージャー」「お互い身元調査を」「やってたわけね」「嗅ぎまわってるのか。洋子と南原会長の関係を」「あんな関係珍しくないわね。大物政治家と芸能界のスター。スターは不滅よ。セックスのスキャンダルくらいで破滅しないわ」

洋子の曲なんか聞きたくないと雀荘で騒ぐ村川ケイ。「こいつの歌は聞きたくないよ」「ねえちゃん、洋子ちゃん、知ってるの」「知ってるなんてモンじゃないよ。一緒に番張ってたんだ。バカにしやがって。スマした顔をしやがって、洋子のヤツ、さんざん男とやりくるってさ。あたいもしたいよ。やりたいんだよ」「なんだ、この女、頭おかしいんじゃないの」ケイをぶん殴って雀荘から連れ出し、覚醒剤を注射する冬木。「ああ、気持ちいい。ねえ、抱いてよ」ケイを抱く冬木。

ケイからまた電話があったと大道に言う洋子。「今夜、500万欲しいって」「……」「ねえ。現金、手元にあるの」「なんとかする」「今晩のテレビ、どうする気?」「仕事は全部キャンセルだ」「そんな。今が一番大事な時じゃない」「そうだ。だから傷口をふさぐんだ」ケイからの電話に出る洋子。「金は揃えたわ。場所と時間を言って」場所はいつものところだと言う冬木。

バイクから降りて、30分後にいつものところで待っててと言う洋子に、今夜はタクシーを拾って帰れと言う大道。「どうして」「今夜中にやらなきゃならない仕事があるんだ」「……」「じゃ、用心しろよ」「待って」「どうした」「なんでこんなに親切にするの。五年前、私のしたことを知ってるのに」「殺したのはケイなんだろ。マネージャーが商売物をかばうのは当然じゃないか」

倉庫裏で冬木とケイに500万渡す洋子。「じゃあ、またね」「イモ。もう一円だって払うかよ」「何言ってんだい。あん時、顔見られたのはあんたなんだよ。あの変態警備員が病院であんたの顔チクって死んだって言うじゃない」「脅しがアキアキしたよ。行きたきゃ警察に行きな。喋ればお前も刑務所行きだよ」「ああ、上等だよ。あたいは失うものは何もない。洋子は違うよね。ありすぎるよ」「畜生」ナイフを振り回す洋子を制する冬木。「畜生。ぶっ殺してやる」「私を殺せるのかよ。私から金もらわなきゃヤクも買えないんだよ」「……」ケイに帰るぞと言う冬木。「じゃあ、洋子さん。また」「……」

家路につく冬木とケイの前に現れる茉莉。「なんだよ、お前」「……」「私は頭に来てるんだよ。やっちまいな」空手で冬木をぶちのめし、ケイの手首をつかむ茉莉。「さあ。一緒にドライブするのよ」横たわる冬木を見つめる大道。(楠茉莉。嗅ぎつけたのか)冬木の首を絞めて、川に放り込む大道。

ラブホテルにケイを連れ込む茉莉。「さあ、言うのよ。どうして五木洋子はあなたにこんな大金を」「知るもんか。そんなヤツ」ナイフを振り回すケイを抑え込む茉莉。「どうしても言う気がないのね」「どうする気だよ」「あなたの体に聞くしかないわね」「何をする気だよ」「やめろよ」「だまって」

茉莉のテクニックに翻弄されて絶頂に達するケイ。「さあ、言うのよ」「ゆすったんだ」「いつから」「二年前から」「五木洋子の秘密って何?」「高校で同級だったんだ。あたしたち、グレてて。覆面かぶって事務室に金盗みに行った。それを警備員に見つかって、洋子は覆面取られて、そいつに犯されそうにななった、あたいは金属バッドでそいつの頭を何度も」茉莉がシャワーを浴びている間にケイを絞め殺し、シャワーから出た茉莉の頭を花瓶で殴る大道。

