悶え

1964年 大映

キャスト:若尾文子(上田千江子)高橋昌也(上田庄一郎)川津祐介(石川)江波杏子(みつ子)多々良純(寺田)藤間紫(白木須磨子)滝瑛子(しづ子)

監督:井上梅次

上田庄一郎と結婚した千江子は期待と不安な気持ちで新婚旅行に向かうが、庄一郎から女を抱けない体と告白され動揺する。「一昨年の交通事故で背骨の神経をやられて、男の神経がダメになったらしいんだ。医者が治ると言うもんで式までに良くなると思って婚約したんだがやっぱりダメだ。あなたの魅力で失ったものを何とか取り返そうとしたんだが。どうか許してください」

「そうでしたの。私は嫌われたので、あなたに愛されないかと」「大間違いだ。僕はあなたを愛している。治るまでは式を延期しようと何度も思ったけど、医者が治る可能性があると言ったんで。それに僕はどんなことがあっても、あなたを人に渡したくなかった」

嬉しいわと言う千江子。「あなたが私をそんなに思ってくれるなんて。あなたは女の気持ちがわからないかもしれないけど、私はそんなことだけ求めたりはしませんわ。そこが男と違うところですわ。体の関係だけが夫婦の関係じゃありませんもの。治るんでしょう、その病気は」「医者はそう言ってくれてます」「じゃあ二人の力で治しましょう。私たち夫婦なんですもの」「千江子さん」「そして美しい夫婦になりましょう」「ありがとう」

朝の散歩がてらに温泉プールに行った千江子は高校の同級生のみつ子と出くわす。「しばらくね」「卒業以来かしら。お一人?」「いえ。主人と来てますの」「あら、ご新婚?」「ええ。あなたは?」「私はリクエーション。結婚しそびれちゃったの」「まあ、そんな」「あとで遊びに来ない?本館の3階なの。この連中と一緒なの。みんな面白い人ばかり。いらっしゃいよ」「ええ、伺うわ」「ハズも連れていらっしゃいね」

散歩から戻った千江子に君は逃げずにいたんだねと言う庄一郎。「いやだわ。冗談でもそんなことを言っちゃ」「本当にありがとう」庄一郎は千江子にキスをしようとしてやめる。「いけないの」「キスをすれば君はそれだけでは済まなくなる。僕はそれが怖いんだ」みつ子のことを庄一郎に話す千江子。「ぜひあなたと遊びに来てと」「僕は遠慮しよう。留守番役の夫の気持ちを満喫したいんだ」

仲間たちに千江子を紹介するみつ子。お酒をどうぞと言う石川に私は飲めないと言う千江子。「ダメですよ。この部屋に来たら、飲んで羽目を外しなさい。現実の鬱憤を忘れるためにね」あなたは新婚旅行に期待外れですねと千江子に言う石川。「でなければ、この部屋に来るはずありませんから」「私、帰ります」「帰しませんよ。僕はあなたが好きになった」

私は結婚が馬鹿馬鹿しいと思うと千江子に言うみつ子。「男女の仲なんて本能さえ満足すればそれでいいんじゃない」「でも夫婦には愛情があるわ。だから結婚の価値があるんじゃない」「そんなの惰性よ。千江子、人間は心のままに生きればいいんじゃない」

遅くなってごめんなさいと言う千江子に、君はやっぱり後悔してるんだろうと言う庄一郎。「僕と結婚したことを。だからここに戻ってくるのがイヤだったんだ」「まあ、そんなつもりじゃ」「千江子」庄一郎は千江子を抱こうとするが、やっぱりダメだと苦悶する。「やっぱりダメだ。あああ」「ねえ、あせっちゃいけないわ。治るまでお互いに理性的に暮らそうって決めたはずよ」「だから怖いんだ。君を失うことを」「そんなこと。愛してなかったら、私は逃げてますわ。ねえ、バーにでも言って冷たいものを飲みましょう」

バーで庄一郎に声をかける石川。「課長」「なんだ。君も来てたのか」「休暇を取ったものですから」「一人?」「いや、友達と」「会社の石川君だ。家内だ」「初めまして。いつも課長にはお世話になっております。このたびはおめでとうございます」「まあ、一緒に飲もう」「奥さんと踊っていいですか」「うん。いいよ」「お願いします」

ブランデーを飲みながらやきもきする庄一郎。「ほらほら。ご主人が妬いてますよ。内緒で時々会ってください」「まあ、そんな」そこに現れる須磨子。「あなた、どこに行ってたの。宿を探すのに3日かかりました」「紹介しましょう。叔母の白木須磨子。ビューティサロンを経営しています」「ああ、あの有名な美容評論家の」「しょうがない甥なんですのよ。私に黙ってしょっちゅう家を空けたりして。さあ、いらっしゃい」

