モスクワわが愛

1974年 東宝

キャスト:栗原小巻(百合子)アレグ・ビドフ(バロージャ)斎藤真(哲也)下條正巳(野川)タチアナ・ゴーリコワ(ターニヤ)

監督:吉田憲二、アレクサンドル・ミッタ

バレリーナの百合子はその素質が認められてモスクワのボリショイ劇場のバレエ団に招待される。恋人で民族音楽ディレクターの哲也に喜びを告げる百合子。「モスクワ行くのか」「私がいなくなると淋しい?」「馬鹿言え。うるさいのがいなくなってせいせいする。だけど厳しいんだろ、稽古?」「でしょうね」「知らない国でやりとおせる自信があるのかい」「大丈夫。頑張るわ」

モスクワに着いた百合子を迎える叔父の野川。「何でも困ることはあったら言いたまえ」「お願いするわ」バレエ団で厳しいレッスンを受ける百合子は慣れない異国の環境に戸惑う。そんな百合子を励ますバレリーナのターニャ。「明日はメーデーでお休みよ」「そう」「バロージャの家に行かない?私の友人で優秀な彫刻家でアトリエを持っているの」バロージャの家に行き、バロージャの素晴らしい彫刻に感銘を受ける百合子。百合子の清楚な美しさに心打たれるバロージャ。

バロージャに恋のシーンがうまく踊れないのと訴える百合子。「どのバレリーナも初めのうちは踊れなくて恋をして踊れるようになる。最後は演出家と結婚する。それがバレリーナの物語さ」「冗談言ってるの」「いいかい。誰でも自分の能力に自信を失って、人のいないところに行きたがる。だがスタジオこそ楽園とすぐにわかって、また帰りたくなる」「そうね。一日踊らないでいるくらいなら死にたいわ」「僕は君を彫刻に作りたい」「嬉しいわ」そして百合子とバロージャはデートをするようになる。

百合子に会いたくなった哲也はニューヨーク出張の話を断って、モスクワに行くが、百合子がバロージャを深く愛していることを知る。「百合子。バロージャは熊みたいな奴だと思ったよ」「まあ」「君はバロージャを愛してるね」「哲也」「はるばるモスクワまで来て振られたんじゃ世話ねえや」「……」「君はバロージャを愛してる。それでいいじゃないか。俺は明日早くサマルカンドに発つ。じゃあな」

元気ないじゃないかと百合子に言う野川。「そろそろ日本に帰りたくなったかな」「おじさま。どうして今までどうして結婚しなかったの」「急に何を言いだすんだ」「おじさま、私の母が好きだったからでしょう」「そうだ。僕は君のお母さんが好きだった。今の君と同じくらい綺麗だった。しかし君のお母さんはあの病気で広島に倒れてしまった。あれ以来、僕は君のお母さんは永遠の人になってしまったんだ」「そう。人を愛するとはそういうことなのね」

バロージャは仕事のためにソチに行く。百合子は次回公演「ジゼル」の主役に抜擢される。ターニャからおめでとうと祝福される百合子は幸せの絶頂となるが、急にめまいを覚えて病院に運ばれる。なんとか退院する百合子であったが、演出家から激しい運動をしてはいけないと医者に言われたため、君を主役の座からおろすと言われる。ショックを受けた百合子は野川に相談に行くが、野川のメモから自分が被爆二世のために白血病になって余命いくばくもないことを知る。

百合子は白血病だと哲也に教える野川。「だって、百合子は母親が原爆に会っただけじゃないですか」「そこが原爆の恐ろしいとこなんだよ。勿論被爆二世が全部そうじゃない。元気な人の方がずっと多いんだから」「それじゃ、百合子があんまり」

百合子に会いに行く哲也。「仕事終わったの?」「ああ」「ねえ、お願い。日本に帰る時は私も連れて帰って」「なぜ」「だって、私もう踊れないんですもの。モスクワにいたってしょうがないでしょう」「日本に帰ってどうするんだ」「どうせ死ぬなら日本で死にたいわ」「このまま日本に帰るとバロージャに会えないぞ。それでもいいのか」「……」「ソチに行こう。バロージャと会うんだ」

ソチに行った百合子はバロージャと会う。「モスクワにはいつ帰るの」「まだまだだ」「そう」「ユリコ。どうした」「何」「君のその目は別れを告げている」「違うわ。私はとても幸せよ。全て順調よ」「ではまた明日」「明日ね」

バロージャに話したのかと百合子に聞く哲也。「話してどうなるの」「愛すると言うのは一緒に苦しむことじゃないのか」「私はこんな身体よ。あの人に何をしてあげるの。かえって重荷になるだけ。消えてしまった方がいいの」「それでバロージャが喜ぶと思うのか。本当にバロージャを愛しているなら、何もかも話してバロージャの胸に飛び込むんだ」「……」

哲也は百合子が白血病だとバロージャに告げる。百合子は海に入水自殺しようとするが、バロージャに助けられる。「ユリコ。僕は君を愛してる」「なぜ来たのかしら。私たちの未来はないのに。私は死ぬのよ」「君は治るよ」「あなたを苦しめたくなかったの。でもさよならを。あなたを愛してるわ」「ユリコ。ユリコ」「バロージャ」「君は治る」「来てよかったわ」「ユリコ。愛している」

