モルグ街の殺人

1971年 アメリカ

キャスト:ジェイソン・ロバーズ(セザー)ハーバート・ロム(マロー)クリスティーネ・カウフマン(マデリン)アドルフォ・チェリ(ビドック)

監督:ゴードン・ヘスラー

19世紀のパリのモルグ街では「モルグ街の殺人」という芝居が人気を集めていた。芝居の内容は美女を偏執的に狙う男を美女を愛するゴリラが殺すというもので、美女は一座の花形のマデリン、偏執男には座長でマデリンの夫でマデリンとは親子ぼど年が離れているセザーが演じており、クライマックスはゴリラが偏執男の首を斧で斬りおとすというシーンになっていた。

芝居が終わり観客から絶賛の拍手を浴びるセザーたち。しかしゴリラの扮装をしてゴリラをいつも演じていたエリックは楽屋で顔に硫酸をかけられ喉を裂かれた状態で死体になって発見される。現実のモルグ街の殺人だな、とセザーに言うピドック警部。「犯人はエリックを殺して、自分はゴリラに扮して熱演したようだな」「そうか」「12年前にも悲惨な事件があったな。フェロネア夫人殺害事件だ」「あれは解決したはずだ」「ああ。その通りだ」

セザーは娼婦のジェニブルに呼び出される。「結婚したのね」「ああ」「母親の代わりに娘と」「話とは何だ」「エリックは殺されたの?」「そうだ」「殺す動機があるのは彼だけ。マローよ」「彼は死んだ」「でもエリックは顔に硫酸をかけられて殺されたんでしょう」「死者は蘇らない」「ねえ、今でも私のことが好き?」ジェニブルを抱くセザー。

翌朝、ジェニブルは顔に硫酸をかけられ喉を裂かれた状態で死体になって発見される。ジェニブルと昨晩会ったなとビドックに聞かれるセザー。「彼女は元劇団員か」「そうだ」散歩するマデリンはこびとのトリボレに声をかけられる。「君の笑顔は母上に生き写しだ」「母を知ってるの」「素晴らしい女優だった。私の友人が君を応援したいと言っている。謝礼はいらない。君を応援したいだけなんだ。その友人は強い男だ」

三日間土の中に埋められた後に生還するという大道芸を売りモノにしているオシーニに会いに行くセザー。「何の用だ」「今度の事件をどう思う」「俺は関係ない」「君も劇団員だった。マローが花形だったころに」「奴のたたりだというのか。埋葬に立ち会っただろう」「そうだ。12年前にな。オシーニ、彼の友人か親戚を知らないか」「そんなもの知らん。出番だ」棺桶に入れられて、土の中に埋められるオシーニ。

また悪夢を見たわ、とセザーに訴えるマデリン。「私は林の中の大きな屋敷の中にいるの」「君の母親の家だ。君も住んでいたろう?」「全然覚えてないわ」「君は幼かった」「そこで斧を持った男に襲われるの」「あの当時、君の母親の家は劇場でもあった。マローは君の母親に惚れてね。観劇会で君の母親を襲う役をやり、顔に硫酸をかけられた。勿論、中はただの水だったはずだが、本当の硫酸だった」「誰がすりかえたの」「わからん。彼はその晩自殺した」

三日たってオシーニは地中から掘り出される。「仮死状態です。医者はいませんか」そこに白い仮面をした男が現われ、オシーニの顔に硫酸をかけて喉を裂いて逃走する。絶命するオシーニ。犯人はそのうち君も殺すつもりではないかとセザーに言うビドック。

「君に関連のある人間が殺されている」「偶然だ」「マローのことは」「彼は死んでいる」「そうだ。逮捕の寸前に自殺した。医者も確認して棺は土中に埋められた。しかし奴は生きていた」「馬鹿な。奴は狂ってた。自分を醜くしたマデリンの母親を斧で殺し、自殺を図った」「だが彼は地中でよみがえった。呼吸を減らす技を使ったんだ。オシーニに頼んで教えてもらったのだろう」「……」

