もういちど

2000年 オーストラリア

キャスト:ジュリア・ブレイク(クレア)チャールズ・ティングウェル(アンドレアス)テリー・ノリス(ジョン)ロバート・メンジス(デビッド)マルタ・デュッセルドープ(モニク)

監督:ポール・コックス

<親愛なるクレア。最近になって君が近くにいるのを知った。連絡を取りたいと言う思いがそれ以来強くなっていく。愛し合った日々から40年以上もたった。何もかもすぐ忘れら去られる。だが共に過ごした君の姿は生涯を通じて私の心を去ったことはない。君に会いたい。アンドレアス><親愛なるアンドレアス。お手紙感激です。様々なことはあったような、なかったような。是非会いたいわ。でも、もう3人の孫のいるおばあちゃんよ。愛を込めて。クレア>

40年ぶりに再会するクレアとアンドレアス。「久しぶりなのに僕らは変わっていない」「不思議だったわ。あなたのような優れた音楽家のお父様が、あんな思いやりのない人なんて」「もう水に流そうじゃないか。君は英国かと。ケントかサリーあたりの田舎にいると思った。騒音が嫌いだから」「仕方ないわ。運命だもの」「個人の意思は?」「もちろんあるけど」「それでご主人はどんな人?」「いい友達よ。結局それが大事だわ。楽しかったわ。ありがとう」「私も楽しかった」

<クレア。逢えてうれしかった。君は今でも生き生きしていた。鏡で自分の顔を見た。シワだらけで他人のようだ。君の姿はまさに君そのものだった。もう一度会いたい。人生は短いのだから><アンドレアス。あなたは優しいロマンチストね。でも現実に持ち込むのはやめましょう。家族を傷つけるには年を取り過ぎているもの。あなたを愛したことが私の人生を変えた。けれど昔に戻れない。愛しているわ。でもわかってほしいの>

娘のモニクにニックは元気かと聞くアンドレアス。「元気よ。しっくりいかないけど。彼、たまに家にいても疲れてるの。いつも仕事ばかり。ところでお医者様はどこが悪いって?」「別に。気のせいだと」人生は日々の繰り返しねと言うモニク。「毎日大丈夫な振りをして、心の中で死んでいる人ばかり。わずかな思い出。そして何事もないように生き続ける」

「何が起きればいい」「さあね。生き続けるのよ」「我々には思い出がある」「どの世代にもあるわ」「思い出とは?どれが楽しく、どれが悲しい思い出か。どの時点で過去の記憶が思い出になる?昨日のことは思い出か?」「なんでも複雑に考えるのね。過去はどうでもいい。今が大事よ」「そのとおり。今が大事だ」

アンドレアスの妻の墓地の移設に立ち会うクレア。「亡くなって長いの?」「もう30年になる。随分昔だ」「なぜ立ち会ったの」「規則で動かせないんだ、勝手にはね。妻は美しい女性だった」「愛してたのね」「そうだ。愛してた」今夜は一緒にいてくれるかとクレアに聞くアンドレアス。「いいわ」「ありがとう」40年ぶりに愛し合うクレアとアンドレアス。

クレアに昨夜はどこに行ったと聞く夫のジョン。「友達のところに出かけたわ」「誰?」「……」「大昔から夫婦なんだ。秘密はよそう」「そうね。言うわ。昔の知り合いとベッドをともにしたの」「おいおい。何が言いたいんだ」「昔の友人と寝たのよ」「どうだった」「何が」「あっちの方だよ」「信じないのね」「当たりまえだろ」「事実なのよ。なぜ受け入れないの」「受け入れる?」「私たちはいつしたの」「何を言い出すんだ」「20年も前でしょう」「出かけるよ。帰って来てから話そう」

息子のデビッドに電話するジョン。「どうかしてる。診てやってくれ。息子としてでなく医者としてだ。心配なんだ。うつ病じゃないかな」

お前は初恋を覚えているかとモニクに聞くアンドレアス。「まあね」「どんな気持ちだった」「辛かったわ」「実はまた恋をした。初恋の人にだ。今度は辛くない」「彼女も恋してるの?」「彼女には難しい事情が。だが私を愛してる」「我を忘れないで。地に足をつけるのよ」

事実なのかと言うデビッドに立場が逆ねと言うクレア。「私が16歳の娘で監視されてるみたい」「信じられない」「こんな作り話をすると思う」「じき70歳だよ」「わかってるわ。それも考えたの、でも関係ないわ。夫婦の営みがあれば別だけど」「父さんは信じない」「父さんの浮気を覚えてる?何とか許そうと努力したわね。私はずっと信じなかった」

