もず

1961年  松竹

キャスト:淡島千景(すが子)有馬稲子(さち子)永井智雄(藤村)山田五十鈴(おかみ)桜むつ子(おてる)高橋とよ(一恵)清川虹子(ツネ)川津祐介(酒田)岩崎加根子(アヤ子)

監督:渋谷実

新橋の路地裏にある小料理屋「一福」で住み込み女中として働くすが子の元にやってくる娘のさち子。二階でビールなんかお茶代わりよとガブガブ飲むすが子。「死んだおっつあんも強かったわよ。あんたも飲みなさいよ。こうして久しぶりに来てくれたんだから」「いいんですか。下は」「みんなに行ってあるの。久しぶりに娘が来たんだからと」

同僚のおてるに娘さんとは何年振りなのと聞かれるすが子。「それが戦後一度も会ってないんだよ」「十五年ぶりね。母さん」「あの頃は物資がなかったねえ。私買い出しに足を延ばして、この人のいる田舎に行ったっきり」「一時間も話さなかったわね」大きな娘さんがいるんだねえと言うおてる。「びっくらこいた?もうすぎ30だよ。私が二十歳の時の子だよ」「へえ、そうなの」

私とどうして松山で暮らさなかったのとすが子に聞くさち子。「お父さんが戦死した時」「私に財産が移るのを恐れて、みんなで追い出しよ」「でも、田舎でくすぶって暮らすのが嫌で飛び出したって」「そう言って年寄り二人がお前を教育したんだろ。私には帰る田舎なんてないんだよ」

お前は何年結婚したんだと聞くすが子。「三年。別れてからも三年。財産目当てだったんよ。うちへ来るなり女遊びばかりして」「そんなのすすめるばばあが悪いんだよ」「それで美容師の見習に入ったんよ。東京の一流の店で仕上げよう思って」

そこに現れるすが子の馴染み客の藤村。すぐに藤村にベタベタしさち子を紹介するすが子。「こちら、藤倉レンズの社長さん。九年前からのお知り合い。その頃は社長じゃなかったけどね」「余計なこと言うな」「こちら幸子さん」「どこか勤めてるの」「美容師。田舎から出てきたんですよ」「開業してるの」「いえ、一流のところで勉強したいそうなの。どっかいいとこないかしら」「そうね、家内の知りあいが銀座で全身美容の店を建てたと言ってたな。聞いてみようか」「是非お願いしますわ」また藤村にベタベタするすが子を見て、店を出てしまうさち子。

銀座でさち子と出くわす藤村。「ずっと東京?」「ええ」「いいとこ決まったの?美容院」江戸川で住み込みで働いていると言うさち子。一福のおかみはいつまで寝てるんだとすが子に言う。「これだから年寄り女中は嫌なんだ」「すいません」「うちは成りだけはキチンとしてもらいたいね。格が落ちるからね」

幸子にばったり銀座で会ったとすが子に言う藤村。「どうして連れてきてくださらなかったのよ。田舎に帰ったとばかり思ってたのに」「食事してナイトクラブ連れていってやったよ。見たことないと言うもんだから」「私のこと何か言ってた」「いや。江戸川の小さな美容院に住み込みで働いてると言ってたよ。それで一流どこに行きたいと言うから世話してやろうと言う話になってね。あれはいい子だね。別れのキスをしてやった」「あなた。あれは私の産んだ子です」「あれが?」「今さらびっくらこいたって」「なんだ。親戚の子かと思ったよ」「幸子に手出したら承知しないからね」

江戸川に行きさち子と会うすが子。「随分探したよ。どうしてあの時逃げたんだい」「あの人、お母さんの何なん」「ボーイフレンドよ」「そんな人がいれば私なんか探さなくていいんじゃないの」「私はあの人と絶交したんだ。何か頼みたいことがあれば、直接私に言いなよ。あんた、一流の店で勉強するんじゃなかったの。こんな場末で何しようって言うの」「いつまでもこんなとこにいないわ」