僕は自分の体に希望が持ててきたと千江子に言う庄一郎。「まあ。ほんと」「僕はさっき君が石川と踊ってるのを見てたまらなかった。あのような青年と恋をするふりでもしてくれたら、きっと欲望が駆り立てられて治ると思う」「まあ、そんな」

千江子に医師の寺田を紹介する庄一郎。「奥様。旦那様の病気を治すのは私しかおりません。こんなお美しい奥様がいて、ご病気とは本当にお気の毒です。でももうしばらくの辛抱です」千江子は庄一郎の背広のポケットから六本木の「青馬車」と言うバーのマッチを見つける。「あなた、明日、お食事は?」「明日は九州の支社長を接待するんだ」

青馬車にこっそり行った千江子はそこで庄一郎がホステスと抱き合っているのを見てショックを受ける。そんな千江子に声を掛けるみつ子。「私、これから白木女史の美容院に行くけど、つきあわない?あの人からかうと面白いわよ」

私は石川と結婚しようと思うと言うみつ子に、あの人はあなたのことなど真面目に考えてないと答える須磨子。本気で石川さんと結婚する気なのと千江子に聞かれ、嘘よと笑うみつ子。「彼のことを言うとすぐに頭にくるから言ってみただけ。焼きもちやくと猛烈にセックスの衝動を感じるらしいの。それがあの女史の生きがいなのね」「でも血のつながりがあるんでしょう」「ううん。甥と言っても死んだ亭主のつながりなの。つまり若い燕」

もう12時半だぞと千江子に言う庄一郎。「どこに行ってきたんだ」「友達と会って、美容院に行って、それから六本木に行ったの」「六本木?なんでそんなとこに」「……」「そろそろ、君は僕との生活に飽きてきたようだな」「私は見たのよ。青馬車であなたが」許してくれと言う庄一郎。「少しでも自分の情欲をかきたてようと一生懸命なんだ」「そんないやらしいこと。私はどうかなってしまうわ」「千江子」

庄一郎は千江子を抱こうとするが、やっぱりダメだと苦悶する。「また空しいことをしてしまった」「失望しないで。段々治ってきた証拠よ。だからそんな人とつきあわないで。二人だけの力で治しましょう」「悪かった。二度とあんな女と付き合わない」

今度の週末にクラス会で一泊旅行に行きたいと庄一郎に言う千江子。「行ってもいいでしょう」「本当にクラス会なのか」「本当よ」よく来たわねと言うみつ子にやっぱり帰ろうかなと言う千江子。「何言ってるのよ。ここに来たら家庭や社会と言った煩わしさから解放されるのよ。そのためにこのグループはあるのよ」「わかったわ」

千江子は石川に抱かれそうになるが激しく抵抗する。「やっぱりやめて」「あなたは渇いている。男にとって渇きの見える女性はたまらなく魅力的なんですよ」「……」「奥さん、あなただって子供じゃない。ここで何をするかくらい承知でやってきたんでしょう」「夫を裏切ることはできません」「そんなセンチメンタリズムは愚劣だな」「石川さん。私たち親しい友達のままでいましょうよ」「よろめいてもみたいし、いい子でもいたい。古臭い欲張りなんだな。あなたは」私が悪いんじゃないと泣く千江子。

子供を産む気はないかと千江子に聞く庄一郎。「あら、だって」「人口受胎って手もある。昨日寺田先生が会社に来て、しきりにそれを進めてね。一切を秘密のうちに手筈は整えると言うんだ」「そりゃ子供はほしいけどイヤだわ」「僕は君に子供を産んでほしいんだ。僕たちの間も落ち着くだろうしね」

「自分の子供でなくても愛せる自信があるの」「君の子供なら愛せるよ。僕の部下に非常に優秀な青年がいるんだ。その男に頼んでもいいと思っている」「まさか石川さんじゃ」「どうして石川だと思うんだ」「だって、あなたの部下と言うから」「いや。石川なんかよりもっと立派な青年だ」

千江子に石川がしょっちゅう遊び歩いて困っていると言う須磨子。「ですからあなたとご交際していただければ少しは落ち着くんじゃないかと」「私にはそんな力はありませんわ」「いいえ。大ありですわ。あれはあなたが大好きらしいのよ」人口受胎を進める寺田に今はその気がないと答える千江子。「奥さん。この間、クラス会で外泊なさったそうですね。あれ以来、ご主人は疑っておられますが、それが言えなくて悩んでおられる。あんまり悩ませると罪ですぞ」

石川は須磨子の紹介で良家の子女であるしづ子とお見合いする。「叔母の手前、僕たちお互いに気に入って婚約すると言うことにしないか」「そやな。その方が万事スムースに行くな」石川としづ子がいやにナレナレしいのと千江子に言う須磨子。「あなた、とっくり鑑定してちょうだい」

