モグラ人間の叛乱

1956年 アメリカ

キャスト:ジョン・エイガー(ベントレー)ヒュー・ボーモント(ベラミン)ネスター・ペイバ(ラファージ)フィル・チェンバース(スチュアート)シンシア・パトリック(アダド)

監督:バージル・ボーゲル

発掘した石板について話し合う考古学者のベントレーとべラミンとラファージとスチュアート。「この地層はどうなっている」「楔形文字だがこの層にあるわけない」「あり得ない?考古学では全てが可能性があるんだ」「大洪水時代より下の層から発見されたと言うことは、少なくとも5000年前のものだぞ。人類最古のものだ。銘刻はどうなっている」「シュメール語だな。寺か公共施設への奉納品だ」「ベントレー。翻訳を」

翻訳するベントレー。「私、シャルは王の中の王。シャルアドの息子。ここで切れてる」「ジョージ・スミスの発見したギルガメッシュの石板のことを覚えているか」「地球上から忽然と姿を消した王朝の伝説が描かれている」「そうだ。その王朝の王の名はシャルだと」「ベントレー、残りの翻訳を」

翻訳するベントレー。「悪意を持ってこれを元の場所から剥がしたり、破壊する者へ告ぐ。これは私の署名つき証明書である。イシュタルによりその者が非難されんことを。その者の名や子孫が破壊せんことを」そこに地震が発生し、石板は割れてしまう。

話し合うベントレーたち。「明日、北に新しい堀割を作らねば。古いのはだいたい落盤した」「石板を抜いたから、イシュタルの女神が怒ったか?」「悪意を持って外した者とあった。我々に悪意があるか?シャル王朝を忘却の彼方から救出するだけだ。それが考古学者」「考古学者は死んだ王族の低賃金で働く広告代理人さ」そこに現れる羊飼いの少年。「ランプ、見つけた」「どこで見つけた」「クイタラ、高いとこ」呟くラファージ。「クイタラは震源地じゃないか」

ランプを調べるベントレーたち。「この地域だけにあるコケの一種だな。クイタラの岩場だけに育つ。だが少年がこれを見つけた場所はもっと高い所だ」「地震でプラトーにまで転がり落ちたんだろう」「だがそもそもクイタラにこれがあったのは解せん」「ベントレーなら答えられるかも」

答えるベントレー。「これは舟形のオイルランプだ。男女と様々なつがいの動物が彫刻されている」「シュメール版ノアの方舟か」「そうだ。史実として洪水が証明されたわけだ。しかしシュメール版とは。碑文によると彼らも洪水に会ったと。私、王の中の王シャル。シャルアドの息子は、船に乗り込み洪水から脱した。家族、親族、職人、奴隷。それに野獣。皆乗せられて、方舟を家とし、波に揺られた。そしてイシュタルの女神のそばの雪の地に辿り着いた」

山頂かと呟くラファージ。「シャル王朝はクイタラで大洪水を免れたのか」「聞いたことないぞ」「当然さ。クイタラ山頂に人類がいると誰が思う?」「我々の仕事だ」「無茶だ。雪山は危険だ」「危険は覚悟だ」

吹雪や雪崩に悩まされながら、クイタラ山頂に到着するベントレーたちはシュメール寺院の遺跡を発見する。「わからんな。普通、寺院の近くに町があるはずなのに」「5000年前だからな。なくなるには十分な時間だ」「イシュタルの女神の頭の像だ」「碑文を思い出せ。そしてイシュタルの女神のそばの雪の地に辿り着いた」「スチュアートに見せよう」

しかしスチュアートは地割れの中に落ちてしまう。「底が見えない。降りるしかない」ベントレーとべラミンとラファージは地割れの中を落ちていき、スチュアートの死体を発見する。そこに落盤が発生し、地下に閉じ込められる三人。懐中電灯であたりを照らすベントレー。「自然にできた洞窟じゃないな。堀削されている。きっと出口はあるはずだ。探そう」「トンネルだ」「行こう」