「それじゃ一緒に暮らそうよ。私も馬力かけて、さち子の店の金をきっと作るから」「本当に一緒に暮らしたいの?今の方が気楽なんじゃないの」「馬鹿なことを言うんじゃないよ。ばばあと呼ばれてわずかなチップ貰う身なんだよ」「私、幻滅感じたの。私のお母さんって、もっと。見なけりゃよかった」「そんなことだと思ったよ。私もさち子って田舎の純真な可愛げのある子を想像してたんだけど。しょうがない。互いに我が道を行く、か。じゃあね」

なぜ藤村と別れるのとすが子に言うおかみ。「大事なうちのお客さんよ」「しみったれなんですよ。十年間で草履を一足買ってもらっただけ」おかみと喧嘩したすが子は一福をクビになり、おてるの家で世話になる。藤村の紹介で銀座の全身美容店に勤めることになったさち子もおてるの家で世話になる。しかしおてるの母の一恵がさち子に縁談を進めたことで二人の仲はおかしくなる。

「相手は50過ぎの男だそうじゃないか」「私は断ってきたわ。すぐに前の家内はとか言うんだから」「何も私のために縁談断らなくてもいいんだよ。我が束縛してるように思われたらかなわないからね」「どうかしてるわ」「行きたきゃ行けばいいんだ。親子みたいなじじいのところへ。私は足手まといなんだろう。早くくたばりゃいいと思ってるんだろ」「誰がくたばれなんて言うたんよ」「私はお前の為に一生懸命生きてきたんだ。やっと一緒に暮らせると思ったら、こんな思いをしなくちゃならないんて」「こんなうちにいるからいけないのね」

さち子は同僚になったアヤ子の紹介で、アヤ子の家の近くにあるツネの家にすが子と住む。さち子はツネとすっかり仲良くなり、ヘルスセンターに遊びに行く。松山からやってきた酒田にご馳走を作るさち子。「えらいな、さっちゃんも。とうとう夢を実現したんだから。お母さんと一緒に暮らしたいと口癖のように言ってたんだから」

僕は青年会にいたころから君が好きだったとさち子に言う酒田。「年下じゃないの、あんた」「関係ないよ。俺の思いつめた気持ち、わかんないのか」「押し付けがましいじゃない。図々しいわよ」「俺は今岐路に立ってるんだ。さっちゃんの返事一つで東京に職を見つけるよ。親の言いなりになって田舎に埋もれるか、君と東京で暮らすか」

「そんな急に言われても」「君が田舎に来てくれるなら、俺は役場をやめずにすむ」「私はお母さんを抱えてるのよ。結婚なんて当分できない。十五年も別れて暮らしたから、なんやほかの人に盗られるいう嫉妬心がお母さんにはあるのよ」「恋愛したらどうするんだ」「恋愛だけ楽しむわ。それでもいいんじゃないの」

ツネと上機嫌で帰ってきたすが子は、誰か来たのとさち子に聞く。「松山の友達が来たの」「男の友達かい」「うん」「ひとりで」「そうよ」「誰が来たんだい。いくつなんだい、その男」「私より年下よ。気をもむことないわ」「変なこと言うなよ。気をもむとは何だい」「男の友達が来るとそんなに気になるの。私はお母さんと違うわ」「お前は私なんか早くくたばったほうがいいと思ってるんだろう」「なんてこと言うの」口論の最中に倒れてしまうすが子。

こんな騒ぎを二度と起こさないでとすが子に文句を言うさち子。「しょうがないよ。起こそうと思ってやってるんじゃないんだから」「お母さん、こういうのをヒステリーって言うのかしら」「どうせヒステリーでございます」「お母さん、やっぱり藤村さんの所に戻った方がいいんじゃないの」

「戻れって、別に所帯持たされた訳じゃなし」「お母さんはああいう生活が染みついて、世間並みの生活しても退屈しちゃうんよ。旦那さんでもいれば別だけど」「……」「お母さんはね、私のために自分を殺そうとしてかえって不幸になっているのよ。ねえ、お金送るから別々に暮らせる?」「馬鹿にしちゃいけないよ。私だってまだまだ働けるんだ。お前のはした金をアテになんかしてないよ。そうかい。私の留守の間に男とそんな相談をしてたのかい」「こんな話はもうたくさん」「そうかい。話が決まったなら早いほうがいい」