婚約したと言うのは嘘ですと言う千江子に言う石川。「あの子が東京にいたいためのトリックなんです」「まあ。悪い人ね」俺は青馬車の女に会ったと千江子に告白する庄一郎。「そして笑われて帰ってきた」「そんな話、聞きたくないわ」「今度は俺が聞きたい。お前、このごろ変だぞ。何があったんだ」「間違いないんでありません。私は昔通りのきれいな体です。人口受胎を受けないのもあなたが治るまで処女でいたいからですわ」「そうか。頼む。俺を裏切らないでくれ」

石川はしづ子と本気で結婚する気みたいと千江子に言う須磨子。「あんな小娘に取られるなんて」「でもお見合いを進めたんだから」「まさかこんなことになるなんて。ねえ、あなたしかこの事態を収拾できないわ」叔母は焼きもちを焼くために僕を誰かと仲良くさせるんですと千江子に言う石川。「しづ子だってその道具に使われているんです。あなただってそうですよ」「わかってます。そんなことはどうでもいいんです」

私は人口受胎をすると言う千江子。「上田は男の能力を失っているんです。可哀そうな人ですわ」「そうだったんですか。それで私にその父親になれと」「ええ、全然知らない人よりは」「課長はご存知なんですか」「いいえ」「そんなに僕のことを思ってるなら、人口受胎じゃなくて」「それはいけません」「僕はあなたが好きなんです」「やめてください。もうお会いしたくありません」

結婚してもう半年だとと千江子に言う庄一郎。「この味気ない生活につくづく嫌気がさしただろうな」「私ね、子供を産んでみようと思うの」「え」「やっと人口受胎をする決心がついたのよ」「なぜ心境が変わったんだい」「子供が産まれればあなたも私も救われるような気がして」千江子は寺田の紹介する医師から人口受胎の手術を受けようとするが、直前になって恐ろしくなって逃げ出してしまう。

会社にいる石川に電話する千江子。「私、今とってもみじめな気持ちで。どうしてもお会いしたいの。私を助けて」「弱りましたね。4時になれば都合がつくと思いますけど」うちに急用ができましたと庄一郎に言う石川。「3時半に早退させていただきます」私をどこかに連れてってと言う千江子にいいんですかと言う石川。「課長のことを」「主人のことは言わないで。私は自分の気持ちに忠実になろうとあなたをお呼びしたのよ」「でも土壇場になって、まだ逃げだすんじゃないかな」「逃げはしません」

石川とともにホテルに行く千江子。「あなたはしづ子さんのことをどう思ってるの」「どうって関心ないな」「みつ子さんはどうなの」「あれは娼婦ですよ。進歩人ぶってるけど。まあ遊び相手としては退屈しませんが」「叔母さまは」「叔母とは純然たる経済的つきあい。嫌だな、まるで調べられてるみたいだ。僕は奥さんが一番好きです。ほかの女なんか問題じゃない」「……」「奥さん。震えてますね」「私、初めてなのよ。何も知らないの」

石川は千江子を抱こうとするが、そこに石川を尾行した庄一郎が現れる。「石川」「僕は奥さんのお守りをしただけです。お礼を言ってほしいくらいです」「貴様」「課長が奥さんに女の喜びを与えることができないからこんなことになるんです。だいたい不能者のくせに結婚するのが間違っているんです」「なんだと」「およしなさいよ。暴力は。お二人でよく話し合ってみるんですね。じゃあ」

千江子を責める庄一郎。「よくも俺の体のことをあんな男に」「すいません」「ばか。ばか」千江子を殴る庄一郎。「許して」「ばか。ばか。ばか。ばか」怒りと屈辱から男性機能を取り戻す庄一郎。「千江子」僕は治ったと言う庄一郎に、これで私たちが本当の夫婦ねと呟く千江子。「私を許してくださる」「許すも許さないもないよ。みんな君のおかげだ」真の幸せを知った千江子は、須磨子からみつ子が石川の子を宿したと聞かされても、微塵も動揺の色を見せることはないのであった。

★ロロモ映画評

上田庄一郎(高橋昌也)と結婚した千江子(若尾文子)は期待と不安な気持ちで新婚旅行に向かうが、庄一郎から女を抱けない体と告白され動揺する。「一昨年の交通事故で背骨の神経をやられて、男の神経がダメになったらしいんだ。医者が治ると言うもんで式までに良くなると思って婚約したんだがやっぱりダメだ。あなたの魅力で失ったものを何とか取り返そうとしたんだが。どうか許してください」「そうでしたの。私は嫌われたので、あなたに愛されないかと」「大間違いだ。僕はあなたを愛している。治るまでは式を延期しようと何度も思ったけど、医者が治る可能性があると言ったんで。それに僕はどんなことがあっても、あなたを人に渡したくなかった」