トンネルを出た三人は地下遺跡に出くわす。「どうやってこの光を」「岩に含まれる化学物質だろう」「何か科学的で合理的な説明がつくはずだ」「イシュタルの女神の頭の像だ。ここは町だ」「溶岩の上なら町も地震が来るまでなら十分耐えうる」「イシュタルの寺院は山の上に建てられた。これはシャル王朝の終焉か。洪水から逃げたら今度は地震に見舞われた。ノアの子孫は生き延び、イシュタルの子孫は死んだ。ここから出たら歴史を書き換えなくてはならんな」「ここから出られるかな」「15時間歩きっぱなしだ。少し休もう」横になって眠りにつく三人は闇獣によって地底の中に引き込まれてしまう。

洞窟に閉じ込められた三人は、守衛に宮殿に連れていかれる。王に邪悪な者たちですと言う摂政。「闇獣に囚われておりました」「彼らをこちらへ」お前たちは誰だと聞かれ友好的な者ですと答えるベントレー。「見た目は違えども友達だと」「この世界以外に世界はないはず。我々が住み始めて以来、他の世界とは天国のみだ。我々が雷と火のせいで追放されるまでは。ここが我々の世界だ。天国には神が住むだけだ。あなたたちが神と仰るのか」

王と打ち合わせして、三人に言い渡す摂政。「王の名において私が判決を通告する。あなた方が悪なら破滅。人間だと言うなら我々の世界では協力できない。いずれにせよ、あなた方は死ぬ運命にある。イシュタルの炎に焼かれて死ぬのだ」大暴れして洞窟の中に逃げ込む三人。追う守衛たちに懐中電灯の光を浴びせるベントレー。「光だ。彼らは光に弱い」

ショック死した守衛を調べるベントレー。「色素沈着が全くない。太陽や紫外線がないとアルビノになるのだ。瞳孔の開きは低光量に適している。光学神経は恐ろしく過敏なはずだ」「それで光に耐えられないのか」「どうやって生きてるんだ。食糧は?精神への影響は?光の世界の記憶はないのか。謎が多すぎる」「なぜ我々を殺そうとするのか」「仕方ない。この世界以外があると理解させてしまった」

三人は洞窟を進み、地底人が闇獣を酷使する使役場に出くわす。「誰だ」「しまった、見つかったぞ」「闇獣。捕まえろ」パニックになったラファージは闇獣に襲われて死ぬ。ラファージを埋葬し、地下遺跡に戻るベントレーとべラミン。そこに現れる摂政。「王の名において光は使用しないように。友人として来た」「何の用だ」「あなた方はイシュタルの神聖な炎を持っていた。ゆえに王は聖なる使者として認めたのだ。友人として認め、宴に招待するようにと」「光栄です」「もう一人は?」「イシュタルにより天国に呼び戻された」

ベントレーに聞く王。「なぜイシュタルはそなたたちをこの王国へ?」「ここに必要なものがあれば、イシュタルがお助けできると」「望みは祈りから知るであろうし、生贄も捧げている。全てを見通す目で見ているのではないのか」「我々が目なのだ」「ではわかるな。ここはそなたたちの家だ」

宴が始まり、巨大キノコを運ぶアダドはベントレーに見とれて、巨大キノコの入った皿を落としてしまう。アダドを鞭打てと命令する王。アダドを鞭打つ兵士の手をつかむベントレーに邪魔をするなと言う摂政。「王の意志は法だ」「イシュタルの炎こそが法だ」ベントレーに聞く王。「彼女に対して特別な思いが?」「ああ」「では、そなたのものだ」「神は人間を取引させたいと思ってない」「人間?彼女は奇形だ。黒を持って生まれている」「王のような人間は何人いるのだ」「150人」「少ないな」「聖なる食がまかなえる最大数だ」「人口が増えたら?」「殺す。イシュタルの炎により生贄に。その手にある物のように」

宴が終わり、アダドの家で話し合うベントレーとべラミン。「闇獣とはなんだ」「5000年に渡る奴隷生活で、計画的に退化させて野獣にまでさせる」アダドに君は我々に似ていると言うベントレー。「我々の世界に戻してやろう」「主が言うには闇の向こうは何もないと」「闇の世界の上に光の世界があると聞いたことは?」「いいえ」「光の世界には私や君のような姿の人々がたくさんいる」「天国のお話ですよね」「確かにそうかもしれんな」

