燃える大陸

1968年 日活

キャスト:渡哲也(磯村)松原智恵子(冴子)赤座美代子(かおる)ケン・サンダース(ダニー)久万里由香(ティーナ)山内明(葉室) 近藤洋介(北川) 岡田真澄(ケネス)

監督:西村昭五郎

イラストレーターの磯村は荒野をテーマにした作品で注目を浴びていた。一番やりたいことはお気に入りの女の肌に絵を描くこととうそぶく磯村はサイケデリックバーで絶世の美女と知り合う。「つまんなそうだね」「いいえ。結構楽しんでるわ」「だけど君はちっともハプニングしてない」「ではあなたはハプニングしてるの。衝動だけで本当に行動してるの」

「型にはまった当たり前のことばかりやってる連中よりマシだろ」「変わったことをすると言うのは中身のまったくないことなのかしら。あの絵のように」「あの絵を描いたのは俺だ。中身がないと言うのか」「何となくそう思ったの。あの絵は偽物だと」「君の裸に絵を描きたい」「駐車場で待っている」駐車場で置き去りにされてしまう磯村。

磯村は松坂屋の葉室専務から荒野のイメージで来年は売り出したいと言う。「それをあなたにやっていただきたいのです」「やらせていただきます」「今月中にポスターのデザインを提出していただきたい」松坂屋で開催される写真展でオーストラリアの荒野に心惹かれた磯村は全財産を売り飛ばしてオーストラリアに行くことを決意する。

磯村はオーストラリアで松坂屋の駐在員の北川の出迎えを受ける。「お仕事にできるだけ便宜を図るように言われております。あと10日で作品をいただけますか」「わかりました。期日には間に合わせます」「ところで日本では流行の波に乗って怪しげなイラストレーターがまかり通っているようですね」「……」「どうです。私がオーストラリアの案内をしましょうか」「せっかくですが、僕のモットーは誰にも干渉されないことなので。失礼」

磯村はスチュワーデスのかおるとのアバンチュールを楽しむ。そして磯村はレンタカーを借りて荒野に向かおうとするが、車に乗る美女を見て、慌てて追いかける。製鉄所で美女の車を見つけた磯村は美女から自己紹介される。「私は矢代冴子。彼はここの技師をしているケネス」ケネスに自分の絵が本物であることを証明するためにオーストラリアに来たのだと言う磯村。私はイサハヤと言う馬に入れ込んでいると言う冴子。「私が勝つと信じた時、イサハヤは負けたことがないの」

磯村はオーストラリアの荒野をイラストにしようとするが苦戦する。気分転換にかおると食事をする磯村の前に現れる北川。「どうです。気分転換にフィジー島に一泊旅行というのは」磯村はかおるとフィジー島をエンジョイするが、北川と話をする冴子を見て動揺する。北川に僕を監視するのはやめてくれと言う磯村。

「弱小サラリーマンをいじめないでください。私は葉室専務の指示に従ってるだけです」「これは専務の指示なんですか。フィジーに遊びに来させたのや、矢代冴子をここで僕に会わせたのも」「おかしなことをおっしゃいますね」「あなたは最初に会った時から僕を軽蔑している」「そう。私個人の感情では軽蔑しています。あなた程度の才能と努力で成功を勝ち取られてはかなわない」「勝負は作品で決まるはずだ」

冴子に愛を告白する磯村。「なぜなの。私はあなたを侮辱したのよ」「張り飛ばしてやりたいくらい憎んだ。でも気づいたんだ。俺は女の人をそんなに憎んだことすらなかったと。君に会ったあの時から何かが始まったんだ」「何も始まりはしないわ。気まぐれな男と女がちょっと傷つけあっただけ。さあ、好きなようになさい。私の裸に絵を描くことがあなたの目的なんでしょう」「違う。目的は君だ。君の全てだ」走り去る冴子。

レースに出場したイサハヤはゴール寸前で前脚を折ってしまい薬殺処分されることが決定する。負けたわと言う冴子に君は負けたと言う磯村。「なぜそんなに私につきまとうの」「君をまだ僕のものにしてないからさ」「イサハヤが勝ってたらあなたのものになってたかもしれないわ」「なに」「賭けたの。イサハヤが勝ったらあなたの自由になると」「バカな」「さよなら。もう二度と会うことはないでしょう」「会えるさ。きっと会える」あと五日で期限ですよと磯村に言う北川。「お忘れなく」

磯村はオーストラリアの荒野をイラストにしようとするが苦戦する。恋人のティーナを暴行しようとするタクシー運転手を刺し殺したため逃走中のダニーに語る磯村。「俺がオーストラリアに来たのはある仕事のためだった。それを口実にあの退屈な毎日から逃れるためだったかもしれない。やりたいことをやっているようで何もやってなかったんだ。だけどどこに行ったって自分だけはついてまわる。外国まで来て自分が変わるわけがない。オーストラリアまで来て、俺はやっとそのことがわかりかけてきた気がするんだよ」ダニーは磯村を殴り倒して、車を奪って逃走する。