嬉しいわと言う千江子。「あなたが私をそんなに思ってくれるなんて。あなたは女の気持ちがわからないかもしれないけど、私はそんなことだけ求めたりはしませんわ。そこが男と違うところですわ。体の関係だけが夫婦の関係じゃありませんもの。治るんでしょう、その病気は」「医者はそう言ってくれてます」「じゃあ二人の力で治しましょう。私たち夫婦なんですもの」「千江子さん」「そして美しい夫婦になりましょう」「ありがとう」

朝の散歩がてらに温泉プールに行った千江子は高校の同級生のみつ子(江波杏子)と出くわす。「しばらくね」「卒業以来かしら。お一人?」「いえ。主人と来てますの」「あら、ご新婚?」「ええ。あなたは?」「私はリクエーション。結婚しそびれちゃったの」「まあ、そんな」「あとで遊びに来ない?本館の3階なの。この連中と一緒なの。みんな面白い人ばかり。いらっしゃいよ」「ええ、伺うわ」仲間たちに千江子を紹介するみつ子。石川(川津祐介)はお酒をどうぞと言う千江子に進めるのであった。

ということで愛はセックスだけではないと若尾文子は宣言しますが、そうじゃないでしょうとあれやこれやと若尾文子に川津祐介の誘惑の魔の手が伸びますが、土俵際の粘り腰でなんとか若尾文子は川津祐介の誘惑をかわしますが、もうかわしきれないと土俵から押し出されそうになった時に、突如世界は相撲からプロレスになって、男性ホルモンを補充した高橋昌也に救われると言うお話で、これが1970年代だった立派なロマンポルノになっていたのにと惜しまれるところですが、結局セックスシーンはラストの高橋昌也と若尾文子のぼんやりしたワンシーンだけなので、ロマンポルノとしては無理かなと思うわけです。

この映画の題名は「悶え」ですが、そこからロロモはマリア四郎という歌手を連想するわけです。本名は宮崎幹夫のマリア四郎は聖母マリアと天草四郎のイメージの融合から芸名をつけ、1968年1月25日に発売された「傷恋」はオリコンで最高72位を記録。そのB面が「もだえ」と言う曲でしたが、この曲のねっとりした耳障りはいつ聞いても最悪か最高なのかわかりませんが、どうも耳の中はいつもすっきりしないものを覚えるわけです。

このマリア四郎は1970年代になると本名を平仮名表記にしたみやざきみきお名義として作詞家になりますが、ここでロロモの選ぶ平仮名表記の有名人ベスト30を発表。30位はみやざきみきお、29位はSMの女王に扮したにしおかすみこ、28位はカルトQの司会を務めたうじきつよし、27位はシュールな笑いが得意なふかわりょう、26位は「トイレット博士」の作者であるとりいかずよし。25位は関西で絶大な人気を誇ったやしきたかじん、24位は漫画「アンパンマン」の作者であり、名曲「手のひらを太陽に」の作詞家でもあるやなせたかし、23位は東京ドームのビールの売り子からのしあがったおのののか、22位は坊主頭がトレードマークのえなりかずき、21位は高校野球が大好きな板東英二の物まねが上手いかみじょうたけし。

20位はそのまんま東の奥さんだったかとうかずこ、19位は「蒲田行進曲」の作者であるつかこうへい、18位は「キャプテン」と「プレイボール」の作者であるちばあきお、17位は「クイズダービー」で脅威の正解率を誇ったはらたいら、16位は「恐怖新聞」と「うしろの百太郎」の作者であるつのだじろう。15位は「なぜか埼玉」を歌ったさいたまんぞう、14位は「沈黙の艦隊」の作者であるかわぐちかいじ、13位は細かすぎて伝わらないモノマネ選手権で抜群の身体能力を見せたいとうあさこ、12位は獅子舞がトレードマークのたむらけんじ、11位は巨乳界を代表するかといれいこ。

10位は四コマ漫画に革命を起こしたいしいひさいち、9位はムッシュの愛称で知られるかまやつひろし、8位は「あしたのジョー」もいいが「紫電改のタカ」もいいちばてつや、7位は国民的漫画「ちびまる子ちゃん」の作者であるさくらももこ、6位はえぐみのある司会ぶりが売り物のみのもんた。5位はナハナハが忘れられないせんだみつお、4位はグレープ時代の「精霊流し」が最高傑作だと思うさだまさし、3位は「四つのお願い」が最高傑作だと思うちあきなおみ、2位は「太陽は泣いている」が最高傑作だと思ういしだあゆみ、1位は漢字が強く相撲にも強い漫画家のやくみつるとなるのでありました。(2015年11月)

得点 54点

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