森繁の新婚旅行

1956年 新東宝

キャスト:森繁久弥(森)中村メイコ(ハナコ)遠山幸子(春実)紫千鶴(平小路敦子)小堀誠(平小路邦盛)三木のり平(田沼)千葉信男(轟)和田孝(沢村)江川宇礼雄(松永)高島忠雄(木下)坊屋三郎(部長)

監督:渡辺邦男

太陽新聞の社会部部長は君は何しに国会に行ったと森を叱る。「首のない大臣の写真を撮ってどうする。お前の写真や記事はいつもそうだ。責任を取れ」「この写真と同じでクビを切ると言うことですね」「勝手に決めるな」「じゃあクビじゃない。部長はいい男ですね」「喜ぶのはまだ早い。島流しだ。四国の奥の方だ」

愛媛県六波羅支局に左遷となった森はあまりに暇なので、六波羅町でお姫様扱いされて誰も口を掛けることのできない平家の血筋を引く平小路敦子に「結婚しない」と声を掛けてしまう。そして森は平小路家に連れて行かれ、敦子の祖父の邦盛に平小路家にふさわしい男になるようにと徹底した花婿修行を受ける。

こうして森は敦子と結婚するが、敦子がつれない態度を取るので寂しい思いをする。新婚旅行のスケジュール表ができたと邦盛に見せる森。「東京観光旅行となっています」「わかったぞなもし」六波羅高校の生徒の田沼と轟はキャッチボールをしていた球が平小路家に入ってしまったため、そのスケジュール表を見てしまう。「これはいいものを見たぞなもし」「修学旅行はこのスケジュールで決まりぞなもし」

森は敦子と新婚旅行に出かけるが、東京行きの汽車に六波羅高校の生徒たちがいるのにうんざりする。東京に着いた森は敦子と遊覧バスに乗るが、それにも六波羅高校の生徒たちが乗り込むのでうんざりし、バスガイドの春実にあのガキどもは何とはならんかと相談するが、どうにもならないと言われてギャフンとなる。

旅館の太成館に着いた森はこれでやっと敦子と二人になれると喜ぶが、六波羅高校の生徒たちも宿泊すると聞いて、うんざりする。それでも夜になって森は敦子に手を出そうとするが、敦子に無礼者呼ばわりされて、さらにうんざりする。

森は敦子を太陽新聞本社に連れていく。「僕は会計係に行く。君はうちの新聞を読んで待ってなさい」「はい」森は会計係のハナコに給料の前借を申し込むが、規則にないからと断られてしまう。「これねえ、そこで買ったアメリカ製のナイロンの靴下だけど、これでなんとか」「ありがとうございます。でも前借はできません」「僕の重大なクリヘソなんだ」「クリヘソ?ああへそくりのことですね」「いや、今はクリスマスだから、クリヘソって言ったんだけど」「とにかく前借はダメです」そこに現れる六波羅高校の生徒たち。「おっさん。前借ぞなもし」「ちぇっ」

会計課を出た森は後輩の木下と会う。「先輩、久しぶりですね。どうです、一杯やりに」「行きたいけど、金がない」「僕がなんとかしますよ」敦子にこれから挨拶回りに行ってくると言う森。「君はここで新聞でも読んで待っているように」「はい」バーから敦子に電話する森。「ああ、俺だ、何、まだ廊下にいたのか。僕はちょっと仲間といるから、君は夜の銀座のクリスマスでも見て帰りたまえ。迷子になるといけないから電話番号を教えとく。銀座の4321番。じゃあね」いいんですかと森に聞く木下。「新婚旅行なんでしょう」「あんな女、平家の遺物だ。話にならん」

太陽新聞を出た敦子に声を掛ける春実。「随分沢山荷物を持ってらっしゃるのね」「保育園でクリスマスの会があるんです」バーで大騒ぎする森は田沼と轟がいるのを見て驚く。「君たちは高校生だろ。ここは大人の来るところだ」「社会科の勉強ぞなもし」「金はあるのか」「スポンサーがついてるぞなもし」