南原に呼び出されて抱かれてきたと大道に言う洋子。「ねえ。もうこれ以上、あいつに払うのはイヤよ」「もうゆすりはない」「何をしたの」「聞くな。お前の知らないことだ」「そんな」「お前は田浦光一と結婚するんだ」「あんなホモ野郎。大嫌い」「お前はあらゆる栄光を独り占めにしてきた。最高の人気スターだ。引退する道は二つしかない。一つは死ぬこと。一つは結婚して幸せな家庭に入ると宣言すること」「南原先生も私を捨てるのね」「イヤ。最良の道を選んだんだ」「じゃあ、なぜ相手があんたじゃダメなの」「……」「ねえ、抱いて」「俺と寝ると不幸になるよ」「どうして?私、今まで一度も好きな人に抱かれたことがなかった。今が初めてなのよ」

「大学時代、俺の女がヤクザに強姦された。俺はそのヤクザを殺した」「その女の人は?」「別の男と幸せになってるはずだ」「……」「女ってそんなもんだろ。俺はそう信じてる男なんだ」「……」「会長は俺を拾って、ショービジネスの世界に入れてくれた。お前も会長に拾われて、俺に預けられた」「そんなこと今さら」「お前のスキャンダルがバレると、マスコミはお前と会長の関係まで穿り出す。絶対困る」「……」「芸能界は汚い世界だ。今年のレコード大賞は決まっている。それも3か月も前にだ。でもお前はそんな世界に何日もいなくてもすむ。俺はそうはいかないんだ」「何もかも南原先生の仰せの通りってわけね。私って一体何なの。あなたって一体何なのよ」

目覚めて、死んでいるケイと同じベッドの中にいることに気づき、刑事たちが踏み込む前にホテルから抜け出す茉莉。(私を眠らせたのは大道だった。私に濡れ衣を着せようってわけね)大道に電話する茉莉。「随分汚いことをするわね。覚えといて。殴られたら必ず殴り返す。私ってそういう女なのよ」

婚約発表記者会見を開く洋子と田浦。「五木洋子の名を汚さないように夫として頑張ります」「やっと女らしい私に戻れます。今日が人生最良の日です」料亭で会う吉岡と夏明美と南原。「先生のおかげで明美がレコード大賞を獲ることができました」「ありがとうございます」「明美。先生にお酌を」「テレビで見るよりキレイだね」「いやあ、受賞の時は泣きましてね。もっとも泣かないことには視聴率が上がりませんからな」早速明美の体を堪能する南原。

大道に電話する茉莉。「惚れた女も抱けないなんて、随分不自由な人ね」「……」「話があるの」茉莉を激しく抱く大道。「おい。トリックガールの武器はなんだ」「セックス」「惚れた男とやる時はどうするんだ」「いつも同じよ。今のあなたもね」茉莉のセックステクニックに翻弄される大道。「茉莉。お前は」「まだ最後の仕上げが残ってるわ」大道に酒を飲ませて、路地に連れ出す茉莉。酔っぱらった二人の若者に絡まれる大道。「おっさん、いい女連れてるじゃない」「俺たちにまわしてくれないかな」「なんだよ、その目は」「おっさん、やるのかよ」二人の若者にボコボコにされて死んでしまう大道。茉莉は無言で立ち去っていくのであった。

★ロロモ映画評

この映画が公開された1980年に日活は第一四半期は原悦子主演の「宇能鴻一郎の濡れて悶える」、沙貴めぐみ主演の「赤い暴行」、鹿沼えり主演の「修道女 黒衣の中のうずき」、森村明美主演の「女高生 危険なめばえ」、岡本ひろみ主演の「レイプハンター 狙われた女」、宮井えりな主演の「昭和エロチカ 薔薇の貴婦人」、志麻いづみ主演の「背徳主人の欲望」、沙貴めぐみ主演の「暴行儀式」、倉吉朝子主演の「スケバンマフィア 肉刑(リンチ)」、早野久美子主演の「団鬼六 少女縛り絵図」、宮井えりな主演の「ズームイン 暴行団地」、三崎奈美主演の「宇能鴻一郎のホテルメイド日記」、吉村彩子主演の「少女娼婦 けものみち」、日向明子主演の「新入社員(秘)OL大奥物語」と言った映画を公開。

第二四半期は紀ノ山涼子主演の「女子大生の告白 赤い誘惑者」、桐谷夏子主演の「おんなの細道 濡れた海峡」、竹田かほり主演の「桃尻娘 プロポーズ作戦」、麻吹淳子主演の「団鬼六 白衣縄地獄」、志麻いづみ主演の「山の手夫人 性愛の日々」、安西エリ主演の「女子大生 快楽あやめ寮」、日向明子主演の「若妻官能クラブ 絶頂遊戯」、鹿沼えり主演の「朝はダメよ!」と言った映画を公開。