「20年も前のことだよ。どうする気?」「自分でもわからないわ。お父さんはずっと変わらないわ。いつも優しくて非の打ち所がない。でもバカねと思える部分も必要なのよ。私を必要としてほしいの。女はそういうものよ。不倫なんて考えなかったの。でも昔愛した人が奥様のお墓の前で泣き崩れたのよ」「……」「簡単に判断しないで。従順なばかりでは大事なものから目を背けることになるわ。女だった男と変わらないのよ」

私はクレアを愛していると言うジョンに聞きたいことがあると言うデビッド。「最後に寝たのはいつ?」「患者じゃないぞ。何の関係がある。私の年でそんなことが」「母さんは?」「母さんは心臓が悪いんだ」「意外に丈夫だよ」

45年もお前と結婚しているとクレアに言うジョン。「医者に診てもらえ」「息子に診てもらったわ」「まったく。自分の姿を見ろ」「……」「どこへ行く」「放して。出て行くわ」アンドレアスに今晩だけ泊めてと頼むクレア。「いいとも。ホテルに行こうか」「ここにいたいの」「娘がショックを受けるかも」「私を愛してないのね。愛していればここに」「興奮してるね。明日にでも」「明日なんてないの。今夜泊めなければ二度と会わないわ」

クレアは愛人のところに行ったとデビッドに言うジョン。「あの年で恋だと?くだらん」「寂しがってたのさ。気づいてたろ」「いつから?寂しいことなんかあるか。私がずっといたからな。どうかしてる。急に変わってしまった。私は変わらんのに。普通は変わらんよ」「でも母さんが心の内を話すのは初めてだろ。違うかい?」

クレアを親切にしてねとアンドレアスに言うモニク。「素敵な人よ」「お前にそう言われると嬉しい」昨夜は悪かったとアンドレアスに謝るクレア。「愛しすぎるのもよくないわ。モニクはいいお嬢さんね」

主治医から末期がんを告げられるアンドレアス。「あとどれくらい生きられますか」「難しいですね。最近では何でもありえます」「妙な話ですがホッとしました。死ぬなら大人らしく逝きたい」「来週入院して検査を」教会に行くクレアとアンドレアス。「まだ教会の鍵を持っている。パイプオルガンを弾いていた。クビになるまでね」「なぜクビに」「女王陛下の誕生日に英国国家を拒んだ。泊まっていかないか」「夫が心配するから帰るわ」

私が悪かったとクレアに言うジョン。「やり直せないか。愛しているよ。ずっと愛してた」「愛してると言ったのはこの30年で初めてね」「年をとって疲れてる。突然気づいたよ。私の人生は」「もういいわ」「君を失いたくない。君との生活はあまりに快適すぎた。何年も身勝手に過ごしてしまった。安全な気がして」「安全って?」

「家庭があることだよ。くつろげる」「それはその通りよ。私が言わないと気づかないのね」「知る権利がある。相手は誰だ」「30年若かったら彼と再婚してたわ」「なぜこんなに苦しめる。あれから眠れない」「嫉妬ね」「よせ。この年で」「年は関係ないわ」「人生の最後にこれではあんまりだ」

入院したアンドレアスを見舞うクレア。「ただの検査だ。心配することはない」「何の検査なの」「健康診断さ」「なぜ黙ってたの」「夕食までには戻れると思って」死には2種類あると言うアンドレアス。「肉体の死と知性の死だ。肉体の方は心配してない。怖いのは自我の死だ。大切な思い出を集めてきた心が死ぬ」「大切な思い出?」「愛着だよ」

「私もその一つ?」「そうだよ。でも君の存在が生も死も受け入れさせてくれる」「生と死は結局同じものなのよ。私の年になればわかる」「君は年下だ」「ええ。でも女は10年先を行ってるの」病院を出たクレアはジョンに何をしてるのと聞く。「尾行した。彼は病気か」「ジョン。構わないで」「君は間違っている」「あなたはみっともないわ」

医者に人工肛門は嫌だと言うアンドレアス。「放射線治療も化学療法も私向きじゃない」「ご家族のためにも」「末期ガンに何をしろと」「まだ可能性があるんですよ」「いつかは死ぬわけだ。だが自分のままで死にたい。自分で選択し、自分のままで逝きたい。今また激しい恋をしている。2度目だ。同じ女性に2度も恋をした。これで生と死を分かつことなく生きられる。わかるかね」「いいえ。あまり」

なぜ黙ってたのとアンドレアスに聞くモニク。「治療を拒んで。私は怒ってるのよ」「言っても仕方ないと」「クレアには」「まだだ」「話すべきよ」「言えない」

帰って来たんだねとクレアに言うジョン。「もう一回チャンスをくれ」「チャンスは自分で掴むのよ。あなたは決して心を打ち明けなかった。こうなって初めて口を開いたのよ。変化がなければずっと元のままでいたでしょう」「どこへ」「彼の様子を見に」「ダメだ」「それなら出て行くわ。止めても無駄よ」