あの男は東京ファイターズのスカウトの松永ですと森に言う木下。「これは特ダネです。松永の前にいるのが六波羅高校のエースの沢村。このスクープをモノにすれば東京に戻れます」「六波羅高校にそんなピッチャーがいたのか」「先輩、知らなかったんですか。高校野球界の花形です」「知らなかったぞなもし」

沢村に東京でやってみないかと誘う松永。酔っぱらった森にパーティに来ないと誘う春実。「天使たちが待ってるの」「天使?行くよ」僕たちも行くと言う田沼と轟。車に乗ろうとする森はもう一人天使がいると喜ぶ。それはあんたの嫁さんぞなもしと言う田沼。早く車に乗ってとせかす春実。

サンタの格好をした森とトナカイの格好をした田沼と轟が保育園に現れる。サンタのおじさんが来たわよと子供たちに言うハナコ。天使はどこだと言う森に可愛い天使がいるでしょうと言うハナコ。「そうですか」「ここは私の姉が経営してるの」「帰らせてもらいます」「ダメよ。サンタが逃げちゃ。ほら、あなたからもらったナイロンの靴下。よく伸びるからお菓子が沢山入るのよ」「そうですか」「じゃあ、サンタさんとトナカイさん。何か面白いことをやってください」子供たち相手にハッスルする森を見て喜ぶ敦子。

「きよしこの夜」を歌いながら太成館に戻る森と敦子。やっと敦子を抱けると喜ぶ森に電話する木下。「新婚旅行中です」「先輩。何を言ってるんです。絶対特ダネ間違いなし。松永が三人の高校生を車に乗せるのをこの目で見たんです。高校生誘拐事件です」森に電話する轟。「ちょっと旅館に帰れなくなったんで先生に伝えてほしいぞなもし。今、新橋の富士見荘にいるぞなもし」

富士見荘に乱入した森は松永をボコボコにし、田沼と轟と沢村を太成館に連れていく。特ダネ間違いなしに意気揚々と太陽新聞社会部に行く森。「部長。私の辞書に不可能の文字はない」「気でも狂ったのか」「まあ、部長、話を聞いてください。高校生誘拐事件を私一人で解決しました」森の話を聞いて呆れる部長。「プロ野球のスカウトが有力選手を缶詰めにする。当たり前のことじゃないか。そんなものはニュースにならんよ」

勘違いもはなはだしいと森に激怒する松永。「私は沢村君をじっくり話したいとこの旅館に連れてきたら、あの二人がノコノコついてきたんです。それを誘拐などと」「まことにどうも」「僕は東京ファイターズの専務をしてるが、松永家は平家直系の子孫なんだぞ」「どうぞ。気のすむまでご存分に殴ってください」「よし」そこに現れる敦子。「松永」「これはこれは。六波羅の平のお姫様」土下座する松永。

俺はようやくわかったと敦子に言う森。「俺は提灯でお前は釣鐘だよ。君はいい奥さんだ。だけど俺は東京のクズみたいな男だ」「あなた」「君は六波羅に帰りなさい。今日の予定は歌舞伎の見物だったね。でも新婚旅行はおしまいだから、僕一人で行ってくる」歌舞伎を見る森はまた六波羅高校の生徒たちがいるのにうんざりする。

歌舞伎が終わり、森に切符を渡す轟。「なんだこれは」「箱根行きの切符ぞなもし。みんなで買ったぞなもし。新婚旅行のやりなおしをしてくれなもし」そこに現れる敦子。俺たちは四国に帰ると言う田沼。「もう邪魔せんぞなもし」森と敦子は満面の笑みを浮かべるのであった。