明日はモスクワに帰ると言う百合子に僕もついていくと言うバロージャ。「ダメよ。あなたには彫刻という仕事があるわ。私もバレエやってたからわかるの。自分の仕事がいかに大事だと」「君と一緒に行く」「愛してるわ。モスクワで待ってるわ」

モスクワに戻って百合子は入院するが急激に体調が悪化するが、日本に戻らずモスクワで治療を受けることを希望する。仕事を終えて百合子を見舞いに行くバロージャ。「ユリコ。元気かい」「元気よ。もうどこにもいかないで」「君はよくなってるんだよ」「私の踊りを見てほしかったわ」「……」

「あなた、泣いてるみたい。もう目が見えないの」「君の病気は治るよ」「そうよ。一緒にバレエに行きましょう」「勿論だ」「アンデルセンの童話はどうして幸せに終わるのかしら。二人はいつまでも幸せに暮らし、同じ日に死にました」「僕たちの愛は永遠だ」「そう。私たちは永遠よ」

野川からの手紙を受け取る哲也。<百合子は死にました。彼女の好きだったモスクワの春を待たずに。でも百合子は幸せだったと思います。立場は違っても百合子を心から愛していた君はバロージャに支えられていたのですから。しかし私たちは忘れないでおきたい。広島で生まれた百合子がそのために命を絶たれねばならなかったと言うことを>

★ロロモ映画評

バレリーナの百合子(栗原小巻)はその素質が認められてモスクワのボリショイ劇場のバレエ団に招待される。モスクワに着いた百合子を迎える叔父の野川。「何でも困ることはあったら言いたまえ」「お願いするわ」バレエ団で厳しいレッスンを受ける百合子は慣れない異国の環境に戸惑う。そんな百合子を励ますバレリーナのターニャ。「明日はメーデーでお休みよ」「そう」「バロージャの家に行かない?私の友人で優秀な彫刻家でアトリエを持っているの」バロージャの家に行き、バロージャの素晴らしい彫刻に感銘を受ける百合子。百合子の清楚な美しさに心打たれるバロージャ。

百合子とバロージャはデートをするようになる。百合子は次回公演「ジゼル」の主役に抜擢される。ターニャからおめでとうと祝福される百合子は幸せの絶頂となるが、急にめまいを覚えて病院に運ばれる。なんとか退院する百合子であったが、演出家から激しい運動をしてはいけないと医者に言われたため、君を主役の座からおろすと言われる。ショックを受けた百合子は野川に相談に行くが、野川のメモから自分が被爆二世のために白血病になって余命いくばくもないことを知るのであった。

この映画は初めての日ソ合作映画でありまして、栗原小巻は1978年の日ソ合作映画「白夜の調べ」でもレニングラードと京都を舞台に展開する作曲家のロシア人男性と恋に落ちるクラシックピアニストのヒロインを演じており、今でもロシアの人に印象深い女優となっているそうですが、彼女自身も小さい頃からロシアに興味があったそうで、ここでは吹き替えなしでロシア語を話しており、ロシアの人からすると黒髪の日本人女性がここまでやってくれると当然印象に残りますが、映画の内容はあまりにも甘ったるく、被爆2世であるロロモはあまり被爆2世の安売りをしないでほしいとちょっと言いたくなる内容で、バレエ指導のシーンはひたすら退屈だったりするわけです。

この映画で彼女はボリショイバレエ団に招待されますが、この「ボリショイ」というのはロシア語で「大きい」を意味し、ロシア国内のいくつかの都市には複数の劇場が存在し、大きなものをボリショイ劇場と呼び、小さいものをマールイ劇場と呼ぶ慣習がありますが、ロシア国外では、一般に「ボリショイ劇場」と言った場合はモスクワのボリショイ劇場を指すわけです。

ですからよく「ボリショイサーカス」と言うのはロシアのサーカス団が海外で公演する際に名乗るブランド名で、ロシアには幾つものサーカスがありそれぞれ名前をもっていますが、海外ではそれがマイナーなため興行主の意向で「ボリショイサーカス」という分かりやすい名前を名乗る慣習ができたわけです。

あとこの映画で興味深いのは2014年冬季五輪の開催地となったソチの40年前の光景が見られることでありまして、ソチはソ連時代に保養地として整備され、「ソビエト版リビエラ」ともいえるリゾート地帯を形成します。雪をかぶったカフカース山脈を望む美しい砂浜が黒海沿岸に広がり、気候は温暖で、温泉も産し、多くの療養施設もあり、スターリンをはじめ、歴代のソビエト連邦やロシア連邦の指導者たちの別荘があり、プーチン大統領もソチの別荘で夏期休暇を過ごしているそうですが、そうしたソチが満喫できるこの映画はソチ五輪期間中の2014年2月に見るのにピッタリな映画と言えますが、でも映画の内容は金メダルというわけにはいかず、予選落ちかなとも思ったりもするのでありました。(2014年2月)

得点 7点

もに戻る