ツネにさち子からひまを出されたと言って出て行くすが子。止めなくていいのと言うツネに、この方がいいのいと言うさち子。「あの人はもう帰ってこないほうが」しかし夜になっても帰ってこないすが子を心配して、さち子はあちこち電話をかけるが、誰もすが子の行方を知らないと言われる。

落ち込むさち子に会いに来る酒田。「今夜の最終で帰ることにした。君も元気でやってくれ」「私も田舎に行こうかな。なんだかもう疲れちゃった」「じゃあ駅で待ってる。急いで来てくれ」しばらくして戻ってくるすが子。「なんだ、映画とデパートに行ってきたの」「だって、どこにも行くとこないじゃないの。一日歩いて疲れちゃった」「当たり前よ。そんなに歩いたら体に毒よ」

さち子にすが子さんはあんたのために一時間も歩き回って草履を買ったそうよと言うツネ。「それから前掛けも。いい柄よ。いいお母さんね」「私、お茶入れて来るわ」また百円温泉に行こうと話し合うすが子とツネ。「そうね。今度はさち子も連れていこう」「安いもんね、第一」そこでめまいを起こして倒れるすが子。

ツネからの電話を受けて落ち込むさち子にお母さんの入院は長くなりそうなのと聞くアヤ子。「結核性脳炎って言うんですって」治ったらさち子と百円温泉に行こうとツネに言うすが子。「そうね。治ったらね」

もう母は手遅れなんですと藤村に訴えるさち子。「だからお願いしてるんです」「だがいったん別れた女に一生の責任を持つなんてな。直る見込みがあるなら別だが。三千円くらいの見舞金を出すならいいが、病院の費用を全部持つというのは」「わかりました。ただ出してもらうというのは考えが甘かったかもしれません」「うん。世間を知ら無すぎるよ」「じゃあ、母の代わりに、私を。どこに行けばいいの」「ズベ公だね、君も」

藤村から金を受け取ってさち子は病院に行くが、ツネからさっきすが子は死んだと言われてしまう。「間に合わなかったんだよ」「嘘」「うわごとにあんたのことばかり言ってたんだよ」「……」すが子の枕元にある巾着袋をあけるツネ。「あら、あんたの名義の通帳よ。6万2500円。お守りがはいってる」お母ちゃん死んじゃ嫌とさち子は号泣するのであった。

★ロロモ映画評

新橋の路地裏にある小料理屋「一福」で住み込み女中として働くすが子(淡島千景)の元にやってくる娘のさち子(有馬稲子)。二階でビールなんかお茶代わりよとガブガブ飲むすが子。「死んだおっつあんも強かったわよ。あんたも飲みなさいよ。こうして久しぶりに来てくれたんだから」「いいんですか。下は」「みんなに行ってあるの。久しぶりに娘が来たんだからと」

同僚のおてるに娘さんとは何年振りなのと聞かれるすが子。「それが戦後一度も会ってないんだよ」「十五年ぶりね。母さん」「あの頃は物資がなかったねえ。私買い出しに足を延ばして、この人のいる田舎に行ったっきり」「一時間も話さなかったわね」大きな娘さんがいるんだねえと言うおてる。「びっくらこいた?もうすぎ30だよ。私が二十歳の時の子だよ」「へえ、そうなの」

私とどうして松山で暮らさなかったのとすが子に聞くさち子。「お父さんが戦死した時」「私に財産が移るのを恐れて、みんなで追い出しよ」「でも、田舎でくすぶって暮らすのが嫌で飛び出したって」「そう言って年寄り二人がお前を教育したんだろ。私には帰る田舎なんてないんだよ」

お前は何年結婚したんだと聞くすが子。「三年。別れてからも三年。財産目当てだったんよ。うちへ来るなり女遊びばかりして」「そんなのすすめるばばあが悪いんだよ」「それで美容師の見習に入ったんよ。東京の一流の店で仕上げよう思って」そこに現れるすが子の馴染み客の藤村。藤村にベタベタするすが子はすが子を見て、さち子は店を出てしまうのであった。