★ロロモ映画評

太陽新聞の社会部部長は君は何しに国会に行ったと森を叱る。「首のない大臣の写真を撮ってどうする。お前の写真や記事はいつもそうだ。責任を取れ。島流しだ。四国の奥の方だ」愛媛県六波羅支局に左遷となった森はあまりに暇なので、六波羅町でお姫様扱いされて誰も口を掛けることのできない平家の血筋を引く平小路敦子に「結婚しない」と声を掛けてしまう。

森は平小路家に連れて行かれ、敦子の祖父の邦盛に平小路家にふさわしい男になるようにと徹底した花婿修行を受ける。新婚旅行のスケジュール表ができたと邦盛に見せる森。「東京観光旅行となっています」「わかったぞなもし」六波羅高校の生徒の田沼と轟はキャッチボールをしていた球が平小路家に入ってしまったため、そのスケジュール表を見てしまう。「これはいいものを見たぞなもし」「修学旅行はこのスケジュールで決まりぞなもし」

こうして新婚旅行に東京に戻った森こと森繁久弥と六波羅高校の生徒たちは珍道中を繰り広げますが、残念ながらこの映画のユーモアにロロモは対応しきれず、基本的にロロモは森繁久弥のユーモアよりも三木のり平のギャグの方がフィットしますが、ここでの三木のり平は「ぞなもし」を連発するだけで、ロロモの期待するギャグの切れを見せてくれなかったのが残念に思えるわけです。

この映画で森繁は平家の血筋を引くと言う平小路敦子のお姫様ぶりに最初は閉口しますが、壇ノ浦の戦いで滅亡したと言わる平家でありますが、その生き残りが落ち延びて部落を作ったと言われる個所は日本国中に点在しますが、合戦のあった壇ノ浦や屋島に近い四国はその平家伝説のメッカとなっており、そんなところからこの映画も愛媛県を舞台にしたと想像できるわけです。

それらの伝説でよくあるパターンは壇ノ浦の戦いで死んだと言われる安徳天皇が実は生き延びていたと言うパターンですが、安徳天皇は1178年12月22日に父の高倉天皇、母の平清盛の娘の徳子の間に生まれます。そして1180年4月22日に1歳4か月の若さで天皇となりますが、1183年に源義仲の京入りに伴い都落ち。この後後鳥羽天皇が即位したため、史上初めて同時に2人の天皇が擁立されることになります。平家一門に連れられて安徳天皇は各地を転々としますが、1185年4月25日に壇ノ浦で平氏と源氏が激突します。

戦いは平家の負けが明らかになります。安徳天皇は、最期を覚悟した祖母・二位尼に抱き上げられます。「尼ぜ、わたしをどこへ連れて行こうとするのか」と安徳天皇に問いかけられた二位尼は「この世は辛く厭わしいところですから、極楽浄土という結構なところにお連れ申すのです」と答えます。安徳天皇は小さな手を合わせ、東を向いて伊勢神宮を遙拝し、続けて西を向いて念仏を唱えます。二位尼は「波の下にも都がございます」と慰め、安徳天皇を抱いたまま壇ノ浦の急流に身を投じます。

と言うくだりが平家物語に記されていて、実際はどういうやり取りがあったかはわかりませんが、壇ノ浦の戦いで安徳天皇が亡くなったことはほぼ間違いなく、6歳4か月の若さでこの世を去りましたが、彼の1歳4か月での天皇即位が史上最年少天皇かとロロモは思ったのですが、上には上がいるもので、1164年12月28日に生まれた六条天皇は生後7か月で天皇に即位。そして在位2年8か月で高倉天皇に譲位し歴代最年少上皇となり、11歳8か月で病死します。

ということで史上最年少天皇は六条天皇となり、史上最も短命だった天皇が安徳天皇となりますが、この時代は武士と貴族の権力争いのピークとなっており、皇室もその争いに巻き込まれて混乱状態になっていたのがよくわかりますが、やはり日本の象徴である天皇には長寿を全うしてほしいと思い、いつの時代も天皇陛下が平穏な日々を過ごすような平和な世の中になってほしいとロロモはしみじみと思うのでありました。(2015年3月)

得点 13点

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