神官たちと話し合う摂政。「王は弱味を見せ、誤った判断を。彼らには神の力があると信じた。神の力は我々が司る者だ。奴らを野放しにしておくと、我々の立場が危うくなる」「彼らに神の力は?」「ない。人間だからだ。腹が減ったら食べる。疲れたら寝る。守衛が襲った時、人間独特の怯えが顔に現れた」「だが天の力を持っているのでは?」「彼らが持っているのは、あの筒だ。あれさえあれば誰でも使えるんだ。あれが天の力なら我々が持ったっていい。闇獣も民もあれで意のままにできる。そう、王でさえも。侵入者からあの筒を奪うのだ」

出口を探すベントレーとべラミン。「わからないな」「諦めてシュメール市民権を申請しないか」「キノコが苦手なんだ」「文句言うな。特にお前は定住しては?」「なぜ私が」「アダドがいる。将来、考古学者がこの世界をまた発見したらどうなる?バーバード訛りのお前の子孫をどんな理論で展開するのか。イシュタル寺院の前では野球を」「チームイシュタル。リトルキノコリーグ優勝か」

君は美しいと言うベントレーにまさかと言うアダド。「私は奇形なの。司祭が言ってたわ」「まあ、彼らから見ればそうだろう、だが君は心も優しさに溢れている。祖先への愛がそこにある」「愛って何?」「もし誰かが傷ついて、それで君が傷つく。誰かが喜び、それで君が喜ぶなら、それが愛だ。もしここから君を光の国に連れていくことが出来たら。一緒に来てくれるかい」「ええ」

ベントレーとべラミンに守衛長が闇獣に殺されたと告げる王。「反逆の可能性が」「我々のせいだと言うのか」これ以上の流血は無用だと言う摂政。「闇獣が必要なのだ。その筒があれば、闇獣を意のままにできる」「奴隷に罰を与える片棒を担ぎたくない」

歯向かいましたと王に言う摂政。「彼らは悪です」「イシュタルの使いだ」「そんなことはありません。彼らからあの魔法の筒を取り上げたら、我々に力が宿るでしょう」「ならん。イシュタルを試すような真似は。守衛に闇獣を捕らえさせ、死ぬまで鞭打ちにさせろ」闇獣を鞭打つ守衛を、懐中電灯で追い払うベントレー。「電池が切れた」「我々もか」「持ってさえいれば、脅しには使えるだろう」

鎖につながれてる闇獣を自由にしようと言うベントレーに大丈夫かと聞くべラミン。「奴らは我々を襲ったぞ」「あれは守衛の命令だった」闇獣を自由にするベントレーとべラミン。何か言いたそうにして去って行く闇獣。「喋ることはできないが心はあるんだ。もしかしたら彼らが助けになってくれるかもしれん」

摂政に我々が罪深いからイシュタルが顔を背けたのだと話す王。「あの者たちが罪人なので、我々が代わりに空腹に。謀叛者です。不従順を扇動しているのは彼らだ。そのせいで闇獣は食糧を作り出しません」「足りないなら人口を減らせばよい。生贄として捧げれば我々は生きられる。生贄の宴を行うのだ」

生贄の宴が行われ、黒い布を頭からかぶった摂政は、イシュタルの扉を開ける。宮殿に光があふれ目を背ける神官たち。イシュタルの部屋に裸で入って行く生贄たち。イシュタルの扉を閉める摂政。数時間後、暗闇となったイシュタルの部屋から、黒焦げになった生贄たちを出す摂政。

ラファージの死体が見つかったと王に言う摂政。「神の使者は天国に行ったようです。彼は我々同様命に限りがあった。侵略者への対応が甘いと、彼のように我々も死にます」「わかった。奴らを殺せ」毒の入った乾燥キノコを食べて、昏睡状態となるベントレーとべラミンを捕まえる守衛。懐中電灯を手にして陶酔する摂政。使役場に逃げ込み闇獣とともに土の中に消えるアダド。

生贄としてイシュタルの部屋に放り込まれるベントレーとべラミン。そこに闇獣の大群が現れ、地底人を襲撃する。恐れることはありませんと王に言う摂政。「我々にはこの炎が」しかし懐中電灯は点かず、地底人は闇獣に皆殺しにされる。勢いに乗って闇獣はイシュタルの扉をたたき壊すが、光を浴びて逃走する。