また悪夢に悩まされたマデリンは、悪夢の真相を突き止めるために母の屋敷に行き、そこが悪夢の舞台であることを確かめる。そこに現れるトリボレ。「よく来てくれた。彼も喜んでくれるよ」「帰るわ」「待て。恐れることはない」マデリンを尾行してフェロネア夫人の屋敷に入るセザーを迎えるトリボレ。「よく来たな。彼も待っている」「誰だ」「マローだ」「馬鹿な。彼は死んでいる」「生きている」

フェロネア夫人の部屋に行き、そこに白い仮面の男とマデリンがいるのを知るセザー。「久しぶりだな、セザー」「生きていたのか」「顔は醜いが、ちゃんと生きている」「どのみち死刑だ。お前は警察が捕まえる」「一度死んだ者を殺せると思うか。まだ私を憎むか。恋敵の私を」

この男が母親を殺したとマデリンに言うセザーは、マローを殴って白い仮面を剥す。マローの醜い顔を見て絶叫するマデリン。マローをぶちのめしたセザーは枕を持ってこいとマデリンに命令する。そして枕でマローを窒息死させるセザーとマデリン。「マデリン。これは犯罪でない。奴はとうに死んだ男だ」

睡眠薬を飲んで寝たセザーは気が付くと舞台にいることに気づく。はははと笑うトリボレ。どうしてここにと言うセザーに私が連れてきたのだと言うマロー。「お前は死んでないのか。君の脈は止まっていた」「オシーニの秘伝さ」

椅子に座って虚ろな表情をしているマデリンを見て、彼女に何をしたとマローに聞くセザー。「催眠術だ。彼女は真相を知りたいようだ」「真相とは何だ」「とぼけるな、セザー。瓶に硫酸を入れたのはお前だ。顔が醜ければ彼女は私を嫌うと。だが彼女は私を愛した。結婚してくれとまで言った。やっと今お前の正体が暴かれる」

マデリンに囁くマロー。「さあいいか。幼い頃の自分に戻るのだ。記憶をたどれ」「記憶?」「そうだ。君は子供だった。7歳の少女だ。父を亡くしたばかりで悲しんでいた。そして、あの屋敷の舞台だ」「屋敷の舞台?」「そうだ。夜だった。舞台は暗い。舞台は君の遊び場だった。だが足音が聞こえて、君は物陰に隠れた。母親は君が舞台に行くのを固く禁じていた。芝居の内容があまりに残酷だからだ。だが君は見てしまった」

セザーが自分の母親を斧で殺したことを思いだすマデリン。「そうだ、セザーが君の母親を殺したのだ」セザーを糾弾するトリボレ。「劇団員を買収し、マローが殺しているところを見たとでっちあげた。だが私は宣誓しなかった」エリックとジェニブルとオシーニは私が犯人だと宣誓したと言うマロー。「真犯人は誰だ、セザー。白状しろ」

自分が殺ったと白状するセザーの首を斬りおとすマロー。そこに踏み込んでくるビドックたち。マデリンにまた会おうと言って逃走するマロー。大人しく逮捕されるトリボレ。これは悪夢よと呻くマデリン。

「モロー街の殺人」でヒロインを演じるマデリンに囁くゴリラ。「また会おうと言っただろう」「あなたはマロー」「君は俺を殺そうとした。どうしても許せない」マローはマデリンを絞め殺そうとするが失敗する。マローはマデリンを追うが、足を踏み外して転落死する。夜中にマデリンの寝室のドアが開けられる。入ってきた男の顔を見て驚愕の表情を浮かべるマデリン。(恨むぞ。永遠に恨んでやるぞ)

★ロロモ映画評

19世紀のパリのモルグ街では「モルグ街の殺人」という芝居が人気を集めていた。芝居の内容は美女を偏執的に狙う男を美女を愛するゴリラが殺すというもので、美女は一座の花形のマデリン、偏執男には座長でマデリンの夫でマデリンとは親子ぼど年が離れているセザーが演じていた。