この映画はこの淡島千景と有馬稲子の母娘の微妙な関係を軸に描かれており、二人の関係は姉と妹のようでもあり、また赤の他人のようでもありますが、結局親子の情は何よりも強いという結論となりますが、なぜこの二人が微妙な関係になったのかと言うのは15年も会ってないというのがその大きな理由になりますが、どうして15年も会わなかったのかがロロモにはしっくりこないわけです。

淡島千景が故郷を捨てて東京に出てきた理由は劇中で語られて、故郷に帰れないのはわかるりますが、有馬稲子が東京に出れない理由はあまり感じられなかったので、この二人が微妙な関係となったリアリティというものがあまり感じられなかったので、この二人のドラマにどうも感情移入できなかったわけです。

そしてこの映画のタイトルがなぜ「もず」なのかロロモにはわかりませんが、もずと言えば思い出すにが「はやにえ」でありまして、もずは捕らえた獲物を木の枝等に突き刺したり、木の枝股に挟む行為を行い、秋に初めての獲物を生け贄として奉げたという言い伝えから「モズのはやにえ」と言われますが、このはやにえをやる理由としてモズの足の力は弱く、獲物を掴んで食べる事ができないため小枝や棘をフォークのように獲物を固定する手段として使用しているためではないかと言われています。

また、もずは獲物を見つけると本能的に捕える習性があり、獲物を捕らえればとりあえずは突き刺し、空腹ならばそのまま食べ、満腹ならば残すという説もあり、はやにえにしたものを後でやってきて食べることがあるため、冬の食料確保が目的とも考えられますが、そのまま放置することが多く、はやにえが後になって食べられることは割合少なく、はやにえが他の鳥に食べられてしまうことも少なくないわけです。

また、もずの体が小さいために、一度獲物を固定した上で引きちぎって食べているのだが、その最中に敵が近づいてきた等で獲物をそのままにしてしまったのがはやにえであるというものもありますが、もずがはやにえを食べにに行くことが確認されているため、本能に基づいた行動であるという見解が一般的となっているわけです。

ということで理由のはっきりしないはやにえでありますが、この行為がこの映画と関連性があるのかどうかもはっきりしないので、ますますロロモを困惑させますが、あとロロモはもずと言えば大阪府堺市にあった「中百舌鳥球場」を思い出すわけです。

この球場は1938年に創設された職業野球団「南海軍」の本拠地となり、戦前は公式戦が行われました。しかし大阪市中心部から遠く、交通の便や立地の悪さから選手や観客の評判は芳しくなく、公式戦は通算33試合の開催にとどまります。1950年、南海ホークスの新たな本拠地球場として大阪球場が完成すると、本球場は二軍の本拠地となり、隣接地には後に合宿所も建設。

1980年代には関西国際空港開港に伴う大阪市難波地区の再開発事業も絡んで、一時は南海の一軍本拠地とする構想もありましたが、1988年4月23日に南海のオーナーだった川勝傳が死去。川勝の死後から南海は水面下でダイエーへの球団売却交渉を進め秋に売却が決定し、本拠地を福岡市に移転することになり、本球場はプロ野球での使用を終了。その後は地元の草野球や少年野球など一般利用に供用されましたが、老朽化により2001年11月20日に閉鎖されたわけです。

なお、「中百舌鳥」が難読地名であることから、メインスタンドの銘板は「中モズ球場」と仮名書きされており、報道に於いても「中モズ」もしくは「中もず」と、仮名で表記することがあったそうですが、ロロモは水島新司の「あぶさん」を愛読してたので、この中百舌鳥球場に愛着というか、入団当時の景浦安武はよくここで練習していたことを思い出しますが、なぜもずが百の舌の鳥なのかもよくわからず、どうももずという鳥はロロモにとってミステリアスな鳥でありますが、一度はやにえの現場を見たいなあと思うのでありました。(2014年4月)

得点 44点

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