オーストラリアの荒野を彷徨う磯村。ケネスのプロポーズを受ける決心をする冴子。磯村は力尽きて倒れるが、偵察機に命を救われる。見舞いに来た冴子にやっぱり会えたねと言う磯村。作品ができてませんねと言う北川にあなたの勝ちですと言う磯村。「僕の作品は才能のかけらもない亜流ばっかりだったんです。最後の最後まで自分をだましてきたんです。自分の才能が一流であると信じていたんです。皮肉なことに本物の荒野が僕の正体を暴いてくれたんです」「……」「葉室さんに伝えてください。信頼にお答えすることができなかったと」「伝えます」

私はあなたが好きと磯村に言う冴子。「最初から会った時からずっと。でも私が結婚する相手はケネスなの」ダニーはまた殺人を犯したと磯村に言う刑事。ティナはダニーが去ってしまったと嘆くが、ダニーはティナの元に現れ、逮捕される。ケネスに婚約破棄を伝えることができず苦悩した冴子はハンドル操作を誤って事故死する。磯村は悲しみに打ちひしがれながら、オーストラリアを後にするのであった。

★ロロモ映画評

イラストレーターの磯村(渡哲也)は荒野をテーマにした作品で注目を浴びていた。一番やりたいことはお気に入りの女の肌に絵を描くこととうそぶく磯村はサイケデリックバーで絶世の美女(松原智恵子)と知り合う。「君の裸に絵を描きたい」「駐車場で待っている」駐車場で置き去りにされてしまう磯村。

磯村は松坂屋の葉室専務から荒野のイメージで来年は売り出したいと言う。「それをあなたにやっていただきたいのです」「やらせていただきます」「今月中にポスターのデザインを提出していただきたい」松坂屋で開催される写真展でオーストラリアの荒野に心惹かれた磯村は全財産を売り飛ばしてオーストラリアに行くことを決意するのであった。

そしてオーストラリアに行った渡哲也は当然松原智恵子と再会することになりますが、この映画はとっ散らかっていると言うかかなりいい加減な映画でありまして、1968年と言う時代を荒々しく描こうと言う製作者の意図のようなものは感じられなくもありませんが、どうやらから騒ぎに終わったようで、これは日本初の本格トリップ映画を目指したが、やはり日本人にトリップはまだ時期尚早と言うか、渡哲也と松原智恵子にサイケな男女を演じさせるのはそもそも無理ではないかと思うわけです。

この映画は実験的な試みをしてまして、それがサイケデリックな画像処理に如実に現れていますが、あと舞台がオーストラリアと言うことで英語での会話が随所に出ますが、それを字幕処理してないので何を言ってるのかよくわからない演出をしており、この演出はなかなか洒落ていると感心しますが、やはり何を言ってるのかよくわからないと言うのはかなり問題があり、この演出は残念ながら失敗に終わったようにロロモには思えるわけです。

あとこの映画の重要なモチーフとして「荒野」がありますが、なぜそこまで荒野にこだわるのかロロモには理解できないところがありますが、荒野は映画の題名によく使われ、黒澤明監督の名作「七人の侍」と「用心棒」が「荒野の七人」と「荒野の用心棒」としてリメイクされたのは日本人として嬉しいところですが、荒野のつく曲としては、フォーククルセイダーズの「青年は荒野をめざす」とスリーディグリーズの「荒野のならず者」をロロモは思い出し、荒野の漫画としては「この世は荒野だ!唯一野望を実行に移す者のみがこの荒野を制することができるのだ!」のキメ台詞が嬉しい雁屋哲原作・由起賢二作画の「野望の王国」を連想するわけです。

あと映画のタイトルである「燃える大陸」にはどうしても違和感を覚え、オーストラリアを燃える大陸と言われてもなあと言う気がしますが、映画では渡哲也がオーストラリアに行くと聞いて、スイスの隣に行くのと聞かれるギャグが盛り込まれてあって、オーストリアとオーストラリアは昔から紛らわしいと思っていたロロモにはちょっと嬉しいギャグでしたが、2005年の愛知万博のオーストリア・パビリオンで配布された冊子では、日本人にオーストラリアとしばしば混同されることを取り上げ、オーストリアを「オース鳥ア」、オーストラリアを「オース虎リア」と覚える様に呼びかけたそうです。

日本ではオーストラリアの方がオーストリアより馴染みがあるために、オーストリアの肩身が狭くなりますが、オーストラリアとオーストリアよりも紛らわしいのがアイルランドとアイスランドでありまして、これは2005年の愛知万博方式だとアイルランドを「ア居るランド」、アイスランドを「ア椅子ランド」と覚える様に呼びかけたいところですが、そもそもアイルランドもアイスランドもあまり日本に馴染みのない国なのでそこまで意識することもいらないことに気づくのでありました。(2015年10月)

得点 45点

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