ゴリラの扮装をしてゴリラをいつも演じていたエリックは楽屋で顔に硫酸をかけられ喉を裂かれた状態で死体になって発見される。現実のモルグ街の殺人だな、とセザーに言うピドック警部。「12年前にも悲惨な事件があったな。フェロネア夫人殺害事件だ」セザーは娼婦のジェニブルに呼び出される。「結婚したのね」「ああ」「母親の代わりに娘と」「話とは何だ」「エリックは殺されたの?」「そうだ」「殺す動機があるのは彼だけ。マローよ」「彼は死んだ」

翌朝、ジェニブルは顔に硫酸をかけられ喉を裂かれた状態で死体になって発見される。ジェニブルと昨晩会ったなとビドックに聞かれるセザー。「彼女は元劇団員か」「そうだ」三日間土の中に埋められた後に生還するという大道芸を売りモノにしているオシーニに会いに行くセザー。「何の用だ」「今度の事件をどう思う」「俺は関係ない」棺桶に入れられて、土の中に埋められるオシーニは三日たってオシーニは地中から掘り出される。「仮死状態です。医者はいませんか」そこに白い仮面をした男が現われ、オシーニの顔に硫酸をかけて喉を裂いて逃走するのであった。

この映画の題名となっている「モルグ街の殺人」は1841年に発表されたエドガー・アラン・ポーの短編推理小説で、史上初の推理小説とされています。語り手は、図書館でデュパンという人物と知り合います。デュパンは没落した名家の出であり、唯一書物だけを贅沢品として愛好する生活を送っており、抜群の観察力と分析力を併せ持っていました。デュパンは猟奇殺人についての新聞記事に目をつけます。それは「モルグ街」の一角にある屋敷の4階で起こった事件であり、そこで母娘が惨殺され、部屋の中はひどく荒らされていたが、金品には手は付けられていませんでした。

多数の証言者は事件のあった時刻に犯人と思しき人物の声を聞いていましたが、ある者はスペイン語だったと言い、ある者はイタリア語だったと言い、ある者はフランス語だったと証言。この事件に興味を抱いたデュパンは、警視総監の伝手で自分と語り手を犯行現場に入れてもらい、独自に調査を行ないました。

デュパンは互いに食い違っている犯人の声の証言について、それがいずれも証言者たちの母国語以外の言語であったことを指摘。続いてデュパンは現場に落ちていた毛の房、絞殺死体に残った手の跡を示し、それが明らかに人間のものではないことを示し、犯人はとある船乗りがボルネオで捕獲し、うっかり逃してしまったオランウータンであったことをつきとめるわけです。

「モルグ街の殺人」は、名探偵の人物像を初めとして推理小説における様々な約束事を作り出したわけです。まずポーの創造した「天才的な探偵」という役柄は、以後の推理小説で必ずと言っていいほど用いられ、名探偵とその活躍を語る平凡な人物という組み合わせは、コナン・ドイルがホームズとワトソンの形で踏襲したのをはじめ、天才的な探偵が登場する作品には欠かせないものとなりました。そして、謎の解決のためのデータを真相までの間に読者に提示しておく「挑戦」の原則、推理を最終場面で一括して披露する形式、あっと驚く意外な犯人などは、いずれも「モルグ街の殺人」で確立されたわけです。

こうして「モルグ街の殺人」は推理小説にとって永遠のバイブルとなりましたが、この映画は原作とはかなりねじまがったものになっており、オランウータンならぬゴリラ男が出てくるのが原作の香りを少し残しているくらいで、あとは奇妙な怪奇映画というテイストになっており、「これがモルグ街の殺人」かとあの世のポーが怒りそうな作品でありますが、これは奇妙な味の怪奇映画としてはなかなかよくできているのではないかとロロモは思い、まずはまともに評価できる映画でないことは誰でもわかりますが、B級怪奇ロマン映画としては成功しているのではないかとロロモは評価したいのでありました。(2013年4月)

得点 74点

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