途方に暮れるわとアンドレアスに言うクレア。「どうしたらいいか」「若いころはよくそう感じたものだ。特に君を失ってから。一晩中、夢想しなから起きていた。あの時と違い、先は短い。今は満足している」「過去を悔やむ?」「あれはあれでよかった」「よくないわ。私を取り戻そうとしなかった。毎晩来るのを待ってたのに。どんなに私は惨めだったか」

「まだ人生を知らず、父に黙って従った」「愛してないのね。昔のようには」「その時々で愛の形も違う。今は深く純粋で贅肉を削ぎ落した愛だ。人は何年もかけて愛から苦痛を除こうとする」「そんな考えで私を愛せるの」「クレア。愛しているよ。前よりずっと献身的に。単純に正しく」

女はわからんとデビッドに言うジョン。「お前はわかるか」「わかる必要はない」「どういうことだ」「徹底抗戦かい」「違うよ。昔は気になったものだ。株のこと。クラブ・愛車・抵当権・利率。そういったものがな。今は母さんのことばかりだ。心配だよ」「人間らしくなった」「まったく身勝手だったな、私は。この先、どうなるか」教会でアンドレアスのパイプオルガンを聞きながら、あの世に旅立つクレア。

葬儀に参列したアンドレアスにクレアからの手紙を渡すデビッド。<私はごく普通に生きてきたわ。でも死が近づいていたのは知っていた。心臓がもたなくて。再び花開くために皆を傷つけた。お願い、許してね。あれしか生きようがなかったの。幸せになる唯一の道は皆を全て愛すること。この世を愛すること。単純だと言うのは間違いよ。私は二人を別の形で愛した。私の愛はあなたたちとともに。私のために幸せになって>

★ロロモ映画評

<親愛なるクレア。最近になって君が近くにいるのを知った。連絡を取りたいと言う思いがそれ以来強くなっていく。愛し合った日々から40年以上もたった。何もかもすぐ忘れら去られる。だが共に過ごした君の姿は生涯を通じて私の心を去ったことはない。君に会いたい。アンドレアス><親愛なるアンドレアス。お手紙感激です。様々なことはあったようなかなったような。是非会いたいわ。でも、もう3人の孫のいるおばあちゃんよ。愛を込めて。クレア>

この映画は老人の恋愛と言うこの高齢化社会でかなり重要と思える問題を取り上げていますが、やはりこの問題はなかなか難しい問題だなあと言うことを思わせる作りになっておりまして、見終わった後は何ともいえない感慨が残り、一番生臭いテーマとして老人の恋愛にセックスが必要かと言うことでありまして、ぶっちゃけた話、何歳まで人間はセックスしてええんじゃあと言うことになるわけです。

この映画で70歳近いクレアとアンドレアスはセックスをしますが、クレアの方はもう閉経していると考えられますが、それでも女はセックスが必要なのかと思ってしまい、男性の方は勃起しなければセックスできないと割り切れますが、女性の方はどうなんだろうと考えてしまい、この老人セックス問題はどんどん高齢化が進むにつれて真剣に考えなければいかんのではとロロモは思うわけです。

あと老人恋愛は若者恋愛と違って未来がないと言う現実があり、だからそんなものをしても意味がないと言うのが一般論ですが、老人が恋愛するのは間違いではなく、それによって生きる活力が生まれるから明らかにいいことでありますが、それがセックスの問題が絡むとなんだかダメな話になってしまい、要するに心と心の結びつきのような教科書的な恋愛が望まれるわけです。

でも老人が燃える恋をしてもよく、それがセックスに結び付くのは当然の帰結でありますが、この映画のクレアとアンドレアスのような関係はやはり異常なのかともロロモは思い、クレアとジョンのように50歳を過ぎたらあうんの呼吸夫婦になるのがベスト夫婦なんだろうと思いながらも、クレアも間違ってないとも思われ、この映画はこの難しい三角関係に答えを出すことなく、クレアを殺して、いずれアンドレアスも死んでいくという逃げを打っていますが、それが老人恋愛の運命だと言うメッセージでもあるようにも考えられるわけです。

かように、なかなかこの映画はロロモにいろいろ考えさせてくれますが、ロロモが70歳になった時、同年代の女性に肉欲を感じることがあるのだろうか思ってしまい、現在では同年代の女性にそんな感慨を持つことがないので、いわんや70歳をやと言う気もしますが、その年齢になるとまた違った心境になるのかなとも思ったりするのでありました。(2015年12月)

得点 78点

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