第三四半期は佐々木美子主演の「若後家海女 うずく」、太田あや子主演の「女高生 夏ひらく唇」、宮井えりな主演の「宇能鴻一郎の貝くらべ」、風間舞子主演の「単身赴任 新妻の秘密」、原悦子主演の「看護婦日記 わいせつなカルテ」、風祭ゆき主演の「赤い通り雨」、倉吉朝子主演の「スケバンマフィア 恥辱」、畑中葉子主演の「愛の白昼夢」、風間舞子主演の「泣く女」、麻吹淳子主演の「団鬼六 縄炎夫人」と言った映画を公開。

第四四半期は亜湖主演の「ハードスキャンダル 性の漂流者」、鹿沼えり主演の「宇能鴻一郎の浮気日記」、宮井えりな主演の「セックスハンター 性狩人」、風祭ゆき主演の「妻たちの性体験 夫の眼の前で、今…」、原悦子主演の「クライマックス 犯される花嫁」、風間舞子主演の「のけぞる女」、太田あや子主演の「快楽学園 禁じられた遊び」、志麻いづみ主演の「セックスドック 淫らな治療」、麻吹淳子主演の「団鬼六 薔薇地獄」、畑中葉子主演の「後ろから前から」、日向明子主演の「百恵の唇 愛獣」と言った映画を公開したわけです。

ということでこの映画は1980年の最後を締めくくった映画と言うことになり、それにふさわしい映画かどうかはわかりませんが、主役の日向明子はロロモ好みの整った顔立ちをしており、やはりこういう映画はヒロインが自分の好みの女性のタイプでないかどうかでかなり感じ方が違ってきますが、そういう意味でこの映画は合格点となり、さらにロロモの好きな泉じゅんもほぼ主役と言う扱いで頑張っているので、ロロモはさらに満足できるわけです。

この映画は「百恵の唇 愛獣」と言うタイトルになっていますが、山口百恵は1979年10月20日、大阪厚生年金会館でのリサイタルで「私が好きな人は、三浦友和さんです」と、三浦との恋人宣言を発表し、1980年3月7日には三浦との婚約発表と同時に芸能界引退を公表。同年9月に刊行された自叙伝「蒼い時」は、発売から1か月で100万部を超えるベストセラーとなります。

1980年10月5日、日本武道館で開催されたファイナルコンサートでは、ファンに対して「私のわがまま、許してくれてありがとう。幸せになります」とメッセージを言い残し、現役歌手として最後のテレビ生番組出演は、10月13日放送の「山口百恵スペシャル ザ・ラスト・ソング」で、正式な芸能活動の完全引退は、10月15日のホリプロ20周年記念式典で、式典の後同ホテル内において午後8時半過ぎに引退記者会見が開かれますが、この会見はこの当日放送された「水曜スペシャル特番 山口百恵 今夜 旅立ち!」で番組の終わりに一部生放送され、これが現役最後のテレビ生出演となります。

11月7日と14日はTBS系列で山口百恵記念スペシャルドラマ「赤い死線」が放映され、11月19日には日本基督教団霊南坂教会で結婚式が行われ、同じ日に両面とも彼女の作詞であるシングル「一恵/想い出のストロベリーフィールズ」が発表され、12月6日には彼女の最後の主演映画「古都」が公開されたわけです。

ということで、1980年下半期の芸能界は山口百恵引退一色に染まっていましたが、その最後を締めくくるのが12月26日に公開されたこの映画になるかと思われますが、なぜこの映画が「百恵の唇 愛獣」と言うタイトルになったかというと、主演の日向明子が「ロマンポルノの山口百恵」と呼ばれたことにちなんでいますが、その山口百恵の役を演じているのはどうやら泉じゅんと言うことになりそうですが、日向明子もどうやらこの映画でロマンポルノを引退と言うか卒業したようで、1980年と言う年はこの二人にとってけじめをつけた年になりましたが、ロロモがけじめをつけたのは50歳で会社を辞めた2011年になるのかなと思うのでありました。(2019年7月)

得点 69点

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