イシュタルの部屋に入り、ベントレーとべラミンと再会するアダド。「日光だ。君の仲間には死の光だが、我々には生の光だ。君たちの祖先は大昔にこの世界から来たんだ。君は生き証人なんだ。彼らにはわからなかった。だから奇形と」「暖かい。美しいわ。一緒に行っていいのね」断崖をよじ登り、シュメール寺院の遺跡に辿り着くベントレーとべラミンとアダド。しかしそこに地震が起こり、地底王国への道は遮断され、アダドは塔の下敷きになって息絶えるのであった。

★ロロモ映画評

この映画は地底を舞台にしたアメリカB級SF映画でありますが、地底人が光に弱いと言うのは定番と言えますが、ここまで懐中電灯が活躍する映画はそうないのでは思われますが、ロロモ的に懐中電灯で思い出すのが、平井和正の小説「狼の紋章」でヒロインの女教師の青鹿晶子がチンピラたちに襲われ、興奮したチンピラたちが青鹿の下半身を懐中電灯で照らすくだりでありまして、あの本を読んでから40年以上も経っているのに、懐中電灯と言えば、そのことを思い出すのはどうもなあと苦笑いしてしまうわけです。

この映画では地球人、モグラ人間、地底人、奇形人の4種類の人間が出てきますが、もっとモグラ人間に活躍してほしかったと思いますが、モグラ人間が地球人の頭に袋をかぶせて土の中に引っ張り込むシーンはなかなかよくできていると感心しますが、そういうモグラの特性を生かしたモグラ人間の活躍をもっと見たかったなと言う気がしたわけです。

よくモグラは地中に住んでいるので「太陽光線に当たったら死ぬんじゃ」と言われますが、それはどうやら誤りで、地上はめったに出てこないため「太陽に当たって死んだ」と誤解され、死んでいるのは、仲間との争いで地上に追い出されて餓死したものと考えられ、モグラは光を認識しないため、明るいところで飼育することも可能だそうです。

要するにモグラはほとんど地中に住んでいて、ほとんど視力ゼロなので太陽の光があろうとなかろうと全くわからないと言うことですが、視力の悪い動物が地中動物になるのは、地上で生きていくには生存競争が厳しい落ちこぼれ動物が何とか生き抜くために地中に生きると言う術を身に着けますが、それに従い視力をどんどん失っていくと言う結果になり、これも一種の進化論なのだろうと天国のダーウィンに確認したくなるわけです。

地中に住む動物と言えば、代表的なものはアリやケラやセミの幼虫といったいわゆる昆虫類やミミズなどを思い出し、哺乳類ではモグラが代表でしょうが、他に地中に棲息する哺乳類にアフリカのエチオピアやケニアに住むハダカデバネズミがいますが、この動物は平均80匹もの大規模な群れを形成し生活し、哺乳類では数少ないハチやアリのような真社会性の社会構造を持つことで知られているわけです。

群れの多くを占める非繁殖個体のうち小型個体は穴掘りや食料の調達を、大型個体は巣の防衛を行い、群れの中でもっとも優位にある1頭の繁殖メスと、1頭または数頭の雄のみが繁殖に参加し、年に4,5回に分けて50匹以上の幼獣を産みますが、繁殖メスが死んだ場合は複数のメスの性的活性が活発化し、そのうち1匹のメスのみが急に成長し新しい繁殖メスになるわけです。

ということでこのハダカデバネズミは哺乳類のくせにアリのような暮らしをしている摩訶不思議な生き物でありますが、それは地中と言う特殊な環境に暮らしているうちにアリのような暮らし方が地中では似合っているということでこういう進化を遂げたのだろうと、天国のダーウィンに確認したくなりますが、人間社会でこういう繁殖メスがいたら面白いと言うか怖いと言うかそんな気がして、いろいろな意味で優れた女性なら一人の男と結ばれるのではなく、芸術家やアスリートなどさまざまなタイプの男性の子供を残すと言う生き方もありではないかと思ったりするのでありました。(2017年12月)

得点 71点

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